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社会をよくするためにアラフィー世代ができることとは?
「子育てや仕事が一段落したらボランティアをやりたい」、そう思っている人は少なくない。でも、いつ「一段落」する? いつかじゃなくて、今できることはたくさんある! アラフィー世代に関心が高いテーマを中心に、ボランティアや社会貢献について考えてみた。
今、求められる社会貢献って?みんなで育てる「里親制度」
「里親制度」をわかりやすく解説
日本財団 高橋恵里子さん
子供たちが家庭的な環境で温かく育つための制度
里親制度は、実親の病気や離婚、経済状況など、さまざまな理由から、親元で育つことがむずかしい子供たちに、家庭的な環境下での生活を提供する公的支援のひとつで、第一に「子供たちのため」の制度。
長年、里親制度の普及活動にかかわる日本財団の高橋恵里子さんは、「日本では里親制度の認知度がまだ低く、必要な子供たちの利用が十分ではないのが現状」と懸念する。
「親元を離れざるをえなくて傷ついた子供たちも、里親家庭で愛情を受けることで、自己肯定感や信頼感を取り戻せます。将来の家庭を築く基盤がつくられるのです」
虐待を受け親元にいられなくなる子供も。彼らはまず児童相談所にある「一時保護所」に保護される。一時、とあるが「ここに2カ月以上滞在する子供も。また、一時保護所から施設に移るケースが多い」と高橋さん。
「海外に比べて日本は小さな子供も乳児院などの施設にいることが多い。やはり里親など家庭的で温かな場に移れることが、子供には理想です」
養子縁組制度とは何が違うの?
里親制度は医療費や教育費も支給される
里親になると経済的負担がどれくらいなのか、不安を感じる人もいるかもしれない。「養子縁組」をすると、親権が育ての親に移るため国からの援助は出ないが、「養育里親」として子供を預かる場合は、1人当たり毎月9万円の「里親手当」と、5〜6万円の養育費(食費や衣服代などにあてる)が国から支給され、教育費や医療費は公費負担で無料。被虐待児や、障害がある子供など、専門的ケアが必要な子を預かる専門里親の場合は養育費支給が月約14万円になる。「手当があることを知らず、興味があっても里親になることを断念する人もいます。これは残念なこと。ぜひ手当や相談支援などがあることを知ってほしい」と高橋さん。養育費を使えば実負担はそれほど多くないと理解しておこう。
参考/日本財団公式ホームページ
里親にはどんな種類があるの?
養育里親
社会的養護が必要な子供を一定期間、家庭で養育する。通常、里親とは養育里親をさす。期間は数カ月から1〜2年の「短期」と、自立するまで預かる「長期」がある。原則は子供が18歳になるまでだが、状況により延長するケースも。一方、実親の希望で途中で親元に戻ることも。
養子縁組里親(養子縁組を希望する里親)
養子縁組(基本的には特別養子縁組)を希望する里親が、準備段階として、養子縁組の必要な子供を養育する。期間は養子縁組が成立するまで。
専門里親
被虐待児童や、身体障害や知的障害があり専門的ケアを必要とする子供を養育する。別途要件があり、事前に専門的な研修を受けることが必要とされる。
親族里親
実親が死亡したり、行方不明になるなどの事情で子供が養育を受けられなくなった際に、祖父母などの親族が親権をもち、子供を養育する。
▼自治体によってはこんな取り組みも行っています
季節里親・週末里親(東京都の「フレンドホーム」、神奈川県の「3日里親」など)
各自治体が実施する制度で、夏休みや年末年始だけ、または週末だけ、児童養護施設などで暮らす子供たちを家庭で預かる仕組み。取り組み内容や制度の名称は、各自治体によって異なる。
ショートステイ里親(福岡市など)
保護者が、病気や育児疲れなどの理由で、一時的に育てられない子供を短期間だけ預かる制度。原則7日間以内。福岡市で始まった制度だが、最近は民間団体などでも実施している。
各自治体でさまざまな里親制度が
近年は、「ショートステイ里親」や「季節里親」「週末里親」など、各自治体がさまざまな名称で、短期間の預かりを行う里親制度をつくっている。預かり期間、条件等は各自治体によって異なるので、確認を。多くの場合は、児童養護施設などで暮らす子供たちに、家庭的な環境を体験してもらうための制度。実親や、長期の里親の「レスパイト(休息をとるための援助)」として利用されることも。
里親になりたいと思ったら、まずは研修を受けてみよう
里親に興味はあるけれど、本当に自分にできるかどうか、不安に感じる人もいるかもしれない。でも、興味をもったらまずは説明会に参加してみてほしいと高橋さんはいう。
「里親になるために資格は特に必要ありません。心身ともに健康で、子供を育てる意思があり、経済的に困っていないことなど基本的な条件が合えば、どなたでも受け入れ可能です」
預かる子供の年齢や性別、およその預かり期間の希望を、あらかじめ伝えることもできる。自治体によって短期預かりを募集するところもあるので、そこから始めても。
「いろいろな預かり方があるので、まずは地域の児童相談所や民間団体に相談してみてください。近年は預かったあとの相談先や里親同士の勉強会なども増えてきました。子供たちのためにも前向きに里親を検討してくれる人が増えることを願っています」
里親になるまでのステップは?
1.児童相談所に相談
里親になることを希望・検討する場合、まずは地域を管轄する児童相談所へ電話連絡をして、面接予約を。検討中でも質問は受けつけてくれる。近年は民間団体を通すケースも増えている。
2.面接
児童相談所の職員と面接し、里親制度の説明を受ける。子供の預かりについての疑問点などを質問したり、里親登録の条件などを確認したりする。この時点では、里親になることに迷いがあってもOK。
3.研修
座学2日間、実習2日間、全4日間の認定前研修を受ける。夫婦そろっての受講が必要(または同居して養育を補助できる大人と)。里親制度の社会的背景や、子供を預かるために必要な知識を学ぶ。
4.申請
研修を受講し、里親になる意思が固まったら、管轄の児童相談所に申請書類を提出する。「里親になりたい理由」「養育環境や育て方」などを夫婦それぞれが記入。同居する家族や親族の同意も必要。
5.家庭訪問を受ける
児童相談所または里親支援機関の職員が、家族全員が集まる日に家庭訪問を行う。住居環境や家族関係等について里親の要件を満たしているかを確認し、家族全員から聞き取りを行う(2 〜3時間)。
6.審査・登録
申請書類や家庭訪問時の状況を踏まえ、里親の適否について里親認定部会の有識者による審査が行われる(2カ月に1回)。里親として認められれば、自治体により認定・登録される。
まずは児童相談所に問い合わせを
里親になることを夫婦で検討した際は、各自治体にある児童相談所に電話で相談を。問い合わせ時点で、里親になる意思が固まっていなくてもかまわない。近年は相談会が各地域で行われており、実際の里親の体験談が聞けるので参加してみるのもおすすめ。
「里親制度」の疑問Q&A
Q1.里親になることを決める前に、体験談を聞きたい場合は?
「毎年10月に厚生労働省主催の“里親月間”があります。里親に関する情報を伝える講演会やイベントなども各自治体で開催されます。また、児童相談所では随時体験発表会も多く行われています。もし里親に興味をもったらまず、足を運んで現役の里親さんの声を聞いてみてください」
Q2.何歳まで里親になれますか?
「申し込み時に里親になるための年齢制限は設けていません。仕事や子育てが一段落した50代から里親になられるかたもたくさんいます。心身が健康で、経済的に安定していて、子供の養育が可能であれば何歳でも挑戦していただけます」
Q3.実子とうまくいくか心配。
「実子がいる場合、新しく里子を迎えることにとまどう子供は珍しくありません。実子は里子と同じ学校に通う可能性などもあり、家族の重要なメンバーです。里親が必要とされる理由や制度について、ていねいに説明したうえで、賛成してくれるか確認してください。受け入れ後も定期的に相談に乗ってあげることが望ましいです」
Q4.事実婚や同性カップル、独身、共働き、子育て経験がなくても里親になれる?
「事実婚や同性カップルでも条件を満たしていれば養育里親として認められるケースは複数出ています。また、共働きや子育て経験がなくても、経済的余裕があれば独身でも、周囲の手を借りたり、保育園等に預けながら里親をすることはもちろん可能です」
Q5.子供がなじまなかったら?
「里親家庭に来てしばらくすると、多くの子供が感情的になったり、わざと大人を困らせる『試し行動』をとったりするものです。まずは子供たちの気持ちに真摯に向き合って、もしも改善しない場合は、里親仲間や専門家に相談をしましょう。それでも最終的に離れたほうがお互いのためと決まったら、児童相談所に相談し、委託解除をすることができます」
Q6.年収はどれくらい必要?
「里親になる条件に“経済的に困窮していないこと”とありますが、手当や生活費が支給されますし、年収に規定はありません」
里親体験談:俳優・佐藤浩市さん
佐藤浩市
20人以上の子供たちと接してきて見えたこと
施設で育つ子は“特別な子”じゃない
これまで仕事や子育てに夢中に取り組んできたエクラ世代も、ある時点でふと「第二の人生、どう過ごしたいか?」と自分に問いかけるときがあるものだ。そんなとき、里親という選択肢をとる人も。
日本を代表する俳優、佐藤浩市さんもそのひとり。息子・寛一郎さんが独立したあと、夫婦ふたりで過ごす時間が増える中で、社会的な養護が必要な子供たちの現状に目を向けるようになったという。
「妻は、以前海外で恵まれない子供たちの里親支援をしていましたが、あるとき、『日本で施設に暮らす子供たちのお手伝いをしたい』と話をもってきたんです。最初は妻のほうが積極的で、話を聞いて、僕も『うん、いいんじゃないですか』と」
「葛藤を抱えながらも、前向きに生きようとがんばっている子供たちに、力をもらいます
東京都のフレンドホーム制度を利用し週末里親を始めたのが、’18年。その数年前から、妻が児童養護施設に通い、彼女から子供たちと接した話を聞くうちに、見える世界が変わってきた、という。
「世間一般的に、施設にいる子供は特殊な事情があり、彼らを預かるのはハードルが高い、というイメージがあるかもしれません。映画やドラマの影響もあるのかもしれないし、僕も最初はそう誤解しているところがありました。しかし、実際に出会う子供たちは、葛藤を抱えながらも、前向きに明るく生きようと力強くがんばっている。そのことに気づかされて、自分にできることはしたいと思うようになっていきましたね」
週末に子供を預かったり、施設を卒園した子供たちを家に招いて食事をしたり、「里親制度」の枠にとらわれず、継続的にたくさんの子供たちの成長にかかわってきた佐藤さん。
「今まで、うちに出入りした子供たちは20人くらいでしょうか。現在はひとり、事情があって住む場所が見つからない大学を卒業したばかりの女の子をわが家に居候させています。外泊したりバイトで帰りが遅くなったりすると、やはり心配ですね(苦笑)」
里親の活動を通して知った日本の子供たちの事情
過去の体験を超えて子供の笑顔を見られたら
子供を預かるとき、佐藤さんは、無理に話しかけたり、過度に構いすぎたりと特別な扱いはしないと決めているという。“ただ普通にいる”──それが佐藤さんの、あえてのスタンス。
ふだん、子供たちは妻に相談をすることが多いが、いざというときは佐藤さんが、子供と一対一で話を聞くことも。
「何も、特別なことをいうわけじゃないですが、これまでの自分の経験から何か伝えられることがあれば、と。ただ僕は役者で、言葉が受け止める人によってさまざまに変わるむずかしさを知っている。だからこそ『この子にはどんな言葉をチョイスすればいいか』とよくよく考えて話すようにはしています」
実際、佐藤さんのひと言で、進路を決意できたという子供もいたそう。
また、あるときは、過去の生育環境も影響し、なかなか言葉が出ない女の子を預かった。ほとんど聞こえないほどの声しか出せず、笑顔もあいさつもない彼女を、佐藤さんは距離を保ちながら、ていねいに見守った。
「特に男性への恐怖心があったようで、笑顔が見られるまで時間はかかりました。でも数年かけてようやく、ふたりでコンビニに行ったとき、どこか心を開いてもらえたというか、一瞬通じ合えたという気がして、やはり、うれしかったですね」
社会に出る前にいろんな大人を知ってほしい
何人もの子供たちと年月をかけてかかわりをもってきた佐藤さん夫婦。現在は、施設を出た子供たちが社会に出る前の準備として活用できるよう、講演会や勉強会を開催。
「親からひどい虐待を受けた子供たちは、やはり大人に対するイメージが悪いこともある。だからこそ、生きるとは何かを一緒に考えたり、ゲストを招いたりして、彼らに、いろんな大人がいると知ってもらいたいんです」
「社会には怖い大人だけではなく、安心できる大人もたくさんいるということを子供たちに伝えていけたら」
今後も、子供たちのために、活動を続けていきたいと考えている。「基本的には、妻がいろいろとアイデアを出して動いてくれるので、僕はそれを応援するというかたちです。ただ、社会的養護が必要な子供たちにかかわるということは、どんなかたちであれ、責任が伴うもの。大変なことはありますが、しっかり見守りたい」
「自分の子育てを終え、その経験を踏まえたうえで里親になることにも意味があると思います」
子供たちとかかわる中で、日本の子供たちが置かれている厳しい事情を知ることができたという佐藤さん。自身の発信を通じて、里親の活動が世の中の多くの人に伝わればという気持ちもあるという。
「もっと早くからこうした活動をしていたら、うちの息子も、もう少し素直に育ったんだろうと思いますけどね(笑)。それでも、やはり自分の子育てを終えて、よかれと思ってしたことがうまくいかなかったり、子供が思うようにはならなかったりという反省を踏まえたうえで、里親になることにも意味があると思います。息子もうちを訪ねてくると、子供たちときょうだいのように話をしたり、ごはんを食べたりしている。そんな姿を見ると、こういう活動をしていてよかったと改めて思えます」
「フレンドホーム制度」とは?
「季節里親・週末里親制度」のひとつで、東京都独自の名称。参加するには、まず施設に直接申し込みをし、担当職員から説明や家庭訪問を受けたあと、「フレンドホーム登録」をする。
希望条件を伝え子供を紹介されたら、まずは施設の行事などに出席しながら交流を深め、お互いの意思を確認してから、家庭での預かりを決める。
決定後も日帰りから少しずつ交流期間を増やしていくので、初めて預かる際も安心。
交流期間中は、家庭内の大人1人以上が子育てに専念できることが求められる。1日当たり2300円(7日が上限)が支給される。
里親体験談:里親歴22年・星野優子さん
星野優子さん
里親になって人生がどんどん豊かになった
「里親」の名も知らず男の子を迎え入れることに
東京都に住む星野優子さん夫婦は、現在19歳、11歳、9歳の3人の子供たちの里親として暮らしている。里親が養育できる子供の年齢は原則18歳までだが、19歳の男子は「措置延長」という形をとって、満20歳まで預かることを考えているという。
「今いる3人の前にも、4〜19歳まで預かった男の子がいました。彼は私たちが初めて預かった子で、成人し自立しています。でも、今もしょっちゅう訪ねてくるんですよ」と星野さんは困り顔ながらも、うれしそうに目を細める。
星野さん夫婦が、里親になることを決意したのは二十数年前。まだ里親制度が今ほど広まっていなかったころ。電車通勤時に「フレンドホーム制度」についての吊り広告を見かけたのがきっかけだった。
「私たちは早くに結婚したものの、子供がいませんでした。それならそれでもいいと思っていたんですが、広告を見てピンときたんです。『週末や長期休みだけ施設にいるお子さんを預かるならできるかも』と」
早速夫に相談し、役所に問い合わせをすると、児童相談所からすぐに家庭訪問があった。
「当時と今とでは制度や手順も少し違うかもしれませんが、児童相談所の人が訪問にいらして、『フレンドホームもいいですが、長期の里親制度で預かってみませんか?』とおっしゃったんです。当時は何もわかってなくて(笑)、家も建てたばかりで子供部屋は一応あるし、それもいいかな、なんてお受けしました」
子育ての経験がないため、ある程度意思疎通ができる5歳前後の子供を希望することだけを条件として伝えた星野さん。決定まで時間がかかるかと思いきや、登録から約1週間で男の子を紹介された。
「彼は、長期休みにも実親さんが迎えにこられないで施設に残る子だったんです。寂しいのもあったのか、私たちのことをすぐ『パパ、ママ』と呼んでくれて。うれしくてかわいくて、お迎えすることを決めました」
真実告知と訪れる葛藤。「どこから生まれてきたの?」
“長男”を預かったとき、児童相談所から「就学前までに真実告知を」とすすめられた。それでも、なかなか勇気が出なかったという。
「4歳を過ぎての委託ですから、施設で育った記憶は本人にもあるはず。でも、希望もあったのか、私たち夫婦が実親で、忙しいから施設に預けられていたのだと、記憶をすり替えている様子もありました」
彼が10歳になるころ、きょうだいをつくってあげたいと、新しく当時2歳の子供を受け入れることに。すると長男の態度が変わった。
「不安もあって弟をすごくいじめるんです。これはちゃんというしかないと真剣に話をしました」
施設から来たのはあなたも同じ。児童相談所の人に紹介されたあなたがすごくかわいかったから、うちに来てもらったんだよ──そう伝えた。
その後、地域の里親親子とキャンプに出かけたりするうちに、似た状況で育つ里子の友だちも増え、長男の気持ちは落ち着いていったという。
「真実告知をするのは大変ですが、子供に嘘をつくとあとあと返ってくる。だから、やっぱりどこかでちゃんと伝えないといけないですね」
「反抗期はみんな、口をそろえて『産んでないくせに!』。私も『それが何か?』って返して。もうただの親子げんかです(笑)」
その後預かった子供たちもある年齢になると「産んだときどうだった?」などと聞いてくる。そのたびに星野さんは「ごめん、産んでないからわからない」と正直に答えた。
「本当の親はなぜ育ててくれなかったの?」といわれると胸が痛んだ。「何か事情があったんだね。でもあなたを大切に思うから、かわいがってくれる人に預けたんだと思うよ」とだけ答えた。
思春期になると、子供たちは決まって、気持ちが荒れるときが訪れる。
「反抗期はみんな、口をそろえて『産んでないくせに!』というんです。私も『ええ、産んでないけど何か?』って返して。もうただの親子げんかです(笑)」
それぞれに葛藤を抱える子供たちを見るのは、つらい。できるだけフラットに明るく、星野さんは必要な事実を告げ、愛情を注ぎ続けた。
成人した子も「うちの子」。きょうだい仲がいいことがうれしい
里親は養子縁組と違って法的な親子になることはできない。名字も実親の名前だが、星野さんが預かる子供たちは、みんな「通称名」として“星野”を名乗ることを選んだ。学校や地域で、親子として見られることを子供たちが望んだからだ。
「卒業証書や受験票、パスポートなど公式文書には本名が記載されますが、高校の卒業式では校長先生が『星野』と書いた別紙も作ってくださるなど、配慮していただきました」
子供から「本当の子になるにはどうしたらいい?」と聞かれたことも。
「里親は特別養子縁組とは違うので親子にはなれません。長男は不登校になったり家で暴れたり、大変な時期もありました。家庭裁判所に申し立てをして養子にすることも考えましたが、今は『家族は家族だからいいよ』といってくれています」
「子供たちが私を“お母さん”にしてくれました。子供たちに与えてもらったことのほうがどんなに大きいか」
成人して家を離れても「星野家は実家」。たびたび訪れては弟や妹をかわいがってくれるという。だからこそ、星野さんはいつも家庭を必要とする子供たちを温かく迎え入れる。
「大変なことは山ほどありますが、子供たちが来てくれたことで、人生がどんどん豊かになりました。あの子たちが私を“お母さん”にしてくれたことを思うと、子供たちに与えてもらったことのほうがどんなに大きいか、といつも心から感謝しています」
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