これは歌舞伎か? はたまた映画か? 三谷幸喜が作・演出・監修「決して諦めない男」の物語に泣き笑う。シネマ歌舞伎『三谷かぶき 月光露針路日本 風雲児たち』

みなさん、シネマ歌舞伎を観たことはありますか? 文字通り、歌舞伎を映画館で楽しめるのが「シネマ歌舞伎」なのですが、舞台をそのまんま中継という、シンプルなものではないんです。映像ならではの演出、編集が加わり、新しい作品として楽しめるもの。しかも、10月2日から全国公開される新作は、2019年に三谷幸喜氏が作・演出を手掛けた演目を、三谷幸喜氏が映像の監修も務めるという、最高にかぶいている作品!! 

シネマ歌舞伎『三谷かぶき 月光露針路日本 風雲児たち』(つきあかりめざすふるさと ふうんじたち)

三谷幸喜氏が「大学生のころから大好き!」という、累計発行部数200万部をほこるみなもと太郎氏の歴史ギャグ漫画「風雲児たち」が原作。歴史の教科書で習った人物から授業ではスポットの当たらない人物まで描く人気連載ですが、歌舞伎として選ばれた人物とは? それは、大黒屋光太夫(だいこくや・こうだゆう)。ここでおお!と思った方もいらっしゃるはず。


10代将軍・徳川家治の時代、伊勢国から江戸へと出帆するものの8ヶ月漂流、ロシアへ流れ着き、そこから10年の時をかけて日本に帰ってきた最初の日本人です。原作を読み、また光太夫の日記を読み、「この光太夫のセリフを、歌舞伎でやりたい!」と三谷氏が松本幸四郎丈に語ったのが、歌舞伎化するきっかけだったそう。そして2019年6月に歌舞伎座にて上演、連日大盛況の舞台となりました。

映像化でさらにエンタータインメント性が際立った、目に焼き付くシーンはここ!

「伊勢に帰るのだ! 全員を連れて帰る!」という強い思いを胸に、漂着した小さな島からカムチャッカ半島、オホーツク、そしてサンクトペテルブルグまで。総移動距離なんと約2万㎞、そして10年という月日。三谷氏は断腸の思いで舞台より上演時間を30分以上カットしたそうですが、時に笑い、ハラハラドキドキし、最後に目頭が熱くなる、胸熱ロードムービーです。ほんの少しですが、見どころをご紹介。

1・こんなの見たことない! シベリアの雪原を、犬ぞりがひた走る!!

犬ぞりに乗った役者以上に目が釘づけになる、(おそらく)シベリアンハスキーたち。

動き回る様も可愛いんですよ。

このスケールは歌舞伎座だからこそ! そして紙吹雪の美しさはシネマ歌舞伎だからこそ! 

(右手前から時計回りに)新蔵(片岡愛之助)・九右衛門(坂東彌十郎)・小市(市川男女蔵)・大黒屋光太夫(松本幸四郎)・庄蔵(市川猿之助)・磯吉(市川染五郎)
(右手前から時計回りに)新蔵(片岡愛之助)・九右衛門(坂東彌十郎)・小市(市川男女蔵)・大黒屋光太夫(松本幸四郎)・磯吉(市川染五郎)・庄蔵(市川猿之助)

2・麗しすぎる! 白鸚さまのポチョムキン!

聖堂に響き渡るポチョムキンの声にゾクゾクッ! 光太夫との問答シーンでさらにドキドキッ!!

ここのカット割り、秀逸です。

(左)ポチョムキン(松本白鸚)・(右)大黒屋光太夫(松本幸四郎)
(左)ポチョムキン(松本白鸚)・(右)大黒屋光太夫(松本幸四郎)

3・威厳ある女帝エカテリーナを演じるは、伊佐山部長!いえ、猿之助丈です。

俳優祭ではありません。なにせ日本の地はいっさい出てこない、ロシアが舞台の歌舞伎ですから。

エカテリーナ2世の戴冠式の肖像画から飛び出てきたかのようなその姿、その声。乗組員・庄蔵との演じ分け、さすがです。八嶋智人さん演じる日本が大好きな博物学者キリル・ラックスマンの登場で物語は佳境に。

(右)大黒屋光太夫(松本幸四郎)・(左)女帝エカテリーナ(市川猿之助)・(奥)八嶋智人
(左)女帝エカテリーナ(市川猿之助)・(右)大黒屋光太夫(松本幸四郎)・(奥)キリル・ラックスマン(八嶋智人)

4・これぞ歌舞伎!な見せ場に、目頭が熱くなる!

光太夫とともにロシア大陸を横断してきた乗組員の新蔵と庄蔵。衣服も髪型もロシア風になじんでいる二人だけれど……。猿之助丈と愛之助丈のかけあいに、歌舞伎の名シーンが思い浮かぶ人も。

(左)新蔵(片岡愛之助)・(右)庄蔵(市川猿之助)
(左)新蔵(片岡愛之助)・(右)庄蔵(市川猿之助)

5・全編を貫くのは光太夫の熱い思い。決して消えなかった日本に帰るという希望の光。

歌舞伎も、シネマ歌舞伎も観たことがないという方にもぜひ!とおすすめしたい魅力が、光太夫という人物とその生き様にあるのだと感じたシーン。このシネマ歌舞伎に元気をもらえるのはきっと私だけではないはず。

(左)小市(市川男女蔵)・(中央)大黒屋幸太夫(松本幸四郎)・(右)磯吉(市川染五郎)
(左)小市(市川男女蔵)・(中央)大黒屋幸太夫(松本幸四郎)・(右)磯吉(市川染五郎)

9月24日、東京・丸の内ピカデリーで行われた完成披露舞台挨拶には三谷幸喜氏、松本幸四郎丈、片岡愛之助丈が登壇。試写前にぽろっとネタばらしになるコメントを三谷監督が言っては幸四郎丈が止めるなど、上映前から劇場は笑いに包まれました。

♦三谷氏「一切日本が出てこない歌舞伎ってあるの?」「あ、あるのね。ロシア語が出てくる歌舞伎は初めて? それは自慢してもいい?」

♦三谷氏「出演者の中でいちばん成長を感じたのは染五郎さん。どんどん良くなって、言えば言うほど吸収して、や~若いって素晴らしいなと思いましてね。やっぱりある年齢を過ぎるといくら言っても吸収しない……(幸四郎さん側を見て)、あ、あなたたちじゃないよ(笑)まだ大丈夫(笑)」

♦三谷氏「歌舞伎の方々は、お芝居がしっかりされている。型ができているから、何がすごいかというとアドリブがすごい。(普通の芝居だと)アドリブを言うことで空気が変わってなかなか戻らないもの。歌舞伎の方々は確たるものをもっているから、どんなに外れてもうま~く戻すんですよね。逆にすぐ戻る。それが素晴らしい。だから僕は歌舞伎に関してはアドリブ解禁!」

などなど、貴重なエピソードを聞き、ますますこのシネマ歌舞伎への期待が高まったのは言うまでもありません。三谷作品ファンの方、歌舞伎ファンの方、笑って泣ける映画を見たい方などなど、ぜひご注目ください!

シネマ歌舞伎『三谷かぶき 月光露針路日本 風雲児たち』

■原作  :みなもと太郎

■作・演出:三谷幸喜

出演者 :松本幸四郎 市川猿之助 片岡愛之助 八嶋智人 

      坂東新悟 大谷廣太郎 中村種之助 市川染五郎 市川弘太郎

      中村鶴松 片岡松之助 市川寿猿 澤村宗之助 松本錦吾

      市川男女蔵 市川高麗蔵 坂東竹三郎 坂東彌十郎 松本白鸚

      (語り)尾上松也

■公開日 :10月2日(金)より全国映画館にて

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