<相続編>親の家、あるある疑問Q&A 【どうする?親の“負”動産】

親の家が資産であっても、負動産であっても、悩みはつきない。ここでは、読者から寄せられた素朴な疑問をピックアップし、不動産と相続に詳しい藤戸さんがレクチャー! 今回は「相続」に関する疑問にお答えいただきました。
教えてくれたのは…
相続・不動産コンサルタント 藤戸康雄さん

相続・不動産コンサルタント 藤戸康雄さん

ふじと やすお●’61年、大阪府生まれ。25年以上にわたって不動産金融・法務に従事し、妻の実家の相続問題を機に独立。『「負動産」時代の危ない実家相続 知らないと大損する38のポイント』(時事通信社)の著書があるなど、実家相続のスペシャリスト。

Q.負動産になってしまったら相続放棄すればOK?

A.次の法定相続人に相続権が移るなど、注意すべき点も

「親の遺産が、負動産を含め、不要なものしかないのなら相続放棄も一案。その際は、相続開始を知った日から3カ月以内の手続きが必須です。また、次になるべき法定相続人がいるなら、そちらに相続権が移るので、先方に知らせるのも忘れずに。相続人全員が放棄した場合は、相続財産管理人が選任され、家はなんらかの方法で処分され、最終的には国庫に帰属することになります」。

ほかに債権者などがいないときは、相続放棄をした元法定相続人が、家庭裁判所に「相続財産管理人選任の申し立て」を行う必要がある。それをしないと、管理人が決まらず、いつまでも親の家の管理責任を問われることに。

Q.親が亡くなったら家を売却する予定。注意点はある?

A.相続税対策は今から考えておくのがおすすめ

不動産を売却して得た利益には、必ず譲渡所得税(家を所有していた期間が5年超えなら約20%、5年以下だと約39%。親の家の場合は、親が所有していた期間が基準になる)がかかる。相続した家の場合は、それに加えて相続税が発生することも。実際、’15年の税制改正で基礎控除額が大幅に減った影響で、地価の高い東京都では、’18年の課税割合が16.7%、6人にひとりが課税対象という結果に(東京国税局調べ)。

「『小規模宅地等の特例』(下記参照)のような相続税軽減策がありますが、条件を満たさなければ適用されません。こうした特例を知り、どう活用するか、相続発生前から家族で相談しておくと安心です。なお、親の家を子供たちで共同所有というケースも見られますが、避けたほうが無難。将来売却しようと思っても、共有者全員の同意がなければできないため、紛争に発展することが少なくないんですよ」。

親の家は子供ひとりが相続し、ほかの子供たちは同程度の現金などの代価で調整という方法もある。いずれにしても、まずは親が家以外にどんな資産をもっているのか調べ、早めに対策を練るのが賢明。
負動産対策

《MEMO》「相続税」の知っておきたい基礎知識

相続税の基礎控除額は3000万円+(600万円×法定相続人の人数)

子供2人が相続する場合、基礎控除額は3000万円+(600万円×2人)=4200万円に。不動産の課税評価額が5000万円、現金や預貯金などが2000万円で合計7000万円だと、7000万円−4200万円=2800万円に対して相続税が発生。相続税率は、各人の相続財産の取得額が1000万円以下なら10%、3000万円以下なら15%(控除額50万円)と、額に応じて上昇。

「小規模宅地等の特例」適用なら土地の330㎡まで相続税評価額の8割を減額

適用されるのは、配偶者、同居する親族、別居で一定の要件を満たす親族(相続発生日からさかのぼって3年以内に、配偶者も含めて自宅を所有せず、賃貸暮らしだった子供などが実家を相続。相続税申告期限まで実家を所有し、住み続けていた場合など)。例えば、相続するのは相続税評価額5000万円の実家のみで、同居していた子供ひとりが相続する場合なら、評価額1000万円で、基礎控除額3600万円を下回るため相続税0円に。

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