伊勢・志摩地中海村「リアス バイ ココチャ」

名古屋から近鉄特急で約2時間の鵜方駅から10分ほど車を走らせ、 ゲートをくぐれば、そこは別世界。 ヴィラの白い壁が青空に映え、色とりどりの花が咲き乱れ、 夜になれば星が煌めく小さな村。 スペインの村を再現したリゾート「志摩地中海村」をご紹介します。
英虞湾の絶景とアラビックスタイルの天然温泉を楽しめる
リゾートホテル「志摩地中海村」。
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中でも特筆すべきは、レストラン「リアス バイ ココチャ」。
料理を監修しているのは、スペイン・バスク地方の美食で知られる街、
サン・セバスティアンにある、
ミシュランガイド一ツ星レストラン「ココチャ」のダニエル・ロペスシェフです。
バスクを何度も訪れ、特にサン・セバスティアンの食の感度の高さを知っていたので
ロペスシェフが来日して腕を振るうと聞いたら、行かずにはいられません。
東京からすぐに駆けつけました。
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テラコッタの壁と海の碧色のコントラストが美しい「リアス バイ ココチャ」。お店へのアプローチからも、店内からも英虞湾を一望できます。今年2月に1周年を迎えました。
「ドノスティア」。バスク語でサン・セバスティアンをこう呼びます。
その優雅な街並みは”ビスカイヤ湾の真珠“と称賛され、
ミシュランガイドの星付きのレストランも数多く存在し、
小さいながらも美食の街として、世界の注目を集めています。
目の前の湾で揚がる新鮮な海の幸、
背後に連なる山々の幸に恵まれた豊穰の地。
その豊かな食材を武器に、独創的な発想と技術力で「新バスク料理」の
気鋭として注目を浴びているのが、ダニエル・ロペスシェフです。

 
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サン・セバスティアンのお店を18年前にオープンしたロペスシェフは、
12年ほど前に初めて来日し、すっかり日本に魅了されたそう。
「志摩地中海村」からオファーがあって、2年前にに再来日。
伊勢志摩の食材の豊かさを実感し、バスクと同じクオリティーで料理を出せると、
このプロジェクトを開始しました。
志摩のお店も、バスクのお店と同様、
小さなポーションで8〜9皿もしくは13〜14皿のコースを楽しめます。
「バスクでは、その日手に入った素材をもとにメニューを決めていきます。
食材からすべてが生まれるのです。
サン・セバスティアンのお店のメニューでは魚介類が18%を占めています。
志摩も魚介が新鮮で、とく貝類はバスクより種類が豊富。
見たことのない地野菜に出合えるのも楽しいし、それに松阪ビーフもあるしね!」と
ロペスシェフは微笑みながら話してくれました。

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「海藻ケーキの貝のタルタル」「魚のロワイヤル」。 2品とも最初の突出しとして登場。
この日のメニューの最初のひと皿は、
オレンジと緑のコントラストが印象的なフィンガーフード2点です。
檜扇貝とあこや貝、青葱などの薬味類を合わせたタルタルを、
海藻を練り込んだスポンジの上に。もうひとつは、
カリカリとした食感のワンタンの皮に魚のムースをのせて。
口いっぱいに広がる海の香りは、志摩の海へのオマージュでもありますね。
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「伊勢鶏のサラダ 椎茸のエスカベッチェ」。伊勢鶏のしっかりした歯応えと旨みを存分に味わえます。
2皿目はバスクでよく見かけるミガス(パン粉をカリカリに炒めたもの)に、
アマランサスシード、黒胡麻、パプリカパウダーをプラスして
バスク×日本を表現しています。
胡麻や椎茸の香りに、懐かしさを感じたのは私だけではないはず。

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「私たちの鱈のトルティージャ」。「リアス バイ ココチャ」の定番料理です。
もっとも印象に残ったのは、このトルティージャです。
トルティージャとは日本人にもお馴染みのスペインオムレツのこと。
具沢山のケーキのような卵料理ですが、ロペスシェフのそれは、
すべてにおいて予想を覆すひと品でした。
たわんだフォルムの優美な和食器に、
ふわりと泡状の卵料理が盛られています。
表面に香ばしさを感じさせる美しい焦げ目が。
中はエスプーマで泡状にしたクリーミーな卵液に、
ねっとりとした半熟の卵黄が。
卵と鱈、野菜の味わいと食感の違いの三重奏が見事です。
これを目当てに再びここに来たいと思ったほど。
次の「蛸のトリンチャット」は本来、
蛸とキャベツ、じゃがいもで作る料理ですが、
日本ではキャベツを白菜に替えて、
グリルした蛸の旨みと歯切れのよさが際立っています。
これも志摩の海を感じるひと皿でした。
平目や黒毛和牛の料理が続き、
プリンを泡状にしたスパイシーなデザートで大団円!
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どの料理も、伝統的なバスク料理をもとに、
ロペスシェフの独創的な味わいを取り入れています。
シンプルかつ素材をダイレクトに感じさせる郷土色豊かな料理ですが、
そこに新しさや驚きを加えるのがロペス風。
「バスクのあの味をこのように表現したのか!」と感動の嵐でした。
「あの味」を知らない人にも、完成された一品としての存在感は充分です。
品数は多いのですが、バターやクリーム、
脂肪分を抑えているためか、するするとお腹におさまり、食後感は軽い。

バスクと志摩、ふたつの土地に根ざした料理。
バスクの料理人が志摩で作る味は唯一無二のもの。
アクセスがそれほどよくありませんが、
わざわざ訪れる価値のある世界レベルの味。
志摩にこんなお店があるとは。あまり知られていないのが残念です。
伊勢志摩は「美味し国」と言われ、
神様に美味しいものを差し上げられるからと、
伊勢に神宮をつくったと言われるほど。
お伊勢詣りと美食の旅、おすすめです。

取材・文/北村美香
 
三重県志摩市浜島町迫子2619-1
☎︎0599-52-1336(予約専用電話番号 9:00~18:00)
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