【最近のベストセラー&話題の本にクローズアップ】数年で大きく認識が変わった“性教育”にまつわる2冊

文芸評論家・ 斎藤美奈子さんが解説する、変わる世界と「本」の現在地。ここ数年で大きく変わったのが性暴力への認識。そんな中で売れ行きが好調だという“性教育”の関連本にクローズアップ。

見えなかった問題が顕在化した今“性教育”の関連本が売れ行き好調

『おうち性教育はじめます 一番やさしい! 防犯・SEX・命の伝え方』 『ビジネスと人権 人を大切にしない社会を変える』

『おうち性教育はじめます 一番やさしい!防犯・SEX・命の伝え方』
村瀬幸浩
KADOKAWA ¥1,430


『ビジネスと人権 人を大切にしない社会を変える』
伊藤和子
岩波新書 ¥1,100

日本では遅れていたもののここ数年で大きく変わったのが性暴力への認識。斎藤さんによると「’23年に刑法が改正されたことや国連の人権に対する見解が影響している」そう。

「性暴力問題があったテレビ局ではCMが激減しましたが、大きな理由のひとつは今やほとんどの企業が多数の外国と取り引きしていて、ビジネス上、国連の見解のような感覚が不可欠だから。つまりあらゆる人権がきちんと守られた企業でないと、海外での仕事ができない時代なのです。そういう意味での“性暴力のリスク”について言及した本も出てきていますね」

性加害と切り離せない関係にあるのが性教育だが、従来の性教育本とは違うものがヒットしているという。

「『おうち性教育はじめます』は性についての“よくないこと”を認識できる本。これが子供にきちんと根づいていかないと、性暴力撲滅につながらない。このジャンルの本が最近増えているのは、そういう危機感があるからだと思います」

文芸評論家・ 斎藤美奈子さんが解説!変わる世界と、「本」の現在地

文芸評論家・斎藤美奈子さん

文芸評論家・斎藤美奈子さん

さいとう みなこ●’56年生まれ。’94年『妊娠小説』でデビュー。’02年『文章読本さん江』で小林秀雄賞を受賞。著書に『あなたの代わりに読みました』(朝日新聞出版)、『ラスト1行でわかる名作300選』(中央公論新社)など多数。

災害や物価の高騰など、不安要素が多かったこの一年。世の中を見渡せば「普及当初は誰でも意見を発信できると期待されたSNSですが、最近は選挙や事件の際にデマが拡散されるなどマイナス面も。“民主主義って何?”と考えさせられましたね」と斎藤さんは語る。

「芸能界だけでなく社会的にも大きな問題になったのが性暴力。ここ数年続けざまに表面化していますが、それを防ぐための本が出てきています。また最近はオンラインカジノの話をよく耳にしますが、ギャンブル関連の本には長く売れているものもあるんです」

一方、本の売り上げに目を向けると、’24年のベストセラーには今までになかった現象が。「ランキング上位の本は前年のベストセラーの続編がほとんど。子供向けの本も多く、“世の大人たちが読んでいた本”という感じがあまりしない。とはいえ、小説の世界では新感覚の日本語を使う作家が登場したり、韓国の女性作家、ハン・ガンがノーベル文学賞を受賞したりと明るい話題も。ネットでは得られない本独自の魅力に今後も注目していきたいですね」

合わせて読みたい
Follow Us

What's New

Feature
Ranking
Follow Us