【夏の文芸エクラ大賞】世界観にどっぷり浸れる長編作「没入!ザ・物語賞」4冊

’24年6月~’25年5月の一年間に刊行された文芸作品から、エクラ読者に読んでほしいと本音でおすすめできる本を選んだ「文芸エクラ大賞」。今回は世界観にどっぷり浸れる長編作「没入!ザ・物語賞」受賞作品を紹介。
【夏の文芸エクラ大賞】世界観にどっぷり浸れる長編作「没入!ザ・物語賞」4冊_1_1

『YABUNONAKA―ヤブノナカ―』

『YABUNONAKA―ヤブノナカ―』

予定調和を飛び越えた劇的展開に呆然
金原ひとみ
文藝春秋 ¥2,420
「終盤はショッキングだったが性加害はNGという著者の強い思いが全編から感じられた」(斎藤)。ある女性が“文芸誌元編集長から性的搾取を受けていた”とネットで告発。その波紋は彼の家族や周囲にもおよんでいく。

『歩き娘 シリア・2013年』

『歩き娘 シリア・2013年』

勝手に足が動く少女の胸が引き裂かれるような手記
サマル・ヤズベク 柳谷あゆみ/訳
白水社 ¥3,300
’13年のシリアでの化学兵器攻撃を下敷きにした手記の形の長編小説。奇癖をもち拘束された少女が封鎖下の日々や生い立ちをつづる。「少女の過酷な状況は読んでいてつらいが、どうしようもなく引きつけられる小説」(細貝)。

『世界99』上・下

『世界99』

人間にとって都合のいい未来、その景色とは?
村田沙耶香
集英社 上・下 各¥2,420
性格がない空子は周囲に呼応して人格をつくることが得意。複数の人格を行き来して成長するが、やがて彼女の世界ではペットが進化して出産や雑務をこなすように。「怖いもの見たさでページをめくる手が止まらない!」(K野)。

『PRIZE―プライズ―』

『PRIZE―プライズ―』

承認欲求が止まらない姿は他人事ではない!?
村山由佳
文藝春秋 ¥2,200
売れっ子作家・天羽カインはどうしても直木賞が欲しいがなぜか無縁。プライズ(賞)獲得のため編集者を巻き込んで執筆に邁進するが……。「出版界の裏側がリアルすぎ! アクの強いカインの言動から目が離せない」(山本)。

文芸エクラ大賞とは?

私たちは人生のさまざまなことを本から学び、読書離れが叫ばれて久しいとはいえ、本への信頼度が高いという実感がある世代。エクラではそんな皆さんにふさわしい本を選んで、改めて読書の喜びと力を感じていただきたいという思いから、’18年にこの賞を創設。

選考基準は、’24年6月~’25年5月の一年間に刊行された文芸作品であり、エクラ読者に切実に響き、ぜひ今読んでほしいと本音でおすすめできる本。エクラ書評班が厳選した、絶対に読んでほしい「大賞」をはじめ、ほかにも注目したいエクラ世代の必読書や、書店員がおすすめのイチ押し本を選定。きっと、あなたの明日のヒントになる本が見つかるはず!

▼4人の選者
文芸評論家 斎藤美奈子
本や新聞、雑誌などで活躍。本誌で「オトナの文藝部」を連載中。文学や社会への鋭い批評が支持されている。

書評ライター 細貝さやか
本誌書評欄をはじめ、文芸誌の著者インタビューなどを執筆。特に海外文学やノンフィクションに精通。

書評ライター 山本圭子
出版社勤務を経てライターに。女性誌ほかで、新刊書評や著者インタビュー、対談などを手がける。

書評担当編集 K野
女性誌で書評&作家インタビュー担当歴20年以上。女性誌ならではの本の企画を常に思案中。
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