「もともと好きなんです、信長というキャラクターが。彼はよく『是非に及ばず』って口にしたらしいけど、ボクはそれ、『迷っている場合じゃない』って解釈している。人は何かを前に、どうしても躊躇してしまうものだけど、信長はすぐに判断して行動する。しかも彼は運が強かった。だから彼の存在は、敵対する者たちを圧倒したんだと思います。日本人の枠からはみ出しているし究極のパワハラだけど、確実に成果をあげるまであきらめない。どんな結果も受け止める。仲間と群れない。なあなあで生きることを望まない。そこはすごく、自分に近いところがあるなと思います」
信長といえば、ドラマや映画に登場すると必ず『敦盛』を舞うのがお約束。GACKTさんも?
「はい、舞いました。でも型にはまった所作は、信長には似合わない。もちろん勉強してから現場に臨みましたけど、信長らしいくずしをかなり入れてます」
野村萬斎さん演じる徳川家康、竹中直人さん演じる豊臣秀吉とのやりとりも、見どころのひとつ。
「信長は49歳で亡くなっているので、蘇った家康も秀吉も年長なんですが、立場的にはボクのほうが上なわけで(笑)。そのアンバランスさが、おもしろいですよ」
そんなのあり?と思うような設定でも、彼が演じると、思わず納得。稀有な俳優だ。
50代となった今、生活の拠点をマレーシアにおいている。
「今までずっと突っ走ってきたので、自分が若いときにできなかったことをひとつひとつ、回収しているような感じです。例えば仲間とくだらない時間を過ごすとか。20代のころはそんなの必要ないと思っていたけれど、今なら余裕で楽しめる。マレーシアの連中はみんな20代で年下ばかりだけど、年齢差関係なく接してくれるから。そういうのって新鮮だし、ああ、こういうことなのかって、若さというものの本質を、再認識しているような感じかな」
本作は、荒唐無稽なファンタジー。ではあるけれど、現代の日本にピリリと一滴、劇薬をたらしてくれるエンターテインメント作品に仕上がった。ちなみに、GACKTさんが会ってみたい過去の偉人は、ショパンとリスト。
「ふたりは同時代に生きた天才で、好き勝手に生きたリストと、生きるのがヘタで孤独だったショパン、対照的です。ふたりはどんなふうに人生を音楽に捧げたんだろうって、それを横で見てみたい」