N°5、それは革新の象徴。ガブリエル シャネルの美意識が息づく「シャネルN°5」

香水の歴史は「N°5以前」と「N°5以後」に分けられる、といわれるほどの革命を起こしたガブリエル シャネル。彼女にしかなしえない、香りの革新の秘密を解き明かす。

“なぜ私は革命的と見なされるのか。

それは私が、まず何をおいても、自分が嫌いなものを

流行遅れにするために作っているから。

私は自分の才能を、爆薬のように使っているのよ”

シャネルN°5

「19世紀のスタイルを皆殺しにした天使」。ガブリエル シャネルをそう表現したのは、詩人で小説家のポール モラン。ただし古くさいものの「破壊」を原動力としたそのクリエーションは、間違いなく普遍的に人を魅了する、稀有なパワーを秘めていた。

合成香料を駆使し、何のノートとわからせない初の抽象的な香り。清潔感と、男性の心をとどめる官能性を兼ね備えたN°5が、革新的だったのは香りだけではない。

例えば香水といえばポエティックな名前と決まっていた時代に、「5番」というコードのような名前をつけたことも。それはエルネスト ボーが作った試作品のうち、ガブリエルが「これこそ私が求めた香り」と選んだのが5番目の瓶だったから、ともいわれている。でもそれ以上に5は多様な文化や宗教でも重要な数字であり、なにより彼女自身にとって、特別なラッキーナンバーだったから。しかも言語に関係なく、誰もがひと目でそれとわかる名前になった。


さらに当時の香水にはありえない、装飾を削ぎ落としたボトルも、このうえなくアバンギャルド。彼女は「売りたいのは香水であって瓶ではない」といったそうだけれど、そこには確かに彼女の研ぎすまされた美意識が息づく。それはアンディ・ウォーホルが作品のモチーフにし、NY近代美術館の永久収蔵品となった唯一の香水でもある。

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