リタイア後のお金はどうする? 退職金・失業手当の受け取り方

退職一時金や各種年金は、老後の生活を支える大切な資金。となれば、1円たりとも損したくない!そんな気持ちに応えるべく、賢い受け取り方&損しないためのポイントを、専門家・板倉京さんがアドバイス!
教えてくれた人
マネージャーナリスト、税理士 板倉 京さん

マネージャーナリスト、税理士 板倉 京さん

いたくら みやこ●女性税理士の組織、ウーマン・タックス代表。相続や資産運用などシニア世代を中心に年間100人以上の相談を受け、メディアでも活躍するエクラ世代。『定年前後のお金の正解』(ダイヤモンド社)ほか、著書多数。

退職金は、総額が「退職所得控除額」内に収まれば“迷わず一括”で受け取って!

一時金なら、所得税も社会保険料も抑えられる

退職一時金は一括で受け取るしかないけれど、企業年金の受け取り方は、「一括」「年金として分割」「一括と年金の併用」の3種類で、会社によってどの方法を採用しているかは異なる。もし、いずれも選べるなら、どうするのが賢明?

「その人の経済状況や考え方にもよりますが、税制面でいえば、一括で受け取ったほうが断然お得」と、板倉さん。それは、“退職所得控除”という、太っ腹な制度があるから!「退職所得控除される額は、勤務年数で異なりますが(下図参照)、38年間勤めると2060万円までなら所得税がかかりません。仮にオーバーしても、課税されるのは超えた分の2分の1だけ。所得税率は5%~45%で、所得が多くなるほど高くなりますが、194万9000円までなら税率5%ですみます。企業年金と退職一時金の両方を受け取れる場合も、合算して退職所得控除額内に収まるか、少し超える程度なら、一括で受け取るのがおすすめ。一括受け取りなら、社会保険料もかかりません」

年金として受け取る際も、“公的年金等控除”が適用されるが、年齢や収入によって控除額が変わり、60歳~64歳で年金所得130万円未満の人は年60万円、65歳以上で年金所得が330万円未満の人は年110万円(いずれも年金以外の所得が1000万円以下の場合)。超過した分は課税される。

「企業年金と公的年金をいつから受け取るかによっても変わってきますが、仮にどちらも65歳から受け取るとすると、公的年金等控除額内には収まらないだろうと思います。となると、所得税が発生し、社会保険料なども高くなるはず。受け取り方は税金も考慮して、選んでください」

リタイア後のお金はどうする? 退職金・失業手当の受け取り方_1_2

勤続年数で退職所得控除額は違う!

勤続年数 20年以下の人 20年超の人
退職所得控除額 40万円×勤続年数 40万円×20年+70万円×(勤続年数-20年)

※勤続年数1年未満の端数は切り上げ。最低金額80万円

●例:1987年4月1日入社

2025年4月1日に退職

→勤続39年!

800万円+70万円×(39年-20年)=2130万円まで非課税!

●例:1987年4月1日入社

2025年3月31日に退職

→勤続38年

800万円+70万円×(38年-20年)=2060万円まで非課税

▲日ずらすだけで、非課税枠が70万円アップ!

お得な制度、退職所得控除はフル活用したいところ。勤続年数は端数を切り上げるため、38年と1日勤めたとしたら、繰り上げで39年とカウントされ、非課税枠が70万円もアップ! 退職日が自分で選べるなら、これを考慮して設定を。

確定拠出年金は受給可能年齢に気をつけよう!

加入期間 引き出し可能年齢
10年以上 60歳~
8年以上 61歳~
6年以上 62歳~
4年以上 63歳~
2年以上 64歳~
1カ月以上 65歳~

確定拠出年金に10年以上加入していれば、60歳~75歳の間で、好きなタイミングで年金を受給できる。ただし、加入期間によっては受給開始年が遅れるので、注意して(上の表参照)。個人型(iDeCo)も一括給付なら退職所得控除を活用できる

見落としがちな、もらえるお金“失業手当”にも注目

「会社をやめ、次の就職先が見つかるまでの間、失業手当をもらった。そんな経験をもつ読者もいると思いますが、実はこれ、定年退職でも適用されるんですよ」と、板倉さん。

適用条件は、「64歳以下で退職」「原則、退職前2年間雇用保険に1年以上加入」「積極的に就職しようという意思がある」など。条件を満たしていれば、ハローワークで手続きを行い、就職活動を。支給額は退職前の給与額によって変わり、給付日数は最大150日。65歳以上は高年齢求職者給付金という制度があり、「離職日以前1年間に雇用保険に通算6カ月以上加入」していて失業中なら最大50日支給される。

「求職中、ぜひ活用してほしいのが、公共職業訓練。web関連や不動産ビジネスなどの有益なコースがそろっていて、ハローワークで必要だと判断されれば、原則無料で受講できます。しかも、要件はあるものの、訓練を受けている間は、失業手当の給付期間が延長され、交通費(通所手当)も支給されるんですよ」


受講期間が最長2年の介護福祉士や保育士資格取得コースも、その間ずっと失業手当と交通費がもらえるというのだから、一石二鳥どころか三鳥にも四鳥にも! 再就職、一考したい。

リタイア後のお金、受け取り方のコツ
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