50代から自由になる!心を解放して自分らしい生き方を!
あなたは今、自由ですか?のびのびと自分の人生を生きていますか?幾多の経験を乗り越えて迎えた50代は、人生後半に向かって再スタートをきる時期。家庭、仕事、人間関係、そして夢。悩み、惑いながらも前に進もうとする同世代の証言から、私たちが求める自由のかたち、心を解放するヒントを探る。
あなたは今、自由ですか?Jマダムにアンケート!
Q1.今、自分の人生が「自由である」と感じていますか?
エクラ読者148人が寄せたアンケートの回答より。家庭や仕事が一段落してひと息つける時期ながら、いまだ手放せないあれこれ、これからの日々への不安もわいて……。期待と不安が入り混じる、複雑な心境がうかがえる
「Yes」の人のコメント
子供が社会人になり、母親を卒業したため。長らく「母はこうあるべき」と思って生きてきた気がします。(54歳・講師)
もともとシングルで自由でしたが、両親が立て続けに他界し、看取(みと)りを終えた今、さらに自由になりました。先送りしていたことをボチボチ再計画しているところ。(53歳・自営業)
経済的な自立が自由の源。好きなものが手に入るからではなく、夢や希望をかなえるためにどうしたらいいかを自分で考え、決断できるという意味で。(52歳・会社経営)
「No」の人のコメント
いまだにルッキズムに支配されている。ダイエットがやめられないし、買い物にも依存してしまう。(52歳・公務員)
妻の立場に疲れた。何をするにも夫の顔色を気にしている自分がいやに。(53歳・主婦)
会社に所属し働いているかぎり、自由にはなれないと感じます。決まった時間に出勤して定時まで働く。場所もオフィス一択。休暇はGW、お盆、年末年始の一番混雑する時期のみ。有休は取得できるが、同僚の手前、何日も連続してとれない。(47歳・会社員)
Q2.「自由に生きている」と思う憧れの女性は?
石田ゆり子
杏
小泉今日子
夏木マリ
天海祐希
桃井かおり
樹木希林
YOU
冨永 愛
中村江里子
伊達公子
アンジェリーナ・ジョリー
ココ・シャネル
大草直子
自分の娘
凛とした姿、意志の強さ、落ち着きを備えたマダムの風格……、女性が憧れる自立した女性に加え、ゆるっと柔らかな雰囲気を備えた人にも人気が。さらに、自分の娘を含め年下世代をあげる声も多く、理想のイメージはさらに多様に
Q3.あなたの心が解放されるのはどんなとき?
始めたばかりの家庭菜園。マンション暮らしなので本当にささやかなものですが、植物の世話をしている間は心が無になります。(49歳・パート)
子育てを終えて、ブックカフェで仕事をすることになりました。若いスタッフに混じって働いているときは、これまでの社会経験と主婦経験の両方が生かされ、楽しくてしかたがありません。自分の人生にこんなときがくるなんて!(55歳・ジョブスタッフ)
ピアノを弾いているとき。曲想にもよりますが、心の平安を求めて内省的になることが多く、そのことに安らぎを覚えます。どんなときも感情のすべてを受け入れてくれるピアノは、人生の伴侶です。(58歳・主婦)
ピラティスをやっている間は体と真剣に向き合い、没頭できます。体が変わっていくのも、単純にうれしい。(46歳・会社員)
泊まりがけで行く推し活。留守番の家族のための食事の準備などは億劫(おっくう)ですが、家を出た瞬間からすべてを忘れて推し活に集中。夜ものんびりパックをしながらライブの余韻に浸ったりと、ひと時、開放感を満喫しています。(53歳・主婦)
50歳でフリーランスになった稲垣えみ子さんの生き方
50歳で会社員生活に終止符。人生後半は、肩書きをもたずに生きていく【稲垣えみ子さん(元新聞記者)】
「“もうひと花”なんて必要ない。ここまで来ただけで、十分咲いているんです」
満足を自らの手でつくり出す。家事は唯一にして最高の娯楽
記者時代からトレードマークのアフロヘア。肌になじんだ服と20年以上メンテナンスしながら履いているヒール靴で、稲垣えみ子さんはのんびりと前を歩いていく。論説委員まで務めた大手新聞社を50歳でやめた顚末を記した『魂の退社』がベストセラーとなって7年。東日本大震災を機に電気の使用や身のまわりの道具を減らし、シンプルを極めたライフスタイルをつづった著書は幅広い世代から支持を得、メディアやイベントに引っぱりだこである。
「いやいや、会社をやめてすごく活躍してますねといわれると心外で。だって基本、私の人生、下りてくモードに入ってますから。確かに今の生活にすごく満足していますが、それは本を書かせてもらっているからとかテレビに出られるからとかではなく、その全部がなくなっても大丈夫だと思えているからなんです」
なぜ大丈夫なのか? それは「自分の世話が自分でできているから」と稲垣さん。自分の世話、すなわち家事を、である。近著『家事か地獄か』で示した、日々の家事こそが幸せの自給源であるという信条には、多くの人が目から鱗を落とすのではないだろうか。
「一番好きなのはぞうきんがけ。ひとり暮らしの私の場合、床をふいたぞうきんが真っ黒になっても、それは100%自分の汚れじゃないですか。ふけば心の汚れも一緒に落とせた気がするし、リセットしてまた新しい一日を気持ちよく始められる。何のお金も動いていないのに、これって絶対に奪われることのない、最高の娯楽ですよね」
部屋をきれいにして、一汁一菜の食事を作り、最低限の衣服を整える。家族で暮らしている人にも「ひとり一家事、自分のことは自分でをルールに」と稲垣さんはいう。ことに家庭のある女性にとって、長く家族の分まで負担してきた家事は重荷でもあった。しかし、家族から手が離れ自分にフォーカスできる年代が訪れた今、逆に家事は自分を解放する力になりうると語る。
「家がそこそこ片づいていて、食べたいものを作って食べられて、着るものが適量ある。それって、幸せの基本じゃないですか。多くの人がお金を注ぎ込んでより多くのすばらしいものを手に入れようとしているけれど、毎日の生活が満たされた状態は、自分の力で簡単につくり出せるんです」
自分が得てきたものを、そろそろ世の中に返す時期
どこまで評価されたいのか。いつまで豊かさを求め続けるのか。大組織で働きながら胸にそんな疑問をくすぶらせ、50歳で思いきってレールを降りた稲垣さん。以降、一生肩書きをもたないと心に決めた。
「ただ生きているだけで十分満足できる、それが目標です。なぜかというと、人間誰でも最後はただ生きているだけの存在になるから。ピンピンコロリなんて、100人にひとりがなれるかなれないかの幻想ですよ。気力、体力を失い、敗北感と悲しみの中で死んでいく、そんな終わり方はいやだなって」
退社してほどなく、認知症の母を看取ったことも、大きなできごとだった。
「自分だっていつかこうなるんだと考えると、余分な物は増やさず、年をとるごとに暮らしを小さくしていく。家事をお守りにして、それをベースに暮らし方も収入も身の丈で設計していけば、この先もそんなに怖がることはないんじゃないかと思えました」
家事ができる自分、それを信じられたら、目の前に新しい自由が開ける。それでもまだ「もっと」を求めてしまう人は、「“自分にはこれができる”の“これ”を大きくとらえすぎているのでは?」と稲垣さんはいう。
「すごい特技をもつとか、能力を発揮して人に認められるとか、目標が過大なんだと思います。よく“まだ若いんだから、もうひと花”とかいいますが、皆さん、いろんな困難を経験しながら半世紀を生きてきたんだから、もう立派に咲いてるんですよ! 満足できないというより、満足しちゃいけないと思っているんじゃないでしょうか。常に可能性を追い求めなくてはという世のプレッシャーは、若いときはいいかもしれないけど、後半戦の人生には、ちょっと合わない」
もうひと花というなら、自らが咲くのではなくまわりに花を咲かせる人になるべきでは、と稲垣さん。解き放たれての坂の下り方は、きっとあるのだ。
「経験やスキルは自分でがんばって身につけたものでもあるけれど、実はいろんな人とのかかわりの中で育ってきたもの。だったら、これからは世間に返していくことを考えたらどうでしょう。自分が自分がと思っているうちは、まわりはライバルばかり。他人の幸せが自分の幸せ、転換するのはそこじゃないでしょうか? 肩書きはいらないけど、ひとつ目ざすとしたら“暇人”になりたい。“雨ニモマケズ”じゃないですが、助けを必要としている人がいたら“いつでも行くよ”といえるように。そんなことをしながらゼロになって死んでいく、それが自分としては現実的だし、正解に近いと思っているんです」
Q.あなたにとって自由とは?
A.自分で自分の世話ができていること。ただ生きているだけで満たされる、そんな実感をお守りにすれば、これからなんだってできると思う。
『家事か地獄か 最期まですっくと生き抜く唯一の選択』
稲垣えみ子
マガジンハウス ¥1,650
“楽しく生きるって、こんなに単純なことだったの?”。道具を使わず、多くを求めず、お金をかけず実践する「ラク家事」は「自由を奪うものではなく、むしろ自由への扉を開けるもの」と稲垣さん。ノウハウも満載。
Profile
稲垣えみ子
いながき えみこ●’65年、愛知県生まれ。’16年に朝日新聞社を退社しフリーランスに。『もうレシピ本はいらない』(マガジンハウス)、『一人飲みで生きていく』(朝日出版社)、『老後とピアノ』(ポプラ社)ほか著書多数。
両親を見送り、50代でパリ移住を果たした猫沢エミさん
両親を見送り、やっと解かれた家族の呪縛。50代で念願だったパリ移住を果たす【猫沢エミさん(ミュージシャン、文筆家)】
「できれば、別れる前に親を許そう。これから先、清々と自分を生きていくために」
一瞬一瞬に真摯に向き合えば目ざすところへたどりつける
ずいぶん遠いところまできた──50歳という節目の年代を迎えて、そう実感する人も多いはず。そして、来し方を振り返って改めてクローズアップされるのが、生まれ育った家庭や家族のことだ。30代で渡仏し、パリの空気を伝える著書で人気を集めた猫沢エミさんもそんなひとり。’22年に再移住しパートナーと2匹の猫と暮らす50代の今、胸に去来する感慨は、常とは少し異なるものかもしれない。
「今は、凪ですね。自分の人生に、こんな穏やかな時間が訪れるなんて」
40代までに体験した人生の波乱、そのほとんどは家族に由来していた。この秋出版された『猫沢家の一族』につづられた家族の歴史は、フィクションもかくやというほどの争乱の連続。家庭内に起こりうるあらゆる問題がパッチワークされた一大サーガである。
「幼いころからよその家に泊まることを禁じられていて、ほかの家庭がどんなものか、知る機会がなかったんですよ。でもどうやらうちが普通ではないらしいということは、薄々勘づいていて」
生家は、もとは裕福な呉服店だった。精神バランスをくずしながらも根は善良な祖父と、お坊ちゃん育ちで奔放な父、そこへ嫁いだ苦労知らずの母。幼少期はかなりユニークという程度だった環境は、バブル崩壊後、父の事業が破綻したことで一気に暗転する。しだいに金の亡者と化していく両親を前に、猫沢さんは「この家から正攻法で早く出ていくにはどうしたらいいかと、とにかく考えた」という。9歳で目覚めた音楽の道を進もうとするも、高校受験には間に合わず、大学進学でようやく上京。だが卒業後にミュージシャンとして身を立てても、父と母の虚言と妄動に振り回され、その呪縛は常に影のようにつきまとった。
「母はもともと博愛精神があり、グローバルな見方もできた人。でも、嫁いだ家の狂った金銭感覚の中でモラルがおかしくなって、最後は父とともに子供たちからお金を巻き上げるだけの人になってしまった。離婚させようとしたこともありましたが、結局はもとに戻ってしまう。親であっても、そこは男と女だったんですよね」
実は猫沢さんは父の前妻の娘であり、育ての母とは血のつながりがない。そのことも一因となってか「子供のころからいつも近くにもうひとりの自分がいて、苦しんだりがんばったりする自分を俯瞰で見ていた気がする」という。20代、30代、そして40代と、自身の生きる道を模索しつづけながらエスカレートする両親の行状に対処できたのは、自身を客観視する姿勢が備わっていたからだろう。パリで再び暮らす夢をかなえることも、支えだった。
「ずっと耐えてたわけでもないんです。それなりに楽しんで生きてきて、一瞬一瞬、やらなきゃいけないことに向き合ってきた。そうしていればいつか必ず自分が行きたいところにたどりつけるはずだと。苦しさの渦中にあるときは、信じるのがむずかしかったんですけど」
いいことも悪いことも永遠には続かない
人生修業のクライマックスは40代の終わり、両親がほぼ同時期に、そろって末期がんの宣告を受けたこと。その病の受容の仕方には、はっきりと違いが表れていたという。「宣告の際こそ暴れましたが、父はいっさいの治療を拒否して2年間平穏に暮らし、最期を迎えました。一方、母は一瞬しおらしくなったけれども、最後まで混乱の中にいた。それは、彼女の人生の哲学のなさを表していたんだと思います。最後の最後は“幸せだった”といいましたが、本気じゃないだろうなと。でも、そうであっても、人はそういって死んでいくべきなんですよね」
親は個として気ままに生きる。そして子供も、生まれた瞬間から一個の人──それが、猫沢家から受けた最大の教え。「多少変な人に会っても、うちの家族よりはぜんぜん普通。キャパが広がったのはよかったかもしれないですね」と猫沢さんが笑えることも、環境が育んだ才能のひとつだろう。
「もちろん、本に書いたことは氷山の一角で、他人と共有できない家族の悩みは誰もが抱えてますよね。笑えないくらいだったら、縁は切っちゃえばいいと思います。ただ、できれば親のことは生きている間に許したほうがいいんじゃないかな。親のためじゃなく、この先の人生を清々と生きていくために。自分のために、許すんです」
いいことも悪いことも永遠には続かない。だから一瞬一瞬を精一杯生き、夢を手放さずにいれば「人生は変わるし、変えられる」と猫沢さん。この取材の少し前には、パリで窃盗にあうという災難も経験した。
「たぶん“乗り越えてさらに強くなれ”っていう両親からの贈り物だと思いますよ(笑)。そもそも、フランスという国自体が猫沢家以上に不条理に満ちたところ。でも、一歩外に出れば、誰かが愛し合ったりケンカしたりしていて、
歌う人がいれば物乞いする人もいる。そういう人間の嘘のなさを全面的に容認する社会には息苦しさがなくて、それが私には大事なこと。小さな猫沢家を出て大きな猫沢家に移り住んだ……そんな感じもしますけどね」
Q.あなたにとって自由とは?
A.喜びも怒りも悲しみも、自由に表現できること。嘘のない感情を、いつでも全面的に容認したい。
『猫沢家の一族』
猫沢エミ
集英社 ¥1,650
愛は確かにあったのだ。あんな家でも、あんな親でも――親の姿、家族のかたち、そして不屈の魂の歩みを、笑いという愛情にくるんでつづった半生の記。「ぜひ行間に自分の家族を重ねて読んでいただけたら」と猫沢さん。
Profile
猫沢エミ
ねこざわ えみ●’70年、福島県生まれ。’96年に歌手デビュー。音楽、執筆活動に加え、フランス語教室「にゃんフラ」を主宰。初の訳書『料理は子どもの遊びです』(ミシェル・オリヴェ著 河出書房新社)も発売中。
始めるのに”もう遅すぎる”はない。50代で「天命」を見つけた佐東亜耶さん
できることは、きっとある。自身の子育てを終えたのち、子供たちへの支援活動を「天命」に【佐東亜耶さん(一般社団法人「泉鳳」「BEAUDOUBLE」代表理事)】
「大義も、資格の有無も関係ない。めぐりあってしまったからには、行動あるのみ」
児童支援に週末里親。すべては偶然の出会いから
人生で自分が本当にやるべきことは何なのか、どうやったら見つけられるのか……そんな50代の課題を軽やかにクリアし、実践しつづける人がいる。
東京・南青山でマンモセラピーやアーユルヴェーダなど体へのエシカルなアプローチを試みる会員制サロンを運営する佐東亜耶さん。そのもうひとつの顔が、社会的養護を必要とする子供や若者とかかわる複数のプロジェクトの主宰者だ。そのひとつである「BEAUDOUBLE(ビューダブル)」は、児童養護施設で暮らす子供たちや里親家族などにヘアスタイリングを提供する取り組み。都内の人気ヘアサロン「TWIGGY.」「uka」などの協力のもと、’18年から活動を開始した。
「自由にヘアサロンに行けず、好きな髪型にすることがむずかしい子供たちがいることを知って、何かできないかと思って。おしゃれになることで子供たちが前向きになってくれるのがうれしいし、美容だけでなく世の中をもっとよくしたいというマインドをもつ人たちと触れ合えるのも喜びです」
ほかにも、施設に映画のチケットを配布したり、哲学やマナーを学ぶ「まなびのじかん」を開催したり。50代の毎日、縦横無尽に行う社会活動はすべて「出会いがあってのこと」と佐東さん。疲れも見せず、笑顔をほころばせる。
舞台俳優として活動ののち、結婚。専業主婦として家庭にあったが、やがて授かった長男が未熟児で生まれた。「彼のケアをするためにベビーマッサージを学び、そのうえで臨床を経験する必要があって、結果的にそれがサロンの始まりになりました。流れでカウンセリングやヨガ、アーユルヴェーダを学んで、資格をとって……起業したいという計画があったわけではなかったんですが、とにかく次々と目の前に現れる課題に応えるために、必死で」
カフェの営業、オーガニック製の肌着の輸入と、家の中だけに向いていた視野は、しだいに大きく広がった。
子育てと事業を並行して行いながらの30代、40代。そして、大きな転機が佐東さんに訪れる。海外での児童福祉活動にかかわった流れで日本の児童養護施設を訪れたのは、50代を間近に控えたころ。その際の心境を「とにかくショックでした」と振り返る。
「支援や養護を必要とする子供たちがこの国に4万2千人以上もいるということを、恥ずかしながら初めて知ったんです。これはなんとかしなければと思い、施設にコンタクトをとろうとしたのですが……」
海外と比べると日本の施設は外部に対して閉鎖的で、コンタクトをとるのすら難儀する状況。しかし佐東さんの意志は固く、粘り強くアプローチを重ねた末に、扉を開いてくれる施設がぽつぽつと見つかった。
「施設に通って子供たちに会い、その背景の物語を聞いて、最初は泣いてばかりでした。でも、子供たち一人ひとりからは、彼らの中に確かにある可能性を感じられた。誰にも生まれてきた意味は必ずあるんだと思えたんです。この子たち一人ひとりの未来のために、できることはきっとあるはずだと。最初から大義をもっていたわけではありませんが、縁あって出会ったのだから……本当に、私にとってはすべてがそんなふうでした」
できることを考え、賛同する仲間を増やし、アクションを起こす。ちょうど長男が独立したタイミングもあり、佐東さんは「魂に引きずられるように」本格的に児童福祉活動に専心。プライベートでは、東京都の短期里親制度であるフレンドホーム制度に賛同し、登録。家族の理解を得て、’18年からは子供たちを自宅で預かりともに過ごす、週末里親としても活動している。
ひとつしかない体を慈しみ、自分をほめることを忘れずに
ひとつクリアすればまたひとつ、と心のままに突き進んだ日々。「子育ての期間に家を空けることになったり、うまくいかなかった仕事もあったり。失敗もたくさん、というか、ほとんどが失敗、反省ばかりです」と苦笑する。「そもそも、どれひとつとして誰からも頼まれたものではないんですよね。でも、誰かがいってるからやってみようというような、頭で得た情報ではなく、本当に心からやりたいことが見つかったときには、体からわき上がるような……魂が喜んでいるような感じがする。それこそが天命、命をかけてするべきことなんじゃないでしょうか。私は、それに出会ってしまったので」
50代からでも、自分の心を羽ばたかせるものに出会うことはできるでしょうか──佐東さんにたずねると、「もちろん」と、力強いうなずきが返ってきた。「何を始めるにしても、遅すぎることはないと思います。ただ、どんなときも体は大事に。一日の間の短い時間でいいから体を慈しんで、一日1回は自分をほめてください。他人からほめられるより、実は自分で自分を認められるほうが、ずっとうれしいんですよ」
Q.あなたにとって自由とは?
A.「何かできるはず」と信じ、行動できること。魂が喜んでいると感じられるから忙しさや多少の苦労も平気です。
「わき上がるような喜びを感じられる何かが、きっとあるはず。始めるのに”もう遅すぎる”はないと思います」
Profile
佐東亜耶
さとう あや●’66年、北海道生まれ。’08年に「LEELA Corporation」を設立し、’10年にサロンを開設。「BEAUDOUBLE」、そして一般社団法人泉鳳が運営する「まなびのじかん」の詳細は、各法人のwebサイトで。
なぜ、50代になった今、自由を意識するのか?
私たちの“自由”に対する意識は、実は時代背景とも深い関係が? アラフィ―が生きてきた時代を検証! 同年代識者とともに歩みを振り返りつつ、来るべき未来像に迫る、団塊ジュニア的クロニクル。
2023年で50歳になった人の主なできごと
(※太字は’73年生まれの有名人)
【’73】誕生
・日本円⇔米ドルの為替レートが固定相場制から変動相場制に
・映画『燃えよドラゴン』公開
・第4次中東戦争勃発、オイルショック
【’80】小学校〜中学校時代
・『なんとなく、クリスタル』がベストセラーに(1980年)
・「ファミコン」発売(1983年)
・東京ディズニーランド開園(1983年)
・バブル時代に突入(1985年~)
・『夕やけニャンニャン』放送開始(1985年)
・男女雇用機会均等法成立(1985年)
・女子大生ブーム
・DCブランド隆盛
・アイドルブーム
・バンドブーム
・昭和天皇崩御。平成へ改元(1989年)
・消費税導入(1989年)
’80年代、バブル華やかなりしころも小中学生にとってはさほど恩恵なし
【’90】高校〜大学・社会人に
・宮沢りえ写真集『Santa Fe』発売(1991年)
・トレンディドラマが全盛期を迎える
・バブル崩壊
・女子高生ブーム
・皇太子徳仁親王・小和田雅子さんご成婚(1993年)
・レインボーブリッジ開通(1993年)
・阪神・淡路大震災(1995年)
・地下鉄サリン事件(1995年)
・ドラマ『踊る大捜査線』放送(1997年)
・「モーニング娘。」メジャーデビュー(1998年)
・「ユニクロ」フリースブーム(1998年~)
・携帯電話・パソコンの普及
・育児介護休業法施行(1999年)
・「iモード」サービス開始(1999年~)
中澤裕子が24歳でアイドルデビュー。27歳までの現役続行も当時は画期的だった
深津絵里演じる『踊る大捜査線』の女性刑事、恩田すみれ。カップ麵をすする描写に、働く女子の哀愁がにじむ
【’00】30代に突入
・介護保険制度が始まる(2000年)
・アメリカ同時多発テロ事件(2001年)
・イチローがマリナーズに移籍(2001年)
・SMAP『世界に一つだけの花』大ヒット(2003年)
・地上デジタルテレビ放送開始(2003年~)
・「mixi」サービス開始(2004年~)
・「GU」1号店オープン(2006年)
・ライブドア事件勃発(2006年)
・「Twitter」サービス開始(2006年~)
・ドラマ『ハケンの品格』ヒット(2007年)
・「YouTube」日本語に対応(2007年~)
・「Facebook」スタート(2008年~)
・「iPhone 3G」発売、スマートフォン時代へ(2008年~)
・LOHASブームが起こる
『ハケンの品格』の大前春子は団塊ジュニアのロールモデル⁉ この作品で篠原涼子は働く同世代女子の代表に
【’10】不惑の40代へ
・「Instagram」サービス開始。SNS全盛時代に(2010年~)
・東日本大震災(2011年)
・「アベノミクス」が提唱される(2012年)
・「メルカリ」始まる(2013年)
・ドラマ『半沢直樹』(主演・堺雅人)が大ヒット(2013年)
・柴崎友香『春の庭』が芥川賞に(2014年)
・国連サミットで「持続可能な開発目標(SDGs)」採択(2015年)
・「TikTok」日本でサービス開始(2017年~)
・#MeToo運動、世界に広がる(2017年~)
・働き方改革関連法成立(2018年)
・#KuTooが新語・流行語大賞トップ10入り(2019年)
・令和に改元(2019年)
【’20】そして天命を…知る?
・コロナショック(2020年~)
・リモートワーク、オンライン会議が広まる(2020年~)
・東京オリンピック、延期を経て開催(2021年)
・ジェンダーレスファッションの流行
・LGBT理解増進法施行(2023年)
・Twitterが「X」に(2023年)
「失われた30年」で真に失われたのは、自信
社会で、家庭でそれなりの役割を果たしてきて、50代、これからはもっと自由に……と思いながら、ふと立ち止まる。私たち、そんなに不自由だったんだっけ?
「自分たちの親世代と比較すれば、朝方までNetflix見てたりする今の生活は、めちゃくちゃ自由だと思いますよ」というのは、カルチャーやメディアを独自の視点で俯瞰する速水健朗さん。最新著書『1973年に生まれて 団塊ジュニア世代の半世紀』では、自身の半生で体験、目にした社会の事象をザッピングしながら、団塊ジュニア、ロスト・ジェネレーション世代の本質に迫った。
「働き方も家族観も、自分たちの親のころとは比べものにならないほど自由。でも決定的に違うのは、僕らの世代は世に出た当初からずっと不況で苦労してきたということです。しかもその自覚がずっと薄く、気づいたのは’00年代に入ってから。非正規雇用や低賃金が知られるようになり、ロスジェネ、失われた30年といった名前がつけられてようやく“僕ら、不遇だったらしいよ?”と。人口も多いし、なんだか自分たちのせいで社会が悪くなったような気がしていて」
悪者ではないにせよ、前後の世代と比べて影が薄かったこともしみじみ思い出される。中高時代はバブル景気と女子大生ブームを遠くに眺め、大学生になったらコギャル化した女子高生に注目が。
「時代にのりきれなかったという感覚は、女性のほうがより強いんじゃないかと思います。男女雇用機会均等法で注目されたバブル世代は女性活躍の象徴の時代だし、自分たちより若い年代は女子高生のころからずっとキラキラしている。時代の中心になったことがなく、ずっと日陰にいる感じ」
羽ばたけなかった不全感が、拭い去れない不自由さの原因なのか……。そして、速水さんにとって世代的不遇を決定的に感じたできごとが、’06年のライブドアショックによる時代の寵児・堀江貴文(’72年生まれ)の失脚だった。
「’90年代に押し寄せた、ITやドットコムバブルといった新しい波。それにのった新興企業が、伝統や権威をかざす大企業に噛みついて敗北した。自分たちも30歳を過ぎてそれなりに社会に定着したと思っていたけれど、結局、日本を変えるにはいたらなかった。それを突きつけられた事件でした」
ただし、そんな中でも時代のヒロインとして輝いた’73年生まれは確かにいたと、速水さんは続ける。
「国民的大ヒットとなったドラマ『踊る大捜査線』のヒロインは、’73年生まれの深津絵里。彼女が演じた恩田すみれは、女性刑事でありながらOLに近く、旧態然とした会社で働く女性を象徴する役柄でした。’00年代には、やはり’73年生まれの篠原涼子が職業ドラマの女王として君臨し、特に非正規雇用を扱った『ハケンの品格』でのスーパーキャリアウーマンぶりが光った。ほかにも、24歳でアイドルデビューしたモーニング娘。の中澤裕子は、20代で結婚、引退していた昭和のアイドル観を打ち砕いたし、柴崎友香が書く、声高に主張できずにいる同世代の物語にも、すごく共感を覚えました」
自分を縛っているのは実は自分自身だった?
とまどっている間にも時は過ぎ、ついに大台にのった’73年生まれは、そろそろ下から旧世代と位置づけられるポジションに。「時代の壁を打ち砕くはずが、もはや打ち砕かれる側になった。下手に経験を語ると、今はマウントだと思われてしまう」と速水さんも嘆息する。
不自由を抱えたまま、私たちは倒されるしかないのか? しかし、「大丈夫。世の中は確実に自由になってきています」というのは、心理カウンセラーの大美賀直子さん。’71年生まれ、これまで幅広い年代の女性たちから相談を寄せられてきた中で「50代は最後の“縛られ世代”」と、その実感を語る。「メディアから“こうすればモテる女になれる”“素敵な大人ってこんなふう”と、自分が考える前に次々と理想像を提案され、必死にそれを追いかけ、合わせようとしてきた。でも、今はSNSの時代。行動も何も人それぞれでいいじゃんという時代です」
ファッションにはそれが如実に表れていると、大美賀さん。ユニクロ、GUなどファストファッションが世代を超えて共有される、ボーダレスな時代だ。
「かつては“9号が着られなくなったら女じゃない”といわれていたのに、ユニセックスに着られるファストファッションならメンズのSサイズが余裕で入ります。そもそもシンプルなアイテムは、サイズ感なんて関係なく、好きなものを好きなように着られる。誰かが決めた女性らしさ、大人らしさに、もうとらわれなくていいんです。#KuTooが広まったのも大きかったですね。今やスーツにもスニーカーがあたりまえですから」
古い価値観から解き放たれた今、「あとは、自分が縛っている自分を解放するだけ」と大美賀さん。この先、さらに自由な60代、そして老後を生きていく過程で、「親世代と同じではない、独自のロールモデルが現れるはず」と速水さんも期待を寄せる。
「“余裕ができたから老後はどうしようか”という経済状況には、僕らはたぶん一生置かれない。どこまでも現役でいる、そのプレッシャーはすごいですよ。でも、自然体でエイジレスな……例えば、少し上世代の藤井フミヤや小泉今日子が見せるあの雰囲気は、参考になるんじゃないかと」
いっそ自分がロールモデルに?そう、迎えるべきは、きっとそんな時代なのだ。
『1973年に生まれて 団塊ジュニア世代の半世紀』
速水健朗
東京書籍 ¥1,540
お話を聞いたかたがた
ライター・編集者 速水健朗さん
はやみず けんろう●’73年、石川県生まれ。著書に『自分探しが止まらない』(ソフトバンク新書)、『東京βー更新され続ける都市の物語』(筑摩書房)ほか多数。ラジオやポッドキャストへの出演、発信も行っている。
心理カウンセラー 大美賀直子さん
おおみか なおこ●’71年、栃木県生まれ。精神保健福祉士などの資格を取得し、自治体や企業、大学などでカウンセリングを行う。「All About ストレス」ガイド。著書に『大人になっても思春期な女子たち』(青春出版社)など。
自由になりたい人たちのお悩みQ&A
エクラ世代の重荷の正体と手放し方を、心理カウンセラー・大美賀直子さんがズバリ回答。目の前に立ちふさがる厄介なものを解消し、さぁ、あなたもさらに自由に!
私が私である今が最高。50代からはすべてに「YES」
家族関係、心身の衰え……自身、これまで2度中年の危機に陥ったという大美賀さんは、読者アンケートの相談に「わかります」とうなずくことしきり。
「もう少しがんばればワンランク上に行けるのは40代まで。50代だともう疲弊したくないと思う人が多いと思います。でも、それがこの年代の強さ。やり直しがきかないのなら、全肯定するしかないですよ。黒歴史も含めて、私が私であることは最高なんだと」
意外に多かった「何をしたらいいかわからない」というお悩みには「とりあえず、なんでもかじってみること」とアドバイス。残り時間を考えれば、確かに、じっとしてはいられない!
Q.60歳を目前にして、急に自由度が縮小していくような寂しさと虚しさを感じています。仕事もプライベートも上る一方だった人生が急に下り坂に入ったせいだからでしょうか。(57歳・会社経営)
A.「あれ、もうこの先がないの?」から生まれる、典型的な中年の危機ですね。下り坂に入ったことを感じた当初はとても不安になるものですが、そういうときはどっぷりと悲壮感の中に浸ってみるのもいい。「こんなことで悩んではダメ」と思い込むのも、また不自由です。そうしてゆるゆると下り続けていくと、「下り坂もラクでいい」と思えるようになるでしょう。
Q.見た目や体力、気力の衰えがすすみ、心をふさいでしまう場面が増えています。過去の自分と今の自分を比べてしまうことが原因だと思いますが……。(50歳・大学職員)
A.それまでの自分の延長線で物事を考えてしまうと、体型の変化や容貌の衰えなど、マイナス面の変化しか見えてこず、どうしても否定的になってしまうもの。手がかりとしておすすめしたいのは、クロゼットの中身を一新してみることです。今の自分の体型、体調に合わない服をため込んでいませんか? 思いきって処分して、今の自分にフィットする服にスイッチすると、等身大の人生の楽しみ方が見つけやすくなりますよ。
Q.昔ながらの女性の役割を求めてくる義実家や他人の目が気になります。気ままに振る舞いたくても「角が立つのでは?」と、ついつい遠慮してしまいがちです。(49歳・パート)
A.いいお嫁さんとして認められたい気持ちを捨てきれないくらい、今までがんばってこられたのだと思います。でも、やりたくないことはやらなくてもいいのでは? 義実家はあくまでも義理の関係。親孝行は夫にしてもらい、いっそ気のきかない嫁だと思ってもらってあきらめさせることです。あれこれいってくるのは、「いえばこの人はきっと動くはず」と思われているから。「ほら、あの人ああいう人だから……」という認識をつくってしまえば、最強です。
Q.圧の強い実母からの縛りを感じ続けています。自由になりたいと思いつつ、母からの連絡に返信しない自分に罪悪感をもつなど気にかけてしまい……。もしかして「共依存」なのでしょうか?(58歳・主婦)
A.共依存とは、相手の世話を焼くことでその人の人生を支配すること。あなたとお母さまの場合は当てはまらないと思います。むしろ、ご自身が「お母さんは私のことをこう思っているに違いない」との思い込みにとらわれていませんか? ここまでいい娘を続けてきたのですから、これからはできるかぎり時間的にも空間的にも距離をとって、お母さまとはゆるく付き合っていきましょう。気にかけているだけで、あなたは十分、孝行娘です。
Q.夫とは20年セックスレス(私が拒否)。浮気もギャンブルもしない人で、嫌いではないものの愛情を感じられず、一緒にいることに疑問符が。たった一度きりの人生、自分らしく生きたいと思うのですが……。(52歳・団体職員)
A.夫との関係以前に、あなたの心の奥底には、もう一度女性として生きたい、燃えるような恋愛がしたいという願望があるように感じられます。でも、この年齢で離婚して新たな情熱的な愛に飛び込むのには、それなりのリスクが。失敗したら、それこそ取り返しがつきませんからね。でしたら、映画や本で大人の恋愛物語に浸る、セクシーなラテンダンスに挑戦するなど、エロスを疑似体験することから始めてみてはどうでしょう。
Q.独身であることを、いまだにとやかくいってくる人がいます。気にしないようにしていても「そう思われてるんだ」と感じるのは憂うつですし、将来もやはり心配で。(51歳・派遣社員)
A.人は好きなようにいうもの。でも、ご自身が自分の現状に割り切れない思いを抱くのは、生き方に迷いがある証拠だと思います。独身であることのデメリットばかりを感じがちのようですが、逆に、ひとり身で気ままに暮らせていることのメリットもあるのでは? 50代、腹を括ってこれからをさらに楽しく生きるためにも、そこを徹底的に洗い出してみましょう。きっと現在の幸せが見えてきますよ。
Q.金銭的に余裕もでき、人間関係にも疲れたのでそろそろ会社をやめようと思っていますが、踏ん切りがつきません。勤め人生活をやめると、堕落したり、ケチな生活に陥ったりしそうです。(50歳・会社員)
A.仕事一途でまじめなかたなのでしょう。裏返すと、仕事をしていない自分に価値を見出せず、不安なのかもしれません。堕落やケチに陥りたくないのなら今の生活を続けるのが一番ですが、やめるとしたら、本当に考えなくてはならないのは、その後の時間をどう充実させるか。収入減が気になるのなら、フルタイムではない働き方を検討してみては?
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