アプリコットやオレンジ、アーモンドの香りが次々と顔をのぞかせ、まるで“香りのタペストリー”のよう。後味にある甘苦いニュアンスも心に残り、「ポルトガルワインがこんなに魅力的だなんて!」と驚かされる。「ニーポート レドマ ホワイト 2018」。生まれはポートワインの生産地として有名なドウロ渓谷。ここはローマ時代からワイン造りがなされていた土地で、「ネクター(神々の酒)」が造られていたという伝説も残っている。造り手はポートワインの老舗「ニーポート」で、現当主のディルク・ヴァン・デル・ニーポート氏が「ドウロ渓谷でもおいしいワインが造れる!」と日々努力を重ね、ここ10年ほどで世界的名声を確立した。
実はこのワイン、ちょっと風変わり。昔から畑に自生している多種のブドウを一度に収穫し、そのまま醸造するという“混植・混醸”というスタイルなのだ。昔ながらの造り方ゆえ、素朴な味かと思いきや、予想以上に洗練されている。たとえるなら、“自身の美しさに気づいていないカントリーガール”だろうか。華やかではないけれど、そのナチュラルな味と香りに惹きつけられてしまう。
女性には誰しも自分では気づかない魅力がある。なのに、自信をもてないときも。そんな日にはこのワインを開けてみたい。きっと隠れた美しさを教えてくれる“白雪姫の鏡”になってくれると思うから。