大ブレイク中の韓国人俳優ビョン・ウソクは“今”に舞い降りた天使【見ればキレイになる⁉韓流ドラマナビvol.44】
エクラの美容記事でもおなじみのライター・山崎敦子がお届けする韓流ドラマナビ。今回は、'24年上半期の大ヒットドラマ「ソンジェ背負って走れ」の主人公を演じて一躍脚光を浴び、その勢いが止まらない大注目俳優ビョン・ウソクの魅力に迫ります。
時に切なく、そして終始カッコよく演じきった「ソンジェ背負って走れ」
誰しも夢見る“推しは実は私のことが好きだった”という妄想がドラマに
「ソンジェ背負って走れ」の最終話が配信されてからすでに4ヶ月。なのに、主人公の彼の人気はとどまることを知らず、9月末には日本でもファンミが開催されて、今後もますますヒートアップしそう。といっても、エクラ世代にはピンと来ないかたも多いのではと思います。その名はビョン・ウソク。知ってます?
人生の折り返し地点を遠の昔に過ぎた私ではありますが、それでももう一度若い世代に戻れたら、と思うことは不思議とほぼほぼないのです。まあ、せっかくここまで生きてきたのだから、という心境とでもいうか……。とはいえ、ずっと推し活人生を歩んできた身とすれば、もう一度高校生になってみたいな、なんて思いもなきにしもあらずなのですね。それはなぜか……。答えは簡単です。”推しとマジに結ばれるのは私!”という妄想を1ミリも疑うことなく抱きながら純粋にひたむきに追っかけることができるのは、やっぱり高校生までの特権だと思うからなのですが、まあ、それはおいといて。
で、件のドラマ「ソンジェ背負って走れ」なのですが、追っかけファンなら誰しも夢見る“推しは実は私のことが好きだった”という妄想をそのまま描いてくれているとでもいいましょうか。しかも、これ、タイムスリップものでして、最初に戻る過去が、なんと私が憧れてやまない高校時代。でもってです。その“推し”であるソンジェを演じるのがまさしくビョン・ウソクなわけなのです。
完璧なビジュアルなのに意外にも“遅咲き”。ついにきた大ブレイク!
1991年生まれの現在32歳。2015年にモデルとしてデビューしたバランス良き長身と優しく甘めの上品で端正なお顔立ちという完璧なビジュアル。これはすぐにでも大ブレイク!と思いきや、これがなかなか目が出ない。俳優デビューは2016年なのですが、端役時代が意外にも長く、ようやく2番手などの主軸キャラにキャスティングされるのは、それから3、4年後。なかには日本でも大人気のパク・ボゴムと共演した「青春の記録」なんていう作品もあったりするのですが、これだけのビジュアルをもちながら、なぜか印象が薄いというか、なかなか浮上してこないというか。本人曰く、2022年の釜山国際映画祭のレッドカーペットを歩いた際は、「あの人、背が高いけど誰?」的な反応ばかりだったそうな。
生き馬の目を抜く韓国の芸能界。ロマンスの主人公ばかりやっている俳優でさえも、独特のアクというか強さを持っている人が多い中で、ウソクから漂ってくるのは、なぜか引っ掛かりの少ない優しげ&線の細さオーラばかり。「あの人、いい人なんだけどね……」と済まされがちというか……(もちろん私の個人的感想に過ぎません)。なんか、俺が俺が!的な要素が一つも感じられないんですね、彼。つかもうとすると、ふっと淋しげに笑いながら、泡となって消えていってしまいそうな天使的気配すら、感じられちゃうというか。
それでも映画「20世紀のキミ」では、そんな優しく消え入りそうな存在感で、つーんと胸を突き刺すような痛みとともに爪跡をしっかりと残してくれたウソク。これは、来るぞ、来るぞ、彼の時代があ!!!と思っていた矢先の「ソンジェ〜」なのです。よかったよ〜とまるでオンマのように感涙むせぶ気分。
アイドル×一般女子というありがちなラブロマンスと侮るべからず!
ということで物語です。ヒロインはソルという34歳の映画監督志望の女子。演じるのは、「偶然見つけたハル」のヒロイン役でも、今をときめくロウンやイ・ジェウクを大ブレイクさせた経験ありのキム・へユン(「SKYキャッスル~上流階級の妻たち~」)。15年前、ある事故により半身不随になり、自暴自棄になったソルは、ラジオ越しにかけられたウソク演じる人気バンドのボーカル、ソンジェの言葉によって救われます。以来、15年間ソンジェの熱烈なペン(ファン)となったソル。ところがライブコンサートの後、そのソンジェがあろうことか突然命を絶ってしまうのです。偶然にもその直前にソンジェと遭遇したソルは、当然のごとく後追いしそうな勢いで嘆き悲しむわけですが、オークションで落札したソンジェの腕時計のスイッチを押した途端、くるくると世界が回り始めて、15年前の高校時代の自分にタイムスリップしてしまうという。
でもって昔に戻ってみると、推しのソンジェは、なんと同じ高校の同級生(男女は別棟のクラスに分かれていますが)で、しかも、レンタルビデオ屋を営むソルの家のお隣さん。高校時代のソルは、他に推しがいたためソンジェの存在自体に気づかなかったということらしいのですが、韓国ドラマあるあるな設定に引きそうになっているあなた。いやいや、ここからが面白いので、安心して前のめりの姿勢で続きのご視聴を。
そして、ソンジェを見つけたソルですが、「生きててよかった」といきなりソンジェに抱きついたり、彼の運命を変えるべくなりふり構わずガンガンと彼に関わっていくわけです。ソンジェとしてみれば、仰天ですよね。ところが、なぜかソンジェはソルを拒絶しない。それはなぜか。そこに今回のドラマをさらに面白くしている要素があるのですが、実は、ドラマの序盤、ソルが高校にタイムスリップした当初のシーンをソル側からでなく、ソンジェ視点でも復唱するように見せる構成になっていて、そこで視聴している人だけはわかるのです。推しがヒロインに実は密かに恋していたという現実が。来たあ!!!
命がけで守ってあげたいソンジェが“推し”以外の何者でもない中身34歳のソルと、実はほのかに心に秘めた初恋の人がソルだったという外見も中身も高校生のソンジェ。そんなふたりの微妙な食い違いのチグハグ感が面白いし、おかしいし、初々しいし、そして、止まらないキュンキュン。
ということで、ソルは果たしてソンジェの運命を変えることができるのか。運命を変えても変えても、ぎゅーっと引き戻される不気味に忍び寄るサスペンス要素も加わって、単なるファンタジーラブロマンスに終わらない、息詰まる展開の目白押し。もうキュンキュン指数もハラハラ指数もぶっちぎり最高潮。アイドル×一般女子というありがちなラブロマンスと侮るべからずです。伏線もカラクリも展開も大人がのめり込める要素満々で、めちゃくちゃ練られているし、つまるところよくできている!
そして、そして、ソンジェです。ビョン・ウソクです。誹謗中傷に悩む34歳の傷心のアイドル。水泳選手を目指し挫折する奥手の高校生。そして、フツーの大学生に、スター俳優。全部同じソンジェではあるけれど、タイムスリップものだけに、年齢も背景も異なるソンジェを、ごくごくナチュラルに、時には愉快に、時には切なく、そして、終始カッコよく演じきったウソク。そして、変わらないソルへの一途な想い……。
その時代のヒット曲がちょいちょい挿入されたOST(挿入歌)も、ソンジェのエモい世界観を膨らませてくれるし、もちろんウソク自身もアイドルのソンジェとしてOSTに参加。振り付けつきで歌ってくれるだけでなく、なんとピアノの弾き語りまで! 実は多才だったのね〜。
「ソンジェ役は最初予定されていた俳優のかたが断ったことから僕に話が回ってきたんです。断ってくれた俳優さんに本当に感謝です」と語るのは、もちろんウソクご本人(「ユ・クイズ ON THE BLOCK」より)。俳優なら誰もが秘密にしたいだろうそんなネタバレまで話してくれるなんて、ウソクはやっぱり今に舞い降りた天使なのだとつくづく思う今日この頃なのですが。
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ドラマ「花が咲けば、月を想い」
朝鮮王朝時代、王命の名のもとに禁酒令がたびたび施行されていたのをご存じですか? といっても長くても数ヶ月というのが実のところらしいのですが、このドラマは、禁酒令が発令されて10年という朝鮮王朝架空の時代を舞台にしたラブコメ時代劇です。
ウソクが演じるのは世子(王の子供)役。といっても主演ではありません。ヘリ演じるヒロイン、ロソに片想いする二番手で、一番手となるのはユ・スンホ演じる両班(特権支配階級の家柄)の子息ヨン。超堅物の真面目人間で、持ち前の才覚を発揮して科挙に主席合格するのですが、任命されたのが監察官。要は密造酒を取り締まる側です。一方、ヒロインのロソは、落ちぶれた両班の娘で、お人好しの兄が作った莫大な借金を返済するために父秘伝の酒造りを開始。要は密造酒を作る側です。でもって、追うもの、追われるもののバトルの中からロマンスが生まれていくという展開なのですが、融通の効かないヨンと、生きるためには犯罪に手を染める覚悟も厭わないロソとの、力関係男女逆転の関係性が痛快で、実はあまり期待していなかった私も、一気見してしまった作品。
時代劇にもれなく付いてくる権力争いも、権力をほしいままにする“おぬしも悪よのう”的な単純な高官像と違い、複雑なキャラになっているところも魅せてくれます。で、ウソクですが、一見、容姿端麗、文武両道の颯爽とした世子なのだけど、宮廷をたびたび抜け出し闇酒を楽しんだりしていて、これが主演の世子なら、世を欺く仮の姿で、実は庶民の暮らしを偵察している体になるのですが、ウソク世子は違います。兄の突然の死により自分が世子となった負い目や自己嫌悪、コンプレックスをその内にいっぱい抱えていて、それにちょいちょい負けそうになって悪に迎合しそうになるわけです。そんな心の弱さや線の細さを好感度を落とさず表現できるのは、ひょっとしたらウソクだからこそなのかもしれないと、このドラマでつくづく。物語の流れとしてはヒロインのロソに惹かれていくわけですが、その後登場するカン・ミナ演じるウソク世子に一目惚れするイケメン大好きの兵曹判書(軍事を統括する大臣)の娘エジンとの絡みが最高で、底抜けに明るいエジンと心の弱さを隠しきれないウソク世子との、こちらも男女逆転していく関係性がめちゃ楽しい。「ソンジェ〜」でウソクペンになった人はもちろん、時代劇好きの人もお見逃しなく。
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映画「20世紀のキミ」
「ソンジェ背負って走れ」の脚本家が、この映画のウソクを観てソンジェ役のオファーを決めたというウソク的にもソンジェファン的にも運命ともいえる作品です。それにしても「青春の記録」しかり、イケメン3人が活躍の時代ドラマ「コッパダン~恋する仲人~」しかり、これまでのウソクって、モテモテのイケメンだけどちょいクセあり……というキャラを演じることが多かったのだけど、こちらは、まさしくソンジェに通じるいい人な天使のウソク全開にしてよーし!的なキャラで、まさにハマり役。
ヒロインは「雲が描いた月明り」のキム・ユジョン演じる高校生ボラ。心臓手術のために渡米する親友ヨンドゥ(ノ・ユンソ)から同じ高校の男子に恋をしたと打ち明けられたボラ。ヨンドゥがいない間、その男子をリサーチして情報を送る約束をするのですが、手がかりは名札にあったペク・ヒョンジンという名前だけ。そして見つけたヒョンジン(パク・ジョンウ)の行動を観察するうちに、ボラは彼の親友ウノ(ビョン・ウソク)にほのかな想いを抱くようになり……。
舞台となるのは1999年。スマホのない高校生の恋愛は、友情との間に挟まれながら、行きつ戻りつ不器用にしか進まない。この年代に学生時代を過ごしたエクラ世代ならきっとそんな経験もあったのではと。その懐かしさと、ピュアな初恋の淀みのない透明感と。きゅーっと痛いほど胸締め付けられる切なさの中に、確かに刻まれている清らかな甘さの余韻。ほぼほぼすっぴんで臨んだキム・ヨジョンの無防備な明るい可愛さと、クセのないまっすぐで素朴な存在感のウソクと。そりゃあもう泣かずにはいられません。ハン・ヒョジュが現在のボラ役で登場しているのも韓ドラファンには垂涎で(ドラマ「トンイ」でヒョジュ演じるヒロインの子供時代を演じたのがキム・ヨジョン)、この組み合わせがまた泣ける。映画なので2時間ちょっとの物語。大人にこそ、今、観てほしい。あの純粋だった頃の刹那に想いをはせてみるのは、秋の夜長にもぴったりですから。
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山崎敦子
旅行記事に人物インタビュー、ドラマ紹介、実用記事から、着物ライターとさまざまな分野を渡り歩き、今では美容の記事を書くことも多くなったさすらいのライター。襲いかかるエイジングと闘いながら、ウキウキすること、楽しいことを追い求め続ける日々を送る。今年に入って、インスタ(@harurikuumi)も始動。ドラマシーンのイラスト&勝手な解説を挙げてます。
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