見ればキレイになる⁉韓流ドラマナビ⑨「梨泰院クラス」【後半】

エクラの美容記事でもおなじみのライター・山崎敦子がお届けする韓流ドラマナビ。今回は、2回にわたってお届けする、人気沸騰中の「梨泰院クラス」 の後編。2人の女性の生き方にも注目を!
梨泰院クラスのパクセロイ
実は映画「パラサイト」にもカメオ出演していたパク・ソジュン

主役は“出演作は必ずヒットする”といわれるパク・ソジュン

 主演のセロイを演じるのは、「花郎(ファラン)」や「キム秘書はいったい、なぜ?」など出演する作品が必ずヒットを飛ばすと言われているパク・ソジュン。あのアカデミー賞映画「パラサイト」でもその序盤にカメオ出演し、短い時間ながらも脳天気なおぼっちゃっんぶりを見事に演じきってその存在感を示していたので、見覚えのある方も多いのではないでしょうか(ちなみにかの週刊朝日ではあのヒョンビンを抜いて好きな韓流俳優第一位)。彼をヒョン(兄貴)として慕う芸能人も多く、以前、この連載の【番外編】でも触れましたが、BTSのVくんもソジュンに頼まれ楽曲を提供しているほど(ちなみにその曲は、ドラマも終盤に差し掛かる13話にて、ソウルタワーを見晴らす陸橋の上でのシーンで流れますので、お聴き逃しなく)。
 セロイを中心に「タンバム」に集まってくるのは、IQ162の天才少女ながらソシオパスのチョ・イソ(キム・ダミ)をはじめ、「長家」の次男で婚外子というグンス(キム・ドンヒ)、元暴力団組員の前科者、トランスジェンダーのシェフといったいわゆるマイノリティーたち。そんな世間のはみ出しものばかりの小さな小さな「タンバム」の前に、エベレストのごとく立ちはだかる飲食界の絶対的権力「長家」。「友情」と「努力」しか持ち得ないセロイの「タンバム」は果たして「勝利」を掴み取っていくことができるのか。それとも権力によって押しつぶされてしまうのか。
  • 梨泰院クラスのチョイソ

    IQ162の天才少女、チョ・イソ(キム・ダミ)

  • 梨泰院クラスの

    「長家」の次男で婚外子のグンス(キム・ドンヒ)

 倒されても倒されても立ち上がっていく、その壮絶なる闘いっぷりは、やはりこのドラマの一番の見どころで、実際、何者にも屈することなく信念を貫き通し、社会的偏見にさらされつつ生きてきた仲間たちのありのまままの姿を誇りとするセロイの存在は、観ていて心震える痛快さがあります。これほど揺らぎなく真っ直ぐに突き進む男子なんて、現実世界ではまず、お目にかかれません。スタンディングオベーションで称えても足りないほど、いやホント。この闘いの展開だけでも、十分堪能できる作品ではありますが、でも、エクラ世代にはもうひとつぜひ注目してほしい見どころがあります。
梨泰院クラスのオ・スア
セロイが一途に想い続けている初恋の相手、オ・スア(クォン・ナラ)

正反対の生き方をする2人の女性との、微妙な三角関係からも目が離せない!

 それは、セロイを巡る2人の女性の存在です。ひとりはセロイが高校時代から長年一途に想い続けている初恋の相手、オ・スア(クォン・ナラ)。孤児院で育ったスアは、その境遇にある自分がどんな脆弱な立場であるかを痛いほどわかっている現実的で賢い女性です。マイノリティを冷遇する世の中をひとり生き抜いていくために巨大企業である「長家」に就職し、その手腕により「長家」の中枢を担う地位へと上り詰めます。権力を盾に「タンバム」への横暴を繰り返す「長家」のやり方に違和感を覚えつつも、スアは反発することも飛び出すこともせず、ただ静観するだけ。セロイに対しても、自らは動くことはなく、セロイがいつか自分を連れ出してくれるのではと思っていたり……。
梨泰院クラスのチョ・イソ
セロイの想いが自分にないと知りつつも、身を削ってセロイのために動くチョ・イソ(キム・ダミ)
 そして、もうひとりの女性がIQ162のチョ・イソ。インフルエンサーとして世間の注目を集めている天才少女ながら、そのずば抜けた賢さ故に、生きていく価値を世の中に見い出せず短絡的に過ごす毎日。そんななか、セロイに出会い、彼の生き方に圧倒されたイソは、名門大学進学という約束された未来を蹴って「タンバム」のマネージャーとしてセロイの夢を叶えるという生きる価値を手にします。
 ドラマは、壮絶なるセロイの復讐劇を主軸に、この3人の微妙な三角関係が切なく絡み合いながら進んでいくという展開。セロイの心を掴むのは、果たしてどちらの女性? その恋の顛末も大いに興味あるところですが、より心に迫ってくるのは、この2人の女性の真逆ともいうべき生き方の違い。セロイを想う自分の気持ちに揺らぎないイソは、セロイの想いが自分にないと知りつつも、彼への愛を決してあきらめないし、身を削ってセロイのために動き続けます(スアへのライバル心を隠さないストレートさもキュート)。一方、スアは、セロイの心を欲しつつも、セロイと敵対する権力の支えの中で生きる選択をし続けていく……。さて、エクラ世代の女性は、どっちの生き方により惹かれるのでしょうか。
  • 梨泰院クラスのチョイソ

    チョ・イソ(キム・ダミ)

  • 梨泰院クラスのスア

    オ・スア(クォン・ナラ)

 私的に圧倒的に憧れるのは、もちろんイソの強く真っ直ぐな生き方。自分の選択を信じて権力も世間体もものともせず突き進む姿は、今的で本当にかっこいいし、自分もイソだったらなぁ……、なんて痛切に思う場面も多々。なのに、自分を投影してしまうのは、むしろスアのほう(彼女を見ていて、遠藤周作の「わたしが・棄てた・女」の「わたし(吉岡努)」と重なる部分を感じてしまうのですが、それって飛躍しすぎ?)。

 心と行動が信念に向かって常に一致できる人は本当に素敵だし無条件に尊敬してしまいます。が、自分を省みると、そうでないことのほうが多い毎日。だからこそ、潔くないスアに、もどかしさを覚えながら、なぜか肩入れしてしまうという……。そんなあまのじゃく的なエクラ世代も少なくないと思うのですが、どうでしょう。
 「友情」「努力」「勝利」という明快さだけでは終わりきれない大人の女の在りようの複雑さ。さて、あなたはイソ派? それともスア派? この2人の愛する姿勢に、自分を重ね合わせつつ、じっくりと堪能してくださいませ。私的にはそんなスアだからこそ……、と祈りつつ…。
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その言葉、気になる! ドラマのハングル・ワンポイントレッスン

【미치도록 보고싶다】(ミチドロッ ポゴシプタ)「ものすごく会いたい」

 ドラマの終盤、山場を迎える14話のラストシーンで流れるパク・セロイのセリフです。

「미치도록 보고싶다(ミチドロッ ポゴシプタ)/ものすごく会いたい」

 なんだか、胸締めつけられる匂いがしてきますよね。
文章後半の「보고싶다(ポゴシプタ)」は「見る」「会う」という意味の「보다(ポダ)」という動詞に「〜たい」という願望を表す表現「고 싶다(ゴ シプタ)」が合体した言葉で、韓流ドラマのロマンスものにはちょくちょく出てくるので、もはや知っている方も多いのでは。私も韓流にハマって真っ先に覚えたのがこの言葉。日本語の「会いたい」は恋愛時に使う場合、ちょっとジトっとしている響きもあって、「愛している」と同様にストレートに言ったり、言われたりするのは気恥ずかしい感じもしますが、「ポゴシプタ」なら、破裂音や濁音が多いその発音のせいか、なんだか響きが可愛いし、するっと素直に受け入れられる感じ。ぜひ、みなさんも声に出して言ってみてくださいね(できれば、日常で使ってほしいです)。
梨泰院クラス
 で、今回、より注目してほしいのは、実は前半部分の「미치도록(ミチドロッ)」。

 その原型は「미치다(ミチダ)」という動詞で、本来は「狂う」という意味になります。何やら物騒な気配がしてきますが、「変になる」「おかしくなる」「どうかしちゃう」なんて意味合いも含まれていて、実はこの単語も韓流ドラマでは出現率高いグループ所属。例えば、主人公の女子がとんでもない失敗なんかしたときに、自分の頭をポカポカと叩きながら、「미쳤어、미쳤어(ミチョッソ、ミチョッソ)」と叫んでいるシーンなんかは、韓流ドラマの定番かと思うくらいよく出てきます。ミチョッソはミチダの過去形で、直訳すると「狂った、狂った」ですが、日本に置き換えると「あ〜、もう、私ってバカ!バカ!」というニュアンス。自分がバカやっちゃたときは、ぜひ、使ってみてほしいフレーズです。
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 で、大筋に戻りますが、「미치도록(ミチドロッ)」は、その「ミチダ/狂う」という動詞に接続語尾がついた形で、後ろに続く「会いたい」という単語のその思いの強さを表わした表現。Netflixの訳では「ものすごく」となっていますが、この「すごく」という意味の言葉については、「愛の不時着」の回で、「ワンジョン」「ノム」「アジュ」などいくつかあることをご紹介しましたよね。「狂うほどに」「おかしくなるほどに」「どうかしちゃうほどに」という意味の「ミチドロッ」は、多分その「すごく」の最大級。「狂っちゃうくらい“ものすご〜〜〜〜く”会いたい」わけですからね。

 さて、では、それほどまでにセロイが「会いたい!」と願った女性は…。イソ? それともスア? ぜひ、見届けてくださいませ。
■Netflixオリジナルシリーズ『梨泰院クラス』独占配信中
山崎敦子

山崎敦子

旅行記事に人物インタビュー、ドラマ紹介、実用記事から、着物ライターとさまざまな分野を渡り歩き、今では美容の記事を書くことも多くなったさすらいのライター。襲いかかるエイジングと闘いながら、ウキウキすること、楽しいことを追い求め続ける日々を送る。

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