他人事じゃない! エクラ世代の「隠れ貧困」を防ぐために今すぐにできること

今は十分な収入があるものの、貯蓄が乏しく、将来は困窮を極めてしまう危険性がある「隠れ貧困」。その可能性が高いのは、なんとエクラ世代! それを避けるためにも、今すぐできる「老後資金を貯めるためのノウハウ」を経済ジャーナリストの荻原博子先生が指南!
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■見直す 家計の現状をまずは把握する

「最初にすべきは、家計の現状を把握すること。皆さん、給与明細をじっくり見たことがありますか? 給与額は上昇していても、社会保険料アップや増税によって、手取り額は減っているという家庭が多いんですよ」
 下記のとおり、ここ10年、毎年のように控除廃止や保険料、税金がアップ。散財したつもりはないのに手もとにお金が残らないのは、これが理由のよう。
「例えば、額面年収800万円、妻が専業主婦で16歳未満の子供がふたりいる家庭だと、手取り年収は約600万円。ですが、社会保険料や増税の影響で、実はここ10年で年間約50万円も手取り額が減っているのです。こうした現状をしっかりと認識し、お金の使い方を見直すことが大切です」

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■削る 一念発起して支出のスリム化にトライ

「家計を健全化するには、支出を減らすか、収入を増やすかしかありません。今すぐできるのは、もちろん前者。おすすめは、大幅なスリム化が望める費目から着手すること。例えばケータイ代。家族で格安スマホに乗り換えれば、けっこう節約できます」
 つい面倒になってしまうが、重い腰を上げて契約の見直しをすれば、当分放置できるので、忙しい人でもOK。同様に、光熱費も見直す価値が大。「“自分へのごほうび”を3回に1回にするだけでもかなり変わるはず!」

■返す 住宅ローンは面倒がらず繰り上げ返済

「定年後も住宅ローンを払い続けるとなれば家計圧迫は必至。なるべく早めに完済しましょう。55歳までに払い終えれば、それ以降はローン分を貯蓄でき、定年までにまとまった額になるはず。遅くとも、定年までには完済を」
 退職金で残額を一気に返済と考えている人もいるようだけど、繰り上げ返済するほうが断然お得なのだとか。
「住宅ローンの大半は元利均等方式。毎月同額支払っていても、最初は利息の割合が多く、あとになるほど元金の返済額が増える方式なので、早めに繰り上げ返済をし、返済期間を短縮したほうが、支払い総額はぐんと抑えられます」

繰り上げ返済は早めに&期間を短縮するほど効果が大

元利均等方式は、支払い当初は元金より利息の割合が大きい。そのため、早めに繰り上げ返済すれば、利息部分が大きく削減されることになる。借入金3000万円、金利3%、35年ローンの場合、5年目に300万円繰り上げ返済すると、支払い期間が4年11カ月短縮され、利息383万円の軽減に。
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■守る 持ち家はメンテナンスがものをいう!

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 子供が独立したら住み替えをし、そのときに出るであろう売買利益を老後資金にまわそう。そんな考えもよぎるけれど、「東京でさえ10軒に1軒は空き家。空き家率は今後さらに増えるので、よほど条件のいい物件でないと売れないと思います」と、荻原先生。
「もしも、将来売ることを視野に入れているのなら、今のうちにメンテナンスはしっかりしておくことですね。マンションなら管理組合に入り、計画的に修繕や補修を行って、資産価値をキープすることが大切。もしも売れなくても、メンテナンスが行き届いていれば、終(つい)の棲家(すみか)にすることもできます」

■貯める 収入の2割を目標に天引きで貯蓄を

「老後まであまり時間がないエクラ世代は、収入の2割、少なくとも1割は貯蓄にまわしたいところ。基本は給与天引き。『お金が余ったら貯蓄を』では、いつまでたっても貯まりませんよ」
 勤務先に社内預金や財形貯蓄の制度があるなら、ぜひ活用を。
「最初に手続きしておけば、あとは自動的にお金が貯まっていきますから。それに、社内預金は一般の金融機関よりも金利が高く、住宅財形と年金財形は両方合算で550万円まで利子が非課税と、優遇されています。どちらも利用できないなら、給与振込口座のある銀行の自動積立を利用しましょう」

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天引き貯蓄でおすすめ第1位は金利が高い「社内預金」

社内預金は労働基準法で利率の下限が決まっており、現行0.5%以上。一般的な金融機関の利率が0.1%以下なので、かなりお得。財形は金利の優遇はないものの非課税枠があるので有利(一般財形は利子に20%の税金がかかる)。これらが利用できない場合、給与振込口座の自動積立で、天引き預金を。
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■考える 子供が成長したら保険は再考する

 支出の中でぜひ見直したいのが保険。多額の死亡保障をかけていて、保険料が高額という家庭も多いのでは?
「現役で亡くなった場合、会社からは死亡退職金が出ますし、遺族年金など公的な保障も充実しています。住宅ローンにしても、団体信用生命保険に加入していれば、ローン残額は保険で精算が可能。死亡保障で補うのは、子供の教育費くらいでしょう」
 つまり、子供が社会人になっていたり、教育費のめどが立っているのなら、多額の死亡保障は不要ということ。契約したまま放置せず、家庭の状況に応じて適宜見直すのが賢明!

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■増やす もう一度働く&働き方を変える

 この10月から従業員501人以上の会社で、週20時間以上働く年収106万円超のパートやアルバイトは、勤務先の健康保険・厚生年金に加入することになり、来年は配偶者控除が廃止の予定。このように、専業主婦優遇策は今後ますます削られる傾向にあるのだとか。
「夫の扶養であるメリットを重視して働くのをセーブしていたかたたちは、今後はバリバリ働いたほうがいいですよ。年収100万円だとしても、50歳から60歳までの10年間、それを貯蓄にまわせば、1000万円に。しかも、妻が厚生年金を納めれば、将来受け取れる年金額も増えます。隠れ貧困解消には夫婦二馬力で働くのが、一番の近道です」

■学ぶ 介護・医療に利用できる公的制度を知っておく

「住宅ローンが完済し、教育費も不要になっているとしたら、老後資金の主な使い道は介護と医療。それでも最低5000万円必要と噂されていますが、それはウソ。日本は公的保険が充実しているので、ひとり1500万円くらいあれば十分です」
 医療費は、健康保険対象の治療であれば自己負担は1~3割で、介護も自己負担は1~2割。加えて、負担が一定額を超えたら、超えた額が戻ってくる「高額療養費制度」と「高額介護サービス費制度」がある。お金の不安を解消するには、いざというときに利用できる制度を知っておくことも大切!

「高額療養費制度」を使えば、半年治療しても自己負担は50万円以内

「高額療養費制度」は収入に応じて負担限度額が変わる。例えば、70歳未満で年収約370~770万円なら「8万100円+(100万円−26万7000円)×1%=8万7430円」が上限に。窓口負担として30万円支払っても、この制度を利用すれば、上限額を引いた残額が返金される。
※『隠れ貧困』(朝日新書)より
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