見ればキレイになる⁉韓流ドラマナビ⑦「愛の不時着」

本誌でおなじみのライター・山崎敦子がお届けする韓流ドラマナビ第7回は、すでに'20年上半期で最も話題のドラマといっても過言ではない「愛の不時着」。もう観られたかたも多いかもしれませんが、まだ見てないかたはもちろん、韓国ドラマに馴染みのないかたにも入門編として超絶オススメ。ツンデレ男にキュンキュン、愛の行方にドキドキ……まさに見るだけでキレイになれるドラマです。
愛の不時着 ヒョンビン ソンイェジン

財閥令嬢がパラグライダーでまさか本当に不時着するとは!!

 新型コロナ感染拡大の収束が遅々として進まない中、テレワークや自粛生活を続けていらっしゃる方が大半だと思いますが、今はただただ明るい明日を祈りつつ粛々と頑張るばかりですね。韓流ドラマが少しでもそんな毎日の力となることを願って。

 さて、そんななか、唐突ではありますが、格闘技はお好きですか? 柔道にレスリング、相撲にボクシング……などなど。2人が相対して戦うスポーツ。特に大ファンではなくても、中継などが始まるとつい見入ってしまうという人も多いのではないでしょうか。もちろん、私もそのひとり。圧倒的な力の差を見せつける横綱相撲にはやっぱりスカッとさせられちゃいますし、優勢を取られながら、終了間際に逆転の1本!なんていう力の拮抗した同士の対戦も、特に詳しいルールなんて知らなくても、台本のないドラマはやっぱり違う!と文句なく感動してしまうタチなのですが、あなたはいかが?
愛の不時着のソンイェジン
 で、今回のドラマ。タイトルは「愛の不時着」……。テレサ・テンか! と思わずツッコミが入りそうな懐メロ感にかえってそそられますが、注目なのがこの“不時着”。何かの象徴か?もしくは深〜い伏線か?とつい裏読みしたくなりそうですが、実はタイトルのそのまんま、ドラマヒロインがパラグライダー事故によってあの38度線を越え、北朝鮮へと不時着してしまうことから始まる物語なのです。マジか。で、北朝鮮で格闘技でも始めるの?という質問がやってきそうですが、そうではありません。
愛の不時着のソンイェジン
 主人公は韓国の財閥令嬢で、自らのブランドを立ち上げ、事業家としても成功しているユン・セリ(ソン・イェジン)。高慢ちきで仕事にも部下にも厳しく、イケメン俳優を相手に数々のスキャンダルを重ねる韓国の超有名人。その彼女が新しく参入するスポーツウェアのテストのため自ら試着を兼ねてパラグライダーに乗ることになったのがそもそもの始まりです。

 その少し前、セリは財閥グループ総裁となる父に呼び出され、末娘でありながらグループ後継者に指名されます。冷遇されていた財閥家を離れ10年、ひとりで頑張ってきた努力が報われたと感慨にひたりながら、優雅にパラグライダーを操るセリですが、そこに突然の竜巻が! あれよあれよという間に突風に巻き込まれ、気づいてみれば見知らぬ深い森の中。折しも、近くをパトロール中だった北朝鮮のエリート軍人リ・ジョンヒョク(ヒョンビン)に発見され、セリは自分が北側に不時着していることを知るのですが……。
愛の不時着

北と南を舞台に王道のキャラクターが繰り広げるラブストーリー

 ご存知のように、いまだ鉄壁の境界線によって隔てられている韓国と北朝鮮。同じ民族でありながら自由に行き来することはもちろん、手紙や電話での連絡さえもままならない間柄。そう、一度離れてしまったら、また逢うことはなかなか難しい……(ロマンスの萌えどころですね〜)。

 そんな北と南を舞台に、片やエリート軍人、片や財閥令嬢という王道のキャラクターを配して繰り広げられるロマンティック・ラブストーリー。すでにわくわくという鼓動が聴こえてきそうですが、物語の前半の舞台となるのはもちろん北朝鮮。セリは非武装地帯の近くの小さな町に迷い込み、そこで、運良くリ・ジョンヒョクの住まいに匿われることになります。

 これまで超セレブライフを送ってきたセリですが、シャワーを浴びるにもお湯は出ないし、洗顔フォームもシャンプーもなし。一息ついたと思ったら停電で真っ暗。そんな不便極まりない生活のなかに、なぜかすんなり溶け込んでむしろ生き生きとしているセリの姿がコメディ要素たっぷりに描かれます。
愛の不時着
 実は、前半のこうした北朝鮮での風景は大きな見どころのひとつで、実際ドラマ化するにあたってかなり綿密な取材を重ねたらしく、現在の北朝鮮の普通の人々の暮らしぶりや町並みが細部にわたってリアルに再現されているのだそう。
 
 日本にとっても国交のない北朝鮮は、異国というよりむしろ異空間。まるで、不思議の国のアリスのごとく、未知の世界を旅しているような楽しさに包まれます。町の主婦たちのファッションや家の中のインテリアは、古き良き昭和の田舎町を彷彿とさせて、なんだかファンタジック。素朴で愉快な町の人々とのやりとりも、バカバカしいほどに面白おかしく大いに和ませてくれます。
愛の不時着のソンイェジン
 とはいえ、なんといっても一番の見どころは、やっぱり、セリとリ・ジョンヒョクの愛のストーリー。セリを演じるのは、この連載でも登場した「よくおごってくれる綺麗なお姉さん」のソン・イェジン。相対する北朝鮮の軍人リ・ジョンヒョクは、高官の息子で元天才ピアニストという設定で、まあ、いうなればセリが南のセレブなら、ジョンヒョクは北のセレブというところ。スイス留学中に兄が突然事故によって亡くなり、家を継ぐために軍人となるのですが、以来、家族にも心開くことなく、黙々と任務を遂行するためにだけ生きているという感じ。そんな彼が、セリを守るために、自分の命さえかける愛に生きる男へと変わっていく……というのがラブストーリーの大きな流れ。

 命をかけて守られるなんて、女と生まれたからにはぜひとも体感したいものですが、現実の日本では叶いそうにもありません、残念ながら。で、そのジョンヒョクを演じるのが、大ヒット作「シークレット・ガーデン」や「私の名前はキム・サムスン」(この2つもぜひ、チェックを!)などの主演で日本でもファンの多いヒョンビン。ソン・イェジンといい、ヒョンビンといい、つまりは韓国を代表する2大トップスターで、そのふたりががっぷり四つに組んでラブストーリーを展開するわけですから面白くないわけがない! 
愛の不時着

スーパースター2人が繰り出す演技のワザの数々に脱帽!

 うん?がっぷり四つ?……、そうです、ここでようやく冒頭の格闘技の件。ソン・イェジンとヒョンビンは2人とも1982年生まれの同い年ですが、デビューこそソン・イェジンが数年早いものの、ほぼキャリア的にも一緒。ずっと主役を張ってきただけあって、この2人がもち得る演技のワザの数が半端なく、次々と仕掛け合っては応戦するやりとりが、本当に格闘技を見ているようで痛快キワマリないのです。イヤ〜、やっぱり力の拮抗するもの同士の対戦って見ごたえあるぅ。

 前半は大上段の構えから面に胴に次々とコメディ技を打ち込むソン・イェジンに対し、体力を温存しながらしぶく“受け”ワザで応じるヒョンビン(これがまた、上手い!)。転じて後半は、ヒョンビンの愛に生きる男のイケメン技を随所に盛り込み、ソン・イェジンが泣きワザで応戦する。甘く切ないラブストーリーを展開させながら、その裏では丁々発止の別のドラマがパラレルワールドのごとく同時進行されている、みたいな。つまり、極上ラブストーリーと格闘技の醍醐味を堪能できるわけで、一粒で2度美味しい!
愛の不時着
 韓国の放送では最終回の最高視聴率が24.1%を記録するほど大ヒット(あの名作「トッケビ」超えしたと話題)。もちろん日本でもNetflixで配信されるや否や大注目。私の周囲でもその人気っぷりは凄まじく、あっちにいってもこっちにいっても「愛の不時着、観た?」というセリフが漏れ聞こえ、もはや、ここで紹介するには及ばない?と思うほどの高視聴率。だからこそ、もし、まだ韓流ドラマの扉を開けていない方がいらっしゃったら、ぜひ、ここから入門を。ただ、その前に座るだけで、めくるめく世界へ一気に誘ってくれること間違いなしです!
愛の不時着のソンイェジン

その言葉、気になる! ドラマのハングル・ワンポイントレッスン

【얼굴은 완전 취향이에요】(オルグルン ワンジョン チュイヒャンイエヨ)「顔は超好みです」

 ドラマの冒頭、パラグライダー事故で韓国と北朝鮮を隔てる非武装地帯に入り込んだセリは、リ・ジョンヒョクによって発見されますが、彼が北朝鮮の軍人と気づき、捕まったらヤバいとばかりに逃げ出します。が、走り込んだ場所はなんと地雷原。奇跡的に地雷をすり抜けるセリですが、追ってきたリ・ジョンヒョクはその道のプロであるにも関わらず誤ってスイッチオン。そのままその場で動けなくなってしまいます。そんなリ・ジョンヒョクに向かってセリが明るく言い放つ捨てゼリフがコレ。

 「(二度と会わないから言うんだけど)顔はすっごく好みなのよ」。勝ち誇った笑みを浮かべるセリと、戸惑いを隠せないリ・ジョンヒョク。二人のキュートなキャラクターが映し出されるワンシーン。ドラマ前半はこんな愉快なやり取りが連発され、思わず声を出して笑うことも多々。
愛の不時着
愛の不時着のソンイェジン
 で、ハングルですが、最初の「얼굴(オルグル)」は「顔」、文末の「취향이에요(チュイヒャンイエヨ)」は「好みです」という意味。今回注目してほしいのは、それをつないでいる「완전(ワンジョン)」という言葉。前回、漢字語について触れましたが、これもそのひとつで、漢字で書くと「完全」となり、「完全に」とか「すごく」「とても」という意味で使われます。

 同じ意味合いで「아주(アジュ)」や「너무(ノム)」などもちょくちょくドラマのセリフの中に登場するのですが、この「완전(ワンジョン)」は、かなり砕けていて、日本で言えば「超」とか「メチャ」という言い方に当てはまるよう。まあ、若者言葉的な感じ? なので、目上の人や初対面に使うのは要注意。このドラマのセリの言葉も、リ・ジョンヒョクをちょっと小バカにしたニュアンスが絶妙なわけでして。だから、韓国でとても素敵な男子に出会っても、いきなり「완전 멋있어요(ワンジョン モシッソヨ)」「めっちゃかっこいいです〜」とは言わないほうがいいかもしれませんね。

愛の不時着

Netflixオリジナルシリーズ『愛の不時着』独占配信中

https://www.netflix.com/title/81159258

山崎敦子

山崎敦子

旅行記事に人物インタビュー、ドラマ紹介、実用記事から、着物ライターとさまざまな分野を渡り歩き、今では美容の記事を書くことも多くなったさすらいのライター。襲いかかるエイジングと闘いながら、ウキウキすること、楽しいことを追い求め続ける日々を送る。
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