「親の死」のショックはいつか癒える?“看取りの人”小澤竹俊先生が悩みに答える

いつか必ずくる「親との別れ」。避けることができない親との別れ、それをどう受け止めればいいのか。これまで3500人もの患者を看取ってきた小澤竹俊先生が、「親の死」の癒やし方について答える。
教えてくれたのは…
ホスピス医 小澤竹俊先生

ホスピス医 小澤竹俊先生

東京慈恵会医科大学医学部卒業後、山形大学大学院医学研究科医学専攻博士課程修了。救命救急センターやホスピスなどを経て、’06年、めぐみ在宅クリニック開院。

「どんな状況にあっても、幸福に、穏やかな最期を迎えることができるのだということを、この世を去っていった患者さんから学びました」そんな小澤先生の言葉が、沈んだ心に光を照らす一助になることを願って……。

Q.親の死のショックはいつか癒えますか?

母の死から20年がたちますが、「もっとしてあげられたことがあったのに」と後悔したり、亡くなったときのことを思い出して涙が止まらなくなったり。今も親の死を引きずっている自分に、われながらあきれています。時が解決するといいますが、癒える日はくるのでしょうか?(55歳・主婦)

A.いつの日か癒えるといいたい。心と心のつながりはずっと生きています。

まずお伝えしたいのは、大事な人を失って悲しむのは、極めて自然だということ。それが20年も前のことであろうと、です。特に、親との間に太い絆があればあるほど、その死による心のダメージは大きいもの。なので、悲しみ続ける自分を、おかしいとか、間違っているなどと責めないでください。

この悲しみが、いつか癒える日がくるのかという問いには、私は、「必ずきます」と答えたい。なぜなら、人と人は、心と心でつながることができるから。お母さんの人生を振り返り、その思いをつないでいく。まずは、そこから始めてみてはいかがでしょうか。

Q.大好きな母の死を受け入れられるのか心配……

母とはとても仲がよく、大好きで、かけがえのない存在です。なので、母がいずれ亡くなるのだと考えただけで、恐怖で胸がつぶれそうになります。今からこんな状況では、“その日”がきたとき、自分がどうなってしまうのか心配。親の死を、穏やかに受け入れられるようになりますか?(48歳・会社員)

A.年齢とともに衰弱するのは自然なことなのです。

大事な人と、少しでも長く一緒にいたい。そう思うのは当然ですから、「今からお別れの準備をしましょう」とは、とてもいえません。けれど、誰もがいつかは最期を迎えますし、体には年齢相応の衰えが起こります。お母さんのことが大好きなあなたにとっては、つらいことかもしれませんが、それは、大前提として知っておいていただきたいと思います。


そして、“その時”がきたとき、どうするか。お母さんの命をむりやり長らえさせよう、衰弱をくい止めようとすれば、かえって大事なお母さんを苦しめてしまうかもしれません。それよりも、お母さんの体の声に耳を傾け、自然の流れの中で、穏やかなお別れをしていただきたいと思います。

親との別れ

Q.父に穏やかな最期を迎えさせてあげられず後悔しています

父は生に執着するあまり、病気になった自分の運命を受け入れることができませんでした。「心臓に疾患があるから」と医師に断られても抗がん剤治療を熱望し、その副作用で呼吸困難に陥っても目を見開き、昏睡に陥る直前まで周囲に怒鳴り、暴れていました。鬼のような形相が今も目に焼きつき、トラウマになっています。病気が見つかったときはすでに末期だったので、治すことに躍起になるのではなく、がんと共存するかたちで痛みや恐怖を抑えた穏やかな最期を迎えさせてやればよかった……と後悔しています。(55歳・自由業)

A.穏やかな死=最高の最期ではありません。

病気と共存するよりも、最後の最後まで病気と闘い、突き進む。それこそが、お父さんの生き方であり、誇りある姿なのではないかという気がします。だとしたら、これは最高のお別れの仕方のひとつ。たとえ最期を怒りの表情で迎えたとしても、それがその人らしさならば、それもまた穏やかな死。お父さんはきっと満足だっただろうと思います。


もしも私がお父さんの担当医なら、「最後まで闘いたいんですね。その思いはどこからくるのでしょう」と、聞いてみたい。おそらく、「孫の成長を見たい」など、死ねない理由があったのだろうと思います。お父さんという人を、そんなふうに理解してあげることもできるのではないでしょうか。

Q.ひとり遺された母への寄り添い方

しっかり者だった父が亡くなり、実家には母ひとりになってしまいました。気落ちしている母にどう寄り添えばいいのか、アドバイスをお願いします。(48歳・パート)

A.お父さんならどんな言葉をかけるか……を考える。

穏やかになれる条件は、人それぞれ違います。何があれば笑顔になれ、自分らしくいられるのか。まずはお母さんの性格や生活などを踏まえ、考えてみましょう。それがイメージできたら、なるべくその状況になれるようにサポートを。おしゃべりが好きなら会話の機会を増やす、食べるのが好きならおいしいものを送る、といった具合です。

また、お父さんが、向こうからどんなメッセージをお母さんに伝えるだろうかということにも、思いを馳せていただきたいですね。「お父さんはこんな人だったよね。きっと、天国からお母さんに、こういっているんじゃないかな」。それが、「会いたい」という気持ちや寂しさを、お母さんにもたらすかもしれませんが、同時に絆の再確認になり、“今”を穏やかに生きる力になるだろうと思います。

  • 何を準備しておけばいい?ホスピス医が「親の死の迎え方」に関する悩みに回答

    これから訪れるであろう親の死への恐怖や不安、すでに世を去った親に対して抱く後悔、癒えない悲しみ。アンケートには、親の死にまつわるさまざまな悩みや疑問が寄せられた。それにアドバイスをしてくださったのは、緩和ケアに25年間従事し、これまで3500人以上の患者を看取ってきた小澤竹俊先生。今回は「親の死の迎え方」に関する悩みに回答。

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