銅版画家・山本容子さんに学ぶ、“自分の表現”の本質

“自分らしさ”を掘り下げる——。山本容子さんの作品とお話にふれ、改めて「自分の表現とは何か」を考えるひとときに!アートの力、積み重なる時間の大切さについて考えた。
村上春樹ライブラリー外観
先日、エクラ主催の「山本容子さんギャラリーツアー」へ参加。会場は、早稲田大学の「村上春樹ライブラリー」。その本に囲まれた空間で、まさに“物語”を感じさせるひとときであった。

しかも、山本氏ご本人が解説を行う特別なイベントである。その貴重な時間のなかで、改めて「自分が感じたことを、自分の言葉やかたちで表現することの大切さ」を深く実感することとなった。
村上春樹ライブラリーにて、ご自身の作品を解説中の山本容子さん
解説中の山本容子さん!

山本容子さんの世界観にふれる

山本容子さんといえば、銅版画で多くの文学作品をモチーフとしたアートを生み出してこられたことで知られている。今回の展示も、トルーマン・カポーティ、『不思議の国のアリス』など「物語」を題材とした作品が並んでいた。その作品ひとつひとつが、彼女自身の人生哲学のように感じられ、非常に印象的であった。

たとえば、こんな言葉があった。
「時代を知るには、その時代の音楽を聴く」
古典文学作品を絵に起こす際、その物語が生まれた“時代の音楽”を聴きながら制作されることもある、という。音楽は耳から入り、感情に作用し、その時代の空気を伝えてくれる。「物語」を「絵」に翻訳する過程において、さらに「音楽」を通じて時代を感じ取るという発想は、表現者としての奥行きの深さを教えてくれるものであった。

彼女の作品は、音楽をモチーフにしたものも多く、その感性の豊かさをあらためて実感させられる。目で見るはずの絵の中から、どこからともなく音楽が聞こえてくる気がするのも、そんな背景があったからなのだ、と驚いた。

「物語」や「音楽」、そして「時間」という目に見えないものを、あたたかな線と静かな色調で“かたち”にしていく山本容子さんの作品は、改めてアートの持つ包容力を感じさせてくれた。
集英社の世界の文学シリーズ
集英社の世界の文学シリーズ
シェイクスピアのソネット
シェイクスピアのソネット

“自分に問い続ける”からこそ、作品は生まれる

『不思議の国のアリス』『鏡の国のアリス』についての解説も、非常に興味深いものだった。

「アリスって、自問自答するんですよね」
そう語った山本氏のひと言に、私はハッとさせられた。

最近、「ネガティブ・ケイパビリティ(Negative Capability)」という言葉を知ったばかりの私は、「答えの出ない問いに対して、もやもや考え続ける力」の大切さを考えていた。AIが進化し、正解や効率を追い求める現代において、むしろ「人間らしさとは何か」という問いに向き合うことが、より切実になっているように感じる。
山本氏の言葉は、その本質に触れるものだったのではないだろうか。

すぐに答えを求めず、曖昧さやもやもやと向き合いながら、深く考え続けること。
それこそが、自分自身と対話し続ける「アリス」の物語であり、アートの営みであり、そして「生きる」ということそのものなのだと、あらためて実感した。

「何かを表現するというのは、すぐに答えを出すことではない。問い続ける姿勢こそが大切である」そんなメッセージを受け取った。
村上春樹ライブラリーの山本容子展「鏡の国のアリス」展示

自分の言葉で、自分の表現を

山本容子さんの語りは、どれも言葉が研ぎ澄まされ、美しく、そして哲学的であった。長年、自己表現を続けてこられた方ならではの「言語化の力」に、ただ圧倒される思いであった。

私自身、最近フラワーアレンジメント作品を制作し、日々表現をしているつもりであるが、まだまだ問い続けることが足りていないのかもしれない。もっと、自らの心の奥深くに問いかけ、その声に耳を澄ませたい。
そんな思いを新たにした一日であった。
山本容子さんがサインする手元
「to Yuka」と書いてくださって、感激!!!
山本容子さんとキャリゆか
「自分が感じたことを、自分の言葉で、自分のかたちにする」
それは決して容易なことではない。

しかし、表現者としてだけではなく、
ひとりの人間として、これからも大切にしていきたい。

帰りに・・・

この日は、もうひとつ大切な予定があった。以前お世話になった先生に、久しぶりにお会いするアポイントを取っていたのだ。山本氏に刺激を受けて興奮冷めやらぬ状態のままの訪問だったので、先生との対話もひとつひとつ深く感じることができた。

このブログもまた、ひとつの表現の場として、大切に書いていきたいと思う。
そして今日もまた、小さな手仕事に戻りながら、自分自身と対話を重ねていこう。
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キャリゆか

キャリゆか

埼玉県在住。2回のがん経験を経て「ムリはしないけど、やるときゃやる!」をモットーに、日々を楽しみながら自由に挑戦中。趣味は街歩きと読書。日々のささやかな幸せや気付きをお届けします。

Instagram:kawagoe_kakan

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