【夏の文芸エクラ大賞】斎藤美奈子さんがコロナ禍の世と話題本を解説!
新型コロナ感染症の影響ですべての人が自粛生活を経験した2020年。ウィズコロナの時代を生きぬくために、あなたに響く本を見つけてほしい。文芸評論家・斎藤美奈子さんがコロナ禍の世と話題の本を徹底解説します。
教えてくれた人…

斎藤美奈子さん
さいとう みなこ●’56年、新潟県生まれ。本誌連載「オトナの文藝部」でも人気の文芸評論家。’94年に『妊娠小説』でデビュー。『文章読本さん江』『日本の同時代小説』など著書多数。8月末に『中古典のすすめ』を刊行予定。
コロナ禍の前と後で世の中が激変した今年。本の世界もダイレクトにその影響を受けた。
「最初はほとんどの人がコロナ禍を対岸の火事のように眺めていたけれど、その後急速に誰もが当事者になった。情報が少なかったので、多くの人の知りたい気持ちがパンデミック(感染爆発)系の名作文学に向かいましたね。アルベール・カミュの『ペスト』は160万部を突破したんですよ」と斎藤さん。
70年以上前に書かれた『ペスト』は、病の猛威に立ち向かう医師が主人公。「“ペストは不条理の象徴で、閉鎖空間で人はどう生きたかを描いた小説”と思われていました。でも今読むと臨場感いっぱい。小説内の非日常感や不安感を“ものすごくリアル”と思いながら読めるのは今年だけでしょうね」
世界史に出てくる『デカメロン』も、今年読み返された本のひとつ。
「ペストが蔓延した14世紀のフィレンツェが舞台。郊外に避難した10人が、退屈しのぎにお話をしていきます。内容はいわばバカ話ですが、背景にあるのは神の権威の失墜。だって神はペストを退治してくれなかったから(笑)。でもそれが人間中心のルネッサンスにつながったのだから、感染症が歴史を変えたことがよくわかります」
パンデミック系の名作を読むなら今しかない!
自粛中話題になった感染症の歴史の本も多数読んだという斎藤さん。
「そこで感じたのは、何度も痛い目にあってきたのに人は歴史から何も学んでいなかったということ。感染症は必ず終息するものだから、情報が次の代へと伝わっていかないのでしょうか」
一方で、コロナ禍だからこそ生まれた本も。イラスト集『みんなのアマビエ』は、SNSなどに発表されたクリエイターによる妖怪アマビエ(疫病よけに効くとされる)の競作をまとめたもの。「これは緊急出版的な本ですが、今後少しずつコロナの話を書く作家も出てくるでしょう。とはいえこの災いはまだ渦中だし、誰も逃れられない。病気自体解明されていない、自己責任論ではどうにもならない、経済への影響は計り知れないなど問題山積で全貌が見えにくいから、読み応えのある小説が生まれるには数年かかる気がします」

懐かしいあの本も電子化。新たな読書の楽しみが
また電子書籍化される本は、巣ごもり需要でますます増加傾向にある。「紙の本にも電子書籍にも利点はありますが、手に入りにくい本が電子化で読みやすくなるのはうれしいですよね。去年亡くなった田辺聖子さんの本もそう。彼女のハイミスもの――恋も結婚も仕事もという女性は、かつては新しかったけれど、今読むとあたりまえ。エクラ世代が読み返すと感慨深いと思います」
今となってはひと昔前のような気さえするコロナ前だが、本の世界を含め世の中では大きな盛り上がりがあった。
「『おっさんずラブ』『きのう何食べた?』などのドラマが関連本や原作本とともに大ヒットしたことです。LGBTが一般の人たちに浸透してきたのを感じましたね」と斎藤さん。
「女性同士の恋愛を描いた綿矢りささんの『生(き)のみ生(き)のままで』、カルーセル麻紀さんをモデルにした桜木紫乃さんの『緋の河』など、小説にも力作が。ただ同性パートナーシップ制度は導入されはじめましたが、トランスジェンダーとして生きることはまだきびしい。
LGBT本で“現実”を学んでみんなが生きやすい社会に!
LGBTは7人にひとりといわれていますが、それは自分の周囲にそういう人がいることを表しています。だから今大事なのは、LGBTについて少しでも勉強して、知らないうちに人を傷つけることがないようにすること。『はじめて学ぶLGBT』や『総務部長はトランスジェンダー 父として、女として』など入門書や自らの経験を語った本が増えているので、ぜひ手にとってみて。1冊読むだけでも理解が進みます!」
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