『シェフと素顔と、おいしい時間』×「シャトー・カロン・セギュール」/大人の恋に必要なのは”素の自分を見せること” 。さりげなく愛を伝えるハートのラベル【シネマに乾杯!vol.9】
ワインを知ると映画はもっと楽しい!エクラでもおなじみのワイン&フードジャーナリストの安齋喜美子が、映画の中に登場するワインやシャンパーニュを楽しく解説!第9回目は、映画『シェフと素顔と、おいしい時間』をご紹介!

理不尽な恋人に別れを告げて新天地を目指す女と、別れた恋人に未練を残し、追いかける男。それぞれに事情を抱えた男女が真夜中のシャルル・ドゴール空港で出会う。折しもストライキと悪天候のせいで飛行機は飛ばず、ふたりは空港で足止めされたまま。ちょっとしたアクシデントがふたりの運命の糸を結び付けていく、大人のロマンティック・ラブコメディだ。
メーキャップ・アーティストのローズ(ジュリエット・ビノシュ)は、アカプルコへ旅立とうとしている。職業柄、パーフェクトなメーキャップを施し、その雰囲気も華やか。いや、ストレートに言えば厚化粧だ。すぐ情にほだされるお人よしで、いまだに毅然と恋人と別れることができず、携帯が鳴ればすぐに出てしまう。
一方、アメリカで食品会社の経営に成功した元シェフのフェリックス(ジャン・レノ)は、神経質でこだわりの強い男。ローズがフェリックスの携帯電話を借りたことをきっかけに、フェリックスは彼女の騒動に巻き込まれてしまうのだ。彼女やその元恋人に怒りを覚え、早く搭乗したいと願うが、一向に飛行機は飛ばない。しびれを切らしたフェリックスは、空港の近くにホテルを取り、そこへ向かおうとする。ローズはといえば、空港のベンチで寝ると平然と言う。見かねたフェリックスが、「部屋はツインだからそこで休めばいい」と提案、ローズも同じホテルの部屋へ。
一方、アメリカで食品会社の経営に成功した元シェフのフェリックス(ジャン・レノ)は、神経質でこだわりの強い男。ローズがフェリックスの携帯電話を借りたことをきっかけに、フェリックスは彼女の騒動に巻き込まれてしまうのだ。彼女やその元恋人に怒りを覚え、早く搭乗したいと願うが、一向に飛行機は飛ばない。しびれを切らしたフェリックスは、空港の近くにホテルを取り、そこへ向かおうとする。ローズはといえば、空港のベンチで寝ると平然と言う。見かねたフェリックスが、「部屋はツインだからそこで休めばいい」と提案、ローズも同じホテルの部屋へ。
いやいやローズ、普通、あなたくらいの大人なら、空港で初めて会った男性とホテルで同室なんてありえないでしょう……と、正直、この映画は”ツッコミどころ満載”。だが、「お人よしの彼女ならあり得るシチュエーションかも」と思わせてしまうのがこの映画の、いや、ジュリエット・ビノシュのすごいところ。そして、嫌味な中に寂しさや温かさを感じさせるジャン・レノがとてもチャーミングなのだ。単純なストーリーの大人のラブコメディなのだが、名優ふたりの演技が、予想以上に”胸キュン”させてくれる。
ホテルの部屋に入ったふたりは、空腹に気づき、フェリックスは早速ルームサービスに電話する。元シェフというだけあって、食へのこだわりは人一倍。「ピスタチオ風味のウサギのテリーヌ」や「ピーマンのムースとアンディーブ」など、彼がオーダーしたのは手が込んだ料理ばかり。
この時、彼が選んだワインがボルドーの「シャトー・カロン・セギュール1996年」だ。メドックの格付け第3級、ワイン愛好家垂涎の銘醸ワインで「サンテステフのシャトー・マルゴー」とも称される。これをホテルのルームサービスでとなると、かなり高価であることが予測されるが、これが、フェリックスの彼のアメリカでの成功をさりげなく物語っている。だが、注目してほしいのはむしろラベルのほう。大きなハートマークが描かれ、これだけで「あ、この恋はハッピー・エンドね♪」とエンディングが予測できてしまうのだ。
この時、彼が選んだワインがボルドーの「シャトー・カロン・セギュール1996年」だ。メドックの格付け第3級、ワイン愛好家垂涎の銘醸ワインで「サンテステフのシャトー・マルゴー」とも称される。これをホテルのルームサービスでとなると、かなり高価であることが予測されるが、これが、フェリックスの彼のアメリカでの成功をさりげなく物語っている。だが、注目してほしいのはむしろラベルのほう。大きなハートマークが描かれ、これだけで「あ、この恋はハッピー・エンドね♪」とエンディングが予測できてしまうのだ。
実は、このハートマークは、かつてシャトーのオーナーであったニコラ=アレクサンドル・ド・セギュール侯爵が考案したもの。彼は18世紀にのちに5大シャトーとなる「シャトー・ラフィット」(現「シャトー・ラフィット・ロスチャイルド」)と「シャトー・ラトゥール」も所有していたが、一番愛着を持っていたのが「シャトー・カロン・セギュール」だったのだ。「我、ラフィットとラトゥールをつくりしが、わが心カロンにあり」というセギュール侯爵の言葉が残っているほど。ハートの絵は、侯爵のこのシャトーへの深い愛情の表れでもある。
フェリックスがなぜこのワインを選んだのか、映画では説明されていないが、もしかしたら、彼は無意識のうちにローズに惹かれ、このハートのラベルのワインを選んだのかも……などとついつい思ってしまう。なぜなら、「シャトー・カロン・セギュール」は、そのラベルからバレンタインデーに開けられることが非常に高いワインとして有名。恋愛のスタートにこれほどふさわしいワインはないからだ。
フェリックスがなぜこのワインを選んだのか、映画では説明されていないが、もしかしたら、彼は無意識のうちにローズに惹かれ、このハートのラベルのワインを選んだのかも……などとついつい思ってしまう。なぜなら、「シャトー・カロン・セギュール」は、そのラベルからバレンタインデーに開けられることが非常に高いワインとして有名。恋愛のスタートにこれほどふさわしいワインはないからだ。
フェリックスとローズは、食事をしながら互いのことを語り始める。するとローズは彼の本質を言い当てるのだ。だが、食事中、フェリックスはとんでもない失敗をしてしまう。なんと、美しくメイクを施したローズの顔に、間違えて思い切りソースをかけてしまったのだ。ローズは怒りつつ、仕方なく化粧を落とすのだが、このシーンがとても素敵。演技派女優としてのイメージが強かっただけに、「ジュリエット・ビノシュって、こんなに美しかったの?」と驚かされてしまった。このシーンの中で“素顔”になったのは、ローズだけではない。フェリックスも次第に心の素顔を見せていく。
ふたりは、一晩語り合ったあと、互いに別れを告げてそれぞれの目的地へ。ローズがタクシーの中から見ているのはアカプルコの眩しい太陽が織りなす光景だ。だが、ふたりの”糸”はまだ切れてはいなかった。自分の気持ちに気づいたフェリックスが、なんとかローズに連絡を取ろうとするが、実はここでも彼らを結び付けた携帯電話が活躍する。そして、ローズがフェリックスに語った「ピンクの窓に青い鎧戸」という”夢の家”が、再び離れた糸を手繰り寄せるのだ。
ふたりともけっこうな大人なのに、大人になりきれなくて人生はうまく行かなかった。でも、互いに素顔に戻れる相手を見つけた今は違う。幸福で穏やかな時間が回り始めたのだ。大人は、いろいろな事情を背負って、いつも”大人の顔”をしている。だからこそ、素顔に戻ることも時には大切。この映画は、きっと大人を勇気づけてくれるお伽話だ。
ふたりともけっこうな大人なのに、大人になりきれなくて人生はうまく行かなかった。でも、互いに素顔に戻れる相手を見つけた今は違う。幸福で穏やかな時間が回り始めたのだ。大人は、いろいろな事情を背負って、いつも”大人の顔”をしている。だからこそ、素顔に戻ることも時には大切。この映画は、きっと大人を勇気づけてくれるお伽話だ。

「シェフと素顔と、おいしい時間」
DVD¥2,090(税込)
発売元・販売元 KADOKAWA
発売元・販売元 KADOKAWA

「シャトー・カロン・セギュール」
フランス・ボルドー。メドック第3級。カベルネ・ソーヴィニヨンを主体にメルロ、カベルネ・フラン、プティ・ヴェルドをブレンド。品種の比率はその年によって変わる。凝縮感のある果実味としなやかなタンニン。スミレやリコリス、リキュール、スパイスの香り。ラムのローストやすき焼きなどの肉料理全般に。写真は2018年ヴィンテージ。750ml/\25,080(税込)

壮麗なシャトーはメドックのサンテステフに位置。プレートにもハートマークが用いられている。

セラーでは”眠れる美女”が目覚めを待っている。2006年から醸造責任者を務めるヴァンサン・ミレ氏が畑と醸造の改革を進め、美しいワインを生み出している。
■「シャトー・カロン・セギュール」のお問い合わせ先/モトックス 0120-344101(フリーダイヤル)
取材・文/安齋喜美子
ワイン&フードジャーナリスト。女性誌を中心に多くの媒体で執筆。ふだんごはんからスイーツ、星つきレストランまで幅広くカバーする。映画が大好きで、登場するワインは必ずチェック。最近は海外の醸造家とオンラインでワインテイスティングの日々を過ごす。シャンパーニュ騎士団シュヴァリエ。
ワイン&フードジャーナリスト。女性誌を中心に多くの媒体で執筆。ふだんごはんからスイーツ、星つきレストランまで幅広くカバーする。映画が大好きで、登場するワインは必ずチェック。最近は海外の醸造家とオンラインでワインテイスティングの日々を過ごす。シャンパーニュ騎士団シュヴァリエ。
What's New
-
国の重要無形文化財に会いに行く、『星のや沖縄』で唯一無二の滞在
沖縄の自然と歴史、そして人々が紡いできた物語を、おもてなしというかたちで紡いでいる『星のや沖縄』。ここでは豪華なだけではない、今の私たちの好奇心を満たしてくれる豊かさがある。国の重要無形文化財・芭蕉布(ばしょうふ)の魅力に触れる特別なプログラムも人気だ。
旅行&グルメ
2025年5月23日
-
壮大なランドスケープに癒される沖縄最高峰のラグジュアリー『星のや沖縄』
日本一に輝いた24時間泳げる加温式の絶景プール、沖縄の健康と美に着目した琉球イタリアン……。沖縄の自然と歴史、そして人々が紡いできた物語を、おもてなしというかたちで紡いでいる『星のや沖縄』。ここでは豪華なだけではない、今の私たちの好奇心を満たしてくれる豊かさがある。
旅行&グルメ
2025年5月23日
-
【50代 “隠れ宿”アドレス】神々しい自然の中を流れる川の音に癒される名湯の宿『妙見石原荘』
マディソンブルー デザイナー/ディレクターの中山まりこさんが、日々の疲れを癒し、リラックス&パワーチャージする宿とは? 静かに非日常が味わえる『妙見石原荘』をご紹介。
旅行&グルメ
2025年5月22日
-
【50代 “隠れ宿”アドレス】海、森、星が美しい石垣島の北部。贅沢でモダンな一棟貸しのヴィラ『Villa El Cielo Ishigaki LUNA』
uka 代表&ネイリストの渡邉季穂さんに、リラックス&パワーチャージする宿を聞いた。海まで歩いて30秒という静かなヴィラ『Villa El Cielo Ishigaki LUNA』ほか、渡邉さんの“隠れ宿”を紹介。
旅行&グルメ
2025年5月21日
-
【50代 “隠れ宿”アドレス】充実したオールインクルーシブ。神秘の湖を望む絶景の宿『しこつ湖 鶴雅別荘 碧(あお)の座』
多忙な中でも素敵にセンスよく活躍するNEOエグゼクティブに、リラックス&パワーチャージする宿を聞いた。柴田陽子さんが通うのは、特別な時間を過ごせる『しこつ湖 鶴雅別荘 碧(あお)の座』。
旅行&グルメ
2025年5月20日
-
-
-
-
「TASAKI」のスーパーロングネックレスをモードにつけこなす【長谷川京子 初夏を照らす「ホワイトジュエリー」】
上品で品のある印象を変えてくれるパールネックレス。長さの違うネックレスを重ねづけすることでおしゃれの幅がぐんと広がる。
Magazine
Feature
-
エクラ公式通販の人気アイテムランキング
もう迷わない!50代が買うべき旬の服
-
大人のためのヘアスタイル・髪型カタログ
髪のお悩み解決!若々しく見えるヘアスタイル
-
読者モデル 華組のZARAコーデ
50代はどう着こなす?ファッションブロガーコーデ集
-
夏を美しく彩る3タイプのワンピースが完成
体型悩みに寄り添い、快適で、気分も上がる。理想のワンピース
-
50代におすすめのトレンドアイテム
人気ファッションアイテムを厳選してご紹介
-
一度は泊まりたい!高級ホテル・旅館
日常を忘れて至福のときが過ごせる極上の旅へ
-
オンもオフも、涼やかに美しく決まる!
「アクアスキュータム」から大人におすすめのサマー・ルックを厳選
-
読者モデル 華組のユニクロ・GUコーデ
真似したい!50代ファッションブロガーの着こなし集
-
上品カジュアルが叶うデニムスタイル
ほどよくカジュアルで上品にあかぬける大人のデニムコーデ
Ranking
-
【おしゃれな50代の「ZARAコーデ」】高見え必至!華やか小物やカラーアイテムでシンプルな初夏の装いを格上げ
40代50代女性のワードローブに欠かせない存在・ZARA。あらゆるシーンで活躍するアイテムが豊富に取り揃えられている。そこで今回は、初夏に取り入れたいバッグやシューズなど小物アイテムを上手に活用した40代・50…
-
それどこの?50代女性がスタイルよく見えるデニム11選【チームJマダムまとめ】
体型に合うデニム選びはなかなか大変。すっきりスタイルよくはきこなしている50代女性たちの、愛用している1本をご紹介。話題のブランドから手ごろなプチプラまでそろっているのでチェックして!
-
【韓国ドラマ】忙しい毎日の「疲れた心が癒される」あたたかい感動ドラマ8選
日々の忙しさに追われ、ふと心が疲れてしまうそんな日は、大人の心に寄り添い、そっと励ましてくれる温かい感動のストーリーがおすすめ。
-
40代を若々しく見せる!初夏の大人気「ボブヘア」20選
40代に入ると、白髪やヘアのボリュームなど髪の悩みが増えてくる。そんな髪悩みを解消してくれる「ボブヘア」をピックアップ。カットやパーマで髪悩みを解決しながら小顔見せや年齢よりも若く見せられる!
-
【50代 Tシャツ】気温28度、50代に似合うTシャツ10コーデ
これからの季節に欠かせないTシャツ。大人が選ぶなら体型をさりげなくカバーしてくれるタイプやカジュアルになりすぎない洗練されたデザインを選びたいもの。シンプルだからこそ、ディテールにこだわったセレクトで…
Keywords