知っておきたい『家族葬』なぜ増えているの?一般葬と何が違うの?

ここ数年でよく耳にするようになった「家族葬」という言葉。少人数で見送る葬儀だと想像はできるものの、ほんとのところどんなものかよく分かっていないという人も多いのでは? 急増している「家族葬」の実情とともに、まずは日本のお葬式の現状を見てみましょう。

 

お話をうかがったのは・・・

葬送・終活ソーシャルワーカー 吉川美津子さん
大手葬儀社や仏壇・墓石販売会社勤務を経て独立。コンサルティングや人材育成、講演、執筆など幅広く活躍。著書に、『お墓の大問題』(小学館新書)、『はじめての喪主 葬儀・葬儀後マニュアル』(秀和システム)などがある。

 

① 一般葬とは何が違うの? なぜ今、増えているの?

家族葬1

Q1.葬儀の種類は?

葬儀の種類
「家族葬」は38%で、まだ「一般葬」が優勢。とはいえ、2015年の調査では、「家族葬」が31%だったことを考えると、近い将来、「家族葬」がトップに躍り出そう。特に東京都は、「家族葬」が42%で「一般葬」の43%と、ほぼ同数というデータも。

家族中心の小規模な葬儀と認識されているものの、明確な定義はありません

上のデータでもわかるように、今や5組に2組は「家族葬」。けれど、葬儀に精通している吉川美津子さんいわく、「家族葬に、明確な定義はないんですよ」と!

 

「身内だけで行う葬儀は、以前からありました。それを、15年ほど前に、とある葬儀社が『家族葬』と呼ぶようになり、温かみのあるイメージから広まったといったところです。実際、家族や親族にかぎらず、親しい友人や知人が参列するケースが少なくありません。もっとも、参列者の人数はせいぜい数十人。そう考えると、家族を中心とした小規模な葬儀=家族葬と解釈できると思います」

 

こうした小規模な葬儀が増えてきた背景には、「高齢化」がある。「亡くなる年齢が80代、90代になると、親族や親しい友人・知人など、葬儀にお呼びすべき人も高齢になります。なかには、健康上の理由などで出向けない人も出てくるでしょう。こうした理由で、参列者が少なくなってきたのです」

 

Q2.会葬者の人数は?(全葬儀の平均)

会葬者の人数
最も割合が高かった「20人未満」は、’13年調査では14%、’15年調査では22%と、年々増加。「20~40人未満」も、’13年は19%、’15年は21%と、小規模な葬儀が主流になりつつあることが判明。
また、バブル期に商業的な意味合いで葬儀が拡大したことへのアンチテーゼという側面も。「当時は、親族の勤務先や取引先の関係者といった故人と面識のない人々が多数参列していました。今、家族葬を選ぶのは、それを経験した世代。『自分のときは、仰々しくせず、こぢんまりと』という思いがあるのかもしれません。加えて、冠婚葬祭に対する意識が変わり、簡素化が受け入れられていることも大きいような気がします。家族葬同様、お通夜や告別式などを行わず、火葬のみで見送る『直葬』や、お通夜は行わずに告別式と火葬のみを行う『一日葬』も増えていますしね」 読者からは、家族葬の流れやマナーについての疑問も寄せられたが、「家族葬は、参列者や規模に応じた呼び方なので、式の流れやマナーなどは、一般葬と変わりません」と、吉川さん。「『家族葬だと、お坊さんを呼ばなくていい』とか、『故人のイメージビデオを流すなど、個性的な演出ができる』というとらえ方をしている人もいるようですが、それは宗教や演出の問題。一般葬でも、葬儀場で宗教を排して行うことはできますし、逆に、家族葬を仏式で、お寺などで行うことも可能です。演出も同じく、最近は、家族葬にかぎらず、故人の好きな音楽を流したり、思い出の写真を飾ったりというケースが珍しくなくなりました」

Q3.葬儀にかかった費用は?(全葬儀の平均)

葬儀の費用
「家族葬」を含めた全葬儀の平均額が年々減っているのは、参列者数の減少と式の簡素化のため? ちなみに、地域別に見ると、お葬式そのものにかかった費用のトップは中部地方で、次いで関東、近畿の順に。

家族葬と一般葬、どちらにするかは、参列者の人数をもとに決めるのが得策

喪主や参列者として心得るべきマナーも、一般葬と同様。特に指定がないかぎり、喪服を着用し、お香典の授受があると考えるのがベター。ただし、家族葬か一般葬かにかかわらず、「お香典の授受はない」「通夜振る舞いはない」という地域もあるので、その土地の風習に従うことは忘れずに。「家族葬で見送ったものの、あとでそれを知ったかたがたが、次々と弔問にいらっしゃって大変だったという話は、よく耳にします。弔問者が多く見込まれるなら、一般葬にしたほうがよいかもしれません。いずれにしても、どんなかたに声をかけるか、できれば生前のうちに家族で話し合い、ふさわしい葬儀を選んでいただきたいですね」

 

② 費用が抑えられる?参列する際の注意点は?に専門家がアンサー

よく聞く「家族葬」という言葉だけれど、ホントのところどんなもの? アラフィー女性100人へのアンケートで寄せられた「喪主」として、「参列者」としての疑問や迷い、悩みに専門家が回答!
家族葬

【喪主編】

Q.家族葬の案内はどのようにすればいい?

A.参列を遠慮してほしくても所属先への連絡は必須

「参列してほしい人には、『故人の意向で家族葬を行う』と伝えたうえで、日時と場所、喪主の連絡先やどんな宗教・宗派で行うかなどをお知らせします。また、参列は遠慮してほしくても、故人や喪主の所属先(会社や老人ホームなど)への連絡は必須。もし、お呼びしていない人から、『どうしてもお見送りしたい』と申し出があれば、むげに断らず、参列いただいたほうがよいと思います」

Q.家族葬で見送ったことを後日知らせる場合は?

A.故人との関係や時期によっては喪中ハガキで知らせるのも可能

非常に近しい関係でないのなら、後日、「○月○日に、故人の意思で葬儀は家族だけで行った」といった内容をハガキで知らせるのでOK。お香典などを遠慮する場合は、それも加えて。「時期や、相手との関係によっては、年末に喪中ハガキをもって、お知らせにかえることも可能です」。
家族葬

Q.家族葬にすれば費用が抑えられる?

A.演出や食事、返礼品によっては高くつくケースもあります

「家族葬は一般葬より割安」というイメージを抱きがちだけれど、「一概にそうとはいえません」と、吉川さん。「参列者数が少ないため、会場が小さくてすみ、祭壇がコンパクトになったり、返礼品が少なくなったりして、安くすむ場合もあると思います。一方で、演出や食事などにこだわって、予想外に高くなってしまうことも。費用を抑えたいという理由で家族葬を選ぶのは要注意。まずは、参列者数をベースに考えてください」。

Q.「家族葬」を掲げている葬儀社に頼むのがベスト?

A.葬儀社を選ぶ際は、必ず見積もりをとり、比較検討を

最近は、「家族葬」をうたう葬儀社に加え、大手スーパーチェーンなどが運営するネット系の葬儀社紹介業者も増えてきた。「家族葬にかぎらず、重要なのは、事前に見積書をとり、内容をしっかり確認すること。基本料金が安くても、時間帯などに応じて加算されたり、オプションが多かったりで、合計金額がハネ上がるケースも少なくありませんから。できれば、数社に問い合わせ、トータル金額とともに、利便性なども考えて選んで」。
家族葬

【参列編】

Q.参列する際、注意すべき点はある?

A.基本は一般的な葬儀と同じくマナーを心がけて

「服装やお香典の額、遺族にかけるお悔やみの言葉などは、一般的な葬儀と同じです。お寺での家族葬なら、お経やお焼香がありますから、数珠も持参するように。ただし、家族葬の場合、喪主がお香典などを辞退するケースも少なくありません。事前に、『お香典はご遠慮いたします』などと連絡があったのなら、それに従いましょう」

Q.参列の依頼はなかったけれど弔意を表したい

A.弔問や不祝儀を送るほかお墓にお参りするのも一案です

「後日弔問したり、お香典や供物を送るほか、納骨後にお墓参りするかたもいらっしゃいます。いずれも、遺族の負担にならないよう配慮してほしいですね。お香典や供物は、お返し不要な3000円程度に抑え、お菓子といった消え物を選ぶのがおすすめ。お線香は、香りの好みもありますし、使いきれない場合もあるので避けるのが無難です」
家族葬

 

③ 「家族葬」にも落とし穴あり!私の失敗エピソード

「喪中ハガキを出した際に、親戚から『なぜ教えてくれなかったのか』と質問攻めに……」「葬儀が終わってから、仏前にお参りしたいという方が連日来られて1ヵ月くらい対応に追われた」など、家族葬にもさまざまな落とし穴があり! アラフィー女性たちが実際に体験した家族葬の「失敗エピソード」をご紹介。
家族葬
◆喪中ハガキを出した際に、遠戚から「なぜ教えてくれなかったのか」と、質問攻めに。また、お香典も遠慮していたにもかかわらず、送ってくるかたもいて、そのつどお返しを用意することになりました。(46歳・主婦)
◆5年以上前ですが、父の葬儀は家族葬でした。兄弟の中で父が一番下なので、伯父たちは高齢だし、遠方だったこともあり、呼ばなかったのですが、あとで文句をいわれました。(48歳・主婦)
家族葬
◆葬儀が終わってから、仏前にお参りしたいというかたが連日来られ、1カ月くらい対応に追われました。香典返しも一度に購入できなかったので、送料割引がなく、費用がよけいにかかりました。(46歳・主婦)
◆両家の父を家族葬で見送りました。隠していたのに、地方紙の訃報欄に名前が載り、広まってしまいました。新聞社に掲載しないよう連絡すべきでした。(52歳・医療関係)
家族葬

◆大好きな父を、私たちらしく見送ろうと家族葬に。父の好きだった花で祭壇を埋めつくし、オリジナルムービーを流し、料理も奮発するなど凝ったせいで、費用が予想の倍以上に!(55歳・主婦)

 

④ 小規模、人の温かさが印象的。私が経験した「家族葬」エピソード

「故人の似顔絵ボードと思い出の写真を飾った」「お経は上げず、故人を囲んでお別れをした」など、「家族葬」といっても形はさまざま。家族葬を経験したことのあるアラフィー女性たちに聞いた「私が経験した家族葬エピソード」をご紹介します。
家族葬

◆母の葬儀に参列していただいたのは、親戚や私の幼なじみなど、ごく身近な人25人くらい。入口に母の似顔絵のボードと、思い出の写真をたくさん入れたパネルを飾り、母が好きだった曲を流し、スクリーンに母の写真をスライドショーで投影しました。約2カ月後が誕生日だったので、ホールケーキを用意し、参列者にお祝いもしていただきました。母の白髪が増えた髪をきれいに染め、プロにメイクもしてもらい、皆さんから「若いころと変わらないくらいきれい」といっていただけたのも、うれしかったです。短い準備期間でしたが、母が喜ぶことを考え、いい葬儀ができたと思っています。ただ、心身ともに疲れている中、大量の写真を選ぶのが大変でした。費用も140万円くらいかかりました。(54歳・自営業)

◆参列者は親族がほとんどだったので、香典が高額だったし、年齢や関係によって金額に差もありました。なので、エクセルを使って、名前、住所、香典の額、お返しの品をリストにしました。お返しはデパートのカタログ商品にし、金額に応じて何パターンか用意しました。(50歳・事務職)

家族葬

◆特別に部屋をとって、故人の好物を持ち寄ってお棺に入れたり、長い時間、故人を囲んでお別れしたり。集まった親族が、故人にしてあげたいと思うことを、それぞれ考えて行った家族葬です。ごく近しい親族のみの、少し一般のお通夜に似た、でも仰々しくはない、温かいものでした。お経をあげないなど、オーソドックスな式とは違ったので、参列者には「故人の強い意志です」とお伝えするマナーは必要だと思いました。(49歳・講師)

◆おいしいものが好きだった母。参列者は30人弱だったので、通夜振る舞いは、それぞれにお膳を出し、メニューも贅沢なものに。告別式のあとは、親族でよく行った中華レストランの個室で昼食をとりました。こんなふうに、食事にこだわることができたのは、事前に参列人数が把握できる家族葬だからできたことだと思います。費用はそれなりにかかりましたが、親族ばかりで、お香典もそれなりの額だったので、大きな負担はありませんでした。(53歳・会社員)

家族葬

◆叔母の家族葬に参列しました。入口には、故人の思い出の品や写真などが飾られ、式が始まる前にはごあいさつの言葉とともにきれいな曲が流れていました。式の進行に合わせて、故人の素敵な写真や家族写真が映像で流れ、今までの叔母との思い出や、それまで知らなかった叔母の一面を知ることもできました。厳かに、穏やかに進んだ式が叔母らしく、素敵なお通夜、告別式だったと思います。私もこんな家族葬がいいと思いました。(48歳・フリーランス)

◆近所の犬ママ友の家族葬に参列したのですが、彼女がSMAPのファンで音楽は『世界に一つだけの花』、ライブのときに購入したうちわや、タオル、写真などがお棺のまわりに置いてありました。悲しかったけど、大好きなSMAPに送られて幸せだと思えました。(53歳・主婦)

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