輝くアラフィー女性の新しい働き方「50代からの起業」を考える

人生100年時代を迎え、定年が65歳、70歳と延長されつつある今、アラフィーは、「あと10年でリタイア」ではなく、「まだまだ働く」年齢に。そこで注目されているのが、起業し、やりたいことを仕事にする働き方。実践者&専門家の話をもとに、起業について考えてみませんか。

 

教えてくれた人
キャリアコンサルタント 松本すみ子さん

キャリアコンサルタント 松本すみ子さん

大学卒業後IT企業に25年以上勤務し、49歳のときに、有限会社アリアを起業。現在、NPO法人「シニアわーくすRyoma21」の理事長も務め、セミナーや講演などで、50代以降の働き方を指南。『55歳からのリアル仕事ガイド』(朝日新聞出版)などの著書がある。

 
①「50代からの起業」どんな心構えや準備が必要?

起業は「目的」ではなく、目標達成のための「手段」

50代以降の働き方に精通し、自らも48歳で勤務先をやめ、起業した松本すみ子さん。

「近年、起業を取り巻く環境は、大きく変わりました。社会全体が、起業をポジティブにとらえるようになり、若い世代だけでなく、定年を迎えたシニア層も関心を寄せています。国や自治体も起業を積極的に後押ししていて、特に、女性や50歳以上の起業家へのサポートは充実しているんですよ」


つまり、今は、アラフィー女性が起業するのに絶好のタイミングということ?

「起業のハードルが下がっているのは確かです。ただし、重要なのは動機。『支援があるなら独立をしてみようかな』とか、『雇われるのではなく、社長になりたい』など、起業そのものが目的なら、やめたほうがいいと思います。会社を経営するのは、想像以上に大変なこと。何をやりたいかが明確で、それを成し遂げたいという強い思いがなければ、成功はむずかしいですよ」


まずは、自分のキャリアを振り返り、何が好きで何が嫌いか、強みと弱みは何か、どんなスキルや人脈があり、どういった方面に明るいのかなどの洗い出しを。

「そうやって客観的に自分のことを分析すると、起業が正解かどうか、見えてきます。なかには、会社をつくるより、転職や副業というスタイルを選んだほうがいいケースもあるでしょう。また、事業内容によっては、税務署に届け出を出すだけですむ個人事業主として始めるのがおすすめ。会社の売り上げが数千万円など、大きくなってから、会社組織に変えればいいと思います」

充実した将来のために今から仕事の仕方を考えて

手がけたい商品やサービスに独自性があり、市場調査の結果、勝算が見込め、開業資金や販売先・仕入先などのめどが立ってから、一歩を踏み出すのがベター。セミナーなどに参加し、起業のノウハウや実情などを聞き、勉強するのもおすすめだ。

「会社を定年退職したあとも、人生はまだまだ続きます。会社をつくる、再就職する、個人事業主としてマイペースで働くなど、かたちはさまざまですが、自分の好きなことを仕事として続けていれば、この先も楽しく、若々しく過ごせると、私自身、実感しています。将来のために、今から自分の生き方を考え、準備を進めてほしいですね」

どんな心構え&準備が必要?「50代からの起業」を考える

起業の前に確認したい「5W2H」

起業成功の秘訣は、確固たる信念と情熱、実現性が高いビジョンがあるかどうか。それを確かめるのに役立つのが、この5W2H。事業計画書作成のたたき台としても使える!

1:Why(なぜ)

まずは、起業したい理由を明確にすること。自分の経歴やスキル、情熱をかけられるものなどを客観的に分析し、起業という道がベストなのかどうかの判断を。

2:What(何を)

次に考えるべきは、「何」を売るか。どんな特長や魅力をもつサービスや商品を提供するのか、しっかり考えて。これが、事業概要や企業理念のベースになる。


3:Whom(誰に)

成功の必須条件のひとつになるのが、「誰に」売るか=ターゲットを明快にすること。年齢層、性別、属性、ライフスタイル、嗜好など、具体的に設定するのが大切。


4:When(いつから)

意外と重要なのが、「いつまでに起業するか」といったスケジュールの設定。「準備できしだい」などと、のんびり構えていると、実現が遠のいてしまう危険性大。


5:Where(どこで)

活動と創業の場所をどこにするか、地域も含めて考えて。自宅を事務所にするほか、レンタルオフィスやコワーキングスペースなど、今や選択肢は多数。


6:How(どのように)

事業に専念するのか、副業や兼業で行うのかはもちろん、市場調査、販売方法、PR手段など、「どのように」商品やサービスを売るのかは、熟慮すべきテーマ。


7:How much(いくらで)

初期費用や運転費用はいくらかかり、どのように調達するかといった資金計画のほか、事業開始後の収益目標や売上・経費の見積もりなど利益計画は万全に。

 
②知りたい!「起業についてのQ&A」

Q.会社には、どんな形態がある?

A.現在主流なのは株式会社と合同会社の2つ

会社の形態は、株式会社と合資会社、合名会社、’06年に有限会社にかわって新たに設けられた合同会社の4つ。「主流になっているのは、株式発行によって資金調達が可能な株式会社と、出資者と経営者が同一で、出資者全員が経営の決定権をもつ合同会社。前者は社会的信用度が高く、後者は設立手続きが簡単でコストも抑えられるというメリットがあります」(松本さん)。

合同会社 株式会社
組織編制 定款にはる収入印紙代と登録免許税で10万円 定款にはる収入印紙代と定款の認証、謄本手数料、登録免許税など約25~30万円
意思決定 出資者が複数いる場合、全員の同意がないと意思決定できない 株主総会に基づき、重要意思を決定する
最低出資金額 1円 1円
決算公告 社外に公表する義務なし 決算報告書の作成、株主への報告が必要
税金 法人税、住民法人税、法人事業税、消費税など株式会社と同条件 法人税、住民法人税、法人事業税、消費税など合同会社と同条件
代表者の肩書 代表社員 代表取締役
起業についてのQ&A

Q.創業のための資金を借りることはできる?

A.借りるなら公的サービスを優先に

「借金を前提に会社を興すのは危険。信用を高めるために、資本金30万円以上は用意してほしいですが、それも含め、初期費用は自分で用意するのが理想です。事業規模が大きく、融資してもらう必要がある場合は、優遇制度がある公的サービスを優先的に利用して。クラウドファンディングを活用した資金調達の支援に力を入れている自治体もあります」

●日本政策金融公庫 女性、若者/シニア起業化支援資金

https://www.jfc.go.jp/n/finance/search/02_zyoseikigyouka_m.html

個人や中小企業の創業・事業支援に力を注いでいる政府系金融機関。特に、「女性、若者/シニア起業化支援資金」は、女性・35歳未満・55歳以上を対象に、低金利で貸し付けしてくれるので要チェック(諸条件あり)。


●東京都補助事業

クラウドファンディングを活用した資金調達支援

https://entre-salon.com/crowdfunding/

ネットで支援者から資金を調達するクラウドファンディング。東京都は、複数のクラウドファンディング事業者と提携し、起業家がこれを利用する際にかかる手数料の一部を助成。相談窓口を設け、セミナーなども開催。

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Q.公的なサポートがあるそうだけど…

A.特に女性向けは充実しています

「国や自治体は、起業支援に力を入れているので、無料相談やセミナー、賞金や支援金が出るコンテストなど、いろいろな制度・サポートを展開しています。特に女性向けの支援は充実しているので、ぜひ活用してください。起業するかどうか迷っている人に役立つセミナーなどもあります」。まずは、どんな制度、サービスがあるのか、下記のサイトでチェックを。

●東京都創業NET

https://www.tokyo-sogyo-net.metro.tokyo.lg.jp/

東京都で創業・起業する人を応援するための情報プラットフォームで、運営主は東京都産業労働局。年代や業種などさまざまな起業家のインタビューを集めた「起業家に学ぶ」は、参考にしたい。

●ミラサポplus

https://mirasapo-plus.go.jp/

中小企業向け補助金・総合支援サイト。「起業・創業」「設備投資」など目的別に支援策を検索できる「制度ナビ」や、参考になる事例を集めた「事例ナビ」などを展開。中小企業庁運営なのも安心。

●J–Net21

https://j-net21.smrj.go.jp/

中小企業基盤整備機構が運営する、中小企業や創業予定者、支援者のためのポータルサイト。全国の中小企業向け施策を毎日更新、300件以上の業種別開業ガイドの掲載など、役立つ情報満載。

起業についてのQ&A

Q.設立手続きは専門家に依頼すべき?

A.必要書類を無料で作成できるサイトもあるので、上手に活用して

会社設立の際は、定款を作成し、それを公証役場で認証してもらったり、法務局などに登記を申請したりと、やらなくてはならない手続きが多々。「司法書士などに依頼するのも一案ですが、経営の勉強のためにも、どんな手続きが必要なのか、一度自分で調べてみては? 無料で必要書類を作成できるwebサイトもあるので、それを利用すれば費用もかなり抑えられます」。

 
③52歳での起業「日本の伝統文化を発信」

TZEN 代表取締役 長尾千登勢さん

TZEN 代表取締役 長尾千登勢さん

ながお ちとせ●’69年生まれ、南アフリカ・ヨハネスブルク育ち。電通で約30年にわたり、大手企業や政府官公庁の海外コミュニケーションの企画、制作、PRなどに従事。’20年末に早期退職し、’21年に独立。

<起業までのヒストリー>

1991

大学卒業後、電通に入社。

クリエイティブ局で広告制作に携わる。

2015

iPR局(現PRソリューションズ局)新設に伴い、異動。

SNSやwebムービーなどを用いたPR業務を手がける

一方、海外でのイベントや海外クライアントも担当。

2020 12月末、電通を退職。
2021

1月、52歳のときに株式会社TZENを設立。

8月、『ATELIER MATCHA』をオープン。

会社組織にしたおかげでビジネスがスムーズに

約30年勤めた電通を退社し、今年1月、「TZEN」を設立した長尾千登勢さん。株式会社ではあるものの、社長のみの、いわゆる“ひとり会社”だ。「あまり深く考えず、『独立=会社をつくるもの』というくらいの気持ちでしたが、会社組織にして正解でした。取引先や契約相手から信頼が得られやすいですし、金融公庫の融資もおりましたし。おかげさまで、やりたかった仕事が順調に進んでいます」

長尾さんがやりたかった仕事、それは、電通で培ったマーケティング力やITスキル、得意の語学を生かし、日本の伝統文化の普及をサポートし、海外に発信することだった。「20代から茶道を始め、きものや器、生け花など伝統文化に触れる機会が多かったことに加え、電通でも40歳を過ぎたころから、大手企業や官公庁の海外案件を担当することが増えました。海外のイベントで茶道や工芸品、織物などを紹介すると、現地のかたから大きな反響があるんです。日本の伝統文化は、世界に誇れるすばらしいコンテンツだと、実感しました」
「TZEN」のオフィスは住宅街のマンションの一室。ベランダを坪庭に見立てるなど、和の風情がそこかしこに。
「TZEN」のオフィスは住宅街のマンションの一室。ベランダを坪庭に見立てるなど、和の風情がそこかしこに。
オフィスの一角で、友人から贈られた招き猫がお出迎え。
オフィスの一角で、友人から贈られた招き猫がお出迎え。こうした工芸品が並んでいるのも、日本の伝統文化発信基地ならでは。

52歳での起業は、さまざまな要因が重なった結果

とはいえ、その魅力が海外で広く認知されているとは言い難く、国内でも先細りが目立つ。原因のひとつは、PR不足。語学やITスキルなどへの不安が、普及活動の障害になっているのではないか。そう感じた長尾さんは、自身のキャリアを、伝統文化の担い手のために役立てたいと思うように。
「電通の案件として扱わせていただいたケースもありました。ただ、中小企業や個人が多く、クライアント登録の条件を満たしていないとか、金額的にむずかしいということも少なくなくて。ボランティアで、個人的にお手伝いしてもいましたが、本業も忙しかったので、不完全燃焼ということもありました。どちらも100%やることがむずかしいなら、会社をやめて、伝統文化のサポートに専念しよう。そんな思いが、だんだんと強くなっていったんです」
52歳での起業は、さまざまな要因が重なった結果

会社人生約30年で培ったスキルや人脈が生きている

52歳での起業は、さまざまなタイミングが重なった結果でもあった。
「ひとつは、娘が大学生になり、だいぶ手が離れたこと。『これからは、自分のための時間が増える!』って(笑)。2つ目は、会社が40代以上の社員を対象に早期退職制度を打ち出したこと。しかも、電通の子会社と業務委託を結べば、今までやってきた仕事が続けられ、委託料が支払われるんです。ある程度の収入が確保できるという安心感も、独立の後押しになりました」

3つ目は、自分を見つめ直す時間ができたことだ。20代、30代の日々を、「高速道路を猛スピードで走っていて、途中にパーキングエリアや出口があるのすら気づかなかった」と、振り返る長尾さん。

40代でリーダー職に就き、まわりを見る余裕が生まれたことで、「素敵な場所があるから、ちょっと降りてみよう」と思えるようになったとか。ふと立ち止まり、歩んできた道を振り返ると同時に、行く手に思いを馳せる。それができるのが、アラフィーという年齢なのかもしれない。

12月末の退職後は怒涛の日々が続く。翌年1月には会社を設立し、8月には京都の老舗茶問屋、山政小山園とタッグを組んだ抹茶カフェ『ATELIER MATCHA』をオープン。京都の小さな工房がつくる電動茶ちゃせん)のプロデュースや、抹茶を用いたスイーツなどのオンライン販売も、着々と進んでいる。

「仕事で知り合った、山政小山園・取締役の小山さんとは、『いつか、一緒に抹茶カフェを』と話していましたが、こんなに早く実現するとは。我ながらビックリです(笑)」

オフィスにも、いろいろなタイプの茶器を用意。
オフィスにも、いろいろなタイプの茶器を用意。「来客があると、好きなお茶碗を選んでいただき、お茶を召し上がっていただいています」
オフィス内の和室には“お点前(てまえ)のコーナー”があり、長尾さん自らお茶を点(た)てることも
オフィス内の和室には“お点前(てまえ)のコーナー”があり、長尾さん自らお茶を点(た)てることも。「ときどきここで、カジュアルなお茶会を開いています。茶道は気軽に楽しめるものだということを広めたいですね」

やりたいことがあるならすぐにでも動いたほうがいい

カフェを経営する今も、社員はゼロ。スタッフや経理関連など、すべて業務委託というかたちをとっている。必要なときに、必要なスキルを提供してもらう。それが、長尾さんのスタイルだ。

「皆さんよいかたばかりで、つくづく私は縁に恵まれていると思います。カフェにしても、周囲の後押しや支えがあったからこそ実現できたこと。約30年の会社人生で築いたネットワークのおかげですね。そう思うと、この年だからこそ、起業できたのかもしれません」


その一方で、「50代の1年は、若いときの1年とは違います」とも。アラフィーは、自分の体調や親の介護など、いろいろな問題が生じやすい年代。来年どんな状況にあるかわからないのだから、早めに動くのが得策だ。

「思い立ったが吉日で、勢いは大切。私も『しばらく休んでから』と考えていたら、今も会社をつくっていなかったかも。機が熟すのを待ちすぎると、食べごろを失ってしまいます。『今だ!』と思ったらすぐに収穫できるよう、準備というカゴだけは用意しておくことをおすすめします」

カフェの人気メニュー、「MATCHAコットンキャンディーミルクセーキ」。
カフェの人気メニュー、「MATCHAコットンキャンディーミルクセーキ」。「多くの人に、茶道で用いる上級抹茶のおいしさを知っていただき、消費量減少に悩む業界を活性化できれば」
山政小山園・取締役の小山雅由さん(右)とは、2年前に仕事を通じて知り合い、
山政小山園・取締役の小山雅由さん(右)とは、2年前に仕事を通じて知り合い、「抹茶本来のおいしさと文化を楽しめるカフェをつくろう」と意気投合。
カフェでは、誰でもおいしい抹茶が点てられる電動茶筅、「Charaku」を使用。
カフェでは、誰でもおいしい抹茶が点てられる電動茶筅、「Charaku」を使用。店頭のほか、「TZEN」オンラインショップでも販売予定。

●『ATELIER MATCHA』

東京都中央区日本橋人形町1の5の8

9:00〜18:00 無休

 
④54歳で開業は「社会貢献」という人生の目標

『futo』オーナー 河井真奈さん

『futo』オーナー 河井真奈さん

かわい まな●’64年、奈良県生まれ。映画会社勤務を経て、’87年からフリーのスタイリストとして活動をスタート。以来、数多くの雑誌やCMなどで活躍し、現在は女性経営者のパーソナルスタイリングや講演なども手がける。

<起業までのヒストリー>

1985

短大卒業後、映画会社に入社

1987

会社をやめ、フリーランスのスタイリスト・編集者として雑誌制作をスタート。30代でスタイリストに主軸を置くように

2011 『絶対 美人アイテム100』を上梓。
2016

1月、52歳のときに株式会社TZENを設立。

8月、『ATELIER MATCHA』をオープン。

2019

54歳のとき、夫が立ち上げ、河井さんも所属する会社名義で、青山に実店舗オープン。

2021

会社登記名をfutoに変更準備中。

物に秘められたストーリーやつくり手の思いも伝えたい

「このタオル、触り心地がすごくいいでしょう? 今治にあるメーカーの女性が、“タオルで始めるスキンケア”をコンセプトに企画したんですよ」


そう楽しげに、商品の成り立ちや特徴を説明する河井真奈さん。スタイリストとしても活躍する河井さんが、日本の手仕事によるアイテムを中心にしたギフトショップ『futo』の前身となるサイトを立ち上げたのは、5年前のこと。転機のひとつになったのが、河井さんお気に入りの名品を、ブランドの歴史や誕生秘話とともに紹介した『絶対 美人アイテム100』の執筆だった。

「100点すべて取材したことで、ブランドやつくり手の思いを、多くの人に伝えたいという気持ちが強くなって。40代以降、仕事で日本各地をめぐる機会が増え、行く先々で、手仕事のすばらしさに触れたのも大きかったですね。若いころは海外志向が強かったのに。これも年を重ねたからなのかも(笑)」


と同時に、地方の小さな工房や職人が窮地に立たされていることも知った。

魅力的なのに流通しないアイテムにスポットを当てれば、手にとる人が増え、つくり手も、買った人も笑顔になれるのではないか。そう考え、日本の手仕事をメインにしたギフト紹介サイトとして、「futo」を立ち上げることに。

「もともと社会貢献に興味があって、10年以上前から、ファッション業界の仲間に声をかけてフリマに参加し、売上の一部を寄付する活動をしていました。でも、理想としているのは、自分たちが得たお金を寄付するのではなく、物も、人も、体験という“コト”も回すことで、みんなが豊かに、幸せになれること。『futo』は、それを実現するためのツールだったんです」

サイトが評判になり、「実際に商品を見てみたい」という声が増えたことで、’19年、青山に実店舗をオープン。

「経営は初めてなので、正直とまどうこともあります。コロナ禍で外国人のお客さまが期待できない状況ですし、手仕事は大量生産ができないので、仕入れがスムーズにいかなかったり……。でも、物のストーリーをお客さまに直接伝えられること、喜ぶ顔が見られること、つくり手さんとのやりとり、の楽しさで、なんとか踏ん張れます」

石川県『白鷺木工』が制作する「しらさぎ椀 sibo」。
石川県『白鷺木工』が制作する「しらさぎ椀 sibo」。「漆にタンパク質を混ぜる絞漆(しぼうるし)なんですが、タンパク質に地元の手作り豆腐を使っているんですよ。職人さんがひとつひとつたたき塗りをし、独特な質感を演出しています」
起業のきっかけのひとつになった『絶対 美人アイテム100』(文藝春秋)
起業のきっかけのひとつになった『絶対 美人アイテム100』(文藝春秋)

がむしゃらに仕事をしてきた経験が“今”に生きている

仕事仲間から作家や職人を紹介してもらうこともあれば、扱っているアイテムを雑誌やwebに掲載してもらうなど、「これまでのキャリアが生きている」と実感することも多々ある。
「20代からずっと身を削るように仕事に打ち込んできたのは、このためだったのかなと思うこともあります。これからも、つくる人と買う人の真ん中で、物と人、コトを回していきたいですね」
オートクチュー ル生地を織り続けてきた「槇田商店」と コラボした「美肌傘RefleCouture」な ど、オリジナル商品も展開。 オートクチュール生地を織り続けてきた「槇田商店」とコラボした「美肌傘RefleCouture」など、
オートクチュール生地を織り続けてきた「槇田商店」とコラボした「美肌傘RefleCouture」など、オリジナル商品も展開。「傘を開いたときに顔色が明るくなる美肌傘です」
金継ぎのような手仕事を伝えるワークショップなども定期的に開催中。
金継ぎのような手仕事を伝えるワークショップなども定期的に開催中。

●『futo』 https://futo.jp/

東京都港区南青山5の13の4 Nビル1階A

11:00~19:00 ㊡日曜、祝日

 
⑤61歳で起業「誰もが平等に体験できる社会をつくりたい」

ピーステックラボ 村本理恵子さん

ピーステックラボ 村本理恵子さん

むらもと りえこ●’55年、東京都生まれ。大学を卒業後、通信社や大学勤務などを経て、’07年エイベックスに入社。動画配信事業、「BeeTV」の立ち上げなどに携わる。今年、「ウーマン・オブ・ザ・イヤー2021」を受賞。

<起業までのヒストリー>

1979

大学卒業後、時事通信社に入社し、消費者調査などに従事。

1989

専修大学経営学部専任講師就任。

1997 同大学教授に就任。
2000

ガーラに代表取締役会長として招かれる。

2005

法政大学大学院教授に就任。

2007

エイベックス入社、動画配信サービスに従事。

2016

61歳で、ピーステックラボを設立。

2018

「アリススタイル」をスタート。

「買う」より「借りる」で豊かな暮らしを提供

シェアオフィス内にある、こぢんまりとした会議室。ここが、村本理恵子さんが社長を務めるピーステックラボの“本社”。同社が展開する「アリススタイル」は、「買う前に試したい」「一定期間だけ使いたい」「持っている物を貸したい」という個人や、「商品を試してほしい」という企業のニーズに応えた貸し借りサービスだ。

「収入の右肩上がりが期待できない今、『買えない』が理由で、やりたいことをあきらめている人は少なくありません。例えば、子供の誕生日にケーキを焼いてあげたいけれどオーブンが買えないとか。この先豊かに暮らすには、『買う』のではなく、『必要なときに借りる』しかない。そう確信し、5年前、勤務先をやめて起業したんです。当時61歳で、『この年ならまだ新しいことがやれる』と思いましたしね。私、何歳だからこうしなければという固定観念がなくて、自分の年もすぐに忘れちゃうくらいで(笑)。ただ、会社に属して新しい事業を始めるのと、起業するのとは大違い。特に資金集めには苦労しました」

自宅もシェアハウスという、シェアリストの村本さんだが、「大好きな物は買います(笑)」と。
自宅もシェアハウスという、シェアリストの村本さんだが、「大好きな物は買います(笑)」と。バッグはOFF WHITE、スニーカーはアレキサンダー・マックイーンと、おしゃれにはぬかりなし!
渋谷ヒカリエ内のシェアオフィス、「Creative Lounge MOV」が本拠地。
渋谷ヒカリエ内のシェアオフィス、「Creative Lounge MOV」が本拠地。

必要なのは、ロジカルな説明と経営者のパッション

村本さんが目ざす事業には、まとまった資金が必要だ。ベンチャーキャピタルなどに出資を求めたものの、当初の反響は思わしくなかったという。

「20〜30社回ったときに気づいたのは、自分の熱い思いを語るだけではダメで、出資に対してどれだけのリターンが見込めるのか、説得力のある数字を示すことが重要だということ。それで、資料づくりからやり直し、プレゼン方法も変えました。全部で100社ほど回ったかな。我ながら、打たれ強くなったと思います。創業3年目にも、資金がショートしそうな危機に陥ったんですが、幸いにも、助けてくれる人がいて……。真剣に取り組んでいると、理解者は現れるんですね」

起業に必要なのは、ロジカルな説明と経営者のパッションという村本さん。

「50代以降の起業家の強みは、経験値。『これならうまくいく』『この相手は危険』など、今までの経験から予測や察知できることがたくさんあると思います。第一、50歳なんて、まだまだ若いんだもの。仕事にかぎらず、おもしろそうだと思うことに、どんどんチャレンジしてほしい」

今後、ひとり親世帯を対象にしたサポートプログラムもスタートする。貧富の差なく、誰もが平等に、やりたいことを体験できる社会を目ざし、村本さんは、これからも走り続ける。

本社となる会議室ドアには、「アリススタイル」のプレートが。
本社となる会議室ドアには、「アリススタイル」のプレートが。ロゴは、貸し借りコミュニティがもつ優しさや温かさを表現している。
「経営者は世の中の動向や流行に敏感でいるべき」との考えから、SNSなどを常にスマホでチェック。
「経営者は世の中の動向や流行に敏感でいるべき」との考えから、SNSなどを常にスマホでチェック。

「アリススタイル」

https://www.alice.style/

家電などが豊富にそろう貸し借りのシェアリングプラットフォーム

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