創業は1843年、初代ヨーゼフ・クリュッグの「天候に左右されない、安定した味わいのシャンパーニュを毎年造りたい」という熱い思いから誕生したメゾンだった。ヨーロッパではすでに老舗として高い名声を誇り、ココ・シャネルやマリア・カラス、アーネスト・ヘミングウェイといった稀代の異才たちにもこよなく愛された。英国・エリザベス女王の母であるエリザベス王太后(映画『英国王のスピーチ』のジョージ6世王妃)に至っては、「クイーン・マザー、病室でクリュッグ!」と新聞にスクープされるなど、数えきれないほどの逸話を持つ。
だが、実は、30年ほど前、日本において「クリュッグ」は、まったく無名の存在だったのだ。それが、現在のようにトップ・オブ・トップのシャンパーニュとして認識されるようになった裏には、6代目当主オリヴィエ・クリュッグ氏のたゆまぬ努力があった。