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今だからこそ立ち止まって考えたい。あなたにとって家族とは?「50歳からの家族のかたち」

親の介護や看取り、子どもの独立、夫の定年など、家族の節目や転換期に直面する機会が多い50代。だからこそ感じてしまう、「家族って何?」という疑問。少子高齢化や未婚率の上昇など、社会が大きく変化する「今」だからこそ考えたい“家族のかたち”とは?

 

 

① 【理想と現実】あなたにとって家族とは?

教えてくれたのは……

立教大学社会学部教授 岩間暁子さん

専門は家族社会学、社会階層論、マイノリティ論。著書に、『女性の就業と家族のゆくえ』(東京大学出版会)、『問いからはじめる家族社会学』(共著/有斐閣)などがある。

家族との関係に息苦しさや疑問を抱く人が増えている

エクラでは、介護や相続、お墓といった問題から、卒母や卒婚のような親子や夫婦の関係まで、この世代が直面しがちなテーマを扱ってきた。そこで、必ず寄せられるのが、家族との付き合い方に悩み、苦しむ読者の声。

「ひとり娘なので、両親に何かあれば、私が面倒を見なければと思っている。でも、実母とは折り合いが悪いので、正直憂うつ」(47歳・会社員)

「もう何年も前から、夫との間に愛情はない。子どもが巣立った今、なぜ夫婦を続けているのか、自分でも不思議に思うことがある」(51歳・パート)

「息子は2年前に会社をやめて以来、ニート状態。この先ずっと親に頼って生きるつもりなのかと思うと、目の前が真っ暗に」(53歳・専業主婦)

もしかしたら、家族という存在に息苦しさや違和感を抱く人が増えているのでは? そんな疑問から生まれたのが、今回の企画だ。

 世間で注目されている“家族もの”にも、昔ながらの大家族を扱った作品もあれば、血縁によらない新しい家族を描く作品もある。今、家族のかたちは、大きく変化しつつあるのかもしれない。この機会に、自分にとって家族とは何か、今後どう向き合っていくか、一緒に考えてみませんか?
今、家族の話題がアツい!
  • 家族もの ドラマ

  • 家族 本

  • 万引き家族 映画

’15年に発売のエッセイ『家族という病』がベストセラーとなり、新しい家族のかたちを描き続ける是枝裕和監督の最新作『万引き家族』が、第71回カンヌ国際映画祭の最高賞・パルムドールを受賞。

連ドラでは『あなたには帰る家がある』や『義母と娘のブルース』(ともにTBS)が話題になるなど、ここ数年、家族をテーマにした作品に注目が集まっている。

実社会でも、同性カップルを後押しする「パートナーシップ制度」を導入する自治体が急増。2018年に逝去した樹木希林さんの40年以上におよぶ別居婚に、"新しい夫婦のあり方" と、エールを送るエクラ読者も多数いた。

「日本は家族の転換期を迎えています」

読者100名へのアンケート
読者100名へのアンケートで、家族をどうとらえているかたずねたところ
「家族は唯一無二の存在。支えあい、助けあっていきたい」と、「血縁に縛られず、苦になるならかかわらなくてもよいと思う」に、意見が大きく二分された。

とはいえ、後者の中には、苦しみながらも、親やきょうだいと深くかかわっている人も目立つ。その裏には、「家族の絆は切っても切れない」という“すり込み”があるよう。そこで浮かぶのは、「そもそも家族って何?」という疑問。家族社会学が専門の岩間暁子さんは、「家族の内実は、時代や社会、階層、地域などで異なります」と。

「エクラ世代の多くは、夫婦と未婚の子どもから成る、いわゆる“核家族”で育ち、自分たちも核家族を形成していることでしょう。けれど、このかたちが一般的になったのは、高度経済成長期の1950年代半ば以降。それ以前は祖父母や親戚のほか、使用人といった血縁のない人々も同居するケースも多く見られました。つまり、現在私たちが“家族”だとイメージしているかたちは、ここ60年ほどの歴史しかないのです」

高度経済成長期は、性別役割分業が進んだ時代でもある。夫はモーレツ社員として外で働き、家のことは妻が一手に引き受ける。そのほうが、経済効率がよかったからだ。エクラ世代が生を受けたのは、そのスタイルが定着したころ。私たちが、「家事や育児、介護は、女性である自分がすべき」ととらえがちなのは、そのせいかもしれない。

家族構成は単独世帯が最多に

家族構成は単独世帯が最多に
「けれど、グローバル化による企業間競争の激化や経済の停滞などで、夫が勤める企業が、その家族を支えるという機能は低下しました。そうした経済的な理由に加え、女性の意識変化もあり、結婚後も働く女性が増え、1997年には、共働き世帯数が専業主婦世帯を上回りました。ところが、それまで主に妻が担ってきた家事や育児、介護を代替しうるサービスの整備は進まず、男性の分担を促そうにも、それを阻む長時間労働はなかなか是正されません。それは、日本の社会保障制度が、夫が主な働き手であることを前提につくられてきたのも一因でしょう」

また、バブル経済崩壊後、非正規雇用が急増。非正規雇用者は、正規雇用者に比べて収入が低く、経済的に不安定なため、結婚にも二の足を踏んでしまいがち。結果、生涯未婚率が増え、少子化や人口減少も加速している。一方で、自治体のパートナーシップ制度導入が広がり、証明書を交付された同性のカップルも増えつつある。それを考えると、私たちの子ども世代は、「結婚し、子どもをもつ」のがあたりまえではなくなっていても不思議はない。だとしたら……、今私たちにすり込まれている「親は子どもを育て、成人した子どもは老齢になった親の世話をする」という“家族の役割”は、おのずと消滅しそう。

「家族のあり方は、社会と密接に関係していて、普遍的なものではありません。同じ国や時代であっても、属している階級や地域、民族などによって違いがあるのも当然ですし……。 家族の機能にしても、『こうあるべき』という決まりはなく、自分たちの家族で考えるしかないのだと思います」

読者アンケートに寄せられた「家族問題SOS!」

私も夫もひとりっ子。両家それぞれにお墓があるのだけれど、どちらも引き継ぐのは大変だし、それをまた子どもに継いでもらうのも心苦しい。(47歳・フラワーデザイナー)
夫の親類は高学歴な人ばかり。子どもの人生は子どものもの。わかってはいるのに、親類への見栄やプライドから、プレッシャーをかけてしまう自分がいます。(48歳・公務員)
義父母の存在がいや。いろいろあった末、十数年前から絶縁状態だけど、介護や相続の話が出たら、かかわることが出てきそうで、憂うつ。(47歳・自由業)
義母からも実母からもなにかと頼られ、正直疲れます。遠方に住んでいるのに、「今週末来て」などと勝手なことをいうし。年をとって、ますますワガママになったみたい。(51歳・会社役員)
子どものころから気が合わなかった実姉。なんでも仕切りたがり、自分の思うようにしないと気がすまない人なので、相続のときも勝手なことをいいそうで怖い。ひとり暮らしの母が、そんな姉を頼っているのも心配。(50歳・専業主婦)
今は、両親が別居しているけれど、万が一母が先立って、父がひとり残されたら……。子どものころからそりが合わなかったので、父とのやりとりを想像するだけでも不安。(45歳・自営業)
義父母は遠方に住んでいるものの、夫は長男なので、いずれは面倒を見なくてはいけないと思っています。ただ、故郷を離れたくないといっているので、どうすればいいのか悩みます。(53歳・専業主婦)
夫と仲が悪いわけではないけれど、離婚も視野に入れつつ、お互いに今後も成長できる自立した関係を模索中。(51歳・カウンセラー)

 

② 【親の介護】子の役割は、“担い手”ではなく“司令塔”

時間やお金、体力だけでなく“気持ちの負担”も大きい「親の介護」について専門家がアドバイス。自分の家族や状況と合わせて、取り入れて。

教えてくれたのは……

介護・暮らしジャーナリスト 太田差惠子(おおた さえこ)さん
『親の介護で自滅しない選択』(日本経済新聞出版社)、『親の介護には親のお金を使おう! ―あなたを救う7つの新ルール―』(集英社)など、著書多数。

家族にできることもあればできないこともあります
アンケートで、特に切実な声が多かったのが、親の介護問題。「ひとりっ子同士の結婚なので、双方の親を見ないといけない」「親が遠方にいるため、通うのが大変」「きょうだいがいるものの、非協力的」「親に余裕がないので、金銭的なサポートも求められている」など、悩んでいるポイントも多岐にわたる。厳しい状況でも、「自分がなんとかしなければ」と思ってしまうのは、「家族だから」。

「『育ててくれたのだから、親孝行するのはあたりまえ』と考えている人もいれば、『世間や親から、優しい子だと思われたい』という気持ちを抱いている人もいるでしょう。ただ、昔のような大家族ではなく、核家族化した現代において、家族だけで親を介護するのは非常にむずかしいこと。2000年に、社会全体で高齢者を支える仕組みとして介護保険制度が創設されたのも、その表れのひとつ」というのは、介護の現場に20年以上携わってきた太田差惠子さん。

親の介護のために会社をやめてしまい、貧困に陥った人もいれば、自分自身が体調をくずしたり、精神的に追い詰められてしまった人もいる。また、きょうだいの仲が決裂したり、夫婦間に溝が生まれて離婚にいたったというケースもまれではない。そんなふうに“自滅”してしまうのは、親にとっても本意ではないはずだ。

「まずは、『親の介護は子どもがするべき』という思い込みを捨てましょう。『できることはするけれど、できないこともある』と、認識することも必要です。親には親の人生があるように、子どもにも子どもの人生があります。最優先すべきは、自分の生活。そのうえで、『自分にできることは何か』を、考えて。もし、親のケアができなくても、罪悪感を覚えたり、自己嫌悪に陥る必要はありません。介護サービスの種類や利用方法などの情報を収集し、親の状況に適したサービスを手配する“司令塔”になるだけでも、十分です。介護費用にしても、親のお金で賄うのが基本。そのためにも、親の懐事情を知り、介護費用を軽減する情報や制度の把握を」

 

親との関係しだいでは距離をおくのもアリ

親との関係しだいでは距離をおくのもアリ

親の介護が理由で、きょうだいや夫ともめる場合には、どう対処すれば?

「きょうだいがいると、等分にかかわってほしいと思いがちです。けれど、それぞれの置かれている環境や価値観は違いますし、親との関係も同じとはかぎりません。無理じいして仲違いするよりも、“最初からいなかったもの”と考えたほうが、精神的に楽なのでは?

 逆に、義理の親に対しては、実子である夫に主体的に動いてもらうのが得策。介護サービスの利用を促したり、介護費用の算段をしたりと、デリケートな問題が発生するため、義理の関係だと、こじれる危険性もあります」

 なかには、介護する親との関係に不安を抱いている人もいる。

「精神的に追い詰められてまで、親の面倒を見ることはありません。家族の歴史はそれぞれですから、親との関係によっては、距離をおかざるを得ないこともあるでしょう。そう割り切ることも、大切です」

 

③【卒母】子育ての卒業で得られるのは喜び?寂しさ?

漫画家・西原理恵子さんの宣伝で広まった「卒母」について専門家がアドバイス。

教えてくれたのは……

心理カウンセラー 大門昌代(だいもん まさよ)さん

家族関係からビジネス関連まで、幅広い分野で講演会や個別カウンセリングを実施。自身もアラフィー世代で一男一女の母。

「いつまでも世話を焼くのは、絆ではなく癒着です」

子どもは自分とは別人格だと認識し、お互いに自立を
昨年、漫画家・西原理恵子さんの宣言で広まった“卒母”という言葉。そこであがってきたのが「母親を卒業ってどういう意味?」「親子の関係は永遠に続くのでは?」といった疑問。家族関係のカウンセリング経験が豊富な大門昌代さんは、「明確な定義はないのですが」と前置きしたうえで、次のように説明する。

「母親や子どものタイプ、親子関係、家庭環境にもよりますから、一概にはいえません。ただ、私自身は、母としての時間よりも自分個人としての時間が大幅に増え、親子関係が、大人と子どもではなく大人同士に変わるのが、“卒母”だと考えています。子どもは自分とは別人格なのだと認め、口を出したり、世話を焼いたりせず、少し距離をおいて見守る。そうやって、精神的にも、生活の面でも、お互いに依存せず、自立することなのではないかと」
子どもは自分とは別人格だと認識し、お互いに自立を
子どもが成人したあとも、なんでも話し合え、しょっちゅう一緒に出かけるなど、距離が近い“友だち親子”も増えているようだけれど?

「仲がよいのはけっこうですが、度がすぎると危険。自分と他者の境目がなくなっている“癒着”状態に陥っているかもしれません。結果、卒母どころか、子どもの自立を阻むことに。子どもに自分の人生を歩ませるためにも、癒着は早めに解消しなければ」
 それに有効なのが、子どもとは別の世界をもち、子ども以外の人と過ごす時間を増やすこと。

「仕事でも、趣味でも、ボランティアでもかまいません。母としてではなく、個人として社会にかかわりをもつことが大切。夫婦の時間を増やすことも、卒母の後押しになりますよ」
 なかには、いつまでも親をあてにし、頼ってくる子どももいそう。「ただ、近しい関係の場合、原因は双方にあるもの。『甘えて困る』といいながら手を貸していないか、まずは、自分の言動を振り返って。また、自立のカギになるのは自尊心。子どもを否定せず、信頼し、自信をもたせることも必要です」

 卒母は、長い時間をかけて、徐々に行っていくもの。今から少しずつ準備をしておきたい。

 

④ 【夫婦関係】人生の後半戦に入り、夫婦関係も岐路に

50代女性の不満のタネになったり、負担に感じたりしている「夫婦関係」について専門家がアドバイス。

教えてくれたのは……

離婚カウンセラー 岡野あつこ(おかの あつこ)さん

カラットクラブ代表。最新刊『再婚で幸せになった人たちから学ぶ37のこと』(ごきげんビジネス出版)が好評。

「“卒婚”で、夫婦の役割をリセットしては?」

物理的な距離をおくことで関係が改善することも
生まれ育った家族ではなく、自分が新たに築き上げた“今の家族”。それは、ある人と婚姻関係を結んだことに端を発している。その相手=夫は、家族を形成する要の存在!……のはずだけど、不満のタネになったり、負担に感じたりしているアラフィー世代は、意外と多い。子どもの独立や夫の定年、親の介護などを機に、離婚という話も珍しくはない。

「結婚生活20年以上の夫婦の離婚を指す『熟年離婚』という言葉は、すっかり定着した感があります。ただ、離婚するのは想像以上に大変。精神的にも、経済的にもダメージは相当なものですよ」と、25年以上にわたって夫婦関係のカウンセリングに携わってきた岡野あつこさん。

「熟年離婚となれば、なおさら。DVや浮気など、許しがたい理由があれば別ですが、冷静に判断しないと、悲惨な結果を招きかねません」
物理的な距離をおくことで関係が改善することも
かわりに岡野さんが提唱するのが、「卒婚」。籍は抜かず、夫婦の交流は保ちながら、別々に暮らすという新しい夫婦のかたちだ。

「私のサロンで独自調査したところ、熟年離婚をした妻が理由としてあげるのは、『夫が家事を手伝わない』『心のない言葉をいわれる』『感謝の言葉がない』といったもの。お互いを思いやり、コミュニケーションをとれば解決できそうですが、長年連れ添った夫婦なら、簡単にはいかない場合が多いでしょう。けれど、物理的な距離をおいて、夫婦という役割をリセットすれば、相手のありがたみがわかり、言動を改められるかもしれません。実際に卒婚をしたご夫婦の中には、『この状態が自分たちにとってベスト』だと継続するケースもあれば、数年間の卒婚の末、再び一緒に暮らしはじめるケースもあるんですよ」

 人生100年時代。子育てを終えたあと、夫婦だけで過ごす時間は、昔に比べてぐんと増えた。であれば、夫婦のあり方が変わるのも当然かも。「卒婚を、冷えきった関係ではなく、前向きな関係にするには、相手への配慮がポイント。卒婚を認め、受け入れてくれたことへの感謝の気持ちも、忘れずにもちたいですね」

 

⑤ 【相続】相続は最後のきょうだいゲンカ!?

大人になってからの“きょうだいのもめ事ナンバー1”の「相続」について専門家がアドバイス。

教えてくれたのは……

上級相続診断士・一橋香織(ひとつばし かおり)さん

笑顔相続サロン代表。著書に、『家族に迷惑をかけたくなければ相続の準備は今すぐしなさい』(PHP研究所)など。

「相続財産=親の愛情のバロメーターではありません」
相続は、最後のきょうだいゲンカといわれています
 親が亡くなったあとの、きょうだい間での相続トラブルを心配する人も少なくない。これまでに2000件以上の相続問題を扱ってきた一橋香織さんも、「実際に直面するまでは、『わが家はきょうだいの仲がいいから大丈夫』とか、『たいした財産がないから、争いようがない』と思っていても、いざ相続となると、もめにもめる。そうした事例は少なくありません」と、警鐘を鳴らす。

「相続は最後のきょうだいゲンカといわれています。特に、親がどちらも亡くなったあとの2次相続は要注意。相続財産=親の愛情のバロメーターだととらえてしまうのか、金額の大小にかかわらず、きょうだいがもめるケースは多いですね。幼少期にまでさかのぼって、お互いに、当時の不満をぶつけあってしまったり」
相続は、最後のきょうだいゲンカといわれています
「そうならないためにも、親が元気なうちに、相続についてちゃんと話し合っておきましょう。ただし、親も、年をとって弱気になれば、子どもそれぞれに“おいしいこと”をいう危険性があります。のちのち、『私にはこういっていた』『オレはこう聞いた』ともめないよう、話し合いは、きょうだいを含め、家族全員そろって行うことが重要です」

 そこで確認すべきは、財産の内容と同時に、親がどう考え、どうしたいと思っているか。

「『同居し、世話をしてくれている長女に、感謝の意をこめて多めに財産を残したい』など、親の気持ちがわかれば、きょうだい同等の遺産分割でなくても、納得できるかもしれません」 一橋さんによると、距離が開いてしまったきょうだいでも、顔を合わせ、昔話などをしているうちに、わだかまりが解けるケースが多々あるとか。相続にかぎらず、家族がしっかりとコミュニケーションをとることは、問題解決の第一歩といえそう。

 

⑥ 【お墓の継承】少子化の今、親と自分のお墓はどうする?

少子化が進む今、代々の図式が崩れつつある「お墓の継承」について専門家がアドバイス。

教えてくれたのは……

第一生命経済研究所主席研究員 小谷みどり(こたに みどり)さん

●著書『お墓どうしたら?事典 お墓をめぐるあらゆる問題で悩んだら最初に読む本』(つちや書店)や講演会で活躍。

「どのお墓に誰と入るかは、個人の自由です」
家墓の歴史はせいぜい70年ほどです
日本に普及しているのは、「○○家之墓」という家墓。先祖代々の墓を子どもが守り、次の代に引き継ぐという意識は、アラフィー世代にも根強い。とはいえ、少子化が進む今、その図式はくずれつつある。現に、「ひとり娘の私が嫁いでしまったので、実家のお墓を継ぐ人がいない」「子どもがいないから、自分の代で途絶えてしまう」といった声が寄せられた。なかには、「墓じまいすることになり、ご先祖さまに申しわけない」という人も! 「継ぐべきなのに、継げない」という思いが、アラフィー世代を苦しめているわけだけれど……。

「家墓の形式が広まったのは、ここ70年くらい。それ以前は、個々に埋葬されていました。先祖代々の墓などといいますが、せいぜい3、4代前まででしょう」と、死生学や葬送学の研究を専門とする小谷みどりさんは、指摘する。ということは、70年ほど前は、「先祖のお墓を守る」という考え方自体なかったことに?「読者の親たちは、すでに家墓が定着していた世代なので、『お墓は子孫が継ぎ、絶やしてはいけないもの』と、思い込んでいるかもしれません。その親の考え方が、皆さんにとっても“常識”になっているのでしょうね。でも実は、お墓の承継者に決まりはないんですよ。長男でも次男でも、嫁いだ娘でも、甥や姪であってもかまわないのです。いろいろな条件はありますが、友人や知人が承継することも可能。さらにいえば、『お墓は家族で入るもの』というルールもありません。どのお墓に、誰と入るかは、個人の自由なんですよ」
家墓の歴史はせいぜい70年ほどです
墓地によっては、「使用者から見て6親等以内の血族または3親等以内の姻族までしか納骨できない」といったルールを設けているが、それはごく一部。最近は、血縁関係を超えて、さまざまな人が一緒に納骨される、「合祀墓(ごうしぼ)」が増えており、友人や仲間とお墓を建て、一緒に入る人も珍しくない。

「お墓のあり方は、時代によって変わります。それを踏まえたうえで、自分たち家族にとってのお墓の意義やあり方を、改めて考えてみてはいかがでしょう」
取材・文/村上早苗 イラスト/コバヤシヨシノリ  ※エクラ2019年1月号掲載

 

⑦作家・江國香織さんが描く「家族」をめぐる物語

家族関係の変化を痛感せざるを得ないアラフィー世代。悩みは人それぞれでも、“考えさせられながら読む”小説にはそのヒントが! 近著で家族をめぐる物語を描いた江國さんに、小説に宿る「家族とは何なのか」についてを伺いました。
彼女たちの場合は

『彼女たちの場合は』

江國香織 集英社 ¥1,800

姉妹のように仲がよくていとこ同士の逸佳と礼那は、親に黙ってアメリカを見る旅へ。当初は心配するばかりのふたりの両親だったが……。少女たちの新鮮な感受性を通して、若いころにしかできない旅を描いたロードノベル。

気づかなくてもいいことに気づかされたとき、夫婦に危機が

作家の江國香織さんにとって家族の物語は“ずっと大好きで、たくさん読んできたもの”。「自分より大事な存在になりえるのが家族。その幸福と不幸が描かれた家族の話はとても豊かで、何度でも読み返したくなります」と語る。彼女自身もさまざまな家族を書いてきたが、最新作『彼女たちの場合は』で取り上げたのはアラフィー世代の家族。ニューヨーク在住でいとこ同士の逸佳(いつか)(17歳)と礼那(れいな)(14歳)が親に黙ってアメリカを見る旅に出たことで、ふた家族が心配するところから物語は始まるが、礼那の両親――潤(うるう)と理生那(りおな)の間には、不穏な空気まで漂うようになる。

「長編小説を書くときは最初に登場人物の情報、例えば性格や誕生日や身長などを細かく考えておきますが、先の展開は何も考えない。人物が勝手に動くのを待つんです。ただ礼那の家は、彼女がいない時間と空間ができると両親がうまくいかなくなるのでは、という予感がありましたね」“子はかすがい”というが、それが急になくなることは夫婦にとってひとつの試練。娘から楽しそうな手紙が届いたりしたことで理生那は落ち着いていくが、潤は行方がつかめない状態が耐えられない。現実の受け止め方が違う夫婦がお互いに抱く疑問を、エクラ読者なら理解できるのではないだろうか。「若いころは、結婚式でよく聞く“結婚したら片目をつぶって相手を見よう”というあいさつが大きらいでした。“もし自分があいさつを頼まれたら、両目を開けたまま相手から目を離すなといってやる”と思っていたくらい(笑)。
でも年を重ねるにしたがって、時には片目をつぶって見ないふりをしたり、ちょっと許したりするほうがいいのかもと思うようになった。ただ理生那のように何かがきっかけで“自分は夫を愛することはできるが信頼はできない”と気づいてしまったら、夫婦でいつづけるのは厳しいかもしれませんね」

愛があれば大丈夫とはかぎらない、愛と信頼は別ものということなのだろうか。
「愛ってわりと簡単だな、と思うんです。どうしてもわき出たりするものだし、ましてや一回家族になったりしたら、多少きらいなところがあっても気持ちが冷めても“この人と一緒にいてよかった”と感じる瞬間があるから。それに比べると信頼はむずかしい。信頼できる、できないって大きな問題だなと思います。最初は心配していた理生那が落ち着いたのも、ある瞬間から逸佳と礼那を信頼できたから。一般的に女性のほうが子供と一緒にいる時間は長いし、理生那の場合は娘との関係が密だったから、可能だったのかもしれませんが。そう考えると潤はちょっと不利ですね」

家族の中でも個は尊重されるべき。これからの時代はさらに

さまざまなできごとを経験しながら、のんびり旅を続けていく逸佳と礼那とは対照的に、理生那と潤の関係はぎくしゃくするばかり。クリスチャンではない理生那が教会に通う心情を潤は理解できないが、それは残酷なほどふたりの距離を表しているようだ。「理生那にとっては妻や母である以前の自分、一個人に戻れる場所が教会だった。キリスト教のあり方に興味と共感をもったのだと思いますが、環境によっては仏教やイスラム教でもよかったのかもしれません。一方潤は、理生那だけでなく自分のことも一個人としては考えられない。娘との関係が妻より不利なうえに、夫や父親、会社員としてしか自分を認識できない彼をちょっとかわいそうに思いました」
物語の後半、家で子供たちを待ち続けていた理生那が意外な行動に出る。それは若き日の自分を思い出すことにつながり、やがてある確信を得るが……。

「理生那と潤が昔どういう恋愛をしたかはわかりませんが、たぶんお互いや結婚について疑問をもたなかったのだと思う。理生那が潤と出会う以前まで振り返ってみたことは、それに気づくことにつながるから、夫婦にとって危険かもしれない。でも私は『いいのでは』と思います。それでもなお理生那が潤と一緒にいたいかどうかは、やってみないとわからなかったから」
逸佳と礼那の旅は、ふたりだけではなく家族にも変化と成長をもたらした。でもそれらは「旅がなかったとしてもいつだって避けられないもの」と江國さんはいう。

「成長はいいことばかりではなく、それによって失うものもあるけれど、いずれにしろ人は一カ所でとどまることはできないから。もうひとつ、いつも避けられないのが孤独。家族といても恋人といても、人にはまず尊重されるべき個性がある。それが孤独を招いたとしても、寂しいのではなく自由なんです。そういえば私がおすすめした家族の本も、個人と自由について考えたものが多くなりましたね。私自身もたびたび、個々の勝手を許す家族を書いています。家族はもともと一人ひとりを役割で認識しがちですが、ひと家族の人数が少ない今はますますその傾向が強まる可能性も。だからこそ、家族といても個人をしっかりもっていないと危険だなと思います」

これまでもさまざまな家族が登場 江國さんが描く家族小説

穏やかで確かな家族の日常

穏やかで確かな家族の日常

『流しのしたの骨』

新潮文庫 ¥550

19 歳のこと子は4人姉弟の三女。彼女だけでなくおっとりした長姉も妙ちきりんな次姉も小さい弟も問題を抱えていたが、両親を含めた家族がかけがえのない居場所だった。風変わりだが幸福な宮坂家を描く。

抱擁、あるいはライスには塩を

周囲から浮いた一族の歴史

『抱擁、あるいはライスには塩を』

集英社文庫 上・下 各¥600

東京・神谷町の洋館で暮らす柳島家。そこには3世代が同居していたが、4人の子供のうちふたりが父か母が違うなど複雑な事情があり、教育方針も独特だった。個々の成長と一族の変遷を描いた重厚な作品。

長女の秘密が三姉妹に変化を

長女の秘密が三姉妹に変化を

『思いわずらうことなく愉しく生きよ』

光文社文庫 ¥700

結婚して7年の麻子は夫からのDVを隠す主婦。結婚はしないが同棲中の治子は外資系キャリアウーマン。恋愛なんて信じないという育子は自動車教習所の事務員。犬山家三姉妹ののびやかな生き方とは。

 

⑧ 「家族の問題」をつづった小説7選

最近本の世界で勢いがある家族の現実をテンポよくつづった小説から、女性作家たちのユーモラスな視点で描かれた傑作をお披露目。

女だからこそユーモラスに「家族の問題」

女だからこそユーモラスに「家族の問題」

家族のキャラが濃すぎるのも悩み

『乙女の家』

朝倉かすみ 新潮文庫 ¥750

78歳の曾祖母は愛する人との内縁関係を貫いた。58歳の祖母は16歳で族のヘッドの子を産んで男に逃げられた。42歳の母は理想の家庭をつくるため、平日は別居中の夫が夕食を食べにくるという形を継続中。そんな強烈な女たちの中で育つ若葉は、自分のキャラの薄さに悩み、試行錯誤していたが……。女子高生の青春を描きながら、普通の家族とは、理想的な家庭とは?と考えさせられる。

アラサー、アラフォーも大変

アラサー、アラフォーも大変

『対岸の家事』

朱野帰子 講談社 ¥1,400

『わたし、定時で帰ります。』で人気上昇中の作者が描くのは主婦の現実。2歳の娘がいる専業主婦・詩穂は2児の母・礼子と知り合い、仕事とワンオペ育児をこなす彼女の限界に気づく。そのほかにも子供がいない医者の妻・晶子、育休中のエリート公務員・中谷など、知人たちには個々の現実と言い分が。困難な毎日でも、優しさを忘れず向き合いたいという気持ちにさせてくれる小説。

節約は明るく賢くやらなくちゃ

節約は明るく賢くやらなくちゃ

『三千円の使いかた』

原田ひ香 中央公論新社 ¥1,500

「人は三千円の使い方で人生が決まる」と祖母の琴子にいわれた美帆は、24歳で貯金に目覚める。姉で29歳の専業主婦・真帆は、証券会社員時代の知識を生かしてプチ稼ぎに熱心。姉妹の母で55歳の智子は体調不良で将来が心配。そして琴子は73歳でパートを始め、お金の意味を再び考えるのだった。御厨家の人々の節約術は、何に価値をおき、バランスよく生きるかを考える好材料。

シニアの外見、そのままでいい?

シニアの外見、そのままでいい?

『すぐ死ぬんだから』

内館牧子 講談社 ¥1,550

酒店を長男に譲り、夫と麻布のマンションで暮らすハナ。78歳の彼女は60代までは外見に気を使わなかったが、実年齢より上に見られて開眼。「外見が若くなると精神が若くなる」と自覚し、プロに相談しつつ美を保っていた。ところが夫が倒れたことで予想外の展開に。高齢者の口癖「すぐ死ぬんだから」は免罪符ではなく、努力を放棄するセルフネグレクトという作者の見解に納得!

『夫の墓には入りません』

『夫の墓には入りません』

垣谷美雨 中公文庫 ¥680

老後資金、遺品整理などリアルな問題をテーマにしている作者の人気作。結婚15年の夏葉子は夫を突然亡くしたが、実家には戻らないつもりだった。しかし義両親が彼女をあてにしていることがわかり、将来を再考することに。女性の仕事を理解できない、勝手に墓に嫁の名前を入れるなど、義両親の行動はいかにもありそうで苦笑。時に穏便に、時に過激に対抗する夏葉子に思わず拍手。

人生後半戦は本音が丸出し!

人生後半戦は本音が丸出し!

『肖像彫刻家』 垣谷美雨 

篠田節子 新潮社 ¥1,700

53歳バツイチの銅像職人・正道はイタリアで芸術家になることをあきらめ、八ヶ岳山麓に移住。現金収入のためさまざまな仕事を引き受けるが、「正道が作った銅像には魂が宿る」と評判になったことで思いがけない事態が続出する。娘ひとりでの介護、地方の寺の経営の裏側といった厳しい現実を直視しつつ、人間喜劇として描かれた小説。的確な視点、皮肉の切れ味はさすがベテラン!

子供の部活は親の犠牲が必須!?

子供の部活は親の犠牲が必須!?

『我ら荒野の七重奏(セプテット)

加納朋子 集英社 ¥1,500

PTA改革に挑んだキャリアウーマン陽子を描いた『七人の敵がいる』の続編。中学で陽子のひとり息子は吹奏楽部に入部。しかしそこは親のがんばりなくしては成立しない部活だった! 演奏会で使う会場のために昼夜を徹して並ぶ、親の会の主(ぬし)が権力をもつなど、陽子には納得できないことばかりで……。知る人ぞ知る“部活親の苦労”を問題提起した痛快な作品。

 

⑨「家族の秘密」にせまる小説7選

夫婦や親子、一族に秘められた事実は、影響が大きいほど闇の中へ。まるでミステリーのような展開に目が離せない小説をピックアップ。

家族はミステリーの宝庫?「家族の秘密」にせまる小説7

家族はミステリーの宝庫

粋なおばあちゃんは名探偵

『いつもが消えた日』

西條奈加 創元推理文庫 ¥800

中3の望は元芸者の祖母・お蔦さんと神楽坂でふたり暮らし。ある日、望の友人・有斗が帰宅すると、血だまりを残して家族が消えていた。残された彼を預かったお蔦さんは、警察の捜査とは別に一家失踪の理由を推理していく。お蔦さんのきっぷのよさと人情味が人気のシリーズ第2弾。つらい思いを経て成長していく少年たちと、それを見守る大人たちの姿がさわやかに心に残る。

湊かなえが描く姉妹の苦い真実

『豆の上で眠る』

湊かなえ 新潮文庫 ¥590

結衣子が小1のとき、2歳上の姉・万佑子が失踪。不審な車や変質者の噂がある中、必死の捜索が続くが、行方不明のまま2年。万佑子と名乗る少女が突然帰ってきて、家族は大喜びするが、結衣子には別人としか思えなかった。その違和感は大学生になってからも続いたが……。家族の中でなぜ妹だけが姉ではないと感じたのか。真相がわかるラストはあまりにも意外で、がく然としそう。

無言電話の向こうに亡き夫が?

『とめどなく囁く』

桐野夏生 幻冬舎 ¥1,800

夫の庸介を海難事故で亡くしたフリーライターの早樹は、仕事で知り合った31歳上の資産家と数年後に再婚。彼も妻を亡くしており、相模湾を望む瀟洒(しょうしゃ)な邸宅で穏やかに暮らしていた。そんなある日、亡夫の母・菊美から「庸介を見かけた」との知らせが。老いがすすんだ菊美の妄想なのか、それとも!? 庸介の過去がスリリングに明かされると同時に“人を許すこと”について考えさせられる。

家族はミステリー

少年犯罪の底なき闇と向き合う

『木曜日の子ども』

重松 清 KADOKAWA  ¥1,700

42歳の「私」は14歳の息子・晴彦がいる香奈恵との結婚を機に旭ヶ丘に転居。そこは7年前に中2の少年によるクラスメイト無差別毒殺事件が起きた場所だったが、希望条件に合う家があったのだ。しかしすぐに晴彦の面影が犯人と似ている、犯人が近々社会復帰するらしいなど、不穏な噂が流れはじめ…。思春期の少年少女の絶望感が息苦しいほど伝わってくるが、最後にはひとすじの光が。

グリコ・森永事件を思い出す

『罪の声』

塩田武士 講談社 ¥1,650

京都で亡父から引き継いだテーラーを営む俊也は、遺品の中からカセットテープと黒革のノートを発見。テープを再生すると自分の声で録音がされており、ノートには【ギンガ】【萬堂】の文字が。毒入り菓子がばらまかれた「ギン萬事件」と父親に何か関係があるのか?  迷宮入りした大事件の真相を知りたい、でも父親が犯人とは思いたくない。そんな主人公の葛藤がせつなすぎる

実力派6年ぶりの長編は感動作

『ノースライト』

横山秀夫 新潮社 ¥1,800

一級建築士の青瀬は、施主・吉野のたっての願いで信濃追分に家を設計。しかし完成から4カ月後、誰も住んでいないと知らされて訪れてみると、2階に古ぼけた一脚の椅子があるだけだった。椅子を手がかりに吉野一家の行方を探す青瀬だったが、それは自分だけでなく父親の人生とも向き合うことにつながっていく。普通の人々の思いがけないルーツ、ドラマのような歴史に感涙!

犯人は私だったかもしれない

『坂の途中の家』

角田光代 朝日文庫 ¥720

夫と幼い娘と暮らす専業主婦の里沙子は、乳幼児虐待死事件の補充裁判員に。夫の実家に娘を預けて10日間裁判所に通うが、しだいに被告女性と自分との境界線があいまいになっていく。「私も虐待をし、それを周囲から疑われているのかも」と。事件について考えることで、夫や義母との微妙な力関係に気づく里沙子。簡単に解決できない彼女の苦しみを、他人事と思えない人は多いはず。

家族はミステリー

 

⑩「家族のかたち」について考える小説7選

血がつながらない親子、毒親、友人とのシェアハウスなど、現代ならではの家族像を小説に映し出した作品をご紹介。

多様化する家族を映し出す「家族のかたち」

多様化する家族を映し出す

相手の過去まで愛せるか?

『ある男』

平野啓一郎 文藝春秋 ¥1,600

弁護士の城戸は、かつて離婚調停の代理人を引き受けた里枝から奇妙な話を聞く。彼女の再婚相手で子供までもうけた大祐が死後別人と判明、つまり何者かがなりすましていたというのだ。事情を調べはじめた城戸は、謎の男の過去と彼の切実な願望を知ることになり……。ネット上で別人格になることが可能な今、「偽りの上に築いた信頼や愛は本物といえるのか」と問うているよう。

夫や姑への疑問が彼女を変えた?

『Red』

島本理生 中公文庫 ¥780

2歳の娘がいる塔子は、友人の結婚式でかつて付き合っていたバイト先の社長と再会。迷いながらも逢瀬を重ねたのは、濃厚な快楽の世界に引き込まれたからだった。非難されそうな塔子の行動だが、背後にはさまざまな家族の問題が。マザコンぎみの夫とのセックスレス、二世帯住宅の息苦しさ、親切と紙一重の姑の干渉……。最後に塔子が決めた家族のあり方に、共感する人は多いのでは。

産む葛藤と産めない葛藤

『朝が来る』

辻村深月 文春文庫 ¥700

長い不妊治療に終止符を打ち、生まれたばかりの男の子を養子として迎え入れた栗原清和・佐都子。朝斗と名づけたその子は幼稚園に行くまでに育ち、平穏な日々が続くかと思われたが、それを一変させたのは「朝斗を返してほしい」という実母からの電話だった。サスペンスタッチの作品だが、不妊治療や養子縁組について、さらにはそれらの当事者の心情についても考えさせられる内容。

多様化する家族のかたち

静かに胸を打つ本屋大賞受賞作

『そして、バトンは渡された』

瀬尾まいこ 文藝春秋 ¥1,600

17歳の森宮優子の前の苗字は泉ヶ原。その前は田中でその前は水戸。4回も変わったのは血のつながらない親の間をリレーされたからだが、周囲の期待(!?)に反して、優子は申し訳ないくらい不幸ではなかった。実親も血のつながらない親も手探りで“親がすべきこと”を考え、優子との関係を築いていく。大人になった彼女が登場するラストには、なぜリレーされたかの答えも。

異国暮らしで家族に転機が

『Masato』

岩城けい 集英社文庫 ¥500

真人は父親の転勤のため、家族4人でオーストラリアへ。小6だが小5に編入し、最初は英語で苦労するが、徐々に友だちが増えていく。しかしサッカーチームの夏合宿に参加するほどなじんだころには日本語があやしくなり、それを母親が嫌がったことから親子に葛藤が。少年の成長が母親との断絶を生むというジレンマがつらい。家族の決断が幸せにつながることを祈りたくなる!

身の危険はなかったけれど

『謎の毒親』

姫野カオルコ 新潮文庫 ¥670

ある人物への相談というかたちで、謎だらけだった両親を振り返る光世の物語。運動会で一等賞をとったのに父からは「くだらない」といわれ、母からは意味不明の言葉でどなられたこと。3人で出かけたレストランで置き去りにされたこと。オムニバス映画といっただけで土下座させられたこと。理解不能な親への対処法が示されるわけではないが、誰かに語ることの効用が感じられてほっとする。

ゆるさが楽しい現代版『細雪』

『あの家に暮らす四人の女』

三浦しをん 中公文庫 ¥680

東京・杉並の古ぼけた洋館で暮らすのは70歳近いのにお嬢さま気質の鶴代、ひとり娘で引きこもりぎみの刺繡作家・佐知(37)、その友人で保険会社のOL・雪乃(37)、雪乃の後輩・多恵美(27)。多恵美の元彼のストーカー騒ぎなどがありつつ楽しく暮らす4人を見守るのは、謎の老人・山田だった。役割分担などが現実的で、気の合う友人たちとこんな暮らしをしてみたくなる!

多様化する家族のかたち
取材・文/山本圭子 撮影協力/アワビーズ  ※エクラ2019年7月号掲載

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