京都旅行におすすめ!大人が訪れるべき京都の観光スポット(2019-2020)

大人の京都旅行におすすめのエリアや絶対行きたいお寺や神社、おしゃれな人が集まるセンスがいいお店や狙い目情報などを総まとめ。大人の好奇心をあらゆる角度から刺激する一歩先、一歩奥の京都情報を早速チェック!

【1】女優・板谷由夏が訪れる、優雅で美しい「奥嵯峨野」

かつて貴族の住処としても栄えた、優雅で静かな奥嵯峨野。「京都を訪れると、自分の心の中にある和の部分が目を覚ますような気がします」と語る女優の板谷由夏さんが、隠れた美しの地「奥嵯峨野」を訪れました。

京都 奥嵯峨野の観光スポット1:旧嵯峨御所 大本山 大覚寺

【襖絵 牡丹図】

旧嵯峨御所 大本山 大覚寺の襖絵「牡丹図」
平安時代、嵯峨天皇の離宮として建立された大覚寺。明治時代初頭まで、代々天皇、もしくは皇統のかたが住職を務めた格式高い門跡寺院で、御所風の雅な風情漂う奥嵯峨の名所だ。なかでも有名なのが、狩野山楽(かのうさんらく)の筆による見事な襖絵。18面からなる「牡丹図」は、牡丹の間の東・北・西側の3方にしつらえられている。金地に浮かび上がる圧巻の牡丹にしばし心は400年前の京へと誘われる。

ドレス¥643,000/ヴァレンティノ インフォメーションデスク(ヴァレンティノ)

【美しき大沢池】

旧嵯峨御所 大本山 大覚寺の大沢池
大覚寺の東に位置する大沢池(おおさわのいけ)は、中秋のころには月見、秋には紅葉、春には桜の名所として知られる日本最古の庭池。舟遊びを好んだ嵯峨天皇にならい、中秋の名月を舟から愛でる「観月の夕べ」は特に有名だ。周囲約1㎞の池やぐるりと囲む林まで人工だと聞くと、その完成度の高さや、自然との見事な調和に思わず感嘆の声をあげてしまうほど。唐の洞庭湖を模して造られたことから、庭湖とも呼ばれる。

コート¥2,110,000・ニット¥355,000・パンツ¥811,000・ブーツ¥160,000/エルメスジャポン(エルメス)

【村雨の廊下】

旧嵯峨御所 大本山 大覚寺の村雨の廊下
縦の柱を雨、直角に折れ曲がる回廊を稲光にたとえた、諸堂をつなぐ村雨(むらさめ)の廊下。嵯峨野を吹く風が大沢池の水面を渡り、この廊下を心地よく通り抜けていく。「この風通しのよさが、独特のすがすがしさや開放感を生んでいるんですね。つい深呼吸したくなるくらい」と板谷さん。

ドレス¥210,000/ステラ マッカートニー カスタマーサービス(ステラ マッカートニー)
旧嵯峨御所 大本山 大覚寺
京都市右京区嵯峨大沢町4 ☎075・871・0071
9:00~17:00(~16:30受付終了)
拝観料/¥500 無休

京都 奥嵯峨野の観光スポット2:祇王寺

【吉野窓】

京都の奥嵯峨にある祇王寺の吉野窓
平家物語に登場する尼寺、祇王寺。平清盛の寵愛を受けた白拍子の祇王が、清盛の心変わりにより屋敷を去り、母、妹とともに出家した寺だ。清盛が心を移した原因となった仏御前をものちに受け入れ、4人の尼はここで静かに往生の懐を遂げたという。吉野窓は、控えの間にある丸窓で、影が虹色に見えることから「虹の窓」とも。いっさいの縁や欲を捨て、この窓から美しい奥嵯峨の四季を見ていた4人の尼の生涯に、静かに思いをめぐらせたい。

ドレス¥390,000/フェンディ ジャパン(フェンディ)

【尼寺の苔庭】

京都の奥嵯峨にある祇王寺の尼寺の苔庭
祇王寺は、竹林と楓に囲まれたつつましやかな草庵で、すばらしい苔庭も見どころ。自然のままの小道がぐるりと囲み、360度さまざまな角度から四季折々の美しさを堪能できる。「ほとんど手をかけず自然そのものの美しさを残す苔庭は、晴れの日は木漏れ日が美しく、雨の日なら、苔がしっとりと潤ってよりいっそう幻想的。いい気が充満していて、何度も訪れたくなるお寺ですね」と板谷さん。

レザージャケット¥480,000・ドレス¥2,400,000/クリスチャン ディオール(ディオール)
祇王寺
京都市右京区嵯峨鳥居本小坂町32
☎075・861・3574 9:00~17:00
拝観料/¥300

京都 奥嵯峨野の観光スポット3:鹿王院

【嵐山と舎利殿】

京都の奥嵯峨にある鹿王院の舎利殿
鹿王院は、「ここに寺を建てれば寿命を延ばすことができる」という夢を見た足利義満が建立した禅寺である宝幢寺(ほうどうじ)の開山塔。あの一休和尚も12歳のころ、ここを訪れていたそう。平庭形式の閑静な庭園は、遠くの嵐山を背景に、舎利殿の屋根と木斛(もっこく)などの樹形が重なり、視界いっぱいに広がる奥行き感が見事。

ストールジャケット¥360,000・ニット¥155,000・ベルト¥78,000/クリスチャン ディオール(ディオール)

【紅葉の参道】

京都の奥嵯峨にある鹿王院の参道
「まっすぐのびた参道に、降り注ぐように生い茂る紅葉がすばらしく、思わずテンションが上がります」と今回の撮影で板谷さんを虜にしたのが、鹿王院の山門から続く参道。紅葉の季節は真紅の世界に包まれ、えも言われぬ美しさ。周辺はとても静かなエリアなので、凛とした空気も魅力。女性限定の宿坊体験も。

コート¥372,000・ブーツ¥131,760/ステラ マッカートニー カスタマーサービス(ステラ マッカートニー)
鹿王院
京都市右京区嵯峨北堀町24
☎075・861・1645 9:00~17:00
拝観料/¥400 無休
撮影/伊藤彰紀(aosora) ヘア/ JUN GOTO メイク/鈴木ナオ(eight peace) スタイリスト/伊藤美佐季 取材・原文/大野智子 ※エクラ10月号掲載

【2】大人が訪れるべき皇室ゆかりの社寺

歴代天皇が550年もお住まいだった京都には、皇室に縁のある社寺もあまた存在。中から、大人が訪れるべき静かで優雅な4軒を厳選。京都通マダム「令子センパイ」がご案内。

京都通マダム 令子さん(先輩)

和の文化に詳しい心強い存在。趣味は茶道と謡と三味線音楽鑑賞。

京都初心者 和美さん(後輩)

自他ともに認めるミーハー皇室ウォッチャー。ご当地スイーツも好き。

京都の皇室ゆかりの社寺1:泉涌寺

「御寺」と呼ばれる、皇室の菩薩寺
京都の皇室ゆかりの社寺 泉涌寺

令子 和美ちゃん、今度京都に行くんですって?

和美 あっ、令子先輩、いいところに。皇室ウォッチャーとしては、ゆかりの場所をいろいろ訪ねたいと思っているんですが、やっぱり御所と離宮ですかねー。

令子 御所や離宮ももちろんだけど、京都には皇室に縁の深いお寺や神社があるのを知ってる?

和美 お寺ですか? 皇室とお寺にどんな関係が? 

令子 例えば、東山の南の端にある泉涌寺(せんにゅうじ)。歴代天皇の葬儀を執(と)り行った菩提寺で、「御寺(みてら)」と呼ばれているの。「おてら」じゃなくて「みてら」よ。歴代の御尊牌(ごそんぱい)(皇族の位牌)が霊明殿(れいめいでん)に安置されているわ。

和美 ごそんぱい、初めて聞きました。拝見できるんですか?

令子 それは無理だけど、霊明殿を外から拝見できるわね。明治天皇もお使いだった御里(おさと)御殿を移築した御座所(ござしょ)も参観可能よ。

和美 今の上皇陛下がお使いになったお部屋も見られるんですか!

令子 泉涌寺には御陵(皇族の墓所)も複数あって、そのひとつ月輪陵(つきのわりょう)の門も参観可能。それから本堂にあたる仏殿が、大門から見下ろす場所にあるのも特徴的ね。仏殿は宋風、舎利殿は和風という建築の違いも見どころよ。

和美 月輪陵の手水鉢(ちょうずばち)は菊の形ですね。美しい〜。

令子 皇室ゆかりの文様探しも楽しいかもしれないわね。東山の静かで優雅な雰囲気を味わって。 

京都の皇室ゆかりの社寺 泉涌寺の菊花形手水鉢
月輪陵の菊花形手水鉢。月輪陵には25陵余りが営まれる 。
京都の皇室ゆかりの社寺 泉涌寺の霊明殿
霊明殿は明治天皇によって再建された尊牌殿。唐門から望める。
京都の皇室ゆかりの社寺 泉涌寺の月輪陵の外観
月輪陵の外観。泉涌寺の開山・月輪(がちりん)大師にちなむ。
京都府京都市東山区泉涌寺山内町27 ☎075・561・1551
3月〜11月 9:00〜16:30(閉門17:00)、12月〜2月 9:00〜16:00(閉門16:30)

京都の皇室ゆかりの社寺2:石清水八幡宮

今も「勅祭」を執り行う
京都の皇室ゆかりの社寺 石清水八幡宮

令子 京都市内からちょっと足をのばすと、石清水八幡宮があるんだけど、行ったことある?  古くから皇族に崇敬されてきた神社で、今も「勅祭 石清水祭」というお祭りを続けているのよ。

和美 うわ、これで「いわしみず」って読むんだ。京阪電車で行けるんですね。ケーブルカーもあるから、気軽に行けそうです。

令子 平安時代の文学にも出てくる古い神社で、伊勢神宮に次いで重要とされているのよ。

和美 伊勢神宮の次に? それはどうしてなんですか?

令子 石清水八幡宮がある男山は、宇治川、桂川、木津川の合流地点で、古くから交通の要(かなめ)とされていたわけ。そこに平安時代に宇佐八幡宮から勧請(かんじょう)されたのがこの神社。勧請というのは神霊を分けてほかの神社に移すことね。京都にあった宮廷から、遠方の宇佐八幡宮のかわりに大切にされたの。天皇の行幸(ぎょうこう)や上皇の御幸(ごこう)は、円融天皇以来240回以上にもなるそうよ。

和美 へえー。ところでお祭りって、どういうものですか。

令子 「勅祭 石清水祭」は、天皇陛下のお遣いである勅使が、天皇陛下からのお供え物を奉げるお祭りよ。勅祭を行う神社は、日本にある8万社の神社の中でも16社しかないんですって。勅祭が行われるのは毎年9月15日。深夜2時から夕方まで、儀式や芸能の奉納があるのよ。

和美 そんな深夜からお祭りが始まるんですか!

令子 神道では、神さまの力は深夜にいっそう強まるとされているからね。あ、和美ちゃんは帰りに門前名物「走井餅(はしりいもち)」を食べさえすれば元気になりそうね。 

京都の皇室ゆかりの社寺 石清水八幡宮の供花神饌
勅祭で神前に12台お供えされる「供花神饌」。こちらは紅葉。
京都の皇室ゆかりの社寺 石清水八幡宮の社殿
社殿内を神職が案内するツアー「昇殿参拝」あり(2/4〜12/31 11:00〜14:00 約30分 初穂料¥1,000)。
京都の皇室ゆかりの社寺 石清水八幡宮の石庭
皇族がたの休憩所前の重森三玲作の石庭(通常非公開)。
京都の皇室ゆかりの社寺 石清水八幡宮の御社殿の彫刻
御社殿の約150点の彫刻がユニーク! カマキリや象のモチーフも。
京都府八幡市八幡高坊30 ☎075・981・3001
夏季5:30〜18:30、冬季6:30〜18:00

京都の皇室ゆかりの社寺3:仁和寺

世界遺産の門跡寺院。限定公開の仏像も必見!
京都の皇室ゆかりの社寺 仁和寺

令子 京都には門跡寺院(もんぜきじいん)が多いけれど、仁和寺(にんなじ)はその門跡寺院の始まりのお寺。御室(おむろ)という場所にあるんだけど、これは仁和寺を創建した宇多(うだ)天皇が寺内に住まわれて、御室と呼ばれたから。ちなみにオムロンという会社もこの地名から命名されたそうよ。

和美 あの、そもそも「もんぜき」というのはなんですか?

令子 皇族や公家(くげ)が僧籍に入って、住職を務めたお寺のことよ。明治維新で門跡寺院の制度はなくなったんだけど、今でも寺格の高いお寺の代名詞のように使われるわね。今年は観音堂の修復が終わって、特別公開しているから、ぜひ見たほうがいいと思う。

和美 これですか。仏像がすごくたくさんありますね。前のほうにあるのは風神雷神ですか?

令子 千手観音菩薩を中心に、不動明王、降三世明王や二十八部衆などが祀(まつ)られているそうよ。ここはずっと仏教行事に使われてきた場所なので、お坊さんしか入れなかったんですって。

和美 今年は貴重な機会なんですね。あ、仏さまの後ろ側には絵があります。とてもコワカワイイんですけど。

令子 御堂の裏には白衣(びゃくえ)観音が上段に、下段には地獄が描かれているの(写真下)。とてもきれいに色が残っているわね。

和美 隅々まで手抜きがないところが、皇室ゆかりな感じです。

令子 国宝の金堂は御所の紫宸殿(ししんでん)を移築したものなのよ。宸殿も御所から下賜(かし)された常(つね)御殿。今の建物は、大正時代に再建されたそう。

和美 仁和寺の優雅な雰囲気は、御所由来の建物がつくり出していたんですね。

京都の皇室ゆかりの社寺 仁和寺の観音堂須弥壇裏の壁画
白衣観音や地獄などを描く、観音堂須弥壇裏の壁画も必見。
京都の皇室ゆかりの社寺 仁和寺の御殿の中心部分
宸殿は儀式や式典に使われる御殿の中心部分。御殿拝観料¥500。
京都の仁和寺 金堂の3段の垂木や菊の紋入り飾り金具が建物の格を表現
金堂の3段の垂木や菊の紋入り飾り金具が建物の格を表現。
京都の皇室ゆかりの社寺 仁和寺の参道
京都府京都市右京区御室大内33
☎075・461・1155 9:00〜17:00
観音堂秋季特別内拝 9/7〜11/24
9:30〜16:30(16:00受付終了)
一般拝観料/¥1,000(記念品つき)

京都の皇室ゆかりの社寺4:三千院

洛北大原の地に静かにたたずむ門跡寺院
京都の皇室ゆかりの社寺 三千院

令子 門跡寺院といえば、大原の三千院もすてきね。

和美 ここはどういうお寺ですか?

令子 比叡山延暦寺を開いた最澄が、比叡山の山梨の大木の下に造ったお堂が最初だといわれているわ。平安時代以降は皇族が住職を務める宮門跡になったそうよ。いろいろな場所を移転して、明治維新後に今の大原に移ったとか。

和美 お寺も引っ越しをすることがあるんですね。

令子 ここはお庭がきれいなの。聚碧園(しゅうへきえん)というお庭が客殿から眺められるんだけど、いつまで見ても飽きないのよね。江戸時代の茶人・金森宗和(かなもりそうわ)が手を加えたお庭だそうよ。

和美 庭を見ながらお抹茶もいただける〜。まったりできそう。

令子 往生極楽院(おうじょうごくらくいん)のまわりは有清園と呼ばれる庭で、苔が見事。阿弥陀三尊像が安置されているの。

和美 小さいお堂に大きな仏さまが。天井の真ん中が上がってる。

令子 舟底形天井というんだけど、もとは壮麗な壁画が描かれていたそうで、円融蔵(えんにゅうぞう)展示室で復元されたものが見られるわよ。

和美 鮮やかですね。これが昔の極楽のイメージなんですか。

令子 阿弥陀仏は極楽浄土に導いてくれる仏さまとして信仰されていたのよ。そうそう、大原にはプロの料理人も買いにくる日曜日の朝市が立つの。三千院の近くの「里の駅 大原」が会場なんだけど、普通の日も野菜とか素朴なお菓子とか買えるわよ。私なんかこの間、あん入り栃餅買っちゃった〜。

和美 なんだかおいしそう! ロイヤルパワーもいっそう強まっていそうな令和元年。今年の京都、俄然訪れたくなりました。     

京都の皇室ゆかりの社寺 三千院の鬼瓦
宮門跡だったことを語る菊の紋章が鬼瓦に見られる。
京都の皇室ゆかりの社寺 三千院の再現された往生極楽院の天井画
再現された往生極楽院の天井画。飛天や蓮華が空に舞う。
京都の皇室ゆかりの社寺 三千院の往生極楽院の阿弥陀三尊像(国宝)
往生極楽院の阿弥陀三尊像(国宝)。脇侍は観世音菩薩と勢至菩薩。
京都の皇室ゆかりの社寺 三千院の参道
京都府京都市左京区大原来迎院町540
☎075・744・2531
3月〜10月 9:00〜17:00、
11月 8:30〜17:00、12月〜2月 9:00〜16:30
一般拝観料/¥700
撮影/福森クニヒロ 構成・文/石塚晶子

【3】センスのいい店主がいる京都のお店

器、お茶、お花。東京にもパリにもない、唯一無二のお店
世界中から素敵な人が集まる京都には、感性を刺激し、磨く力がある。人柄や空間を通じてとっておきの美がぐんと身近になる。

センスのいい店主がいる京都のお店1
『寺町 李青(りせい)』鄭玲姫(チョンヨンヒ)さん

本物を見て培った美意識あふれる時間と空間

51歳で李朝喫茶『李青』を始め、『寺町 李青』を70歳でオープンした鄭さん。スッとのびた背すじにミニマムなファッション、磨かれたセンスにあこがれる人は少なくない。「韓国の文化をきちんと伝えたくて李青を始めて22年。それまでは主婦でしたが、若いころから意識して本物を見るようにしていたことが糧となっています。感覚に流されることなく、本物の歴史や背景を知ったうえで目を養わないと、いつまでたっても感性は磨かれません」

一昨年始めた『寺町 李青』は、カウンターとテーブルの一部だけを新しくしつらえ、自宅で使っていた器や調度品、世田谷・経堂にあった『茶房 李白』から譲り受けた家具を持ち寄り、自身の審美眼でセンスあふれるお店を完成させた。器や古道具、ポジャギ(韓国の布)も販売し、韓国の古美術や日本の現代作家の器も分け隔てなく並べている。

「寺町通は昔から好きな通りで、長い間インド雑貨のお店があったこの物件はずっと気になってました。2軒目を始めるつもりはなかったけれど、素敵な空間にする確信があったので、空くと聞いたら即決していました」

心地よくお茶をいただきながら、隅々にまで息づく伝統とオリジナルの審美眼を学べる一軒だ。
寺町 李青(りせい)の鄭玲姫(チョンヨンヒ)さん
李朝文化を愛した父親の影響を受けたという鄭さん。韓国に息づく文化、センスあふれるしつらえとおいしさを、京都から発信している。
毎朝、李青でピビンバを仕込み、美山の八百屋さんに分けてもらっている野花を生ける鄭さん
毎朝、李青でピビンバを仕込み、美山の八百屋さんに分けてもらっている野花を生ける鄭さん。
美しく心地よい空間に心惹かれ通う、長年のファンも多い。
美しく心地よい空間に心惹かれ通う、長年のファンも多い。
はと麦やハスの実、クコの実などを使った「禅食ケーキ」¥500と「韓方茶」¥700
はと麦やハスの実、クコの実などを使った「禅食ケーキ」¥500と「韓方茶」¥700。
鄭さんが韓国で見つけてきた器や工芸品、生活道具、ヴィンテージのポジャギを販売。
鄭さんが韓国で見つけてきた器や工芸品、生活道具、ヴィンテージのポジャギを販売。¥1,000以内の雑貨や数十万する骨董も見つかる。
食器や調度品も奇をてらわず、控えめでおしゃれ
食器や調度品も奇をてらわず、控えめでおしゃれ。
店でも自宅でも使っている藤塚光男の器
店でも自宅でも使っている藤塚光男の器。
寺町 李青(りせい)
京都市中京区寺町通丸太町下ル 下御霊前町633
☎075・585・5085
12:00 ~ 18:00 ㊡火曜 
テーブル22席
カード¥10,000以上可

センスのいい店主がいる京都のお店2
『戀壺洞(れんこどう)』関川紳子さんさん

伊万里の洗練と寛容を女性目線で見立てて伝える


骨董の街・新門前通に控えめにたたずむ『戀壺洞』。創業時は父親が仏教美術や中国骨董を扱っていたが、関川さんが店を継いでからは女性でも扱いやすい伊万里を充実させ、しゃれた絵柄や形の器をそろえている。

「伊万里は400年以上も前のものですが、特別扱いせず使って楽しんでもらいたいですね。花器に見立てたり、現代作家のものや北欧アンティークと合わせたり。使ってこそ生き、繊細なようですが意外と丈夫なんです」。子供のころから伊万里の器をふだんに使い、3人の息子さんたちも同じように育てた関川さんがいうのだから間違いない。

「うちは40代、50代のかたが多く、生活に何かをプラスしたいと思って来られるみたいです。好みの器で食事をしたり、花のひとつも飾りたくなり、特に女性は育児が一段落するころから伊万里に興味がわくようです。気持ちの余裕もでき、自分の美意識がはっきりするときなのでしょうね」。自身も仕事や子育てが落ち着いた数年前に家を建て、店も思いきって改装した。

日々美に触れ、骨董の仕事に没頭し、人生を豊かにしている関川さん。ゆっくりとした暮らしに戻りたくなったとき、よき相談相手になってくれそうだ。
亡父が創業した『戀壺洞』を30年前に引き継いだ関川さん
幼少のころから骨董の中で暮らし、亡父が創業した『戀壺洞』を30年前に引き継いだ関川さん。なかには幼少のころから数十年使っている愛用の器も。
佃 眞吾のトレイと合わせたお茶セット。組み合わせの妙をまねしたい
佃 眞吾のトレイと合わせたお茶セット。組み合わせの妙をまねしたい。
いつも店内にある花の飾り方のセンスも参考になりそう
いつも店内にある花の飾り方のセンスも参考になりそう。
豆皿は染付を中心に白磁や土ものも扱う。1客¥6,000~
豆皿は染付を中心に白磁や土ものも扱う。1客¥6,000~。
整然と並ぶそば猪口は間近で見ると繊細な文様や内側に描かれた柄など、新たな発見に引き込まれる。手にする場合はひと言断りを。そば猪口¥7,000~
整然と並ぶそば猪口は間近で見ると繊細な文様や内側に描かれた柄など、新たな発見に引き込まれる。手にする場合はひと言断りを。そば猪口¥7,000~。
京都の戀壺洞(れんこどう)の店内
京都市東山区新門前通縄手東入ル 西之町
☎075・525・2121
12:00 ~ 17:00
㊡火曜、不定休あり

センスのいい店主がいる京都のお店3
『小慢(シャオマン)』謝小曼(シャシャオマン)さん

人気茶藝館で極めるセンス、美意識、所作


京都御所北側の閑静な住宅街に小さな表札だけを掲げる台湾茶のサロン(教室)&ギャラリー。台北の人気茶藝館のオーナー・小曼さんがひと目見て気に入った町家を和紙や左官などの5名の職人に依頼し改装した、凛としたモダンさの漂う和空間だ。

「京都は伝統も現代のものも受け入れながら、生活の中に美を見出そうとする意識がとても高い街。台湾茶の文化を日本で伝えるなら京都でと思って」と小曼さん。日本の大学を卒業後、大手百貨店でバイイングにかかわり、台湾で美意識の高いお茶の世界に魅了され、活動を始めて十数年。台北を拠点に、東京、上海、京都を行き来し、『京都小慢』では毎月3日間、中国茶のレクチャーを行っている。

「どこにいても朝はお茶で目覚め、自然の素材だけで暮らすようにしています。お茶は体にいいだけでなく、心を豊かにしてくれるもの。身のまわりにあるものを生かす目やセンスを養い、暮らしや生き方の意識を高めてくれます」。日本や台湾、韓国の陶芸家たちと茶道具の展覧会を催し、料理研究家と組んでお茶会も企画している。

この場所に足を運んでこその特別な時間。お茶の世界を通じていくつものセンスが学べそうだ。
謝小曼(シャシャオマン)さん
毎月1週間京都に滞在し、展覧会の企画も手がける小曼さん。工芸やアート、ファッションへの関心も深く、自然や暮らしに息づく美を大事にしている。
年間通して学ぶコースでは最終月を迎える生徒が亭主となり、自分で選んだ茶葉や茶道具を使ってお茶のひと通りをおさらいする
年間通して学ぶコースでは最終月を迎える生徒が亭主となり、自分で選んだ茶葉や茶道具を使ってお茶のひと通りをおさらいする。
ギャラリーでは日本と台湾の作家が制作した中国茶藝の中で最も古い作法「潮州工夫茶」の茶道具展を開催中
ギャラリーでは日本と台湾の作家が制作した中国茶藝の中で最も古い作法「潮州工夫茶」の茶道具展を開催中。
益子の作陶家・郡司庸久、慶子の茶器セット
益子の作陶家・郡司庸久、慶子の茶器セット。
黒糖の寒天に豆腐羹をのせた茶菓子。茶会の亭主を務めた生徒さんの手製
黒糖の寒天に豆腐羹をのせた茶菓子。茶会の亭主を務めた生徒さんの手製。
店内では台湾茶や中国茶を販売
店内では台湾茶や中国茶を販売。
小さな表札を掲げるだけの控えめなたたずまい
小さな表札を掲げるだけの控えめなたたずまい。
京都の小慢(シャオマン)の店内
京都市上京区幸神町313
☎不掲載
12:00~18:00 ㊡火~木曜
講座や展覧会の詳細はFacebookかInstagramで確認を

センスのいい店主がいる京都のお店4
『日日(にちにち)』奥村文絵さん

ものづくりの世界へ誘う美意識がつまった空間


夫のエルマー・ヴァインマイヤーさんが二十数年前に開いた『日日』を築100年余りの日本画家の旧邸で新たに始め、運営と企画を手がけている奥村さん。フードディレクターとして仕事をしていた東京を離れ、取り巻く環境は一変。ものを売る仕事も京都暮らしも初めての経験だった。

「この建物は京都だから出会えた物件で、各分野に精通した職人さんにお力を借りて実現できた空間です。京都にルーツがない私たちが純和風の邸宅をどう使うか、暮らしの道具をどう見せるか、毎日通った改修の現場が楽しくて」

座敷に目積畳を敷き詰めて天井照明を外し、木を植え、知恵を出しあい端正ですがすがしい空気が漂う空間をつくった。扱うのは国籍や時代の流れに動じることなく生まれた工芸品や、職人の手仕事でつくられた暮らしの道具。セレクトはもちろん、その見せ方にも妥協せず、漆盆を見せるための陳列箱をつくり、緊張感を放つ器には花を飾って空気を和ませている。トークイベントも開催され、作家の思いや情熱にも触れることができ、東京のスタイリストや器好きがこぞって通うアドレスに。

「ものを売るだけでなく、つくり手の姿勢を伝えるのもギャラリーの務め。ものづくりの世界につながる道すじをつけ、足跡を残せる存在でありたいですね」
会の主旨に合わせて展示の仕方も替え、信頼関係を築いた30名ほどの作家のものを扱う
会の主旨に合わせて展示の仕方も替え、信頼関係を築いた30名ほどの作家のものを扱う。
仁城義勝や角 有伊(かど ゆい)などの漆盆が収まる陳列箱
仁城義勝や角 有伊(かど ゆい)などの漆盆が収まる陳列箱。
奥村さんが生けた花とともに、器の個性や魅力を楽しむことができる
奥村さんが生けた花とともに、器の個性や魅力を楽しむことができる。
食に関する企画や商品開発の仕事に携わってきた奥村さん。
食に関する企画や商品開発の仕事に携わってきた奥村さん。エルマーさんのポリシーを引き継ぎ、手仕事を伝える展示会を年7~8回企画している。
造園家・菅藤恵輔さんによって生まれた、明るく開放的な和の庭
造園家・菅藤恵輔さんによって生まれた、明るく開放的な和の庭。
建物の一角に設けた喫茶『冬夏』。無農薬のお茶やカカオ、生菓子を作家の器で楽しめる。¥1,500~
建物の一角に設けた喫茶『冬夏』。無農薬のお茶やカカオ、生菓子を作家の器で楽しめる。¥1,500~。
庭で季節を、空間で和を感じながら、ものづくりの世界へと引き込まれる
庭で季節を、空間で和を感じながら、ものづくりの世界へと引き込まれる。
京都の日日(にちにち)の入り口
京都市上京区信富町298
☎075・254・7533
10:00 ~ 18:00 ㊡火曜
『冬夏』カウンター6席
撮影/福森クニヒロ 取材・原文/西村晶子

【4】知っている人だけが楽しめる!京都の狙い目情報

「最近どこに行っても混んでいる」という京都を訪れた人の嘆きの声にお応えし、取材スタッフが現地で見つけたとっておきのお楽しみ情報をご紹介。

京都の狙い目情報1

骨董や古道具のお店が約150店集う「平安蚤の市」

2019年4月に始まった骨董市は、京都のなじみの店もあって楽しい(ライター・西村晶子さん)
「骨董好きに耳寄り情報! 2019年4月から新しい蚤の市がスタートし、回を重ねるごとににぎわっています」(西村さん)。出店条件は古物商許可証をもっていることであり、約150もある露店はすべてが骨董やアンティーク、古着などの古いものを扱う店。飲食店やほかの業種がないのも潔い。「若い人向きとか年配向きとかどっちかに偏らず、幅広い層が楽しめる市にしたい」と、主催者である東山仁王門の古道具店『Soil』店主、仲平誠さん。年代もバラバラに、日本のものもあれば、海外のものもあり、骨董もあれば、ジャンクもあり。そのミックス感もおもしろい。
京都の平安蚤の市の様子
毎月ほぼ10日、全国から店が集まる。
京都の平安蚤の市のクッション
キリスト教にちなんだ柄が刺繡されたクッション 各¥4,800。
京都の平安蚤の市のイギリスのアンティークを扱う『menu』
イギリスのアンティークを扱う『menu』は神奈川県から出店。家具は発送してもらえる。
京都の平安蚤の市の滋賀県・高島の古道具店『海津』
滋賀県・高島の古道具店『海津』には江戸時代のそばちょこが充実。
京都の平安蚤の市のイギリス製のカトラリー
イギリス製のカトラリー。
韓国喫茶『寺町 李青』のマダムも京都の平安蚤の市の常連
韓国喫茶『寺町 李青』のマダムも出店者の常連。
京都の平安蚤の市は年代や国もいろいろなガラスのボトルがそろう
ガラスのボトルは年代や国もいろいろにそろう。
京都の平安蚤の市の英ホーンジー社のヴィンテージのカップ&ソーサーが並ぶコーナー
岡崎公園 平安神宮前広場
☎070・1745・1503(平安蚤の市実行委員会)
月1回10日前後に開催(9月、10月は10日、11月は13日に開催)
10:00~16:00(雨天・荒天中止)

京都の狙い目情報2

手軽でおいしいだしの魅力を再発見「うね乃 本店」

だしの老舗では工場見学や、昆布と削り節のだしの飲み比べも!(ライター・天野準子さん )
京都の寺社や料理店に昆布やかつお節を卸してきただしの老舗。昨年、本店横に新工場が完成し、工場見学をスタートした。「工場といっても、オートメーション化されておらず、どの工程も手作業。削り節になるまでにこんなに手間ひまがかかっているのかと感動します」(天野)。見学後は本店内で利きだしワークショップを受けられる。簡単なだしのとり方や昆布だしの産地別の飲み比べなど、体験者のリクエストやだしに対する経験値によって内容を変えるそう。「こんなに簡単においしいだしをとれるなんて驚き。料理への活用法も勉強になります」。
京都 うね乃 本店の削り機
代々受け継がれた削り機もいまだに現役。削り節を作る際、最近ではセラミックの刃を使うことが多いが、こちらではこまめな手入れを要する鋼の刃を使用。セラミックで削るより表面にキズが多くできるため、少量で多くのだしがとれるそう。
京都 うね乃 本店の店内には寺社御用達の札が
店内には寺社御用達の札が。
京都 うね乃 本店のワークショップを行うキッチンスペース
ワークショップを行うキッチンスペース。
うね乃副社長、采野佳子さん
うね乃副社長、采野佳子さん。
京都市南区唐橋門脇町4の3 0120・821・218
9:00~18:00(土曜~16:00) ㊡日曜、祝日、第2土曜
「工場見学+利きだしワークショップ」 60分¥3,000 おみやげつき
開催日時は営業時間内で応相談 3日前までの2名以上の要予約

京都の狙い目情報3

1回でコツがつかめる!? 気軽な手書き文字教室「嵩山堂はし本」

和文具の名店で筆文字が書けるように! おみやげには一筆箋や封筒が(編集・K野)
和文具の専門店が開催している単発参加オーケーの手書き文字教室。まずは筆(又は筆ペン)で、手本帳を見ながら、字を練習し、筆に慣れたら実践を。『嵩山堂はし本』の金封やハガキに文字を書いていく。書道教室と違い、書いた字を添削することはなく、講師・古宮佳代子さんがそれぞれの字の個性を生かした書き方やバランスを指導してくれる。「この年になって、自分のクセを直して、正しい文字を書くのはむずかしいけど、バランスを整えるだけならなんとか。嵩山堂の紙製品はかわいく、うまく書けなくても絵柄でカムフラージュできるのもいい」(K野)。
教室を受講すると半紙や金封、ハガキ、ぽち袋などが入った紙製品のセットがついてくる
教室を受講すると半紙や金封、ハガキ、ぽち袋などが入った紙製品のセットがついてくる。教室で使わなかった分は持ち帰れる。
いろは歌の手本帳を見ながら仮名の練習。このとき、筆の入り方や抜き方、自分の苦手な字を意識しながら書いていく
いろは歌の手本帳を見ながら仮名の練習。このとき、筆の入り方や抜き方、自分の苦手な字を意識しながら書いていく。
京都の嵩山堂はし本のエントランス
教室は店舗の2階で開催される
教室は店舗の2階で開催される。
京都市中京区六角通麩屋町東入ル八百屋町110 ☎075・223・0347
10:00~18:00 無休(盆、正月は除く)
「手書き文字教室」 60分講座¥2,000 月1回土曜11:00~開催、90分講座¥3,000 月2回土曜14:00~、月2回日曜11:00~開催

京都の狙い目情報4

こまやかなサービスや女性好みの施設が魅力「ハイアット リージェンシー京都」

ホテル内で、毎夕、舞妓さんの舞が楽しめ、一緒に記念撮影もできます(編集・W)
海外の宿泊ゲストから「舞妓さんに会いたい」という声が多く、3年前から始まった舞妓さんによる舞の披露。舞を披露したあとは3つあるレストランをまわり、ゲストとおしゃべりしたり、写真を撮影することも。「毎夕、宮川町の舞妓さんが来るなんてスゴい。京都に旅行をするときは、必ず泊まります。朝食もおいしいし、酵素浴は体調も肌もよくなります」(W)。スパには、ホテルでは珍しい酵素浴があり、檜パウダーを敷きつめた浴槽につかれば、体の芯から温まって、デトックスや体質改善にも。酵素浴を楽しみに泊まりにくるリピーターも多いそう。
毎日18時15分から地下1階のガーデンフロアで舞を披露。その際、宿泊者にはスパークリングワインなどのドリンクサービスも
毎日18時15分から地下1階のガーデンフロアで舞を披露。その際、宿泊者にはスパークリングワインなどのドリンクサービスも。
舞妓さんからもらった花名刺を財布に入れておくと福が“舞妓む”といわれている。
舞妓さんからもらった花名刺を財布に入れておくと福が“舞妓む”といわれている。
18時30分ごろからは3つのレストランをまわり、お客さんにごあいさつ
18時30分ごろからは3つのレストランをまわり、お客さんにごあいさつ。
三十三間堂からすぐ
三十三間堂からすぐ。
京都市東山区三十三間堂廻り644の2
☎075・541・1234
IN14:00 OUT12:00
1室2名利用の1泊1室¥34,000~(税・サ・宿泊税別)

京都の狙い目情報5

ギャラリーよりももっと身近にアートを体感「ノードホテル」

現代アートの総額1億円超え! パブリックスペースにも作品がいっぱいです(ライター・天野準子さん)
現代アートを扱う組織が今年7月にオープンしたホテル。現代アートを買っても倉庫に眠ったままにしているコレクターが多く、「もっと現代アートを見て、知ってほしい」と、こちらのホテルでは、惜しみなくアート作品を展示。パブリックスペースにも、バリー・マッギーやベルナール・フリズ、五木田智央など、世界的に評価の高いアーティスト作品が数多く展示されている。「アートコレクターの住まいをコンセプトに、現代アートが空間に溶け込むように展示されていて、美術館やギャラリーのホワイトキューブで見るのとは違った印象です」(天野)。
五木田智央の作品が飾られた「ジュニアスイート・キッチンつき」1泊1室¥50,000~(税・サ・宿泊税込)
五木田智央の作品が飾られた「ジュニアスイート・キッチンつき」1泊1室¥50,000~(税・サ・宿泊税込)。
客室の扉を開けると、大竹伸朗の作品が出迎えてくれる
客室の扉を開けると、大竹伸朗の作品が出迎えてくれる。
1階のパブリックスペース。バーやダイニングは宿泊者以外も利用できる。
1階のパブリックスペース。バーやダイニングは宿泊者以外も利用できる。
フロントをはじめ、館内はアート作品が映えるミニマムな空間に
フロントをはじめ、館内はアート作品が映えるミニマムな空間に。
京都市中京区四条西洞院上ル蟷螂山町461
☎075・221・8800 IN15:00 OUT11:00
シングルルーム1泊¥11,000~(税・サ・宿泊税込)
撮影/内藤貞保 竹田俊吾 取材・文/天野準子 

※エクラ2019年10月号掲載(掲載内容は取材当時の情報になります) 

 

【1】雅に味わう「京都の春の花」

古人が愛でたのと同じ場所で花々を観賞できるのが京都の魅力。晩春までの、心浮き立つ花の名所をご紹介!

糸桜(京都御苑)

糸桜(京都御苑)

京都御苑内、近衛邸跡地の春の眺めはとびきりのもの。江戸時代末の孝明天皇も「目が離せない!」と歌に詠んだ枝垂れ桜の名所で、幾本もの大樹が開花すると、薄桃色の霞がかかったような眼福の景色が広がる。早起きして朝一番に訪れるのもいい。例年の開花は3月下旬。ほかに中立売御門近くの「車返桜」、出水(でみず)の枝垂れ桜も必見だ。

写真/環境省京都御苑管理事務所

●DATA
京都市上京区京都御苑 
☎075・211・6348(京都御苑管理事務所) 
苑内拝観自由

西行桜(勝持寺)

西行桜(勝持寺)

桜をこよなく愛し、「願はくは花の下にて春死なむ~」と詠んだ西行法師。勝持寺は、西行が出家したと伝わる洛西・大原野の古刹だ。「花の寺」とも呼ばれるのは、山麓に段状に開かれた境内に桜の木が多いから。なかでも、鐘楼の隣のひときわ気品ある枝垂れ桜が「西行桜」として親しまれている。見ごろは例年4月上旬。独特なポーズのご本尊・薬師如来像も拝んでおきたい。

●DATA
京都市西京区大原野南春日町1194 
☎075・331・0601 
9:30〜16:30(16:00最終受付) 
拝観料/¥400

御室桜(仁和寺)

御室桜(仁和寺)

門跡寺院の中でも格式高い仁和寺の春は、五重塔と白い御室桜の共演が魅力。市内では遅めの4月上旬〜中旬の開花で、満開時には、中門をくぐった左手が雲霞に覆われるように美しい。御室桜は樹高が低く、地面に巨大なブーケが並ぶような姿が独特で、開花中はその間の通路を歩くことができる。’20年は「御室花まつり」として催行。令和初の花見体験に、ぜひ!

●DATA
京都市右京区御室大内33 
☎075・461・1155 
[御室花まつり] 3/20~5/6 8:30〜17:30(17:00最終受付) 
期間中の入山料/大人¥500(御殿、霊宝館は料金別途。9:00~17:00[16:30最終受付])

山吹(松尾大社)

山吹(松尾大社)

京の都の西方守護の社であり、醸造のご神徳でたたえられる松尾大社は、古くからの山吹の名所。開花期間中は「山吹まつり」(4/10 〜5/5)としてにぎわう。シーズンに楼門をくぐると、一ノ井川沿いに咲き乱れる黄金色の花が迎えてくれる。山吹を「家にありたき」とした吉田兼好は一重咲き派、「大きにてよきもの」と評した清少納言は八重咲き派だったろうか。境内ではいずれの花も見ることができ、盛りは例年4月中旬から。

●DATA
京都市西京区嵐山宮町3 
☎075・871・5016 
境内拝観自由(庭園・神像館は料金別途。9:30〜16:00、日曜、祝日は〜16:30)

つつじ(三室戸寺)

つつじ(三室戸寺)

本尊は千手観世音菩薩(秘仏)で、西国三十三所第十番札所となっている宇治の古刹。春は石楠花とつつじ、初夏は紫陽花と、境内の谷に造られた「与楽園」の花々を目当てに訪れる人も多い。つつじの見ごろはGW。敷地は広大で、満開を迎えたころには別天地の趣が漂うほど。石楠花はつつじに先駆けて花開く。境内の鐘楼のわきには、源氏物語最後のヒロインに題をとった謡曲『浮舟』の碑があり、そこにも春の花が色どりを添える。

●DATA
宇治市莵道滋賀谷21  
☎0774・21・2067 
8:30〜16:00(4/1〜10/31は〜16:30。最終受付は閉門30分前) 
拝観料/つつじ園(4/18〜5/10)・紫陽花園(6/1〜7/5)の開園中¥800 ※通常期¥500

杜若(大田神社)

杜若(大田神社)

大田神社は、上賀茂神社から徒歩10分ほどの距離にある境外摂社。「天の岩戸伝説」で知られる天鈿女命(あめのうずめのみこと)を祀り、芸事上達を願う人々から信仰を集める。「大田の沢」を埋めんばかりの杜若(かきつばた)は平安時代から名高く、藤原定家の父・俊成が「神山やおほたの沢の杜若ふかきたのみは色にみゆらむ」と詠んだ。現在は天然記念物に指定されており、例年5月上旬に咲きはじめ、中旬が盛り。「葵祭」とセットで覚えておきたい、京の風物詩だ。

●DATA
京都市北区上賀茂本山340 
☎075・781・0907 
境内拝観自由(※杜若開花時期は育成協力志納金¥300。社務所9:30〜16:30)

 

【2】魅力あふれる「京都の最旬ホテル」

旅の楽しみのひとつ、宿選び。魅力あふれる新しいホテルを厳選してお届けします。

パーク ハイアット 京都

京都の魅力とハイアットブランドのエレガンスを融合させた、今、京都で最も旬なラグジュアリーホテル。東山三十六峰を背にする高台に4つの低層棟が重なるように立ち、その間に配した庭と一体となり京の風情を漂わせる。


部屋に入った瞬間に目に飛び込んでくるのは、八坂の塔を中景にする京都市街。ぬくもりのあるタモ材と色みを極力抑えたインテリアの中でこの景趣に向き合え、心や体を休めることができる。さらなる絶景を求めるならば、ぜひバー「琥珀」へ。春にはオリジナルジンをベースにする桜色のカクテルが用意され、グラスを傾けながら見る夕景は圧巻。春の風趣に間近で触れたければ敷地内にある料亭「山荘 京大和」の庭もおすすめ。3月後半からさまざまな花木が一気に芽吹く。どこにも行かず、ここにいるだけで京の静寂、都の春を体感できそうだ。

東山のくつろぎのひとときを過ごせる、68㎡の「ビューデラックスツイン」

東山のくつろぎのひとときを過ごせる、68㎡の「ビューデラックスツイン」。インテリアデザインは世界的デザイナー、トニー・チーが担当。“京都の静謐”をコンセプトにラグジュアリーさが表現されている。

瓦屋根越しの八坂の塔を一望

「山荘 京大和」の茶室や庭、シグネチャーダイニング「八坂」からも瓦屋根越しの八坂の塔を一望。ホテル内をめぐりながら京都の四季を五感で体感できる。

障子や屋根の庇

障子や屋根の庇(ひさし)、瓦屋根などの和建築の要素とモダンにして控えめなデザインの家具を調和させた静寂の空間。

自然の素材、職人が手がけた調度品をバスルームにも

自然の素材、職人が手がけた調度品をバスルームにも置き、さりげなく京都らしさやぬくもりを創出

絶景とともに非日常の時へといざなうバー

絶景とともに非日常の時へといざなうバー「琥珀」。

限定カクテル「春霞」¥2,000

限定カクテル「春霞」¥2,000。京都産クラフトジン「季の実」とのコラボレーションで生まれたオリジナルジン「青龍」とハーブティーがベース。

ロビーラウンジ「ザ リビングルーム」

二寧坂からエントランスを経てホテル内に入ると広がりを見せるロビーラウンジ「ザ リビングルーム」。

朝から晩まで食事やドリンクを提供

アートや本、暖炉を備えたゲストハウスのような空間の中、朝から晩まで食事やドリンクを提供

創業143年の「大和屋」が昭和24年にこの地に開業した料亭「山荘 京大和」

創業143年の「大和屋」が昭和24年にこの地に開業した料亭「山荘 京大和」。幕末の志士の活躍の舞台となった「翠紅館」や茶室、庭園からなる。

【DATA】
京都市東山区高台寺桝屋町360 
☎075・531・1234 
全70室(うちスイート9室) ¥110,000前後~(1室2名利用の1泊1室料金、朝食つき) http://www.parkhyattkyoto.jp/
バー「琥珀」は宿泊者およびシグネチャーレストラン「八坂」の利用客のみ入店可能。

アマン京都

京都・鷹峯の山あいにオープンした日本で3軒目の「アマン京都」

京都・鷹峯の山あいにオープンした日本で3軒目の「アマン京都」。約2万4000㎡の広大な敷地や自然林に誰もが圧倒されるが、早くも注目を集めているのが「アマン京都 スパ」のトリートメント。さまざまなメニューが用意されている中、“アマン京都 シグネチャー ジャーニー”は京都限定。温泉につかったあと、金箔、酒粕、米ぬか、日本の海塩などを使って足浴を行い、トリートメントが始まる。高い技術をもつセラピストの施術と季節ごとに替わるオイルを駆使し、春は桜や緑茶、

マンネンロウ(ローズマリー)の香りを閉じ込めたシーズンオイルで身心を浄化し、春の趣向で深いリラクゼーションへと導く。

客室や料理でも古都の春を楽しめ、新緑に包まれた和モダン空間、和菓子に見立てたアフタヌーンティーなど、楽しみはつきない。

3つのトリートメントルームを備えるスパ

3つのトリートメントルームを備えるスパ。自然の景観を楽しめる露天風呂と内湯の天然温泉を併設

足浴には松井酒造の大吟醸の酒粕や24K純金箔などを用い、春は桜も使用

足浴には松井酒造の大吟醸の酒粕や24K純金箔などを用い、春は桜も使用。

日本旅館に受け継がれるお茶のセットもモダンに昇華

日本旅館に受け継がれるお茶のセットもモダンに昇華。

すべての照明や家具はアマン京都オリジナルの特注品

すべての照明や家具はアマン京都オリジナルの特注品。

自然豊かで広大な森を美しくデザインした安息の地

自然豊かで広大な森を美しくデザインした安息の地。

苔と水が生む日本独特の自然美や造形に出会える

苔と水が生む日本独特の自然美や造形に出会える。

ゆったりとした空間の中、非日常へといざなう檜(ひのき)風呂

ゆったりとした空間の中、非日常へといざなう檜(ひのき)風呂。

畳と床の間で構成された和モダンな客室は全26室

畳と床の間で構成された和モダンな客室は全26室。

壁一面の窓の向こうは四季折々の木々。春は緑一色に

壁一面の窓の向こうは四季折々の木々。春は緑一色に。

アフタヌーンティーも春限定のメニューに

アフタヌーンティーも春限定のメニューに。宿泊ゲスト¥5,200、外来ゲスト¥7,500(シャンパンつき) ※各税・サ別

部屋のどこにいてもミニマルな造りと景観に癒される

部屋のどこにいてもミニマルな造りと景観に癒される。

【DATA】
京都市北区大北山鷲峯町1 
☎075・496・1333 
全26室(うちパビリオン棟2棟) ¥111,000~、パビリオン棟¥550,000 ~(ともに1室2名利用の1泊1室料金) 
アマン・スパのトリートメントは宿泊者のみ。要予約 
アマン京都シグネチャー ジャーニー 60分 ¥26,000~ 
https://www.aman.com/resorts/aman-kyoto
撮影/中田 昭 福森クニヒロ 取材・原文/西村晶子 本誌編集部

※開花時期は気候により、前後することがあります
※エクラ2020年4月号掲載(掲載内容は取材当時の情報になります) 

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