韓国ミュージカル入門編として最適!映画館で気軽に楽しめる、韓国ミュージカル映画『ファントム』の魅力

エクラ世代にも絶大な人気を誇るKコンテンツ。韓国ドラマやK-POPで推し活を楽しんでいる方も多いと思いますが、現地で観劇する人が増えている韓国ミュージカルが、今また熱い盛り上がりを見せています! 映画やドラマでおなじみの俳優やK-POPスターが出演する韓国ミュージカル。その入門編としておすすめしたいのが、映画館で気軽に楽しめる「韓国ミュージカル ON SCREEN」です。
韓国ミュージカル ON SCREENの画像
もちろん、劇場で生の舞台を観るのと映画では異なる体験。そのことを踏まえた上で、映画ならではのよい点がたくさんあります。字幕付きなので言葉の壁はなくなり、観たい演目の予習にもおすすめ。複数のカメラワークによって舞台の細部や役者の繊細な表情までしっかりと映し出してくれるので、一度観た演目なら、感動を反芻しながら新たな発見もあるはず。そして映画館の音響で浴びる歌声やオーケストラの響きは、大人のための贅沢な時間を味わうことができます。

今回ご紹介するのは、そんな韓国ミュージカルの中でも人気の作品『ファントム』(2021年公演版)。フランスの小説家ガストン・ルルーによる「オペラ座の怪人」を原作に、アーサー・コピット(脚本)とモーリー・イェストン(作曲・歌詞)が生み出した名作です。アンドリュー・ロイド=ウェバー版『オペラ座の怪人』でご存じの方も多いと思いますが、この『ファントム』は怪人エリックの人間性に光を当てた物語。一人の人間としての内面を掘り下げ、その苦悩や純粋な愛、音楽への思いを描き出している点が特徴です。
韓国のキャストと演出によって生まれ変わった本作の魅力を、4つのポイントに分けてご紹介!

1. 舞台の圧倒的なスケールと美しさ!

まず心を奪われるのは、豪華絢爛な舞台美術とスリリングかつテンポの良い演出です。オペラ座の壮麗なシャンデリアや、地下に広がる神秘的な空間、そしてエレガントなパリの街並み。どの場面も、スクリーンいっぱいに広がる映像によって、観る人を一瞬で19世紀末のパリへと誘います。

特に韓国版『ファントム』では、縦方向の空間を活かしたダイナミックな演出が光ります。高所でのアクションや宙吊りでのシーンは、思わず手に汗を握る迫力。終盤にかけて追い詰められていくファントムの姿に、ブロードウェイミュージカル歴20年にして韓国ミュージカルは初心者の筆者は、『ファントム』がこれほどアクティブな演目だったのかと目から鱗。

さらに映画ならではの魅力は、細部にまで目が届くこと。ドレスの繊細な装飾、役者の息づかい、感情がにじむ一瞬の表情を捉えたクローズアップなど、細やかな”美”が映し出されることで、作品への理解度と感動はより広がります。

2. 「恨み(ハン)」の概念が濃密。韓国ならではのエモーショナルな表現

韓国ドラマや映画に触れたことがある方なら、その情感の深さに心を動かされた経験があるはず。『ファントム』もまた、韓国ならではの解釈によって心に強く訴えかけてくる”情念”がぎゅっと詰まった、非常にエモーショナルな作品に仕上がっています。
「ファントム」エリックとクリスティーヌの愛と悲劇
物語の中心は、ファントム=エリックと歌姫クリスティーヌの愛と悲劇です。さらに父と子の歪だけれど強い絆、嫉妬と陰謀に翻弄される人々、そして幼い日のエリックが母を失い、暗闇に取り残されて感じた孤独。ひとつひとつのドラマが濃密に描かれ、観客の心を揺さぶります。

特に、子ども時代のエリックが自らの顔と過酷な宿命に向き合うシーンは圧巻です。舞台全体を貫く慟哭は、まさに魂の叫び(子役が素晴らしい!)。韓国文化の中でよく語られる「恨(ハン)」、愛と憎しみ、悲しみと希望が入り混じる感情がそのまま舞台に結晶したかのよう。

韓国版『ファントム』の魅力は、同じ物語を知っていても「こんなにも印象が違うのか」と新たな発見や驚きがある点にもあるでしょう。

3. SUPER JUNIORのキュヒョンが魅せる、新しいファントム!

そして忘れてはならないのが、熱量の高い演技で魅せるキャストたち。主演のキュヒョンは、今年11月にデビュー20周年を迎える大人気グループ、SUPER JUNIORのメンバーとして世界的に人気を誇っていますが、ミュージカル俳優としても豊かなキャリアを積み重ねています。今回の『ファントム』では、その歌唱力と演技力が存分に発揮され、キュヒョンらしい新たなファントム像を作り上げています。
ファントム主演、SUPER JUNIORのキュヒョン
彼の演じるファントムは、恐ろしい存在というよりも、どこか愛嬌があり、親しみを感じさせる人物。クリスティーヌを守るために見せる激情と音楽への強い思い、一方で芸術を愛する繊細さと孤独に苛む姿の対比が、ぐっと観客の心をつかみます。

特に生みの親と向き合うシーンでは、声に宿る深い悲しみと愛情の深さがダイレクトに伝わってきてぎゅっと胸を締め付けられるかのよう。キュヒョン自身が今回の上映に際して寄せたコメント(公式サイトに動画あり)では、「父とのシーンを思い出すだけで涙がこみ上げる」と語っているように、その歌声には彼自身の感情が重なり多層的なキャラクター作りが秀逸です。

もちろん、スクリーンに映し出される彼の横顔や眼差しの優しさ、美しさにも要注目。仮面の下に隠された心の純粋さを見事に体現するキュヒョンだからこそ、ファントム=エリックがこれほどまでに共感できる人物になり得たのでしょう。

4. とにかく上手い! 女性キャストの華やかな競演

女性キャストたちの輝きにも、特筆すべきものがあります。

ファントム、クリスティーヌ役のイム・ソンヘ
クリスティーヌ役のイム・ソンヘは、ヨーロッパでも活躍する本格派ソプラノ歌手。澄み渡るような透明感のある声は、聴くだけで心が洗われるよう。特にクリスティーヌが初めて多くの人々の前で歌うシーンは圧巻で、彼女の歌声に一瞬で心を奪われます。さすがオペラ歌手ともいうべきオペラティックな歌唱と堂々たる存在感は、これもまた従来のクリスティーヌにはない魅力。まさに贅沢なパフォーマンスです。
ファントム、カルロッタ役のシン・ヨンスク
一方で、ライバルのカルロッタを演じるミュージカルスター、シン・ヨンスクは、圧倒的な歌唱力に加え、ユーモアあふれる演技で観客を魅了します。韓国ドラマでおなじみの「強烈な脇役」が物語を引き締めるように、彼女もまた作品に欠かせない彩りを添えています。憎らしい役柄でありながら、思わず笑ってしまうようなチャーミングさもあり、観客を和ませる。本当に上手いなあと舌鼓を打ちたくなるような豊かな味わいで、この二人の女性キャストの対照的な魅力は、作品に厚みを与えています。
このように韓国ミュージカル映画『ファントム』は、ただ舞台を記録した映像ではありません。映画ならではの迫力と繊細さを兼ね備えた、新しい観劇体験です。豪華な舞台美術、心を震わせる韓国ならではの情熱、主演キュヒョンの魅力、そして女性キャストの歌声。そのすべてが重なり合った珠玉の映像体験は、人生経験を重ねた今だからこそ胸に響く、人間の弱さや愛の深さといった普遍的なテーマを伝えています。

『ファントム』の後も魅力的なラインナップが続きます。ぜひ、この機会に劇場へ足を運んで、優雅なひとときを過ごしてみてはいかがでしょうか。
『ファントム』
韓国ミュージカル ON SCREEN 「ファントム」ポスター
19世紀末のパリ・オペラ座。醜い顔を仮面で隠し、地下に潜む青年エリック(キュヒョン)は“ファントム”と呼ばれ、恐れられていた。ある日、歌手を夢見るクリスティーヌ(イム・ソンヘ)の歌声に心奪われた彼は、亡き母の姿を彼女に重ね、新たな歌姫に育てようと密かに個人レッスンを始める。やがて才能を開花させたクリスティーヌはオペラ座で大役を任されるが、プリマドンナのカルロッタ(シン・ヨンスク)の嫉妬と陰謀、さらにクリスティーヌを想うシャンドン伯爵の存在が複雑に絡み合い、思わぬ悲劇が幕を開ける――。

『ファントム』上映:2025年9月12日(金)〜9月25日(木)
*上映期間が延長される場合や、一部劇場ではスケジュールが変更される場合があります。最新の上映日程は各劇場の公式サイトをご覧ください。
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