-
どう受け止める?どう受け止めた?「親との別れ方」をアンケート
アラフィー世代にとって、「親の死」は決して遠いものではない。“その時”を、冷静に、穏やかな気持ちで迎えられるかと聞かれると、答えに窮する人も多いのでは? 実際に親を見送った人に「親との別れ方」についてアンケートをとった。(Jマダム100人アンケートの結果より)
母の死をゆっくり受け止め中。田村淳さんの「親との別れ方」
田村 淳さん
“手術はもうしない”という母の最期の希望を受け入れた
コロナ禍にまみれた2020年の夏、72歳の母親を見送った田村淳さん。肺がんが発覚してのちの闘病、逝(い)くまでを、幼少期からの母との思い出を含ませながら、『母ちゃんのフラフープ』という本につづった。
「母ちゃんに、がんが見つかったのは6年前です。めちゃくちゃたくましくて明るい人だったので、信じられませんでした。到底、受け止められなくて……」
直後に頭に浮かんだのは、20歳のころから、母からずっといわれていた「私には延命治療はしないで」という言葉だった。
「元看護師だったんです。常に生と死を考えざるをえない現場にいた、それが大きかっただろうなと思います。それに死をめぐって、いろいろな家族の姿を見てきていた……そんなこともあったようです」
手術をためらった母を、説得した。「母ちゃんの意思は尊重するけど、これは悪いところだけをとる前向きな治療だよ。家族全員の総意だから、考えてと」
2カ月後、手術にいたった。無事にすんだが2年後、再発した。今度は「あらゆる手術も、がん治療もしない」と、母の決意は固かった。父と弟と3人で何度も話し合った末、母の最期(さいご)の希望を受け入れることにした。
「母ちゃんは人生を投げ出したわけではない、残された命を精一杯、生きる道を選んだのだと。それを見守ることが務めだと思いました。僕らはグループラインを作って、常に連絡を取り合うようになりました」
「人生でやりたいこと」をノートに書いていたと知り、その中のひとつ、“屋形船に乗りたい”という思いを東京湾でかなえた。
「日ごろからお世話になっている人たちをたくさん招いて、幸せな日でした。ずっと元気なのではないか、とさえ思えた」
だが病は進行していた。主治医から余命が告げられた昨年、しばらくして大腿骨を骨折するかたちで入院となった。このころには全身に痛みを抱えていたが、死を覚悟した母が最期に望んだのは、『なんとか一時退院して、長年、住み慣れた家で72歳の誕生日を迎えたい、孫たちにも会いたい』という願いだった。家族はその望みに応えた。そして、再入院した母は息をひきとった。
「実はがんが発見された年に、母ちゃんから“尊厳死求め宣言書”なるものが、送られてきていたんです。『私の要望に基づく行為、いっさいの責任は、私自身にあります』と書かれていました。そのほかにも、『終活ノート』を用意していて、家族それぞれに向けた言葉、葬儀の会館や棺に入れてほしいもの、それからなんとウェディングドレス姿の遺影、読経をしてもらうご住職さん、納骨堂、出棺のときの音楽……と、あらゆることをひとりで決めて逝きました。けっこう前から断捨離も始めていたらしく、そのことを妻は気づいていたのですが、タンスには服一枚ありませんでした」
この、死を前にした、潔いと思えるほどの覚悟については本書に詳しい。
「何事にもへこたれずに、まるごと生きてきた母ちゃんらしい最期だったと思います。コロナ禍で参列者は12人とかぎられましたけど、みんなで泣き笑いしてしまうような、温かい見送りができました」
一周忌を迎え、いまだ母の死をゆっくり受け止め中。人生はまだ続くので、すぐに受け入れなくてもいいかな、と。
先月、一周忌を迎えた。「(母の死を)いまだ受け止められない自分もいますが、早く受け入れなくては、前に進まなくては、ということではなくて、人生の中でゆっくり受け入れていけばいいと思っています。ものすごく大きな喪失感がないのは、母ちゃんが自分の死を受け止めて、細かく意思表示をしてくれていたこと、親子で気持ちを伝え合えたことが大きいと思います。だから後悔はありません」
親に伝えなかった後悔より、 伝えてしまった後悔のほうがいい。忖度し合っていたら、親の気持ちはわからない
親と、老後や死について話す。これはなかなかの難関だ。だが田村さんは自分の経験から「親に伝えなかった後悔より、伝えてしまった後悔のほうがいい」と話す。
「忖度し合っていたら、答え合わせができなくて、親の気持ちはわからないままです。逝く人にジャッジしてもらわないと、遺(のこ)される側の心の負担になることは多いと思う。子が親に根掘り葉掘り聞くのって、はばかられるけれど、“どう死にたいの”よりも“どう生きたい?”と聞くと、死の話にも自然とつながるのではないでしょうか」
田村さんの父は納骨をできずにいたというが、1年が過ぎ、「母の決めた納骨堂に納める気持ちになったようです」という。
「世間的には、納骨の時期とかあるかもしれませんが、うちはうち。そばに置いておきたかった気持ちが大切だと思うんです。無口で頑固な父ちゃんが、すっかりしょげて泣くこともあった。母ちゃんは、この先父ちゃんが死んだら、自分の骨といっしょにして、暮らした下関の海に散骨してほしいとも遺していきました。いずれ……その時がきたらかなえてあげたいなと思っています」
2017年から、田村さんは遺書動画サービス『ITAKOTO』というプロジェクトを始めている。母の病気のこともあり、遺していく人たちに直接、動画でさまざまな事柄、気持ちを伝えられないものか、と考えたからだった。そのために大学院で死について多面的に学んだ。
「唯一の心残りは、修了したことを伝えられなかったこと。こんなドラ息子でもがんばったよって、伝えたかったな」
“死”は「人に人生を考えさせる」という。「命は有限で、ふいに終わりがくるかもしれない。やりたいことはすぐにやろう。改めて母ちゃんが教えてくれた。あの母ちゃんの息子に生まれて幸せでした」
『母ちゃんのフラフープ』
田村 淳 ブックマン社 ¥1,540
下関市・彦島で生まれ育った少年は、芸人を目ざし上京。成功するまでには常に母の励ましがあった。その母が患い看取るまでをつづった、感動の家族物語。巻末に「遺書概念」についての修士論文を収録。
-
離れて暮らす親との付き合い方「実家のデジタル化」リモートでコミュニケーションをとる方法
コロナ禍で、離れて住む親になかなか会えない人も多いはず。リモートでのコミュニケーションや見守りの必要性が高まってきた今こそ、実家のデジタル環境を整えて、快適で安全に、家族の絆を深めたい。
-
相続、介護、免許返納etc…50代から考える「親との関係」
親が70代、80代になり、まだまだ元気でいるものの、会うたびに少しずつ衰えを実感している人も多いのでは? 長年介護問題と向き合ってきた専門家が親が元気なうちにできることや、知っておきたい情報についてお答えします。
-
50代を取り巻く今どきのお墓事情!「親の墓の探しどき」が「自分の墓の考えどき」
親のお墓を新たに建てたり、遠方にある親のお墓を自分たちの住まいの近くに移したり、そろそろお墓が身近な問題になるアラフィー世代。そのときふと頭をよぎるのは、「自分たちのお墓はどうしよう!?」 費用や管理、継承者問題など、お墓にまつわるトラブルは多数。「まだ先のこと」と見て見ぬふりをするなかれ!”そのとき”まで余裕がある今だからこそ、お墓についてじっくり考えてみませんか?
What's New
-
「一人が怖い」「一人になりたい」そんな気持ちになったら……?50代の「心の揺れ」を徹底解説
人生経験を重ねてきたはずなのに、ふと抱く孤独感と逃避願望。その背景を脳と心の両面から深掘り!
50代のお悩み
2025年9月27日
-
“一人が怖いとき、一人になりたいとき”エクラ世代がふと抱く孤独感を感じるエピソードを公開!
人生経験を重ねてきたはずなのに、ふと抱く孤独感と逃避願望。エクラ世代が抱える“一人が怖い”、“一人になりたい”と感じるエピソードを公開!
50代のお悩み
2025年9月22日
-
【50代のお悩み】一人っ子で独身、親がいなくなったら天涯孤独に。将来の不安がぬぐえないというお悩みへアドバイス
脳科学者・中野信子さんと、メンタルケア・コンサルタントの大美賀直子さんが、50代のお悩みにアンサー。今回は一人っ子で独身なので将来に不安を感じる、というお悩み。
50代のお悩み
2025年9月21日
-
【50代のお悩み】時に人付き合いが煩わしいけれど孤独にはなりたくない…どうしたら?
気遣いをしたり人のペースに合わせるのは煩わしいけれど、孤独にはなりたくない…というお悩み。脳科学者の中野信子さんと、メンタルケア・コンサルタントの大美賀直子さんがアドバイス。
50代のお悩み
2025年9月20日
-
【50代のお悩み】子が独立し夫に先立たれたら? 1人になることを考えて鬱々してしまいます
脳科学者・中野信子さんと、メンタルケア・コンサルタントの大美賀直子さんが、一人が怖いエクラ世代のお悩みにアドバイス。子供が独立し、夫にも先立たれたらと思うと不安で仕方ないというお悩みへのアンサーとは?
50代のお悩み
2025年9月19日
-
一度は泊まりたい!高級ホテル・旅館
日常を忘れて至福のときが過ごせる極上の旅へ
-
読者モデル 華組のユニクロ・GUコーデ
真似したい!50代ファッションブロガーの着こなし集
-
松井陽子の「エクラ ゴルフ部へようこそ!」
松井陽子さんが50代におすすめのゴルフウェアやゴルフの楽しみ方をご紹介。
-
エクラ公式通販の人気アイテムランキング
もう迷わない!50代が買うべき秋の服
-
大人のためのヘアスタイル・髪型カタログ
髪のお悩み解決!若々しく見えるヘアスタイル
-
50代におすすめの最新アイテム
人気ファッションアイテムを厳選してご紹介
-
最新のテクノロジーで女性の体と心をケア
フェムテックで女性の不調に寄り添う。株式会社MTG SIXPADの施策とは
-
「ポール・スチュアート」の上質エレガンス
深まりゆく季節に俳優・月城かなとが着こなす最新のワードローブ
-
読者モデル 華組のZARAコーデ
50代はどう着こなす?ファッションブロガーコーデ集
-
大人の秋は「レキップ」の洗練アウターで
深まる秋、英国調ムードのアウターで着こなしをアップデート。
-
「モラビト」この秋パリのエスプリとともに
この秋、大人の日常に上質な華やぎと品格を添えるウェア登場。
-
板谷由夏「セオリーリュクス」で秋の装い
この秋、レイヤードスタイルで装いに上質感と奥行きを。
-
MYサイズが必ず見つかる!すっきり見えパンツ
大人に大人気のパンツをウェブエクラ編集長シオヤがお試し!
-
渡辺満里奈さん“生誕2万日”イベントを開催
渡辺さん「10年先も健康で髪がフサフサでいられるよう」使いたい育毛美容液とは?
-
ビタミンC+Dを効率よく届けるサプリとは
Lypo-Cと出会って変わった亜希さんのインナーケアを公開
-
【50代におすすめ・秋のボブヘアスタイル60選】老けて見えない!おばさんぽくならずふんわりボリュームを取り戻す
白髪や薄毛、うねりなど40代50代で増えてくる髪悩みを解消して、おばさんぽくならない今どきのボブヘアをご紹介。上品で洗練されたヘアスタイルに変えて気分も一新!
-
シャツもジャケットも「デニム」でこなれて見せる!50代の秋コーデ
シャツやジャケットのベーシックなアイテムこそ、“デニム合わせ”でこなれ感をプラスして、大人のきれいめカジュアルを更新。スタイルアップも叶う、今の気分にちょうどいい大人のデニムコーデ。
-
美術館・展覧会になに着ていく?きちんと感のある50代にふさわしい美術館・展覧会コーデ5選
秋といえば、食欲の秋、スポーツの秋、そして芸術の秋。さまざまな場所で芸術に触れるイベントや展示が開催されています。そんな季節にぴったりのコーディネートを、40代・50代の読者モデル・華組&チームJマダムの…
-
【おしゃれな50代のZARAコーデ】秋のおしゃれに絶対使える!デニムやスニーカーなど人気アイテムコーデ
秋のおしゃれに欠かせない存在のZARA。40代・50代女性が選ぶアイテムって?今回は、おしゃれ好きな読者モデル華組の皆さんが今、愛用しているZARAアイテム&コーデをご紹介!
-
髪がきれいに見えて、あか抜ける「50代の今どきロングヘア」23選
今どきロングヘアは、髪のツヤ感で若々しく見える!ボリューム不足も白髪悩みもカットやカラー、パーマで思いのままに解決できる。こなれた印象に見せる洗練ロングヘアスタイルをお届け。