富岡佳子が会いに行く 学び塾「猫の足あと」代表 岸田久恵さん

eclat10月号では、富岡佳子さんが学び塾「猫の足あと」代表の岸田久恵さんと“子供の貧困問題”について対談。私たちに何ができるのかを考えます。

■貧乏は笑い合えるけれど貧困は孤立、笑えない

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最初の生徒のひとり、A君は、学校の勉強についていけず、家庭も経済的に苦しかった。岸田さんの息子にマンツーマンで数学を教わり、都立の定時制高校に無事入学。卒業後、お礼のチョコレートを持って挨拶に来たとか。それを聞いた富岡さんは、思わず目頭にハンカチを。
岸田 家中で応援して達成感を味わえましたから、やはり家族を巻き込んで良かったと思いました。それに、息子にもよい経験になったんです。息子はそのころ高校を中退して、自信を失っていました。A君にかかわったことで彼もまた、危機を脱したのだと思います。
富岡 そして去年の春、この「猫の足あとハウス」を建てられたんですね?
岸田 それまでは中3の少人数しかかかわれなかったけれど、今は小学生も。養護施設を卒所しなければならない子や、奨学金の返済で苦労している若者にも対応できるようになりました。
富岡 エクラの読者の中にも、子どもの貧困が気になっている人はいます。私たちに何ができるでしょうか?
岸田 こうして何か始めますとね、そう言って力を貸してくださる人は多いです。ここで食事支援もしているので、野菜やお米、お菓子を寄附してくださったり。小学生の相手をして、逆に癒されたと言って帰るかたもいます。そういう善意を、もっと表に出していいと思いますよ。それぞれの地域で〝お節介なおばさん〟になって下さい。困っている人に声をかけたり、できることから始めてくだされば。
富岡 まず一歩踏み出すこと、ですね。
岸田 私は団地育ちですが、当時はご近所みんな貧乏でした(笑)。でもそれが恥ずかしいわけではなく、助けあえばいいとみんな思っていた。今の貧困は貧しさだけでなく、孤立が問題なんです。地域のつながりを意識してつくっていくことが大事。ここも、子供たちにとってのいい居場所にしたいですね。
富岡 だからお節介なおばさん、なんですね。はい、私も目ざします!(笑)
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進学していった生徒が、教える側として再訪することも

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最初の生徒たちからの感謝の寄せ書き。巣立った子の中には教職を目ざしたり、「ここで自分も教えてもらったから」と先生役を買って出る子もいる。「教えられ、また自分が教えるという循環が自然にできているのがうれしい」と岸田さん。

実際にお会いして…Yoshiko's MEMO

教育の現場や活動の最中に体験なさったことを直(じか)にうかがうことができました。岸田さんは責任感があって誠実で、まわりを巻き込んでいくパワーがある。こういうかただから地域に密着して人を助け、助けられる関係がつくれるのでしょうね。私たちも力を合わせて、小さなことでもいから何か行動を起こせば、誰かの役に立ったり、誰かを助けることができるはず。そんな勇気をいただきました。

お話をうかがったのは…

きしだ ひさえ●′55年生まれ。新宿区の小学校教員、東京都教職員組合執行委員、東京都労働組合連合会役員を務める。在職中の′11年から家族4人で学び塾「猫の足あと」を立ち上げた。'16年3月の教員定年退職とともに、1階に無料の塾、2階に自立を目ざす青年のための賃貸部屋を備えた「猫の足あとハウス」を開設し、運営にあたっている。

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