富岡佳子が会いに行く 学び塾「猫の足あと」代表 岸田久恵さん

eclat10月号では、富岡佳子さんが学び塾「猫の足あと」代表の岸田久恵さんと“子供の貧困問題”について対談。私たちに何ができるのかを考えます。
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Q.ひとりの母親として子供の貧困問題が気になります。私たちに何ができるでしょうか?(富岡さん)

A.大切なのは、子供を育む“地域”の見直し。ぜひ“お節介おばさん”を目ざしてください(岸田さん)

■始まりは自宅の居間。家族全員で塾を開いた

 子どもの貧困問題について、何かできることはないのか、ずっと考えてきた富岡さん。西東京市にある、岸田文惠さんの活動拠点「猫の足あとハウス」にうかがった。

富岡 38年間、小学校の教師をなさっていたんですね。そのころから子どもの貧困は実感なさっていましたか?
岸田 それは昔からありました。給食費を持ってこられない子がいたり、長い間お風呂に入れない子がいたり。さらに目立つようになったのは、'08年のリーマンショック以後です。夏休み中は給食がないから痩せてしまう、という報道があったくらいです。
富岡 それまではあまり、認識されていなかったんですね。
岸田 なかったですね。貧困というとアジア、アフリカの一部で、子供が5歳まで生きられないような絶対的貧困。そんなのは日本にないよね、と。
富岡 でも相対的貧困は増えてきたんですね。非正規雇用で収入の低いかたとか、離婚でひとり親になってしまったかたの子どもたちが、ほかの子供と同じような環境で育つことができず、同じ教育が受けられなくなったり。
岸田 そうです。でもそれは親が働かないせい、自己責任だと言われ、困っていても声をあげられず、社会から孤立しがちです。離婚した自分が悪いと思いながら、ダブルワーク、トリプルワークでがんばっている女性も多い。そうなると子どもの面倒をみたり、一緒にご飯を食べることもできなくなる。
富岡 岸田さんはそんな状況をお知りになって、なんとかしようと?
岸田 そうですね。まずは教師の自分ができることをやろうと思いついたのが、自宅で塾を開くことでした。夫も中学校教師なので、共通の意識はありますし、娘と息子も学生の立場で教えることはできる、やってみたいといってくれたんです。自宅の8畳間しか使えませんから、塾に行けない中学3年生をギリギリ5人だけ。
富岡 ピンポイントでその学年を?
岸田 そこが分かれ道で、都立に入れなかったら働くしかない子がいるんです。高卒で就職できるかどうかで、その後の人生は決まりますから。
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家族と手弁当でつくり上げた、戸建ての学習支援ハウス

 ′16年開設の「猫の足あとハウス」とオープン時の記念写真(前列4人が岸田さん一家)。1階は小中学生の学習支援のための教室。2階は自立を目ざす若者向けの賃貸部屋が5つある。自宅を開放して中学3年生を対象とする学習支援に取り組んだころから、中学校教師の夫が顧問、娘と息子が講師という、家族一丸の活動だった。
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