“世界最高峰の”赤ワイン「サッシカイア」の 高貴さとエレガンスの秘密とは?【飲むんだったら、イケてるワイン/WEB特別篇]

“イタリア最高峰の赤ワイン”と評されるのが「サッシカイア(テヌータ・サン・グイド)」。オーナーファミリーが来日、その深い魅力と楽しみ方を「エクラ」だけに語ってくれた。
サッシカイア

「『サッシカイア』は、祖父が家族の集まりのために造った特別なワインでした。それが評判を呼んで、父の代になってからワイン事業を大きくし、世界中の方々にお届けできるようになったのです。香りが華やかで、とてもエレガント。私の大好きなワインです」。そう言って、プリシラ・インチーザ・デ・ロケッタさんはやわらかな笑顔を浮かべた。現当主であるニコロ・インチーザ・デッラ・ロケッタ侯爵の一人娘として生まれ、幼い頃から「サッシカイア」を囲む幸福な時間を体験してきた。現在はミラノで夫や子どもとともに暮らし、カンティーナ(ワイナリー)のアンバサダー役として、世界中に「サッシカイア」の魅力を伝えている。
「サッシカイア」が生まれたボルゲリの地は、彼女にとって特別な土地でもある。毎年夏休みにはここの別荘を訪れ、一族で過ごすのが楽しみだったという。自分の身近にあったファミリーのワイン。それが、“世界一の赤ワイン”称号をもつようになるとは……。
「うれしいですが、予測していませんでした(笑)」。
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 「サッシカイア」のファースト・ヴィンテージは1968年。祖父のマリオ・インチーザ・デッラ・ロケッタ侯爵は大のボルドーワイン好きだったが、第二次世界大戦の勃発でボルドーワインが当時敵対していたイタリア国内に輸入されなくなったことから、自らボルドースタイルのワインを造ろうと決めた。トスカーナ地方のボルゲリには一族が所有していた畑があり、そこで陣頭指揮を執ってワイン造りを始めたという。石ころ(サッシ)がゴロゴロとある荒れた土地(カイア)での新たな挑戦だった。
ボルゲリは海辺に近い温暖なリゾート地で、ボルドーに比べて気候も暖かい。「こんなところでボルドーのような赤ワインができるのか」と訝る人は多かったというが、実際にできた赤ワインは、ボルドーのような深みを持ちながらも、さらに口当たりがシルキーな仕上がりとなった。そして息子のニコロ氏の代に生産量を増やしたところ、「熟成を待たなくても、果実味の豊かさが楽しめる」と世界中のワイン愛好家の注目を集め、90年半ばには“スーパー・タスカン(トスカーナ)”としての名声を高めた。ボルドーと同じくカベルネ・ソーヴィニヨンを主体としながらも、品種独特の深みのあるタンニンとやわらかな酸味を持つ「サッシカイア」は、ボルドーの銘醸ワインを凌ぐ勢いで人気に火がついたのだ。1985年ヴィンテージは、イタリアワインとして初めてワイン専門誌「ワイン・アドヴォケイト」において100点を獲得、1994年にはイタリアで「サッシカイア」単独で原産地呼称“DOCボルゲリ・サッシカイア”として認定されるなど、快挙を成し遂げた。そして2018年には「ワイン・スペクテーター」の年間トップ10において、世界第1位を獲得するなど、その快進撃はとどまるところを知らない。
 「世界中のワインを愛する方々に『サッシカイア』を認めていただけることは、とてもうれしいことです。でも、それは、単に高級ワインだからではなく、ワインの中にはボルゲリとしいう土地の魅力が詰まっているからではないかと思っています。ボルゲリはボルドーよりも暖かな土地ですが、海からの潮風と山からの冷たい風が、湿度とのバランスを取って、酸味をほどよく残しつつ、豊かな果実味のブドウを育ててくれます。そのバランスのよさが、エレガントでしなやかな味わいにしてくれるのだと思います」とプリシラさん。
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 また、「サッシカイア」には、セカンドラベル的存在の「グイダルベルト」とサードラベル的な「レ・ディフェーゼ」があるが、単に「セカンド」、「サード」と呼べないのには理由がある。カベルネ・ソーヴィニヨンを主体にしているのはどのワインも同じなのだが、「サッシカイア」にはカベルネ・フランを、「グイダルベルト」にはメルロを、そして「レ・ディフェーゼ」にはイタリア品種のサンジョヴェーゼをそれぞれブレンドしているのだ。「ブレンドによって織りなされるそれぞれの魅力を楽しんでほしいから」だという。
 実は、ここで素敵な話を聞いた。「レ・ディフェーゼ」は、2003年6月のプリシラさんの結婚式のため、サプライズで父が用意していたワインなのだという。
 「本当は、私の結婚式のためだけのスペシャルなものでした。でも、とてもイタリアらしさが表れていて、おいしかったので、リリースを決めたのです」。
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プリシラさんは「テヌータ・サン・グイドの歴史は、ファミリーの歴史です」と語る。ワインが造られたきっかけも“ファミリーのためのもの”だったが、この“ファミリー”という言葉にはカンティーナで働く人々も含まれるという。ボルゲリの畑は何百年もの間インチーザ侯爵家が所有していたもので、その間もずっと、多くの人々がここで働いてきた。土地を守り、ここで働く人々を守ることが、自分たちに課せられた使命であると、彼女は考えている。
 
 最後に、プリシラさんは、こんなメッセージを寄せてくれた。「『エクラ』は、とても美しい雑誌ですね。読者の方々の美意識が伝わってきます。きっと休日には、親しい方とワインを楽しまれると思います。『グイダルベルト』や『レ・ディフェーゼ』はぜひ日常に、お肉料理などと楽しんでください。そして、『サッシカイア』は大切な人との時間に。きっと、幸福な気持ちになっていただけると思います」。
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    「サッシカイア 2016」750ml \22,000 イタリア・トスカーナ。カベルネ・ソーヴィニヨン85%、カベルネ・フラン15%。カシスなどブラックベリーの香りとしなやかなタンニン。今飲んでもおいしいが、今後20年以上の熟成のポテンシャルを持つ。カベルネ・フラン由来のハーブとスパイスのニュアンスがエキゾティック。

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    「グイダルベルト 2017」750ml \6,500 カベルネ・ソーヴィニヨン60%、メルロ40%。 カシスやブラックチェリーのニュアンス。ふくよかな果実味とやわらかな酸味。「早くから飲めるサッシカイア」と評される。メルロをブレンドしているため。全体的に丸みのある印象。

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    「レ・ディフェーゼ 2017」750ml¥3,900 カベルネ・ソーヴィニヨン70%、サンジョヴェーゼ30%。スミレや黒すぐりのチャーミングな香り。ミネラル豊かで、透明感のある酸味。どこか温かみのある印象にイタリアらしさが表れている。

“世界最高峰の”赤ワイン「サッシカイア」の 高貴さとエレガンスの秘密とは?【飲むんだったら、イケてるワイン/WEB特別篇]_1_6
プリシラ・インチーザ・デッラ・ロケッタさん 1975年ローマ生まれ。ロンドン大学美術史学部卒業。現在、「サッシカイア」のアンバサダーとして、その魅力を世界中に伝えている。2003年に結婚、現在、13歳の息子と11歳の娘がいる。今後の目標は、ボルゲリのワインツーリズムを発展させることと、子どもを持つスタッフのために保育園を作ること。「ボルゲリを、安心して暮らせて、安心して訪れることができる土地にしたいのです」。
“世界最高峰の”赤ワイン「サッシカイア」の 高貴さとエレガンスの秘密とは?【飲むんだったら、イケてるワイン/WEB特別篇]_1_7
ボルゲリを象徴する糸杉並木。この地で育った詩人ジョズエ・カルドゥッチにも詠われている。「グイダルベルト」はこの糸杉を植樹した農学者の名だという。
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「テヌータ・サン・グイド」のカンティーナ。予約をすればビジットも可能。
問い合わせ先=エノテカ ■0120-81-3634
取材・文/安齋喜美子
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