【大人の京都】冬こそ訪れたい!雪景色、美食、風物詩、季節ならではの特別感

桜の春、祇園祭の夏、紅葉の秋に比べ、寒さ厳しい冬はあまりなじみのない季節。京都は冬こそがその奥深さを知れる時かもしれない。冬景色や、豊かな水と土壌に育まれた食材の数々。雪がちらつく曇り空かと思えば澄みきった真っ青な空が広がり、寒さになじんでおいしさを増す美食が続々と登場。まだ知らない魅力をこの時季にぜひ堪能したい。

 

冬ならではの“風物詩”に出会う

寒さと慌ただしさが一気にやってくる師走。神社やお寺、花街、街なかはそれまでの観光客にかわって地元の人でにぎわい、一年を締めくくる風物詩に日々出会える。

京都の年の瀬を古き慣習やハレの行事で体感

京都の年の瀬を古き慣習やハレの行事で体感
底冷えする寒さに尻込みするが、冬ならではの魅力に遭遇する京都。自然の移ろい、静寂の街、冬限定の美味を五感で楽しめ、観光では出会えない日常を知ることに。写真は茶屋様式の町家が風情を残す祗園新町
南座の正面に「吉例顔見世興行(きちれいかおみせこうぎょう)」の「まねき」が上がると、いよいよ師走。顔見世は昔から京都の人にとってはハレの場であり、きものを新調してこの日を迎えるくらい、一年で一番の楽しみにしていたといわれる。今も、舞妓・芸妓さんがまとまって観劇する総見は艶(あで)やかで、待ちに待った特別な日にいっそうの華を添えてくれる。

12月に入ると、いくつかのお寺で「大根焚き」が行われる。「だいこん」とはいわず「だいこ」と発音し、この日に大根を食べると無病息災でいられるという言い伝えがある。大鍋でコトコトと炊いた大根はしっかり味がしみたべっ甲色。参拝者に振る舞われ、境内はその香りに包まれる。

13日の「事始め」は、一年の大切な節目。「事」は正月のことで、この日から正月迎えの準備に入る。一年お世話になった人たちのところに出向き、祇園では芸妓・舞妓さんが師匠やなじみのお茶屋さんにあいさつにまわり、顔見世と並ぶ、冬の風物詩とされている。また、北野天満宮ではお正月のお祝いもの、縁起物とされる「大福梅」の授与がスタートする。

冬至を迎えるころから一気に冷え込むようになり、21日の「終い弘法」、25日の「終い天神」は昔と変わらぬ歳末行事。気ぜわしい中で一年の節目を大事に受け継いできた京都の人たちの暮らしがかいま見られ、そこに息づく文化や美意識も伝わってくる。その楽しみ、感激は大晦日まで続く。

町衆や花街の一年の節目「事始め」

新年を迎える支度を始める日。京都の旧家、老舗、花街では、本家やなじみの得意先、お世話になった師匠やお茶屋の女将へのあいさつまわりをする風習が残っている。花街では行き来しながら芸妓・舞妓さんが「おめでとうさん」とあいさつを交わす様子が見られ、華やかな雰囲気を醸し出す。祇園甲部では鏡餅を持って京舞・井上流の井上八千代家元のもとへあいさつに行き、八千代師が一人ひとりに舞扇を手渡す光景は昔からの慣習。写真は宮川町の事始めの様子。

健康祈願の伝統行事「大根焚き」

健康祈願の伝統行事「大根焚き」
起源は諸説あり、12月9日、10日に行われる了徳寺の大根焚(だいこだき)は親鸞聖人の教えに感銘を受けた村人たちがお礼に大根でもてなしたのが始まりとされる。聖人を迎えたときは塩味で炊かれたが、現在はしょうゆで味つけをし、油揚げが入る。千本釈迦堂大報恩寺ではお釈迦さまが悟りを開かれた日とその前日の12月7日、8日に開催。この日に大根を食べると風邪にかからないという言い伝えがあり、境内は大変な人でにぎわう。

一年で最もにぎわう縁日市「終い弘法」「終い天神」

広大な境内を有する東寺の境内で毎月21日に開かれる「弘法さん」と呼ばれる縁日市「弘法市」は、京都名物のひとつ。毎回さまざまな露店が並んでにぎわい、年を締めくくる「終い弘法」
一年で最もにぎわう縁日市「終い弘法」「終い天神」
しめ縄飾りなどの正月用品や食品のお店なども出店し、松竹梅や葉牡丹などを並べる植木市も立つ。
しめ縄飾りなどの正月用品や食品のお店なども出店し、松竹梅や葉牡丹などを並べる植木市も立つ。
「天神さん」の呼び名で親しまれる北野天満宮の「天神市」の「終い天神」は12月25日。
「天神さん」の呼び名で親しまれる北野天満宮の「天神市」の「終い天神」は12月25日。こちらも年迎えのものを求める人でごったがえす。

北野天満宮の「大福梅」の授与

北野天満宮の「大福梅」の授与
学問の神さまとして知られる菅原道真公を祀(まつ)る「北野天満宮」。梅の名所としても知られ、境内神域で育った梅の実は採取、土用干しを経て奉書に包んで調製され、「大福梅」として12月13日の事始めより授与される。元旦の朝か、お祝いのお膳の初茶として飲むと邪気を祓(はら)い清め、健康に過ごせる新年の縁起物と京都の人の間で信仰されている。毎年、社務所前には長蛇の列ができ、なくなりしだい、終了する。

師走の一大興行、南座の「顔見世」

師走の一大興行、南座の「顔見世」
毎年11月、12月に行われる興行で、歌舞伎の年中行事のひとつ。興行主がこれから一年間舞台に立つ一座をそろえ、観客に役者の顔ぶれを見せる場として、江戸時代から始まったもの。南座では東西の役者がそろい、通常の公演に比べ、より豪華な雰囲気に包まれる。今でも着物姿で観劇する人が多く、各花街の芸妓さん、舞妓さんたちがそろって観劇する総見の日は圧巻の美しさ。舞台も観客席も心躍る、ハレのひと時を過ごせる。

ふだんは見られない、冬の寺院の“特別公開”

歴史的文化財が多い京都だが、通常公開されているのはその一部。今季の特別公開は’24年の大河ドラマや辰年にちなみ選定された寺院15カ所。秘められた美に出会える機会。

1.東寺 五重塔

正しくは教王護国寺という、真言宗の総本山。寺の象徴である五重塔は国宝で、日本一高い木造の塔。特別公開時には初層の内部に入ることができ、金堂・講堂もあわせて拝観できる。
東寺 五重塔
高さ約55メートルの東寺・五重塔の初層内部。極彩色の文様で埋めつくされ、大日如来に見立てた心柱を見守るように四仏を安置している

2.醍醐寺 霊宝館

真言宗醍醐派の総本山で世界遺産。2018年に初めて一般公開された、蓮のつぼみの形をした水晶の中で輝く金色の木造阿弥陀如来像を展示。貴重な密教美術に触れられる。

3.西本願寺 飛雲閣(外観)

国宝、重要文化財を多く有する西本願寺。桃山時代の豪壮華麗な造りの書院は、造作や意匠を凝らした広間や部屋、能舞台など見どころが多く、名閣の飛雲閣と庭園も拝観できる。

4.大徳寺 法堂・仏殿/龍源院

臨済宗大徳寺派大本山で、戦国武将ゆかりの禅刹でもあり、茶の湯文化と縁が深い大徳寺。法堂の「鳴き龍」、仏殿の天井画、4つの庭をもつ塔頭(たっちゅう)・龍源院では開祖堂を一挙公開。
大徳寺 法堂・仏殿/龍源院
大徳寺の塔頭寺院のひとつ、龍源院。方丈の中心の間の右面の襖に描かれた龍の襖絵。昭和初期に建てられた開祖堂の龍の図も公開される

5.仁和寺 金堂(裏堂)

宇多天皇が造営した格式ある名刹。桃山時代の御所の紫宸殿(ししんでん)を移築した金堂の「五大明王壁画」が5年ぶりに公開される。2018年秋まで370年以上非公開だった極彩色の壁画。

6.渉成園(枳殻邸・きこくてい) 園林堂(おんりんどう)

東本願寺の別邸で、この付近に光源氏のモデルのひとりといわれる嵯峨天皇の皇子、源融(みなもとのとおる)の邸宅があったとされる。庭園には茶室や書院が点在し、通常非公開の持仏堂、園林堂を公開。

7.泉涌寺(せんにゅうじ) 舎利殿/雲龍院

皇室の菩提寺として名高いお寺。「鳴き龍」で知られる舎利殿の天井画「雲龍図」は辰年記念の公開。雲龍院では襖絵「双龍風雷図」をはじめ、龍にゆかりのある寺宝も展示される。

8.廬山寺

紫式部の邸宅跡で『源氏物語』を執筆した場所とされる。疫病を退散させたと伝わる元三大師の像が安置されている元三大師堂を特別公開し、源氏物語にまつわる寺宝も披露される。

9.相国寺 法堂(はっとう)・方丈/光源院/慈雲院

現存する日本最古の法堂と方丈をあわせて公開。十二支の襖絵のある塔頭・光源院と、伊藤若冲が師と仰いだ大典禅師ゆかりの塔頭・慈雲院も貴重な公開となる。
相国寺 法堂(はっとう)・方丈/光源院/慈雲院
相国寺の法堂内の、狩野永徳の子・光信筆の天井画「蟠龍図」。堂内で手を打つと反響音がし、龍の鳴き声のように聞こえることから「鳴き龍」といわれる

僧侶が案内する特別拝観

10.西本願寺 書院・飛雲閣(外観)

世界遺産に登録されている寺院。国宝、重要文化財ずくめの書院内を僧侶の案内で法話とともに特別拝観。華麗なる桃山文化を代表する国宝、重要文化財の建造物をより深く体感できる。※完全予約制(インターネットから)

11.東本願寺 諸殿

壮大な伽藍を構える真宗大谷派の本山。境内に現存する最古の建物の大寝殿、来客の接待などで使用される白書院を僧侶の案内で特別拝観でき、竹内栖鳳(せいほう)らの近代京都画壇の作品にも出会える。※完全予約制(インターネットから)

Data

「紫式部と源氏物語」「辰年のご利益 京の龍めぐり」をテーマに、初公開の文化財を含む15カ所での特別公開

■公開期間 2024年1月6日~ 3月18日(期間内の拝観休止日は寺院により異なる)

■公開時間 10:00~16:30(16:00受付終了)

■料金 1カ所 大人(中学生以上)¥800

各寺院により拝観休止日、公開時間、料金が異なる場合があるので、事前にHPなどで確認を。
京都市観光協会(DMO KYOTO)「 京の冬の旅」 https://ja.kyoto.travel/specialopening/winter/
(11/16 〜公開予定) 問「京の冬の旅」コールセンター
☎︎075・585・5181(11月中旬〜’24年3/18の9:00〜17:00 ㊡12/29~’24年1/3)

伝統を受け継ぐ、老舗料亭「瓢亭」の美学

代々の主人が料理や空間、しつらえを一体化し、客人をもてなしてきた京都の料亭。伝統を受け継ぎつつも、新たな発想で変革を起こす老舗『瓢亭』の今をご紹介。

茶の心が息づく料亭で和の総合芸術を体感する

【冬の京都】15代目が受け継ぐ老舗料亭の美学。冬の『瓢亭』、その真髄を知る
創業しておよそ450年が経つ京都随一の老舗料亭『瓢亭』。松並木が続いていた南禅寺参道沿いの腰掛茶店として暖簾(のれん)を掲げたのが始まりとされ、料理屋として営業するようになったのは江戸時代末期から。料亭と聞くと重厚なたたずまいや仰々しい出迎えを思うが、初めての客は店の玄関がどこなのかとまどう構え。左手にある板戸が開かれ、打ち水がされた露地に入ると景色は一変。茶室や庵を思わせる建物へと案内される。
 
部屋は茶店時代からの最古の建造物といわれる「くずや」をはじめ、「探泉亭」「新席」「広間」の4つの棟のみ。それぞれ独特の趣(おもむき)があり、茶の心が隅々にまで行き届いた座敷に身を置くと自然と背すじが伸びる。
 
料理が運ばれるまでの時間は、四季折々の部屋ごとの造作やしつらえの美しさを楽しむひと時となる。冬は、庭の木々や障子を通して柔らかな光と影を感じる、陰翳礼讃(いんえいらいさん)の世界。床の間に飾られた椿の花、年の瀬を詠んだ書画の軸が茶趣を静かに生み、清新で穏やかな時間を醸し出す。
 
「『瓢亭』は長きにわたり守り継がれた館あってのもので、座敷や庭は料理を引き立ててくれる背景のようなものです。お客さまもその場の一員と思う気持ちをもって参加していただけると、より楽しい時間を過ごしてもらえると思います」と語る15代目主人の髙橋義弘さん。
 
料亭とは日本の文化や美意識までも味わえる豊かで深い世界。そのことを『瓢亭』で過ごす時間が教えてくれる。
茶店だったころと変わらない様子の『瓢亭』の玄関。
茶店だったころと変わらない様子の『瓢亭』の玄関。正面には床几(しょうぎ)が置かれ、古びたわらじや旗がかかる。左手の入口から一歩入ると、水打ちされた露地が風雅な内へといざなう
雪笹、雪輪、椿を描いた絵替わり細向付(むこうづけ)は永楽即全(えいらくそくぜん)の作。
雪笹、雪輪、椿を描いた絵替わり細向付(むこうづけ)は永楽即全(えいらくそくぜん)の作。代々でそろえた器は数知れず、大切に保管されている 

伝統と革新が共存する京料理ともてなし

料理は、茶懐石に倣う構成で、季節季節にめぐりくる食材と器を大切にしている。
「冬は、魚は脂がのり、野菜は根菜類がおいしいとき。この時季ならではのコクのあるほっくりとした料理を召し上がっていただきます」
 
煮物椀はかぶのすり流しや白味噌仕立てにし、焼き物は幽庵漬や味噌漬に。また、名物の「朝がゆ」に代わる「鶉(うずら)がゆ」がいただけるのも冬の間だけ。先付や、焼き物や炊き合わせを盛ったひょうたん形の三段重ねの器などが
順々に運ばれ、最後にごはんものとして鶉がゆが登場。体を芯から温めてくれる。冬になると器も変わり、雪や椿、新年は祝いの意匠のもの、ぬくもりのある陶器や焼き締めなどが使われる。
 
冬限定の味がある一方、一年を通じて決まっているのが鯛のお造り。鯛は身が引き締まって脂ののりがいい明石鯛にこだわり、上品なうま味と歯ごたえをより味わってもらえるようにへぎ造りにして提供している。長年、土佐醤油を添えているが、髙橋義弘さんは「繊細な香りや酸味が好まれる今の味」として「トマト醤油」を考案。お客の所望や嗜好の変化に応えながら新たなおいしさを生んでいる。
 
「うちのような老舗は劇的に変えることはむずかしいので新しい試みは繰り返しやってみて、違和感がないように工夫し、『瓢亭』の味になじませます」
 
京料理の伝統を受け継ぎつつ、グローバルな視点でとらえる老舗の挑戦。少しずつの革新をていねいに細やかに刻んでいる。

代々の美意識が凝縮された数寄の世界を五感で味わう

昼・夜の懐石料理から。東海道五十三次を描いた絵替わりのお椀で供される、
昼・夜の懐石料理から。東海道五十三次を描いた絵替わりのお椀で供される、蟹真丈(しんじょう)のかぶらすり流し。落ち着いた朱色が料理をきわだたせる
懐石のかたちで供される冬限定の「鶉がゆ」。
懐石のかたちで供される冬限定の「鶉がゆ」。鶉や鶏の骨、昆布や野菜を煮出したスープでごはんと鶉肉を炊いた雑炊は『瓢亭』の冬の名物

Data

京都市左京区南禅寺草川町35

☎️075・771・4116

12:00〜13:00(LO)、17:00〜19:00(LO)

定休日 水曜

個室4

昼の懐石料理¥31,625 〜、夜の懐石料理¥37,950 〜、朝がゆ(7/1〜8/31 8:00〜10:00LO)¥7,590、鶉がゆ(12/1〜3/1512:00〜13:30LO)¥18,975( サービス料込)

要予約

冬の京都で味わいたい「絶品鍋」

ジビエと野菜がおいしい京都の冬。地元の天然物や昔ながらの手法そのままに、そのおいしさをダイレクトに楽しませてくれる鍋をご紹介。

野むら山荘(のむらさんそう)

滋味深い熊肉と猪肉を食べ比べ

食通好みの熊肉と猪肉。その2つをひとつの鍋で楽しめる贅沢このうえない冬限定のジビエ鍋。しょうゆベースの甘味のあるだしの中で炊きながら味わう肉はどちらもうま味濃厚で、ネガティブな印象のくさみはまったく感じられない。脂身が多いがギトギトした脂っこさはなく、熊の脂はとろりと溶け、猪は弾力があるのに軟らかく、次々にいただけてしまう。さらにこの鍋になくてはならないのが鍋のために厳選したという野菜。肉と相性のいい九条ねぎ、ささがきごぼう、なめこがたっぷり添えられ、土っぽい香りや甘味、歯ざわりのよさが味のメリハリを生み、肉のエキスがつまっただしで炊くうちにいっそう滋味を増す。鍋の前には川魚、琵琶湖の湖魚の料理を楽しめ、鯖街道にゆかりあるひと品も登場。12月は名残の紅葉、年が明ければ雪景色に遭遇することもあり、人里離れたこの地ならではの口福眼福に深く静かに浸れる。

【冬の京都】冬限定のジビエ鍋が味わえる「野むら山荘」【京都の絶品鍋】
脂身の融点が低い熊肉は鍋の中で泳がせるようにし、色が変わったら引き上げる。ピュアな甘味に驚かされる
見た目は似ているが上半分が猪肉、下半分が熊肉(2人分)。
見た目は似ているが上半分が猪肉、下半分が熊肉(2人分)。どちらも近郊の山で捕獲し、ていねいに下処理されたもの
『草喰なかひがし』で修業した若主人が加わり、変化に富んだ料理で魅了。
『草喰なかひがし』で修業した若主人が加わり、変化に富んだ料理で魅了。八寸は若狭鯖燻製、黒舞茸炭焼、揚栗、揚銀杏、焼柿、干柿酒粕巻、小松菜とお揚げさんの炊いたんなど。奥は琵琶湖の湖魚のモロコ塩焼き
江戸時代から続く呉服商の家を修学院から移築、改修し、1987年に開業
江戸時代から続く呉服商の家を修学院から移築、改修し、1987年に開業

Data

京都市左京区大原野村町236

☎️075・744・3456 

12:00~15:00 17:30~21:00

定休日 木曜

個室7

熊と猪の味比べ鍋コース(11月下旬〜 3月下旬) 大鍋¥19,000(サービス料別)。ぼたん鍋(11月下旬〜 3月下旬)、軍鶏鍋、鰻鍋のコースもあり、いずれも小鍋と大鍋のコースがある。

要予約

晦庵 河道屋(みそかあん かわみちや)

京の技と冬野菜を味わう「芳香炉」

創業400年のそば店『晦庵 河道屋』の名物鍋「芳香炉」。昭和7年に京町家風情の今の店を作った際、何か新しいものをと14代目が考案したのが始まり。鍋の形も中に入るものもその時から変わらず、唯一の違いといえば昔は鍋の筒の中に炭を入れて提供していたこと。鍋の半分ほどに敷きつめた準主役の野菜の上にそばと相性のいい鶏肉、湯葉、真蒸(しんじょう)、飛龍頭(ひりょうず) 、しいたけを並べ、その多くは地元の専門店で店用に作ってもらったり、仕入れたもの。湯葉は店と同じ麩屋町通沿いの『湯波半』、魚のすり身を使った飛龍頭と真蒸は『いづ萬』、鶏のもも肉は『とり安』のもので、ほうれん草、菊菜、九条ねぎは洛北・鷹峯(たかがみね)の契約農家から。一年を通じていただけるが、野菜のおいしさが増すのは冬。途中ですだちを絞るとだしの味がととのい、そばやうどんで締めるころには満腹に。

【冬の京都】創業400年のそば店「晦庵 河道屋」で名物鍋を味わう【京都の絶品鍋】
代々受け継いできただしで炊き上げる「芳香炉」(2人前)。手前から真蒸、どんこしいたけ、引き上げ湯葉、ぎんなんやきくらげ入りの飛龍頭。その下に鶏肉を並べ、野菜がぎっしり。冬場の九条ねぎはぐんと太くなり、ほうれん草や菊菜も旬に。麵は山いもを打ち込んだそばかうどんを選べ、両方も可能
部屋や庭も昔と変わらず、手入れの行き届いた空間は独特の雰囲気
部屋や庭も昔と変わらず、手入れの行き届いた空間は独特の雰囲気
小上がりやテーブル席、和室などがあり、そば、うどん、一品料理を楽しめる。
小上がりやテーブル席、和室などがあり、そば、うどん、一品料理を楽しめる。芳香炉は持ち帰り可能
間口は狭いが、奥行きの深い建物は築90年
間口は狭いが、奥行きの深い建物は築90年

Data

京都市中京区麩屋町通三条上ル

☎️075・221・2525

11:00~19:30(LO)

定休日 木曜 70席

芳香炉(2人前)¥9,500、そば・うどん¥950 〜、一品料理¥700 〜

鮎茶屋 平野屋 (あゆちゃや ひらのや)

山里の素材で仕立てる究極のぼたん鍋

奥嵯峨、鳥居本にある火伏せの神を祀る愛宕神社。その一の鳥居をくぐったところにたたずむ『鮎茶屋 平野屋』はおよそ400年の年月を重ねる。夏の鮎がつとに有名だが、それに並ぶのが冬の「ぼたん鍋」。近郊の山で捕獲される猪は野性味はあるがくさみがなく、12月〜1月のものは極上の脂肪がつき、格別のおいしさ。敷地内に湧く水でとった澄んだだしの中でじっくりと炊き上げ、たっぷりの大根おろしや九条ねぎ、おろししょうがをからめていただくのが通の味わい方。国産柚子の発祥の地といわれる、地元、水尾の柚子をギュッと絞ると口の中がリセットされ、さわやかな酸味と香りが新たな食欲を誘う。コースは平野屋らしい川魚の造りや山菜のひと品から始まり、鍋の前に鹿肉や熊肉のしゃぶしゃぶを追加することもできる。奥嵯峨の食材の豊かさに魅了される。

【冬の京都】「鮎茶屋 平野屋」で味わう“ぼたん鍋”が格別【京都の絶品鍋】
猪肉も野菜も地元や近郊のもの。ほどよい厚みに手切りしたロース肉を牡丹の花のように盛りつけ、野菜は冬が旬の海老芋、かぶ、ごぼう、せり、白菜、自家栽培のしいたけなど
猪は炊くほどにおいしさが増し、鍋後の雑炊も絶品。
猪は炊くほどにおいしさが増し、鍋後の雑炊も絶品。毎冬、鍋目当てに訪れる常連客も多く、春は山菜や筍、夏は天然鮎、秋は松茸を楽しめる
創業時の建物が残り、新しい部屋でも築200年
創業時の建物が残り、新しい部屋でも築200年
鮎問屋、参拝客相手の茶屋として発展し、およそ400年
鮎問屋、参拝客相手の茶屋として発展し、およそ400年

Data

京都市右京区嵯峨鳥居本仙翁町16

☎️075・861・0359

11:30 ~ 14:00

17:00 ~21:00

不定休

個室7

ぼたん鍋コース(11月中旬〜3月)は昼¥13,000、¥15,000、夜¥16,000(税・サービス料別) 要予約

京の和食の「新名店」

いつ行っても、新しいお店が私たちを迎えてくれる京都。この冬、活気にあふれ、美食家の間でも特に評判の6軒を紹介。

水の(みずの)

おいしさと驚きで魅了する劇場型カウンター

今年8月にオープンして以来、フーディの間で話題の的。店主・水野隆弘さんは、『祇園 さゝ木』で11年腕を磨き、系列店である『祇園楽味』では料理長として活躍。自身の店では「美食のエンターテインメント」と称されるさゝ木イズムを継承。カウンターが一体になって盛り上がる一斉スタートにこだわり、伊勢エビを目の前でさばいたり、松茸と牛肉の鍋は調理前に食材を披露したり、ゲストは舞台を見ているかのように店主・水野さんの所作に引き込まれる。

「古典料理を自分なりにとらえ表現したい」と水野さん。例えば、すっぽんといえば鍋でいただくのが一般的だが、甘辛い煮付けで出されたり、沢煮椀には揚げ麩のかわりに揚げた食パンが使われたり。さらに食材のみならず、調理法も柔軟に。伊勢エビはレア感が残る絶妙な火入れが可能なダッチオーブンで蒸し焼きにし、その付け合わせのほうれん草は中華鍋で炒め、シャキシャキとした食感と伊勢エビにない油脂を補うなど、固定観念にとらわれず、おいしさをとことん追求。おいしいうえに驚きも多く、終始高揚感に包まれる。

たまり醤油で炊き、すっぽんのうま味を後押し。すっぽんの煮付け
たまり醤油で炊き、すっぽんのうま味を後押し。すっぽんの煮付け
【冬の京都】おいしさと驚きで美食家も大満足の「水の」【京の和食の新名店】
フレッシュさと加熱した際のうま味をあわせもつ秀逸な火入れ。伊勢エビの蒸し焼き・白味噌仕立て。白味噌にからしを加えて味を引き締めることが多いが、こちらは、辛味がマイルドでうま味が強い韓国とうがらしをパラリ
【冬の京都】おいしさと驚きで美食家も大満足の「水の」【京の和食の新名店】

Data

京都市東山区新門前通花見小路東入ル2丁目中之町245の2

☎075・746・5352

18:00一斉スタート ㊡日曜、第2・第4月曜 カウンター9席 コース¥25,000 要予約

宮脇(みやわき)

洗練の美空間でいただく季節と抑揚を感じるコース

ガラス扉を開け、曲がりくねった通路を進み、店内へ。内装は、淡路島を拠点に全国で活動する建築設計事務所「ヒラマツグミ」が手がけ、左官仕上げに和紙作家ハタノワタルの和紙を取り入れたミニマルにして贅沢な空間が広がっている。さらに、「料理は器との調和も大事」と、空間に加え、名陶工や現代作家の器を織り交ぜた器選びにも、店主・宮脇雅也さん

のセンスのよさがうかがえる。

 

宮脇さんは、祇園の名割烹『千ひろ』で修業を始め、『ワインと和食 みくり』では料理長として活躍。’21年には『千ひろ』に再び戻り、昨年、歴史の幕を閉じるまでは大将の右腕として支えてきた。

「『千ひろ』の大将から学んだ、素材の持ち味を生かす引き算の料理に、自分らしさやひねりを加えていきたいです」と、宮脇さん。全体のバランスを見て、焼き物に魚だけでなく、近江牛のビフカツや豚ロースの幽庵焼きを出したり、土鍋で炊く季節ごはんの前にこれからの時期は真鴨やふぐの鍋を供するなど、正統派ながら無難に終わらない、メリハリが効いたコース展開も魅力だ。

スッポンのだしを煮詰めてうま味を凝縮し、卵と合わせて。
スッポンのだしを煮詰めてうま味を凝縮し、卵と合わせて。中にも身がごろり。さらに香りも味も濃厚な香茸を使った滋味深いスッポンと香茸の茶碗蒸し
クエと自家製厚揚げの椀。表面は香ばしく、
クエと自家製厚揚げの椀。表面は香ばしく、身はふっくらと塩焼きされたクエとだしで炊いた厚揚げは相性抜群。椀妻のバチコも塩味のアクセントを添えている
樹齢300年のケヤキを使ったカウンターも見事。
樹齢300年のケヤキを使ったカウンターも見事。照明を落とし、ビルの1階とは思えない非日常空間
【冬の京都】料理・器・空間が調和。洗練の京料理「宮脇」【京の和食の新名店】

Data

京都市中京区油小路通姉小路上ル式阿弥町122の1式阿弥町ビル1F

☎075・600・9242

18:00~20:00(入店)

定休日 木曜

カウンター8席、個室6席

コース¥26,620~

要予約

二條みなみ(にじょうみなみ)

割烹仕込みの気くばりと端正な料理に心がほどける

非日常に誘う石畳の路地を抜け店に入ると、網代天井や土壁、唐紙を使った建具など、数寄屋大工や左官をはじめとする職人の仕事を感じる凜と美しい空間に。カウンターで腕をふるうのは、昭和35年創業の名割烹『祇園川上』で今は亡き先代の時代から25年勤めた南建吾さん。カウンターからも見えるレンガ造りの炭床で焼き上げる幽安焼きや目の前でひく明石の鯛の造りなど、目利きの確かさと円熟した技、季節を感じる器選びで、おなじみの料理でさえも記憶に残るおいしさに仕立てていく。

 

『祇園川上』時代は、場所柄、旦那衆も多かったが、自身の店では女性客や年配客も増え、野菜の炊き合わせを必ず盛り込むなど、お酒を飲まなくても楽しめる、体にしみわたる優しいコース展開に。最後には薄茶も供され、ゆったりとした時間を過ごすことができる。

「割烹の醍醐味であるお客さまファーストなスタイルは継承したい」と、要望に合わせてコースの量を調整したり、包丁の入れ方を変えて食材のサイズを小さくしたり、料理内容を変えたり、柔軟な対応や気くばりもうれしいかぎりだ。

兵庫県・香住や間人(たいざ)で水揚げされたセコガニ。
兵庫県・香住や間人(たいざ)で水揚げされたセコガニ。足身や卵、みそも余すところなく甲羅盛りに。漁期が11月から12月末までと短く、これからの季節だけのお楽しみ
鯛かぶらは2名分を赤絵の大鉢に盛りつけ、
鯛かぶらは2名分を赤絵の大鉢に盛りつけ、食欲がそそられるビジュアルに。甘辛味ではなく、だしがベースの上品な味わい
手入れの行き届いた植栽も美しい石畳の路地奥にひっそりたたずむ一軒家。
手入れの行き届いた植栽も美しい石畳の路地奥にひっそりたたずむ一軒家。数寄屋風情あふれる店内の奥には坪庭も。落ち着いた空間に、漆塗りのカウンターも印象的だ
【冬の京都】端正な料理で今だけの旬の食材を味わいたい「二條みなみ」【京の和食の新名店】

Data

京都市中京区二条通寺町東入ル榎木町92の12

☎075・221・5025

17:30~20:30(入店)

定休日 日曜(ほか不定休あり)

カウンター8席

コース¥18,000~

要予約

料 かわしま(りょう かわしま)

モダンに研ぎすまされた進化する日本料理

海老芋の唐揚げのカニ身あんかけは、冬の京都では見かける料理だが、こちらではカニと魚からとっただしにトマトを合わせ、ブイヤベースを彷彿させるあんに。さらに盛りつける皿も、陶器に見えて実は白漆で、和にも洋にも見える一品になっている。店主・河島亮さんは、嵐山の料亭で修業した後、海外の星つきレストランで経験を積み、帰国後、再び和食の世界へ。『宮川町 水廉』の料理長を務めた後に昨年9月に独立を果たし、今や数カ月先まで予約がとれない人気店になっている。

 

「フレンチの技法や食材を使うことはありませんが、料理を作るうえで自然とアウトプットされていると思います」と、河島さん。季節の素材に実直かつ柔軟に向き合う河島さんの料理は奇をてらわず、それでいて新しさを感じさせてくれる。店舗も「ザ・日本料理店にはしたくなくて」と、モルタルやコンクリートを多用したモダンな空間に。広々とした楠の一枚板カウンターは作業台としても使われ、目の前で椀物のだしを引いたり、鱧の骨切りを行うなど、臨場感もたまらない。

甘鯛の酒蒸し椀。吸い地はすりおろしたかぶらを加え、
甘鯛の酒蒸し椀。吸い地はすりおろしたかぶらを加え、みぞれ仕立てに。花穂紫蘇をふり柚子が目にもおいしく、さわやかな香りと味わいを添えている
鯖寿司はガリをはさみ、昆布の粉末を和えた大根おろしをのせ、
鯖寿司はガリをはさみ、昆布の粉末を和えた大根おろしをのせ、さっぱり。コースの最後は季節ごはん、さらに白ごはんとそのお供に続き、おなかの具合に合わせていただける
海老芋の唐揚げにトマトの風味を加えた魚介だしのあんをかけ、
海老芋の唐揚げにトマトの風味を加えた魚介だしのあんをかけ、仕上げにカニ身と内子、カラスミをトッピング。うま味の相乗効果を発揮する
【冬の京都】洗練された店内で進化した京料理を味わう「料 かわしま」【京の和食の新名店】

Data

京都市中京区車屋町通御池上ル塗師屋町333の2
☎075・888・8613
18:00一斉スタート
定休日 日・月曜
カウンター8席
コース¥16,500 

webからの要予約 https://ryo-kawashima.com

葵献心 やま田(あおいこんしん やまだ)

和食歴35 年の料理人による華やかな懐石をカウンターで

今年5月、下鴨の閑静な住宅街に開店。店主・山田行広さんは、京都を代表する『俵屋旅館』から修業を始め、料理人歴は35年。貴船の旅館『ひろや』や『京料理 祇園 花郷』では料理長を務めた大ベテランだ。古きよき伝統が息づく京料理を得意とし、今からの時期は、かぶら蒸しや海老芋の含め煮が登場するなど、豪華食材一辺倒にならず、野菜にもしっかり手をかけ、端正な一品に昇華させる。

 

これまで勤めていた店にはゲストを目の前に料理を仕上げるカウンター席はなく、それだけにテーブルや座敷に料理が運ばれた際、まずは目から楽しんでもらうことを意識して作っていたそうで、器選びも形や素材が斬新。さらに、八寸にはイチョウや紅葉をかたどった根菜があしらわれていたり、茶籠に見立てたオレンジ釜に刺身を盛りつけるなど、飾り細工も見事。「飾り細工を行う様子も楽しんでほしい」と、大根を薄く桂むきして灯籠大根を作ったり、折敷(おしき)に塩で川を描き、鮎の塩焼きがまるで泳いでいるかのように飾るなど、カウンターでは飾り細工を行う工程を楽しむことができる。

豆腐をかまくらに見立て、甘鯛を豆腐で覆い、蒸し上げた椀物。ぐじのかまくら蒸し
豆腐をかまくらに見立て、甘鯛を豆腐で覆い、蒸し上げた椀物。ぐじのかまくら蒸し
夜の¥20,000のコースでは、造りは2皿出てくることも多い。
夜の¥20,000のコースでは、造りは2皿出てくることも多い。まずはぽん酢でいただく鯛の薄造り。続いて、オレンジの釜に盛られた天然マグロのトロと車エビが登場。杉板に紅葉をかたどった皿を重ねたり、月をイメージしたオブジェのような皿に茶籠をイメージしたオレンジの釜をのせるなど、器や盛りつけも華やか
いくらを包んだ千枚漬や焼き栗、鰻の八幡巻、銀杏のウニ揚げ、自家製カラスミなど、
いくらを包んだ千枚漬や焼き栗、鰻の八幡巻、銀杏のウニ揚げ、自家製カラスミなど、12月をイメージした八寸。昼は、コースのほか、気軽な御膳がいただけるのも、観光途中にはうれしいかぎり
【冬の京都】足をのばして行く価値あり!下鴨の住宅街にたたずむ京料理店「葵献心 やま田」

Data

京都市左京区下鴨西本町12の1

☎075・606・5729

12:00~13:00、18:00~19:00(ともに入店)㊡日曜

カウンター8席、テーブル12席

昼・御膳¥5,000~、夜・コース¥15,000~ 2日前までの要予約

せん田(せんだ)

美しい八寸に季節を感じる伝統的な日本料理を堪能

店主、千田竜司さんは、’08年から『下鴨茶寮』に勤務し、’16年には26歳の若さで料理長に。以後3年間は料理長として活躍。さらに、独立前には、カウンターでの接客や仕事を学ぶため、『研覃(けんたん)ほりべ』で3年研鑽を積んだ。

’22年9月に開いた自身の店で季節の移ろいを意識し、伝統的な食材や技法を大切にした日本料理を提供している。特に、八寸には、手書きの札を添えるなど、食材だけでなく、器や飾りつけで、季節や節句、神事を表現。五感で楽しめるよう趣向が凝らされている。

 

千田さんの実家は、鰻で有名な三方五湖の近くにある鰻専門店『魚三』であり、食事の最後に供される鰻ごはんも名物だ。白ごはんはあえておこげができるように土鍋で炊き上げ、実家から引き継いだという秘伝のタレがかかったおこげは、甘辛いせんべいのような味わいに。関西式に蒸さずに焼き上げた三河一色産の鰻も皮がパリッと香ばしく、ふっくら甘味のある

白ごはんと相性抜群だ。

 

さらに、コースの締めに、薄茶と自家製の生菓子が出され、口福の余韻に浸ることができる。

北野天満宮からほど近い西陣地区にたたずむ一軒家。
北野天満宮からほど近い西陣地区にたたずむ一軒家。店内は網代天井をはじめ、数寄屋の意匠が取り入れらている
名物の鰻ごはん。昼は丼で、夜は蒲焼きと白ごはんのわかれで楽しむことができる。
名物の鰻ごはん。昼は丼で、夜は蒲焼きと白ごはんのわかれで楽しむことができる。甘味がある新潟の米と粒の小さい富山の米をブレンドし、ふっくらかつハラリとほどける食感も魅力
マナガツオの幽庵焼や車エビ、鰻の八幡巻、自家製カラスミ、壬生菜と子持ち昆布のおひたしなど
マナガツオの幽庵焼や車エビ、鰻の八幡巻、自家製カラスミ、壬生菜と子持ち昆布のおひたしなどを盛りつけた12月の八寸(食材の入荷によって内容に変更あり)。師走にちなみ“光陰矢の如し”の手書きの札が添えられている
【冬の京都】鰻ごはんも名物!日本料理を五感で楽しめる「せん田」

Data

京都市上京区紙屋川町1038の16

☎075・366・0953

11:30~12:30、18:00~19:30(ともに入店) ㊡水曜

カウンター8席、座敷2席、個室6席

昼・コース¥5,500~、夜・コース¥15,000(サービス料5%別) 要予約

京都で揃えたい「正月準備」

「縁起物」で幸を願う

迎える新年のためのあれこれを思い、街を歩くことも冬の京都の楽しみのひとつ。洗練された正月飾り、干支や福を呼ぶ小物に心が躍る。

みたて

日本の伝統や文化を大切に洗練美きわだつ正月飾り

西山隼人さん、美華さん夫婦が営む日本古来の美意識を感じる花屋。ものを本来あるべき姿でなく、別のものに見立て、新しい価値を見出す感覚を大切に、植物で表現できる新しい視点を探求。正月飾りもむだを削ぎ落とし、自然物だけで作り上げ、伝統を踏襲しつつ、新しい表情に。モダンにもプリミティブにも感じられる。正月飾りは年々アイテム数が増え、今回は約30種類も。「みたての正月」という写真集も発売されるほど人気が高く、毎年、東京や京都の「ARTS&SCIENCE」でも受注会が行われている。

鶴と亀をモチーフに、たわわに実った稲穂を使った壁飾り。
鶴と亀をモチーフに、たわわに実った稲穂を使った壁飾り。甲羅は和紙に胡粉を、頭は墨を施した迎え亀、ちぎり貼りした和紙に胡粉を施し、紅をさした迎え鶴各¥8,800
冬の間、苔が傷まないように庭に松葉を敷きつめる敷松葉をイメージ。
冬の間、苔が傷まないように庭に松葉を敷きつめる敷松葉をイメージ。敷松葉(6寸)¥6,600
邪気をはね(羽根)のけ、厄除けと成長を願い、古くは、女の子が初めて正月を迎える際に贈られた羽子板。
邪気をはね(羽根)のけ、厄除けと成長を願い、古くは、女の子が初めて正月を迎える際に贈られた羽子板。羽子板を思わせる台形の木箱に漆塗りのツクバネの実を納めた羽子板のしつらい¥16,500

Data

正月飾りは11月上旬から展示を開始。オンラインで販売される。

●京都市北区紫竹下竹殿町41

☎ 075・203・5050

12:00~17:00(火~木曜は予約制)

定休日 日・月曜

※12月上旬から年内は正月飾り準備のため休業

嵩山堂はし本(すうざんどうはしもと)

愛らしすぎず、渋すぎず、女性好み

1953年創業、便せんや御祝儀袋、手紙に香りを添える文乃香など、多彩な紙製品と和文具が一堂に。季節商品が豊富にそろい、今の時期は干支物が登場。ぽち袋は、形や装飾にも趣向を凝らし、辰の絵柄も絶妙なタッチで描かれている。

手前から、御祝箸3枚¥1,200、ぽち袋(左)赤龍3枚¥700、(右)みやび辰3枚¥600、(上)カードも入るサイズの福運び辰2枚¥900、小銭を種として財布に入れておくとお金が増える縁起物、たね銭入れ・招き辰3枚¥600
手前から、御祝箸3枚¥1,200、ぽち袋(左)赤龍3枚¥700、(右)みやび辰3枚¥600、(上)カードも入るサイズの福運び辰2枚¥900、小銭を種として財布に入れておくとお金が増える縁起物、たね銭入れ・招き辰3枚¥600
嵩山堂はし本《すうざんどうはしもと》
嵩山堂はし本《すうざんどうはしもと》

Data

正統派からかわいらしい絵柄まで、紙製品はレパートリー豊富。付箋や横書き一筆箋、和紙筆ペンなど、現代に寄り添う和文具も多い。

●京都市中京区六角通麩屋町東入ル八百屋町110

☎075・223・0347

10:00~18:00

無休

嵯峨面(さがめん)

料理屋さんでよく見かける福を呼ぶ、古和紙のお面

古い和紙を重ねた張り子のお面。嵯峨釈迦堂で行われていた狂言の面を模して作られたのが始まりで、江戸後期以降は厄除けや魔除けとして寺社で販売されていた。一度は途絶えたが、藤原孚石氏が復活し、現在は2代目が継承されている。

左から、お多福面¥9,900、干支面(辰)¥17,600、福寿を願う寿猿面¥9,900
左から、お多福面¥9,900、干支面(辰)¥17,600、福寿を願う寿猿面¥9,900
嵯峨面《さがめん》
嵯峨面《さがめん》

Data

いしかわ竹乃店●古くから嵯峨面を取り扱う竹製品専門店。店奥には、般若やカッパ、福えびすなど、嵯峨面が展示されている。

●京都市右京区嵯峨天龍寺造路町35

☎075・861・0076

10:00~18:00

無休

六兵衞窯(ろくべえがま)

京焼の本流として親しまれる窯

江戸後期に開窯。現当主である八代目六兵衞は自らの作品を手がけるかたわら、伝統的な京焼の作風や各代が残した意匠と技法を生かし、食器や花器、茶陶を制作。干支の動物は縁起物といわれ、毎年、干支に合わせた商品が種類豊富に登場する。

六兵衞窯《ろくべえがま》
六兵衞窯《ろくべえがま》
六兵衞窯《ろくべえがま》

Data

●京都市東山区五条橋東5の467

☎075・561・3131

10:00~17:00

定休日 土・日曜(不定休あり)

お正月にふさわしい「古きよき器」

京都で訪れたい2軒のアンティークショップ。お正月には、どんな器をどう取り入れたらいいか、店主のアドバイスつきで紹介。

うるわし屋

アンティーク漆器は正月だけでなく日常使いも

店内には、堀内明美さんがセレクトした漆器を中心に、茶箱や茶籠、銀器、ガラス、さらに夫・正吾さんが力を入れる仏教美術が並ぶ。アンティーク漆器は、使えることを前提に集めた幕末から昭和初期を中心に。今作ろうと思っても不可能だったり、驚くほど高価になってしまう繊細な装飾をあしらったものが見つかる。「お重離れがすすんでいますが、人が集まったときは大皿感覚で使ったり、1段ずつ一人用の盛りつけ膳にしたり、お正月限定と思わず、ふだんから使っていただきたいです」。椀や小皿など、ほとんどの商品がセットではなく、1客から購入できるのも魅力だ。

八寸皿はそのまま皿として使っても、お膳がわりに豆皿をのせても。
八寸皿はそのまま皿として使っても、お膳がわりに豆皿をのせても。研出蒔絵八寸皿¥12,000、来年の干支である龍をあしらった珉平焼¥5,000
果実蒔絵椀¥30,000。お雑煮にもぴったりな大きめサイズ。
果実蒔絵椀¥30,000。お雑煮にもぴったりな大きめサイズ。「蒔絵にお餅がくっつくのが心配な際は、底に昆布を敷いておくと安心です」
大正時代、海外輸出用に作られた銀彩が美しいデキャンタ。
大正時代、海外輸出用に作られた銀彩が美しいデキャンタ。グラスを引盃に替えるだけでお正月の装いに。デキャンタ¥68,000、グラス 各¥8,000、引盃 各¥5,000
雀が描かれた小ぶりサイズの重箱¥88,000
雀が描かれた小ぶりサイズの重箱¥88,000

Data

窓の外に京都御苑の緑が広がる気持ちのいいロケーション。季節によって商品構成が変わり、今からの時期は、引盃や重箱、干支もの、お正月飾りが登場する。

●京都市中京区丸太町通麩屋町東入ル舟屋町433

☎075・212・0043

11:00~18:00

定休日 火曜

ギャルリー田澤(ぎゃるりーたざわ)

西洋アンティークと古伊万里の組み合わせを提案

’74年創業、ルネラリックやエミールガレの大作も並ぶ京都を代表するアンティーク店。創業当時から変わらず、和と洋の組み合わせの妙を紹介している。「19世紀中ごろからヨーロッパではジャポニズムが流行し、日本の花鳥風月をモチーフにしたものが多く、お正月におすすめです。また、新年は漆の器が多用されますが、そこに金彩を施したアンティークグラスを合わせると、華やかさと軽やかさが演出できます」と、両親から店を受け継いだ田澤朋子さん。商品は、築100年の町家をまるごと使ってディスプレイされ、季節ごとに変わるテーブルコーディネートも参考になる。

希少な1880年代の葡萄文様をはじめ、オールドバカラのグラス(¥8,000〜¥30,000)は圧巻の品ぞろえ
希少な1880年代の葡萄文様をはじめ、オールドバカラのグラス(¥8,000〜¥30,000)は圧巻の品ぞろえ

大聖寺焼と呼ばれる色絵が美しい明治期の九谷焼。松型が珍しい小皿5客(参考商品)
大聖寺焼と呼ばれる色絵が美しい明治期の九谷焼。松型が珍しい小皿5客(参考商品)
美しいジャポニズムのオールドバカラ。左から、花器¥330,000、蓋物¥110,000、花器¥440,000
美しいジャポニズムのオールドバカラ。左から、花器¥330,000、蓋物¥110,000、花器¥440,000
「古伊万里は色絵を選ぶとお正月らしく華やかさが増します。
「古伊万里は色絵を選ぶとお正月らしく華やかさが増します。アンティークの塩入れは凝ったデザインが多く、豆皿と組み合わせ、黒豆や珍味をちょこちょこ盛りつけるのも楽しいですね」。古伊万里・色絵長皿(参考商品)、皿にのせたドームの塩入れ¥66,000、古伊万里蓋付茶碗¥38,500

Data

12月はクリスマスをテーマに一年で一番テーブルセッティングに気合いが入る時期。お正月まで使える華やかな商品も豊富に登場する。

●京都市中京区二条通河原町東入ル樋之口町458

☎075・231・8700

10:00~18:00

無休

お正月支度「食材」

恥ずかしながらおせちは購入派。伝統を大切にしたいがちょっとズボラな生粋の“京都人”ライターAが、毎年12月になると購入するという食材を紹介。

お屠蘇(山田松香木店)

大晦日の夜、酒に浸しておき、無病長寿を祈願し、元日に飲むお屠蘇。
大晦日の夜、酒に浸しておき、無病長寿を祈願し、元日に飲むお屠蘇。「丁字や桂皮のスパイシーな香りが楽しめ、砂糖やみりんを加えて甘めに味つけするのが好き」。¥216(11/1 ~ 12/29販売) ☎075・441・1123

白味噌(山利商店)

京都の雑煮といえば白味噌ですが、わが家は料理屋さん御用達の山利商店一択。
「京都の雑煮といえば白味噌ですが、わが家は料理屋さん御用達の山利商店一択。米、大豆、塩だけで作られていて、甘味を加えていないのにしっかり甘く、麴のうま味を強く感じます」。¥972 ●麩嘉錦店 ☎075・221・4533

特上小袖(いづ萬)

紅白かまぼこ、特上小袖は、通常より幅が狭く、高さもあり、おせちのお重に詰めたときに美しい
「紅白かまぼこ、特上小袖は、通常より幅が狭く、高さもあり、おせちのお重に詰めたときに美しいように考えられているんです。鱧のすり身入りで味も抜群」。各¥1,296(12/26~12/30販売) ☎075・561・0983

手鞠麩(麩嘉 本店)

手鞠に見立てた愛らしい生麩。「お雑煮に入れたり、煮含めておせちの一品に加えても映えます
手鞠に見立てた愛らしい生麩。「お雑煮に入れたり、煮含めておせちの一品に加えても映えます。日持ちは5日間ですが、冷凍も購入でき、解凍すればもちもち食感が楽しめます」。赤、青色 各¥192、2色¥254 ☎075・231・1584

国産 丹波 黒まめ(祇園むら田)

料亭や割烹御用達の食料卸売店。丹波の黒豆は粒が大きいのが特徴だが、その中でも極大粒のみを使用
料亭や割烹御用達の食料卸売店。丹波の黒豆は粒が大きいのが特徴だが、その中でも極大粒のみを使用。「しわひとつなく、ふっくらツヤツヤに炊かれていて、家庭ではできない美しさ」。150g瓶¥1,620 ☎075・561・1498

大福茶(一保堂茶舗)

一年の邪気を払い、新年を祝うため、元旦にいただく茶。
一年の邪気を払い、新年を祝うため、元旦にいただく茶。「店によって詰めるお茶はさまざまなんですが、一保堂茶舗の大福茶は炒った玄米が入っていて香ばしい」。100g ¥648(11/15~1/15販売) ☎075・211・3423

結び昆布(五辻の昆布)

大福茶には結び昆布と梅を入れていただくのが習わし。
大福茶には結び昆布と梅を入れていただくのが習わし。「西陣にある明治35年創業の昆布専門店。12月中旬になると、北野天満宮で大福梅の授与が始まるので、北野天満宮とセットで訪れます」。10個¥600 ☎075・431・0719
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