「資産家の場合、専門家のもとで対策をとっていることが多いので、意外ともめません。むしろ、トラブルが起こりやすいのは、『争族とは無縁』と思い込んで、なんの準備もしていない普通の家庭。なぜなら、争族は、金額ではなく、気持ちの問題が大きいからです」と、一橋香織さんは指摘する。気持ちの問題を引き起こす原因のひとつが、親子間の認識のずれだそう。
「昭和23年に民法が改正されるまで、日本は家制度が根づいていました。家督を継ぐ人に全財産を相続させるかわりに、その人は家を守り、金銭面も含めて親族全員の面倒を見る。それについて、ほかの子供たちが口をはさむことはありませんでした。エクラ世代の親の中には、そうした価値観がすり込まれている人が少なくないだろうと思います。片やエクラ世代は、『子供は皆平等』という認識のもとで育ち、親であっても、必要とあれば意見します。その親子間のギャップが、相続トラブルの原因になっていることも、多々あります」
子供たち全員が等しく相続できると思っていたのに、親は、家の名を継ぎ、お墓を守ることになる長男に多く遺そうとしていた。昔なら家族みんなが納得したであろう事例も、現代では、「不平等」と異を唱えられ、争族に発展しかねないというわけだ。