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【第3回文芸エクラ大賞】少女の自我の目覚めを描いた長編小説が大賞に

エクラで本の情報をお伝えしている文芸評論家と書評ライター、そして最前線の売り場を知る女性書店員がすすめる本とその理由は?熱い話しあいの結果、大賞にふさわしい本が決定!

第3回文芸エクラ大賞「大賞」発表!

文芸エクラ大賞とは?

私たちはさまざまなことを本から学んだ世代。読書離れが叫ばれて久しいとはいえ、本への信頼度が高いという実感がある。エクラではそんな皆さんにふさわしい本を選んで、改めて読書の喜びと力を感じていただきたいという思いから、この賞を創設。’19年6月~’20年5月の1年間に刊行された文芸作品から、エクラ書評班が厳選する「大賞」、ほかにも注目したい「特別賞」、そして本の現場にいる女性書店員がイチ押しする「書店員賞」の3賞を選定。選考基準は、エクラ読者に切実に響き、ぜひ今読んでほしいと本音でおすすめできる本。きっと、あなたの明日のヒントになる本が見つかるはず!

4人の選者】

文芸評論家 斎藤美奈子

本の執筆だけでなく、新聞や雑誌など多くの媒体に切れ味鋭い評を寄せ、幅広い層に支持されている。

書評ライター 山本圭子

出版社勤務を経てライターに。女性誌ほかで、新刊書評や著者インタビュー、対談などを手がける。

書評ライター 細貝さやか

本誌書評欄をはじめ、文芸誌の著者インタビューなどを執筆。特に海外文学やノンフィクションに精通。

書評担当編集 K野

これまで在籍したすべての女性誌で書評欄担当を経験。女性誌ならではの本の企画を常に模索中。

 大賞 

『遠の眠りの』

遠の眠りの

『遠の眠りの』

谷崎由依 集英社 ¥1,800

福井の貧しい農村生まれで本好きの絵子は、父親に反抗して家を飛び出し、人絹工場の女工に。街の百貨店の支配人と知り合い、専属の少女歌劇団の「お話係」になるが、そこで出会ったのが看板女優の少年だった。昭和初期の少女の自我の目覚めと時代の変化を描いた長編小説。

経済格差が大きかった昭和初期、地方にも“新しい波”を浴びた女たちがいたと感動

━━ 文芸評論家 斎藤美奈子

主人公は自我の目覚めをつぶされかけても前を向く。心から応援したくなった!

━━ 書評ライター 細貝さやか

本好きの貧しい少女がやがて歌劇団の脚本係に。リアルで夢も感じるストーリーにうっとり

━━ 書評ライター 山本圭子

メッセージをいただきました!

作家・谷崎由依さん

戦前の福井に実在した百貨店の少女歌劇。そこに着想を得た小説を、書きたいと思いました。その時代について調べるうちに、華やかさの陰の暗い部分も見えてくるようになりました。女に教育は不要だといわれた農村を出て、人絹工場の女工を経験する主人公の周囲には、もがき、闘う女たちの姿が常にあります。現代を生きぬく女性の皆さんに、ぜひ読んでいただけたらうれしいです。

 

おもしろかった本を持ち寄った選考会。その内容は?

K野 大賞選考会も3回目になりましたが、この一年を振り返るとコロナ以外にもLGBTの認知の広がり、フェミニズムの新しい流れ――#KuToo(職場でのヒール靴義務への抗議)など時代の変化を感じる話題が多かったですね。そんな中、松田青子さんの『持続可能な魂の利用』は「おじさんのダメさがわかる」とマスコミでも取り上げられ、話題に。


斎藤 おもしろかったですね。この国から女を脅かす“おじさん”が消えれば、彼らから自由になる世界をつくれるという発想が(笑)。


細貝 作者の主張がストレートすぎてラストは唐突な感じもしましたが、逆にいえば予定調和じゃない強さ、必死さを感じましたね。

斎藤 エクラ世代が共感できるのは、もちろん、社会に出る前の娘にすすめたくなるかも。「セクハラやパワハラとはこういうこと」とわかるから。

山本 あまりのうまさに驚いたのが河﨑秋子さんの『土に贖う』。北海道で栄えた産業に携わっていた人たちの泥くさい生命力が伝わってきました。


斎藤 作者の河﨑さんは元羊飼い。毛皮用のミンクを飼育する男やハッカ油をつくる女性の労働がきちんと書かれていて、「これぞ正しいプロレタリア文学」ですね。


細貝 周囲にはいなくても、世界にはまだ彼らのような人たちがたくさんいる。現代人として読んでおくべき一冊かも。


山本 私は自粛中に時代小説をよく読みましたが、朝井まかてさんの『グッドバイ』が二重マル。主人公の色恋沙汰のない人生があっぱれでした。

斎藤 彼女は根っからの商売人。そこが気持ちいいんですよね。

K野 主人公のモデルは大河ドラマにも出てきた幕末の貿易商・大浦慶。借金苦からはい上がる後半はページをめくる手が止まらなかった!

細貝 当時こんなにぐいぐい進む女性がいたと思うと元気が出ますね。

山本 谷崎由依さんの『遠の眠りの』は、昭和初期の福井を背景にしたノンフィクションのようでどこかファンタジック。主人公の絵子が仲よくなる女装の少年が魅力的で、独特の世界に一気に引き込まれました。


斎藤 その少年は、絵子が脚本係をしていた百貨店専属の少女歌劇団の看板女優。当時は地方でもモダニズム文化が花開いていたから、東京以外にも華やかな文化がいろいろあった。あまり知られていない事実が描かれていて、新鮮でしたね。


細貝 私は絵子が女工だったころの同僚・朝子に好感をもちました。『青(せう)』(明治44年に平塚らいてうが創刊した女性文芸誌)創刊から何年もたってから影響を受け、先進的な女性たちのきらきらした世界を遠くからでも懸命に見ようとしていて。

斎藤 地方の普通の女性も『青鞜』が唱えた“新しい女”の波を浴びていた。彼女たちはいわば“夜明け前を生きた人たち”で、もがきながら前を向く姿が群像ドラマとして抜群におもしろかったですね。これほどのものを書ける谷崎さんは、これからも多彩な世界を見せてくれそう。『遠の眠りの』を今回の大賞にしませんか。そのほかに加えておきたい作品は……?

細貝 翻訳ものの『暇なんかないわ大切なことを考えるのに忙しくて』をぜひ。『ゲド戦記』の作者が80歳を過ぎて始めたブログをまとめたもので、発見や感動に満ちています。

山本 「こんなおじさん、いるいる!」と思ったのが絲山秋子さんの『御社のチャラ男』。先鋭的な『持続可能な魂の利用』とセットで読むと“おじさん”をより理解できるかも(笑)。


斎藤 書店員賞では山田詠美さんなど、ベテランが健在ですね。

細貝 山田さんの『ファースト クラッシュ』は私も好きな小説。複雑な女心の描写がさすがでした。

K野 今回も新鋭、実力派、ベテランの作品が並んで多彩なラインナップになったと思います!

 

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