【山本容子さん・インタビュー後編】山本容子を形づくる「装丁」という仕事

エクラ2024年1月号の付録カレンダーは、銅版画家・山本容子さんがこれまで携わった装画の中から「カントリーライフ」をテーマに13点を厳選。インタビュー前後編の後編では、山本さんが携わった“これまでの仕事”について振り返ってもらった。

山本容子にぴったりの、自由でユニークな装丁という仕事

カレンダーの13枚の絵(表紙を含む)は、山本容子さんが今までに制作した本の装丁から厳選されたもの。

「これもコロナ禍の副産物で、時間の余裕があったものですから、今までの自分の仕事を振り返ってみたんです。’25年で銅版画の仕事を始めて50年になる、というタイミングでもあるし。自分で自分の回顧展をするという、不思議な時間(笑)」

その中で改めて、装丁という仕事が画家・山本容子を形づくる大きな要素だったことに、気がついた。

「人はこれをイラストレーションとかデザインとか挿絵とか、いろんなことをいうけれど、なんと呼ばれてもいいんです。私にとって装丁は、文章を読み、そこからイメージを広げ、ひとつの絵を描くこと。物語と私自身が対等に呼応する、こんなに自由でオリジナリティが発揮できるおもしろい仕事はないなって。これはやっぱり、山本容子という人間にぴったりの仕事だな、と(笑)」

そもそもは27歳のとき、自発的に描いたのが、トルーマン・カポーティのシリーズ。短編を読み、30点を描き上げた。その展覧会がきっかけになって約10年後、村上春樹さんが翻訳したカポーティの『おじいさんの思い出』の絵を、山本さんが担当することになる。

高い評価が集まり、その後次々と、書籍がらみの仕事が入るようになり。

「32歳くらいまで、私は売れない新人画家でしたから、仕事を断るなんてとんでもない。どんな依頼も自分への挑戦だと受け止めて、自分なら何が描けるかを模索して、描き続けてきました」

それ以前には装丁の仕事を、画家の本業とは見なさない、そんな風潮もあったとか。

「ありました、ありました、ヒエラルキーがね! 洋画家が一番偉い、あるいは日本画家が偉い、その中でも女性は閨秀(けいしゅう)画家と呼ばれて一段下に、ひとくくりにされて。装丁なんて挿絵画家のすることだって。すでにヨーロッパでは詩とアートが合体したアーティストブックなんかも誕生していたから、時代遅れ。そういう世界にNOをいいたかったのね」

この先も何か私、突拍子もないことをしそうで、それが楽しみなの!

文学とアートを自由に行き来するアーティストとして、これからも、山本容子は楽しんで生きていく。ユニークで自由で創造力あふれる、カントリーライフを。

「来年はもう72歳になるのかな。でもね、この年になると、とぎれていた時間が、ああ、またつながった、と思う瞬間があるの。久しぶりに旅行したヨーロッパで、昔と同じホテルに泊まったら、同じフロント係がいたり。村上春樹さんがまた一緒に仕事をしようと声をかけてくださったり。38年ぶり、なのかな。そこで私、自分は何を描くんだろう? また突拍子もないことをやるんじゃないかって、今すごく、ワクワクしているの!」

山本さんが装丁した数々の本 たち。日本の小説、エッセイ、 海外の作品まで、さまざまな タッチと色彩、作風が、書籍 の魅力を増幅している。

山本さんが装丁した数々の本たち。日本の小説、エッセイ、海外の作品まで、さまざまなタッチと色彩、作風が、書籍の魅力を増幅している。「一冊の本から、私が何に感動し、何を見つけたのか。それが一枚の絵に結晶しているんです。こんなに自由でおもしろくて、オリジナリティのある仕事はほかにありません!」。作品と書籍の詳細については2024年カレンダーをチェック。

2024年カレンダー「 Country Life」

2024年カレンダー「 Country Life」

これまで携わった装画の中から「カントリーライフ」をテーマに13点(表紙を含む)を厳選。本を包み込む作品それぞれは、文章からインスパイアされた山本容子さんの独特の世界。あちらこちらに、愛犬ルカのデッサンも登場する。

カレンダー掲載の銅版画をエクラプレミアム通販で購入できます!

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1988年~ 2009年までの山本容子さんの装丁の仕事の中から、「カントリーライフ」をテーマに選んだ2024年のエクラ・カレンダー。掲載された作品のうち、12点の銅版画をエクラプレミアム通販で数量限定で販売します。暮らしに彩りを添えてくれる美しい作品をぜひお手もとに。
(作品上から)『妊娠カレンダー』¥245,850・『ザ・シンギング THE SINGING』¥124,850・『おしゃべりな時間』¥157,850/エクラプレミアム通販 すべてソフトグランド・エッチング、手彩色

『country life』¥135,850

『country life』¥135,850

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Profile
山本 容子

山本 容子

やまもと ようこ●’52年埼玉県生まれ。’78年京都市立芸術大学西洋画専攻科修了。都会的で洒脱な線描と色彩で、独自の版画の世界を確立。本の装丁、挿画からパブリック・アートまで幅広く手がける。近年は絵画に音楽や詩を融合させ、ジャンルを超えたコラボレーションも。2024年もさまざまなプロジェクトが進行予定。
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