【伊熊奈美の美髪ジャーナル】「白髪は治らない」 の常識はすでに変わった!それでも白髪を黒くする化粧品がない理由とは?

ここ20年ほどで一気に進んだ白髪改善の研究分野。「白髪歴」が浅ければ白髪が黒髪に改善する可能性が大いにあることはすでに学会などで発表されている。それでも世の中に白髪を黒くする化粧品がない理由とは?
美容ジャーナリスト、毛髪診断士指導講師 伊熊奈美

美容ジャーナリスト、毛髪診断士指導講師 伊熊奈美

毛髪科学分野とヘアケアに精通し、雑誌、新聞、webなどの各媒体で編集・執筆。著書に『いい白髪ケア、やばい白髪ケア』(小学館)など。

白髪を治す育毛剤成分は現在「あるけれど、ない」

かつては「白髪を治したらノーベル賞」というほど、加齢白髪の根本的な改善は美容界の最難関のように扱われてきた。それが’02年、色素細胞を作る色素幹細胞が発見されてから研究は飛躍的に進み、条件がそろえば白髪を黒髪に戻すことは不可能ではなくなった。それから約20年たった今も、日本に「白髪に有効」な育毛剤や化粧品は存在しない。それはその効果を謳った商品を製品化するには大きな壁があるからだ。

最大の壁は薬機法(旧薬事法)だ。ここには「医薬部外品」の定義が厳格に規定されている。そこに「抗白髪」という効能が含まれていないのがその理由。日本では最新の研究によるエビデンスがあり、有効な成分とされるものが含まれていても「白髪を黒くする」という表現を製品や広告などで謳うことができない。そのため各メーカーが多くの研究費を投じて成分を開発しても、「何に効くのか明記できない」ことになり、研究の歩み自体が止まる原因になってしまう。

それでも、白髪研究に積極的なメーカーはある。もし医薬部外品の定義に「抗白髪」という項目が加わる日がきたら、多くの白髪改善の製品が店頭に並ぶことになるだろう。これが白髪を染めたくないという人の新たな選択肢にもなりえるし、染める頻度が減り、カラー剤による皮膚トラブルを減らすことにもつながるなど、メリットがたくさんあるのだ。

メラニンを供給する色素細胞のエラーが原因という点で、個人的には白髪もシミに対するブライトニングコスメのような道をたどれないだろうかと期待する。まずは私たちが白髪のメカニズムや黒髪化研究の理解を深めておくことだ。白髪は黒髪に戻る可能性があると広く知られることこそ、白髪改善コスメ誕生の第一歩になるはずだから。

白髪を作る3大因子

1.ストレス
白髪研究はグローバルで注目の分野。最近は多くの機関でストレス要因による白髪化が発表されている。工夫してストレスフリーな生活を心がけて。

2.加齢
毛髪と黒い色(メラニン)は別々に作られ、合わせ技で黒髪になるが、加齢でそのプロセスのどこかでエラーが起こり、白髪になると考えられる。

3.遺伝
髪質はそもそも遺伝的な影響を少なからず受けているので、両親が白髪の場合は、白髪になる確率が高くなると考えられる。

そもそも黒髪と白髪の違いって?

[黒髪]

[ 黒髪 ]

[白髪]

[ 白髪 ]

白髪と黒髪の違いはメラニン色素があるかないか。毛包の上部にあるバルジ領域というところには毛髪を作る毛包幹細胞と、メラニンを作る色素幹細胞が“収納”されている。この2つの細胞が毛乳頭に送られる際、幹細胞から分化して毛母細胞と色素細胞になる。毛母細胞が毛髪を作っても色素細胞が作ったメラニンがスムーズに送り込まれなければ、白髪になる。

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