【松下由樹さんインタビュー】笑いは人との垣根を取り払う、大人の生活の中に欠かせないもの
6月2日から始まる舞台『東京喜劇 熱海五郎一座 スマイル フォーエバー ~ちょいワル淑女と愛の魔法~』に出演する松下由樹さん。10年を越える軽演劇シリーズで、2度目の登場となる思い、笑いに対して感じていること、また日々の中で集中力を高める方法についても語ってくれた。
笑いは生活の中の基本。幸せな気持ちを、どこにいても深く味わって表現したい
東京で受け継がれてきたコメディ“軽演劇”を現代に継承すべく、俳優の伊東四朗さんを中核に据え、三宅裕司さんが座長として、出演のみならず構成や演出も手掛ける『熱海五郎一座』。伊東ならぬ熱海、四朗だから五郎と、劇団名からも喜劇人達の洒脱さやユーモアが光る。毎回、華やかなゲストが登場するのも話題だが、なんと松下さんは2度目の出演となる。

「8年前の公演が終わった直後から『もう一度出たい!』と熱望していたので、お声がかかった時は本当に嬉しかったですね。今回も台本の1ページ目を読み始めた瞬間から、声を出して笑ってしまいました! 練りに練られたテンポのいいセリフが次々と続いていって……。これを伊東さんが演じられたら? 三宅さんはどのような表現をされるのかしら? と。熱海五郎一座のユーモアと愛情溢れる世界に、一気に惹きこまれてしまいました」
松下さんが演じるのは“ちょいワルな淑女”。そこに喜劇らしい動きの要素が、どのように入ってくるのかも気になるところ。
「前回は殺陣の動きの中に、その頃流行っていた腹筋マシーンを取り入れて、舞台上で腹筋姿を披露しました(笑)。タップダンスもやりましたね。今回はアクションに挑戦します。私の役はパーティが大好きな都知事で、性格はかなりクセ強め(笑)。そんな彼女の豪快な動きをどうぞご期待下さい。……と、今はここまでしかお話できないのが本当にもどかしいんです!」

ユーモアたっぷりに語る彼女からは、大人の女性らしい落ち着きと共にハッピーなオーラが漂ってくる。シリアスからコメディまで演じ分ける力量の持ち主なのは言うまでもないが、松下さんにとって“笑い”とは、どんなものなのだろう。
「人と人との間にある垣根を越えてくれるものですね。今回の舞台に関しても、東京の軽演劇で共演は錚々たる方々。才能ある劇団の、軽やかな中にも細部まで考え抜かれた演出……と、ゲスト俳優としては心配事を数え出したらキリがありません。でも根底にある“笑い”のパワーが、私の心をワクワクさせてくれています」
私生活でも「笑うこと」は大事だと捉えているのだとか。
「コロナ禍での生活が長引いて人と微笑み合う機会が減った時は、やっぱり寂しかったですよね。笑うというと大声を出すイメージが強く、もちろんそれで発散できることも多いですが、ただ声を張り上げることだけが笑いではないとも思っています。その瞬間に感じたポジティブな思いを体全体で表現する、相手を褒める。面白いという感情が高ぶって時には涙まで流れることも“笑い”の一種。誰かの行動につられて、笑顔が満ちてしまう場合もありますよね。そんな幸せな気持ちをどこにいても深く味わって表現したいですし、笑いは生活の中の基本だと感じています」
「コロナ禍での生活が長引いて人と微笑み合う機会が減った時は、やっぱり寂しかったですよね。笑うというと大声を出すイメージが強く、もちろんそれで発散できることも多いですが、ただ声を張り上げることだけが笑いではないとも思っています。その瞬間に感じたポジティブな思いを体全体で表現する、相手を褒める。面白いという感情が高ぶって時には涙まで流れることも“笑い”の一種。誰かの行動につられて、笑顔が満ちてしまう場合もありますよね。そんな幸せな気持ちをどこにいても深く味わって表現したいですし、笑いは生活の中の基本だと感じています」

現在、55歳。アラフィーのエクラ読者にとっては、まさに青春期を共にしたレジェンド俳優であり、現在もかっこいいお姉さんだが「若い頃は、結構周りを気にしちゃってましたよ」と微笑む。
「『自分以外のことはかぼちゃだと思え』という言葉を自分にかけてあげたいぐらい、芝居に対して力んでいた時期がありました。ところがある舞台を経験した際に、先輩から『夢中になりすぎるなよ』と声をかけていただいて。はたと我にかえったんです。恐らく、自分だけがいかに集中できるか、ということに意識が向いていて、傍から見ても心身共にガチガチだったんでしょうね。何事ものめり込み過ぎると冷静さを欠き、独りよがりになりがち。全体像を見失うと、微笑む余裕も生まれません」
「今、私はセリフを覚える時に、テレビをつけたり音楽をかけたりと、あえて雑音だらけの環境を作っているんです(笑)。実際の撮影現場では無音なんてありえないですし、屋外ロケだったらなおさら。鳥はギャーと鳴きながら空を飛んでますし、電車や車だって音を立てながら走っている。何でもありの場所で芝居をするのが私の仕事。思い通りの環境なんて作れっこないんですよね。与えられた場の中でどう楽しむかと気づいたら、ゆとりを持ちつつも、集中力が高まってきたように思います」
「今、私はセリフを覚える時に、テレビをつけたり音楽をかけたりと、あえて雑音だらけの環境を作っているんです(笑)。実際の撮影現場では無音なんてありえないですし、屋外ロケだったらなおさら。鳥はギャーと鳴きながら空を飛んでますし、電車や車だって音を立てながら走っている。何でもありの場所で芝居をするのが私の仕事。思い通りの環境なんて作れっこないんですよね。与えられた場の中でどう楽しむかと気づいたら、ゆとりを持ちつつも、集中力が高まってきたように思います」
<公演情報>
『熱海五郎一座・新橋演舞場シリーズ第10回記念‼
東京喜劇 スマイル フォーエバー “ちょいワル淑女と愛の魔法~”』
都内某所で発生した銀行強盗事件。偶然現場に居合わせたのが、都知事(松下さん)と彼女の娘。そして動揺した犯人が発砲した銃は老人(伊東さん)の足に命中。孤独な男だと思われた彼は、実は魔法使いだった。さらなる魔術を得るべく、魔法魔術学校へ入学するが、そこにはアクの強い同級生たちが大勢いて――。
【ゲスト出演】伊東四朗、松下由樹
【出演・演出・構成】三宅裕司 【出演】渡辺正行、ラサール石井、小倉久寛、春風亭昇太ほか
6月2日(日)~6月27日(木) 新橋演舞場にて公演
【ゲスト出演】伊東四朗、松下由樹
【出演・演出・構成】三宅裕司 【出演】渡辺正行、ラサール石井、小倉久寛、春風亭昇太ほか
6月2日(日)~6月27日(木) 新橋演舞場にて公演

松下由樹
まつした ゆき●‘68年、愛知県出身。’83年に映画デビュー後、‘89年ドラマ『オイシーのが好き!』で初主演。『想い出にかわるまで』、『29歳のクリスマス』、『ナースのお仕事』、『週末婚』、『大奥』など、代表作多数。コメディエンヌとしては’01年に放送開始したバラエティ番組『ココリコミラクルタイプ』で、再現ドラマ風コントを熱演し、高い評価を得る。
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