【大人に自信を授ける「メゾンの名香」まとめ】美賢者たちイチ押しのフレグランス

メゾンのヘリテージや信条、美意識を封じ込めた「名香」と呼ぶにふさわしいフレグランスは、大人の女性に気品をもたらし、凛としてポジティブに行動する背中を押してくれるもの。6人の美賢者たちが自分の個性を託したい香りに、愛をこめたメッセージを贈る。

CHANEL《シャネル》

ココ マドモアゼル オードゥ パルファム  ガブリエル シャネルの光り輝く一面、斬新なエスプリを表現した爽やかでいて官能的なアンバー フレッシュのノート。洗練を極めて、永遠にモダンに。100㎖ ¥23,100/シャネル

ココ マドモアゼル オードゥ パルファム

ガブリエル シャネルの光り輝く一面、斬新なエスプリを表現した爽やかでいて官能的なアンバー フレッシュのノート。洗練を極めて、永遠にモダンに。100㎖ ¥23,100/シャネル

「いい香りですね」と不意にほめられる、そこに名香の秘密が隠されていた

「いい香りですね」。それを、旅先のエレベーターでホテルマンに、またタクシーのドライバーにいわれたとしたらどうだろう。どちらも自分の香水でまわりに迷惑をかけてはいけないと、一番意識する場面である。一方で彼らは女性の香水には鼻が慣れているはず。なのに香りをほめてくれる……実際そういう素敵な体験をさせてくれたのが、実はココ マドモアゼルだった。それは「香水」というものが放つ作られた香りを超え、人が感じる“良い香り”の理想を描くものだからではなかったか? もうひとつ、この香りが特別であると確信したのは、恋人も相手の体臭で決めるほど嗅覚に優れた女性が、最高の香りはココ マドモアゼルよ、といったこと。おそらくは人間が本能で求めている香りに近いのだろう。人間のフェロモンに匂いはないが、香水に置き換えるとこの香りになるのだろう。とても清潔で洗練されたフェロモン。だから彼らは我を忘れて、咄嗟に「いい香り」といってしまった、そういうことではないのか。

 1921年、シャネルがN°5で初めて採用した合成香料アルデヒドは、香りに清潔感や高級感をもたらす鍵でありながら、人間の本質的な匂いに近い表情も秘め、だから気品と官能をもちあわせる“矛盾の表現”で革命を起こし、香水界を圧倒的に席巻した。シャネルは人間を本能で魅了する香りの魔法を知っているのだ。“ほめられる”を超え、瞬時に虜にする理屈抜きの名香が、シャネルにはある。

●齋藤 薫(美容ジャーナリスト)
独自の視点で世の中の動向を鮮やかに切り取り、大人にふさわしい美の価値観を提案しつづける。女性が生きるうえでの指針を示すエッセーへの支持も絶大。

HERMÈS《エルメス》

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(右)オー ドゥ シトロン ノワール

「乾燥レモン」の、清涼感がありながらもスモーキーな香り。コロンなのに、真昼から真夜中まで香りが持続。オーデコロンナチュラルスプレー 100㎖ ¥17,600/エルメスジャポン

(左)バレニア オードパルファム

シプレ調の新しい香りは、エルメスの繊細でしなやかななめし革「バレニア」のように、素肌の上で重なり合い、うっとりと優しく嗅覚を刺激する。100㎖¥24,860/エルメスジャポン

ともに過ごす「時」が愛おしい。かけがえのない人生を紡ぐ香り

「時間はかけがえのない材料である」。エルメスというメゾンにとっては言葉にするまでもないごくあたりまえの概念に初めて触れたとき、心がぽんと跳ね、静かな昂揚に包まれました。人生そのものに違いない。時間は人生を紡ぐかけがえのない材料。香りとともに過ごす時間で人生が創られている……。以来私は、エルメスの香りがもたらす静かな昂揚を一瞬一瞬、毎日毎日、積み重ねています。もはや肌の香りと呼びたいくらい愛してやまないのは「オー ドゥ シトロン ノワール」。フレッシュでビターなレモンのシトラスノート、グアヤクウッドのウッディノート。その見事なまでの融合は年齢も性別もスタイルも超え、香りをまとった瞬間から心の奥深くに存在するさまざまな側面を引き出して、これが自分と誇らしく思わせてくれる。唯一無二の「妙」を生み出した調香師にいつか会いたいと思うほど、シンプルで力強く、それでいてどこまでも繊細な香りに魅了されています。この秋、専属調香師クリスティーヌ・ナジェル氏が手がけるエルメス初のシプレ「バレニア」が誕生。このボトルは、エルメスを代表するオブジェであり、レザーとメタルという異素材を組み合わせてアクセントを効かせたコリエ・ド・シアンから着想を得たものだといいます。最高級のレザーとメタルの輝きがその人が過ごす時とともに味わいを増し、人生を紡いでいくように。エルメスのフレグランスが創るのは、かけがえのない人生そのもの。

●松本千登世(エディター・ライター)
美しさの本質を見極める視点、そのていねいな暮らしぶりまでもが透けて見えるような語り口は唯一無二。自身初となる絵本『ピンクのカラス』(BOOK212)も人気。

LOUIS VUITTON《ルイ・ヴィトン》

LOUIS VUITTON《ルイ・ヴィトン》

オー ドゥ パルファン

「LVERS」LV ラバーズ

太陽の光のエネルギーと、陽光に愛撫された木々の葉や若草のさわやかさ、大地のぬくもりを探求してピュアな天然原料で表現。100㎖ ¥46,200/ルイ・ヴィトン クライアントサービス

解き明かされたグリーンノートの魅力は生命の源となる物語を紡ぐ

アートピースのようなボトルに閉じ込められているのは、太陽光のエナジー。ラバーズは、メンズ・クリエイティブ・ディレクターのファレル・ウィリアムスと、マスターパフューマーのジャック・キャヴァリエ・ベルトリュードの対話から生まれた、ブランド初のファッションから派生したフレグランスだ。太陽光とは、万物の出発点、創造の源。愛のメタファーで、ファレルのデビューコレクションのテーマでもある。光り輝くポンヌフの橋を舞台にしたファレルのショーに感銘を受けたジャックは、そこから「光合成」というキーワードを導き出し、調香に挑んだ。

主役は、フレッシュグリーンの奥にスパイシーさを漂わせる古典的な素材、ガルバナム。そこにクリーミーなサンダルウッドやきらめくベルガモット、官能のシダーウッド、ポジティブなジンジャーを重ね、光と水から生命を紡ぐまぶしい香りに練り上げた。使われている植物すべてに、ヒーリングハーブとして珍重されてきた歴史があるという。

ダイナミックで前衛的。けれどその奥には、最高品質の植物原料を緻密に扱えるジャックの魔法が随所に仕掛けられている。だからラバーズは、大人の個性美をより輝かせてくれるのだ。経験を重ね、成熟の過程に親しみをもち、知性や感性の泉がかれることなど決してないと本能で理解している大人へ。自身にも他者にも惜しみなく愛を注げる大人へ。あなただからこそ、この香りが似合う。

●AYANA(ビューティライター)
心をとらえる“エモーショナル”な文章にファン多数。化粧品ブランド「オサジ」のメイクアップのディレクションも務める。近著『仕事美辞』(双葉社)も話題に。

YVES SAINT LAURENT《イヴ・サンローラン》

YVES SAINT LAURENT《イヴ・サンローラン》

(右)ル ヴェスティエール デ パルファム サハリエンヌ・

(左)リブレ オーデパルファム

(右)印象的なネロリとハーバルな香りが繊細なコントラストを描き、クリーミーなホワイトムスクがサハリエンヌジャケットのように柔らかく包み込む。125㎖ ¥38,500(10月9日より¥39,600に価格改定)・(左)フェミニンなオレンジブロッサムと、マスキュリンなラベンダーのセクシーでクールな出会い。自由を身にまとって。50㎖ ¥18,370(10月9日より¥18,810に価格改定)/イヴ・サンローラン・ボーテ

時代の気分をとらえるYSL BEAUTYの嗅覚に感服!オレンジブロッサムの新旧名香

もしムッシュ イヴ・サンローランが存命ならば、「ジェンダーフリーとか多様性とか。今ごろ?」と笑っているかもしれない。タキシードやカフタン、サファリジャケットなど男性のものとされてきたものや異民族の衣装をいち早くレディスのファッションに取り入れ、女性をエンパワメントしてきたのがサンローランだ。そんなサンローランのワードローブを香りで表現した「ル ヴェスティエール デ パルファム」の中のひとつに、私の大好きなサハリエンヌがある。サバンナと思われる場所でサファリジャケットがモチーフのワンピースを着て銃を担いだモデルの写真を見たことがある人も多いのでは? フレッシュなオレンジブロッサムの花の香り=ネロリが、ピンクペッパーコーンの辛みを伴って広がる香り立ちがまさにこの写真のイメージ。乾いた空気の中でキリッとシャープなこの香りをまとうと内側からエネルギーがわいてくる気がして仕事も捗るのだ。

そしてオレンジブロッサムつながりでもうひとつ、某人気アイドルグループ効果で爆発的ヒットを飛ばした「リブレ」。メンズの香調であるラベンダーとオレンジブロッサムが拮抗するこれまでにない新しさ。肩肘を張って男性と競っていた時代を生きてきた私たちに、もっとリラックスして共生しようと語りかけているよう。美しい香りを前に男も女もない。ただまとう自由を謳歌するべし!

●平 輝乃(美容エディター)
美容のトレンドを熟知し、多くの女性誌で大活躍。最新のスキンケア理論などを楽しみつつ読ませる記事づくりを得意とする一方、香水への造詣の深さもピカイチ。

PARFUMS GIVENCHY《パルファム ジバンシイ》

PARFUMS GIVENCHY《パルファム ジバンシイ》

ラ コレクション パルティキュリエ ド ジバンシイ

(右)ド ジバンシイ アコール パルティキュリエ・

(左)ド ジバンシイ トロブル フェット

(右)繊細なローズに落ち着いたパチョリやベチバーが重なり、アンブロックス®(合成アンバー)がぬくもりを。スタイルを決める仕上げに。(左)フィグリーフとサンバックジャスミンのコントラストがきわだつ、天真爛漫でにぎやかなパーティのような香り。各100㎖¥36,850/パルファム ジバンシイ〔LVMHフレグランスブランズ〕

まとう人に、寄り添う。オートクチュールの信念を閉じ込めて

1952年、26歳にしてメゾンを立ち上げ、「モードの神童」と呼ばれたユベール・ド・ジバンシィ。有名なオードリー・ヘプバーンとの親交以外にも、そのオートクチュールの顧客リストには、数多くの大女優やセレブリティが名を連ねていた。それは「エレガンスの秘訣はあなたがあなた自身であること」というその言葉を体現するように、ジバンシィのスタイルが、革新的でありながら個々の魅力を存分に引き出すものだったから。

そんなクチュールブランドとしてのスピリットを、現代の香りで表現したのが『ラ コレクション パルティキュリエ』ド ジバンシイ。ユベール・ド・ジバンシィのエピソードに着想を得て、多彩なノートをラインナップ。なかでもマストハブは、「アコール パルティキュリエ」だ。ウッディな中に、ほのかにローズを感じるモダンな香りは、単体でつけても素敵だけれど、ほかのド ジバンシイの香りと重ねると、より深みをプラスできる。例えば「トロブル フェット」は、コレクションの中でも最もフレッシュな、イチジクの葉の香り。ジャスミンとのコントラストが気品と華やかさを添え、大人の女性がまとう日常のフレグランスとしてもぴったりだ。そこに「アコール パルティキュリエ」を重ねれば、より奥深く、今っぽい印象に。自分なりのつけ方ができるのは、ユベール・ド・ジバンシィの「ドレスは体に合わせて作られるべき。ドレスに体を合わせるのではなくて」という言葉にこめられた想いにも合致する。

●巽 香(美容エディター)
スキンケアをはじめ美にかかわる情報を、正確かつドラマティックに伝えることを目ざす。フレグランス好きで、美容誌にて連載も担当。

DIOR《ディオール》

DIOR《ディオール》

ニュー ルック

大量のアルデヒドがひときわフレッシュに香り立ち、しなやかなアンバー アコードとのコントラストが、現代のニュールックにふさわしいインパクトを。オードゥ パルファン250㎖ ¥55,880/パルファン・クリスチャン・ディオール

脳を、心を刺激する!メゾンの精神が生きる革新の香り

どこにもない香り。初めて「ニュー ルック」に触れたときそう思った。まとった途端、大胆かつエネルギッシュに押し寄せるのは、刺激的なアルデヒド。その大胆さにフランキンセンスが調和し、時につれアンバーが余韻を残す。センシュアルでミステリアス。でもフレッシュ。つけた人も、周囲の人をもハッとさせる香り立ちは、ひとつの言葉では表現しきれない、そして「フレグランスとはこういうもの」という概念を覆す、アバンギャルドささえ感じさせる。

ディオールといえば、エレガントなフレグランスを連想する人が多いかもしれない。この香りはそうした系譜とは異なっているような。けれど、ディオールは革新のメゾンでもある。その表れが1947年に発表された初のモードコレクション。構築的でモダンなシルエットの服は世界中の人を驚かせ、「ニュールック」と称された。そんなニュールックの精神を取り入れ、天才調香師フランシス・クルジャンが紡いだフレグランスは、メゾンの奥底に流れる革新性の体現といえる。またおもしろいのは、革新的でありながらエレガントな趣(おもむき)も漂うこと。と考えると、やはり「ニュー ルック」は、極めてディオールらしい香りなのだ。

何かをかきたてるようにほとばしり、やがてなじみ、溶け込み、肌の匂いと一体化する。「どこにもない香り」だったフレグランスが自分のものになったとき、きっとひそかな喜びを覚えるはず。

●入江信子(美容エディター)
スキンケアはもちろんビューティに関するあらゆるジャンルに精通。大人にうれしい最新情報を、わかりやすく愛のある言葉で発信。
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