誰も傷つけない“令和”の笑いが魅力のマンガ3選【大人の心を救う「笑えるマンガ」】

新型コロナウイルスの先行きが見えない中、気持ちもふさぎぎみになる今日このごろ。そんなときにあえておすすめしたいのが「笑えるマンガ」。マンガに精通した編集者や書店員などの“目利き”が、誰も傷つけない“令和”の笑いがポイントの作品をピックアップ。

「マンガの目利き」はこの人たち!

編集者・ライター 山脇麻生

マンガ誌編集者を経てフリー。コミック評やマンガ家インタビューを手がける。初めて読んだマンガ誌は幼稚園のときに買ってもらった『ちゃお』。小学生のとき、友人の家で読んだ『火の鳥』で大人マンガに開眼。

書店員 山崎陽子

紀伊國屋書店新宿本店のコミック担当5年目。『週刊少年ジャンプ』の『封神演義』以来、少年・青年向けを中心に愛読。新刊が楽しみなのは『ダブル』。好きな作品が多すぎて年間ランキングが決められないのが悩み。

ライター 吉川明子

小学生のころに『りぼん』や『週刊少年ジャンプ』でマンガにハマって○十年。個人的な趣味だったが、最近は各媒体でマンガ関係の執筆も。聖典は『ジョジョの奇妙な冒険』、注目作は『紛争でしたら八田まで』。

「日々の暮らし」を描いたマンガ《誰も傷つけない、“令和”の笑い》

1.腐女子の尊い人生讃歌!

つづ井『裸一貫! つづ井さん』

『裸一貫! つづ井さん』

つづ井 文藝春秋 既刊2巻 各¥950
『裸一貫! つづ井さん』内容
腐女子たちをユーモラスに描くコミックエッセイ。「腐女子の生態を描いた作品は以前にもありましたが、解釈の違いをめぐってバトるとか、自虐に紐づいたヒリヒリする系の笑いではなく、推しを全力で応援し、別の推しを応援する友人の心意気も尊重する姿が楽しくも尊い。平和な笑いが読後感をハッピーにしてくれます」(山脇)。

2.中3男子とヤクザの奇妙な交流を描く

和山やま『カラオケ行こ!』

『カラオケ行こ!』

和山やま KADOKAWA ¥700
『カラオケ行こ!』内容
合唱部部長の中学生・聡実が、ヤクザの狂児に歌唱指導を頼まれて─。「ギャップからくる可笑(おか)しみが隅々まで行き届いた作品。切実な思いを抱えた聡実の十代らしいとまどいと、人の懐にするりと入ってくる不思議な魅力の狂児のかけ合いが味わい深く……。おもしろいうえにひと言ひと言にふたりの人間性がにじんでいるんですよね」(山脇)。

3.最高にくだらない教師の日常がいい

和山やま『女の園の星』

『女の園の星』

和山やま 祥伝社 既刊1巻 ¥680
『女の園の星』内容
女子校の国語教師・星先生と生徒たちのなんでもない日常なのに、なぜか爆笑必至! 「先生と生徒の淡々としたやりとりにどうしてこんなに笑えてしまうのか不思議に思っていると、じわ~っと心に浸食してきて気づいたら夢中に。ちょっとずれながら進む会話がくせになります。発売直後から売れ行きの勢いが止まりません」(山崎)。

「笑えるマンガ」事情《1》

山脇麻生さんに聞きました!

和山やまさんは今どきの笑いを描く最注目の作家。

お笑い界では第七世代が台頭し、安易な容姿いじりなどに走らない“誰も傷つけない笑い”が目立ってきた、と山脇さん。「ぺこぱの全肯定ツッコミはその最たる例ですが、令和のお笑い界で起きているこのパラダイムシフトはマンガ界にも起きていると思います。その筆頭が和山やまさんです」

’19年から’20年に立て続けに発売された3冊の単行本はいずれも大ヒットに。

「特異なキャラクターが出てくるわけではなく、まじめな人のちょっとしたこだわりやギャップでくすりと笑わせる。今までならスルーされていたような些細なことを日常からすくい取り、笑いに昇華させる手腕はお見事。それでいて品もあるので、大人が読んでも安心感があるんですよね」

仕事や家族のこと、日々の暮らしに追われて疲れぎみの大人の女性にこそ、笑えるマンガは欠かせないという山脇さん。

「疲れぎみでも柔らかな笑いを提供してくれるので、もはやサプリのようです」

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