大ヒットを連発!韓ドラの脚本家キム・ジウンのスゴさとは?【見ればキレイになる⁉韓流ドラマナビvol.42】
エクラの美容記事でもおなじみのライター・山崎敦子がお届けする韓流ドラマナビ。今回は、'24年上半期に旋風を巻き起こしているドラマ「涙の女王」の脚本家、キム・ジウンの作品に着目し、なぜこれほどまでに人々を魅了するのかを深掘り!
視聴率は「愛の不時着」超え! 世界で大ヒット中の「涙の女王」
きっとこの視聴率を超える作品はなかなか出てこないんだろうなぁと思っていました。日本の第4次韓流ドラマブームを牽引した「愛の不時着」が、21.7%というtvNドラマ視聴率歴代1位の数字を叩き出して早4年。とはいえ、記録は破られるためにある。難攻不落かと思われたその数字の壁も、ついに破られる時がやってきましたね。そう、日本でも大ヒットのキム・スヒョン&キム・ジウォン主演ロマンスコメディ「涙の女王」。この4月末に韓国で放送された最終回のその視聴率は24.9%。「愛の不時着」より3パーセント以上も上回る快挙。韓国では早くもスペシャル番組が組まれるなど「涙の女王」旋風はドラマ終了後も止まることを知らず吹き荒れている模様なのです。
ロマンス、コメディ、サスペンスの絶妙のバランス。パク・ジウンの脚本力に脱帽!
日本でも配信前からかなり話題になっていた作品なので、すでに視聴しているかたも多いとは思いますが、何がいいって、ここでは挙げきれないほど、それはそれはいろいろありまして、そんななかでも外せないひとつがやっぱり脚本力。ロマンスとコメディを絶妙のバランスで織り交ぜながら、サスペンス要素もドカンと突っ込みつつ、次から次へとぐいぐい視聴者を引き込んでいく巧みな構成(特に序盤から中盤までの展開がチェゴ=最高)。物語だけでなく、主人公はもちろん、脇役から悪役、そしてカメオ出演に至るまで、全ての登場人物のキャラクターをも魅力的に増幅させるワクワクするようなセリフの数々。
実をいうと、財閥、運命、初恋、難病、記憶消失、そして主人公をつけ狙う不穏な敵役などなど、使われているモチーフは韓国ドラマ王道“あるある”のオンパレードではあるのですが、手垢がついているからこそ、あえてその素材を選びぬき最高の味付けで料理しました的自信すら感じるほどの完成度の高さ。だから、“あるある”なのにいちいち新鮮。
当然、何度も舌を巻かせていただきましたが、じゃあ脚本を書いたのは誰?となりますよね。韓ドラファンなら知る人ぞ知るラブコメの名手パク・ジウン作家がそのお方(韓国では脚本家のことを作家と呼びます)。なんと、「愛の不時着」も、実はジウン作家が生み出した傑作のひとつ。それだけではありません。遡ってみれば、人魚と詐欺師の純真ロマンスを描く「青い海の伝説」、TV業界が舞台のラブコメ「プロデューサー」、異星人と人気女優の運命のラブを描いた「星から来たあなた」と、ここ10年で大ヒットしたラブコメの多くが彼女の手によるものなのです。もちろん、それ以前も「棚ぼたのあなた」「逆転の女王」「僕の妻はスーパーウーマン」と、第1次ブームから沼入りしている韓ドラ通の友人たちが激推ししてくる過去作ランキングにも、必ずと言っていいほど彼女の作品が挙がってくるのは言うまでもなく。とにかく笑えるし、ほっと心が和むし、かと思えばハラハラドキドキが押し寄せてくるし、もちろんキューンと胸熱くなるシーンはそこかしこに。
そんな彼女の最新作とあって今回の「涙の女王」は、もちろん私的にも配信前から心待ちにしていた作品。とはいえ、話題作ほどコケてしまう場合も最近は少なからずありまして、なるべく期待で胸膨らませすぎないようにと自制していたのではありますが、さすがキム・ジウンです。もう、のっけから、のりのりのジウン調炸裂で、1話の出演料が5億ウォンとも噂される主人公のキム・スヒョン(「星から来たあなた」「サイコだけど大丈夫」「あの日〜真実のベール」)はスヒョン史上最高に可愛い過ぎるし、可笑しいし、かなりな美人さんだけどちょっと地味めだなあと思っていたキム・ジウォン(「太陽の末裔」「アスダル年代記 シーズン1」「私の解放日誌」)は氷の女王的ツンな垢抜けクールビューティぶりが冴え渡っているし、私的には1話で早くも「愛の不時着」超え。
いろんなところで紹介されまくっている作品ゆえに、ここで改めて紹介するまでもないのですが、それでも「愛の不時着」が日本のNetflixで長きにわたって1位を占めていたのに比べて、それほどの圧倒的な盛り上がりには追いついていないのが、少々残念なところでも。
主演の2人、キム・スヒョン&キム・ジウォンがさらにドラマへ引き込む
ということで、まだまだたくさんいるに違いない「涙の女王」未視聴のかたに向けて、ちょっとだけおさらいさせていただきますと、まずは、主演の俳優キム・スヒョンです。彼が演じるのは、クイーンズという財閥グループに婿として入ったペク・ヒョヌ。ソウル大のロースクールを首席で卒業後、クイーンズに入社したエリートなのですが、ちょっと間の抜けた天然なところがあるというのがミソでして。
そこに、もう一人の主演キム・ジウォンです。彼女が演じるのはホン・ヘイン。ヒョヌが新入社員の頃、ヘインも研修生としてクイーンズに入社するのですが、実は彼女こそクイーンズ財閥のお嬢さま。正体を隠して新入社員の実力を偵察するのが目的なのですが、コピーひとつまともにとれないヘインをなぜか放っておけないヒョヌは、何やかんやと彼女の世話を焼くうちに、恋に落ちてしまうという。でもって、ヒョヌは、父が村長を務める、とある田舎村の梨園農家の次男なのですが、両親は小さなスーパーを営んでいて、まあ、彼としては地元でプチセレブ気分なわけです。なので、ヘインは(実は財閥家のお嬢なのに)、何もできない貧乏&劣等研修生だから、僕が守ってあげなければいけないと思っていて、能天気に家の金持ち自慢なんかしちゃうわけです。もう、これだけでも抱腹絶倒。そんな冗談みたいな二人の出会いはなぜだか実を結び、ついに世紀の結婚と相成ります。
それから3年。
現実は、おとぎ話のようにはなかなかいかないものでして、婿を小間使いとしか思っていない財閥家族の常に上から目線の傲慢と習慣にボロボロにされまくっちゃうわけですね。おまけにヘインといえば、オルグリ(顔)の基本形が不機嫌顔。仕事でもプライベートでも冷徹にして独裁で、バッサバッサとヒョヌを切り捨てまくるその表情は何千年経っても解けない氷のよう冷たすぎるぅ〜。
現実は、おとぎ話のようにはなかなかいかないものでして、婿を小間使いとしか思っていない財閥家族の常に上から目線の傲慢と習慣にボロボロにされまくっちゃうわけですね。おまけにヘインといえば、オルグリ(顔)の基本形が不機嫌顔。仕事でもプライベートでも冷徹にして独裁で、バッサバッサとヒョヌを切り捨てまくるその表情は何千年経っても解けない氷のよう冷たすぎるぅ〜。
耐えきれなくなったヒョヌはついに離婚を決意するのですが、そんな矢先、あろうことかヘインに余命3ヶ月の難病が発覚。え、え、え〜、なんとここで不治の病ですかあ! はてさて冷え切った二人の愛はこの難局を迎えていったいどうなっていくのか。さらに、そんな難病発覚と同時に、クイーンズ財閥を財産もろとも乗っ取ろうと画策する不穏な輩たちが、次第にその本性を見せ始め……。
“究極のロマン”を陳腐にならずに描き切る筆力がスゴイ!
「共に白髪の生えるまで」とは、よく言われることだけれど、生涯一人をずっと愛し続けることは、もしかすると現実社会ではおとぎ話よりもファンタジックなことなのかもしれません。失礼ながら私だって、高校までは自分だってそうなる!と胸も鼻も膨らませておりました。もちろん、あっという間に挫折しましたが。作家パク・ジウンが描いているのは、そんな究極のロマン。思えば「愛の不時着」でも「青い海の伝説」でも「星から来たあなた」でも描かれている、下手すると陳腐にさえなりかねないテーマを、コメディとサスペンスの力を駆使して描き続けている力技にはやっぱり感服せずにはいられないというか。
実を言うと終盤の展開は、ありえないくらいのサスペンス要素がモリモリでそれを巡って賛否両論飛び交いましたが、あえて究極のロマンをヒューマン的にしんみり綴らず、サスペンス色大爆発させちゃうジウン調も私的には嫌いではないのですが……、はてさてみなさんはいかが?
ヘインの弟夫婦の話とか、悪役母子の凄みと哀しみとか、ヒョヌの田舎家族の純朴な優しさとか、どっちつかずのコウモリおばさんとか、脇役陣もみんないい味出していて、語りたいことはまだまだたくさんありますが、すでに文字数かなりなキャパオーバー。機会あれば一杯煽りながら、続きを語り合いたいものです。そうそう、ドラマにはテーマにつながる暗号のような伏線もたくさん組み込まれているので、それらを探しながら読み解いていくというのも、また、おかし。
■Netflixシリーズ「涙の女王」独占配信中
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「星から来たあなた」
主人公は、なんと異星人。そういえば、「青い海の伝説」ではヒロインが人魚だったし、パク・ジウン作家は結ばれるのが難しいファンタジックな設定が好きなのかもしれません。人魚や異星人こそ出てこないけれど「愛の不時着」も自由に行き来できない38度線に隔てられた北と南のロマンスだったから、ある意味ファンタジーと言えないでもないし。
ということで、本作ですが、ト・ミンジュンという主人公の異星人に扮するのは、我らがキム・スヒョン。400年前に朝鮮の地に降り立ったのだけど、地球と時間軸が異なる異星人ゆえに歳を取らないまま現代に至り、今は大学講師をしながらソウルの一等地にある高層マンションに暮らしているという設定。あと3ヶ月でついに故郷の星に帰れることになったト・ミンジュンは残りわずかな地球での生活をなるべくひっそり静かに暮らそうと思っているのですが、その矢先、マンションの隣にチョン・ソンイというトップ女優(扮するのはチョン・ジヒョン)が越してきたことから一変、静かな生活がかき乱されていくことになるわけです。
高慢だけど純でおバカなトップ女優と、無愛想で冷たいけれど実は面倒見いい異星人とのラブロマンスですが、第一印象最悪とか、ソンイが実は400年前の初恋の少女だったとか、同僚女優の変死事件に巻き込まれるサスペンス付きとか、ジウン調あるあるがもちろん満載。まだ若干20代半ばのキム・スヒョンのツンデレぶりも可愛いし、カッコいいし、笑いのセンスも絶品だし、チョン・ジヒョンのおバカぶりもキュートだし、何百着も着替えたに違いない衣装のコーデは今見てもおしゃれだし。当たり前だけど「涙の女王」と通じるところも多々あるので、オタクっぽく見比べてみるのも一興です。
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「プロデューサー」
ジウン作家のここ10年ほどの作品の中でもファンタジー色がないといえるのがこの作品。彼女の作品ではもはや常連とも言えるキム・スヒョンを筆頭に、チャ・テヒョン(「最高の離婚」)、コン・ヒョジン(「椿の花咲く頃」)、I U(「ホテルデルーナ」)という4人がこのドラマの主人公を演じるという豪華さで、韓国でも最高視聴率17%を記録したヒット作。舞台となるのは実在のテレビ局KBSなのですが、ドラマは、その看板人気バラエティ番組でもある「1泊2日」を制作するPDたちの、仕事に恋に奮戦する姿を描いていくというもの。つまり、興味津々な韓国バラエティの裏舞台も垣間見られるといいましょうか。
キム・スヒョンが演じるのはソウル大出身でKBSに入社したばかりの新人PDスンチャンなのだけれど、真面目で誠実で働きものだけどちょっと空気読めない純朴さと頑固さがあるのがミソで、そんなキャラを演じさせたら、やっぱりウリ・スヒョンは天下一品。で、彼の上司となる中堅PDに扮するのが、チャ・テヒョン扮するちょっと優柔不断なジュンモと、コン・ヒョンジン演じる芸能局の女王蜂との異名も持つイェジンなのだけど、物語は「1泊2日」が視聴率低迷により打ち切りになるかも…、というところから展開。それをなんとか阻止するために、IU扮するトップアイドルのシンディーを出演させ、一発逆転を画策するわけなのですが。
さまざまな抑圧とプレッシャーと闘いながら生き馬の目を抜くTV業界でプライドかけて生き抜くために、あれやこれやと悪戦苦闘する4人が大いに笑わしてくれるのはもちろん、胸がジーンと熱くなる場面も多々で、業界お仕事ヒューマンドラマとしての見応えもたっぷり。それとともにハラハラするのがやっぱり4人のラブ。シンディーはスンチャンに、スンチャンはイェジンに、イェジンはジュンモに片思いという一方通行な四角関係が、それぞれにいじらしく、最後までヤキモキさせてくれます。なかでも、私的に胸キュンだったのは、シンディーの恋。トップアイドルとはいえ、10年目の崖っぷちにいる孤独な彼女が、とことんKYだけど誠実なスンチャンに惹かれていく過程も、噛み合わない言動で何度も肩透かしされる姿も切なく可愛い。サスペンス要素はありませんが、こんなジウン作品もまた、よろし、です。
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山崎敦子
旅行記事に人物インタビュー、ドラマ紹介、実用記事から、着物ライターとさまざまな分野を渡り歩き、今では美容の記事を書くことも多くなったさすらいのライター。襲いかかるエイジングと闘いながら、ウキウキすること、楽しいことを追い求め続ける日々を送る。今年に入って、インスタ(@harurikuumi)も始動。ドラマシーンのイラスト&勝手な解説を挙げてます。
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