大好き!でも、ときにちょっとうっとうしい?母との関係性は良好ですか?

いつも一番の味方かと思えば、厳しい注文をしてきたり。eclat9月号では、50代の母娘関係の実態と、その理由に迫ります。

父親不在の家庭で母と娘がより密接な関係に

 男女平等を教育されたとはいえ、母親世代が社会に出たころはまだまだ男社会。大学を出てもいい就職先は少なく、女は家庭に入って子育ての責任を負うのが当然の時代だった。
「父親不在などといわれていました。男性が仕事に没頭していた陰で、家庭では母親と子供は一心同体のような密接な関係に」(信田さん)
 そんな強固な母子関係の中で、母親の気持ちは同性の娘に向かった、と精神科医の香山リカさん。
「自立を目ざしながらも、社会に翻弄されて夢を果たせなかった母親世代。大学に行きたかった、バリバリ働いて社会で輝いていたかったという願望を、同性の娘に託すようになった部分があります」(香山さん)
 そうした母たちのおかげで、私たちはもしかしたら母も夢見ていた、進学や就職を後押ししてもらえたのだ。それをわかっているからこそ、母のこれまでの苦労をねぎらい、今度は母に幸せになってほしいと願うのかもしれない。

娘の心の声

『専業主婦の母がじれったい。もっと自由に生きて!』(Mさん・49歳)

大好き!でも、ときにちょっとうっとうしい?母との関係性は良好ですか?_2_1
今年74歳になる母は、学校を出てすぐ結婚し、ずっと専業主婦。母が大好きな私にはとても幸運だったけれど、今になってもったいないなと思う。もっと自由に、自分だけの世界をもって生きてもいいのに、と。

先生のコメント

「母親の年代が子育てをしていたころは、男性が外で働き女性は専業主婦がモデルケースだった。女性も仕事をもち、自由になるお金を手にしていることも多い今とは、状況が違ったんですよね」(信田さん)。時代が変わったからといって、いきなり生き方の転換を求めるのは酷なのかも。「母親の人生を尊重し、適度な距離で見守って」(香山さん)

娘の心の声

『本家の嫁となり家族につくした母。感謝です!』(Tさん・50歳)

大好き!でも、ときにちょっとうっとうしい?母との関係性は良好ですか?_2_2
本当は都会に出たかったけれどかなわず、本家の嫁となった母。愚痴ひとついわず家のため、家族のためにつくしてくれた。私たちは母のような女性たちの恩恵を受けて、今の自由を手にしたのだと思う。もうただ感謝しかない。

先生のコメント

「母親世代が結婚したのは、女性は嫁いだ先の人間になる、という観念がスタンダードだった時代。都会に出る夢があったのに、それをあきらめて本家に嫁いだという母親には、相当な忍耐と気持ちのコントロールが必要だったことでしょう。娘がそんな母親の生きざまを認めることは、精神的にほどよい距離感を生み、よいのでは」(香山さん)

お話をうかがったのは…

精神科医 香山リカさん
立教大学現代心理学部映像身体学科教授。『さよなら、母娘ストレス』(新潮文庫)など著書多数。
臨床心理士 信田さよ子さん
原宿カウンセリングセンター所長。著書に『母が重くてたまらない 墓守娘の嘆き』(春秋社)など。
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