富岡佳子×坪井節子と考える「私たちが、子ども達のためにできること」とは?

虐待・いじめ・非行・貧困・生活困難……解決困難な問題を抱える子供や若者たちのニュースは少なくない。モデルとして活躍する富岡佳子さんも、そんな問題に関心を寄せるひとり。そんな彼女が講演を聞いて感銘を受けたという、子供の人権救済の活動を続けている坪井節子さんに富岡さんが直接お話を伺いました。子供の問題の現状や、私たち大人が彼らにできることとは?
富岡佳子×坪井節子と考える「私たちが、子ども達のためにできること」とは?_3_1
犯罪者になろうと思って生まれてくる子はいない
富岡 
いじめを受けたり、非行に走ったり、また、特に問題がなかったり。子供たちはどこが違うんでしょう?

坪井 
違わない! 同じです。私の上の子がちょうど、神戸連続児童殺傷事件のときに14歳、山口のバスジャック事件のときに17歳、同じ年代でした。そのとき「どう思う?」って聞いたら「お母さんたち大人は異常だっていうけど、そんなことない。この子は私たちと変わらない。追いつめられてひとりぼっちになってこうなってしまうのはよくわかる」って。わからなくなったときに、私はいつも自分の子供に教えてもらいました。子供を授かったのは私、恵みだと思っています。

富岡 
そうか、どんな子も、最初から問題があるわけじゃないんですね。

坪井
犯罪者になろうと思って生まれてきた子なんていないです。小さいころから大切にされて、何かあっても一緒に泣いてくれる人がいたら、こんなふうにはならなかった。非行少年を担当するたびにそう思います、どんなに極悪犯といわれている子でも。

富岡 
坪井さんたちのおかげで更生した子もたくさんいるんでしょうね。

坪井
特に印象に残っているのは、私がごく初期に担当した女の子ですが、幼いころから父親に殴られ、母親に〝お前なんか死んでしまえ〟といわれ、食事もろくに与えられなかった。小5でシンナーを覚え、自傷行為もいっぱいした。暴走族に入り、ヤクザに拾われて覚醒剤打たれて売春させられて、16歳で私が担当したときには、ボロボロでした。少年院に入ったものの、家には戻れず、結局風俗で働くしかなくて、泥だらけになって生きてきた。その人が今、もう40代ですけど、結婚して4人の子供の母となり、自分の受けた苦しみを子供たちには返さない、と、いいお母さんになりました。その人が、いうんです。家の近所の公園で、シンナーを吸っている少年がいる。父親に毎晩暴力を受けて、家にいられないらしい。だから〝シンナーなんか吸うんじゃない。ウチにおいで〟って、ごはんを食べさせているんですって。自分と同じように苦しんでいる子に、自分ができることはしてあげたいって。人間て、すごい。すばらしいですよね!
「逃げ場」を必要とする子供たちを、見守る社会に
富岡 
子供たちの問題に関して、私たちにもできることはありますか?

坪井
こういう子供たちがいるんだって知ってくださるだけで、まず、世の中は絶対に変わっていきます。

富岡 
確かに、まずは知ることですね。近所の子を見てちょっと変だなと感じたときに、もしかしたら虐待かもしれないと気づくことができますよね。

坪井 
もし困っていそうな子が身近にいたら児童相談所があるよ、とか、弁護士会にこういう窓口があるよ、とか、そっと教えてくだされば。

富岡 
わが子には、よかれと思ってプレッシャーをかけがちですが。

坪井 
もしかしたら子供にとってはつらいことなのかもしれないって、気づいてくれる親がいたら、これもすごいことだと思います。

富岡 
大人に余裕がないことが、子供の不幸につながっている面もきっとありますよね。その一方で、子供はちゃんと考えていて、すごいポテンシャルが見えることもある。私も、孫世代には実践したいです。

坪井 
ええ。おばあちゃんは子供にとってのシェルターになれますよ。そして、今お手伝いいただくとしたら、私たちのような活動の経済的支援とか、ボランティアでお得意なことを子供に教えてくださるとか。

富岡 
できることは多いのですね。今回、お話を直接うかがえてよかったです。私自身子育て経験もあり、ある程度ものがわかっているつもりでしたが、大人は自分たちが子供だったころのことをすっかり忘れている。知ってるつもりにならないで、常識とか思い込みから一度離れて、子供の言葉をしっかり受け止めることが大事なのですね。この世代になって改めて、知ること、学ぶことの大切さを理解できたように思います。貴重なお話、ありがとうございました!

児童虐待問題、坪井さんの活動について知りたい人は…

・子どもの権利条約

坪井さんの活動理念の基礎にある条約。外務省HPに全文が、
日本ユニセフのHPには抄訳が掲載されている。

・『居場所を失った子どもを守る 子どものシェルターの挑戦』(明石書店)

「カリヨン子どもの家」の5年目までの活動をつぶさに紹介する好著。また、坪井さんには大人と子供の関係性を問い直す著作も多く、現在、子育て中のエクラ世代にもおすすめ。
これもおすすめ!

・『ちいさいひと 青葉児童相談所物語』(小学館)

ニュースで耳にする「児童相談所」ではどんなことが起こっているのか? 取材に基づくエピソードがリアルなコミック作品。駆け出しの児童福祉司の相川健太の奮闘ぶりに誰しも共感できる。全6巻完結。現在、『サンデーうぇぶり』で『新・ちいさいひと 青葉児童相談所物語』が連載中。

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