【ジョエル・ロブション追悼企画】パリの最新ロブション2店舗をリポート!

料理プロデューサーの孤野扶美子さんいわく、料理人ジョエル・ロブション氏は「料理を愛するあらゆる人へのあふれ出るような愛情をかたちにした“真の料理人”」。2018年春、孤野さんはロブション氏と心温まる再開を果たし、インタビューに成功。それから間もなく天へと旅立ってしまったロブション氏ですが、彼が最後までおこなっていた攻めの仕事の姿勢を孤野さんとともに辿ります。

次世代に続くガストロノミー

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「人を愛する、そして分かち合う。家族や恋人、大好きな人に心をこめて作るように料理をする」。『ラトリエ・ドゥ・ジョエル・ロブション・エトワール』のシェフ、メラニー・セールさんのモットーは、師匠であるロブションさんが生涯大切にしていた料理精神そのものです。

世界11カ国に展開するロブションさんのレストランの中でも、凱旋門のすぐそばにある代表的な店のトップとして45人の男性スタッフを率いるメラニーさん。彼女にとって、ロブションさんはまず「おばあちゃんと一緒に毎日見ていたテレビの人」。長じて料理の世界に進むようになってからは「フランス料理の神さまのような人」でした。

初めてその「神さま」に自分の料理を出したとき、鉄板で調理したヒラメの焼きかげんを微調整するために、ほんの少しだけ最後にサラマンダーで火入れしたことをしっかりと見抜かれ、「神さま」の感覚の鋭さに衝撃を受けたといいます。

そんなお話をうかがったあとにいただいた今回の料理の中に、キャビアとサーモンのタルタルがありました。これはヴェルサイユ宮殿でのディナーイベントでロブションさんが披露された取り合わせ。キャビアの食感と絶妙のコントラストをもたらすタルタルのシルキーななめらかさは、ロブションさんならでは。

そんなレジェンドともいえる料理の数々が、『ラトリエ』では彼を慕う料理人たちによって再現されているのです。
Dans un écrin rouge et noir, gastronomie conviviale――赤と黒の宝石箱のような空間で楽しむ美食
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L’Atelier de Joël Robuchon Étoile

凱旋門のお膝元にある『ラトリエ』
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パリの2軒目の『ラトリエ』。世界でも有数のコスモポリタンなアドレスのシェフに抜擢されたメラニー・セールさんは、モナコの『ジョエル・ロブション』でもキャリアを重ねてきたかた。ロブションさんの定番の品々に加えて、彼女が発想し、ロブションさんのお墨付きを得たものなど、多彩なレパートリーをシックな雰囲気の中で楽しめる。
【Data】
Publicis Drugstore
133 avenue des Champs Elysées 75008 Paris
☎33·(0)・1・47・23・75・75
11:30〜15:30、18:30〜24:00 無休

2つの文化のマリアージュ

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「ロブション氏は10年先のニーズを見通す先見の明のある人」とメラニーさんはいいます。ガストロノミーをカウンターで楽しむ『ラトリエ』の形式も画期的でしたが、結果的にロブションさん最後のクリエイションになってしまった『獺祭・ジョエル・ロブション』は、日本をよくご存じのかただからこそできたものです。

’76年に初めて訪日されてから、ロブションさんは日本に特別な敬愛をもち続けました。日本酒とフランス料理のマリアージュについて10年以上前から注目していて、「キャビアにはウオッカや白ワインより日本酒が合うことは西洋人もわかるはず」「モンドールやシェーブルチーズと日本酒のマリアージュはすばらしい」とおっしゃっていたのが印象的です。

『獺祭・ジョエル・ロブション』では、あえてフレンチと日本酒を合わせたというよりも、あるべき姿がここにあると感じます。例えばトマト、アボカド、フレッシュアーモンドのタルトと微発泡のにごり酒の取り合わせでは、素材の酸味やバターのコクなどひとつひとつの要素が冷えたにごり酒によってきわだち、しかもアボカドのクリーミーさとお酒のテクスチャーが同じベクトルで調和。開店にあたり、シェフのファビアンさんは素材の配分などミリ単位で指示を受けたそうです。

フランス料理を究め、国境も時間軸も超えて進化を続けたロブションさんならではの世界観が盛り込まれた唯一無二の場所だと思います。
Synergie des goûts Bonheur sans frontière――響きあう味わい。食の喜びは国境を超えて
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DASSAÏ JOËL ROBUCHON

日本通のロブションさんならではの新店
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「獺祭」の旭酒造とコラボして2018年6月にオープン。地上階はパン、スイーツ、お総菜などが並ぶブティック、中2階はサロンドテとバー、上階がレストラン。バーでは「獺祭」ベースのカクテルが楽しめる。ファビアン・フランソワシェフ、シェフパティシエの中村忠史さん、パンのスペシャリスト堀正拓らがロブションさんの志を受け継ぐ。
【Data】
184 rue du Faubourg Saint-Honoré 75008 Paris
☎33・(0)1・76・74・74・70 9:00〜21:00 ㊡日・月曜
※日本での問い合わせ先:旭酒造株式会社 
☎0827・86・0120 https://www.asahishuzo.ne.jp
<ロブションの魂はここにも>家庭でも“最上の味を”。ロブションプロデュースの食品
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デパートの食品館をはじめ、街角のスーパーでも見かける「フルリ・ミション」のシリーズは、ハム、鴨のコンフィ、タラのラングスティーヌソースなど幅広いラインナップ。添加物を省き、常に改良を重ねてきた結果、30年以上フランスの食卓で愛されている。

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