映画『ダリダ~あまい囁き~』は、世界に愛された歌姫の知られざる人生を描いた作品だ。長くマネージャーとプロデューサーを務めたダリダの実弟、オルランド・ジリオッティ氏の全面協力のもとに作られているだけあって、彼女が抱えていた孤独と秘密、そして生涯真実の愛を求めた姿が細やかに描かれている。
映画では全編を通じてダリダのヒット曲が流れるのだが、驚くのが「聞いたことがある」という曲が多いこと。「ベサメムーチョ」、「花の季節」など、'70年代の歌謡曲の空気感をまとって、どこか懐かしさを感じさせる。「数々のヒット曲の裏側にこんな物語があったなんて」と、スターであるダリダがひとりの女性として急に身近に感じられてくる。彼女が本当に欲しかったものは名声ではなく、“夫と子どもと生きる穏やかな日常”。だが、彼女の美貌と才能、そして運命がそれを許さなかった。