今回紹介するこのドラマは、もちろん後者が主人公。その名はムヨン。一度、その魅力にハマったら絶対に抜け出せない(!)と言われる超危険な男…。
「空から降る一億の星」というのがこのドラマのタイトルですが、この響きに「あら?」と思った方、そうなんです。実は、これ、17年前に日本のラブロマンスの名手と言われる脚本家の北川悦吏子さんが脚本原作で大ヒットした名作ドラマの韓国リメイク版。同じ傷を持つムヨンとヒロイン・ジンガンの切なく狂おしい恋と、ジンガンを溺愛する兄ジングクを交えた3人の衝撃的な運命が、心揺さぶるサスペンスメロドラマ仕立てで描かれています。登場人物やその基本的な背景はほぼ日本のドラマと同じですが、時代を現在に移し変え、キャラの設定や感情の微妙な動きに至るまでより繊細に丁寧に描きこまれているので、実際には非現実的な物語ではありますが、観ているものにずしりとリアルに迫ってくところは、さすが韓流といったところ。
ドラマはある女子大生の転落殺人事件からスタート。ヒロインのジンガンは、その事件を捜査する兄ジングクと親友スンアの陶芸展に出席。そこで危険な男ムヨンと出会い、3人の運命の歯車が回りだすといった具合。兄ジングクは、25年前のある事件をいまだ引きずる出世とは無縁の刑事で、妹ジンガンが幸せになることだけを望んで日々生きているのですが、年頃を過ぎてもいまだに恋人もできずにいるジンガンに、実直でやさしい自分の同僚の後輩刑事チョロンを紹介します。一方、ムヨンに対しては女子大生殺人事件に関与しているとの疑念を募らせていき…。
主演のムヨンを演じるのはソ・イングク。韓国の国民的オーディション番組で72万人の中から優勝し、高校生役からエリートに至るまでまでさまざまな役柄を演じ分けるイケメン実力派(私のベスト3に入る大好き俳優さん)で、今回も一見人懐っこそうでありながら、内に冷酷さと計り知れない孤独を秘める難役ムヨンを名演。多くの女性を虜にしてしまうミステリアスな魅力を圧倒的なリアルさで演じきっています。特に、眼差しの表情がとってもセクシーで切なく、愛おしくなること必至。どこも見ていないようでいて、まっすぐと心の奥底まで見通しているような、寡黙で饒舌な視線の演技が絶品です。ヒロインのジンガンに扮するのは演技力に定評あるチョン・ソミン。彼女の芯のあるクリアな印象はまさにヒロインの役のイメージぴったり。兄ジングクは、映画「新しき世界」のパク・ソンウン。圧巻の悪役から一転心優しき兄を存在感たっぷりに好演。監督は「ナイショの恋していいですか」「ああ、私の幽霊さま」などを手掛けたユ・ジュンオン。サスペンス仕立てのハラハラの展開と、さまざまな感情が交錯する繊細かつ奥深い演出やカット割りが実に素晴らしく、観始めた瞬間から釘付けになること請け合いです(ドラマ冒頭でジングクとムヨンがすれ違いざまに視線を交錯させるカットがあるのですが、まずはそこをお見逃しなく。そのシーンだけでも、ムヨンに完璧に心を持っていかれますから)。