【お墓どうする?】人気の「樹木葬」のメリット・デメリットを専門家が解説

まだ先の話とはいえ、先延ばしにばかりしてもいられない「お墓」のこと。今、注目されているのはどんなお墓なのでしょうか。ここ数年で人気急上昇中の「樹木葬」について専門家が解説。気になるメリット・デメリットは?
教えてくれたのは…

シニア生活文化研究所所長 小谷みどりさん

第一生命経済研究所を経て、’19年から現職。著書に『お墓どうしたら?事典』(つちや書店)、『没イチ パートナーを亡くしてからの生き方』(新潮社)など。

鎌倉新書「いいお墓」担当 藤田吉雄さん

お墓の基礎知識から全国の墓地情報まで提供する、日本最大級のお墓検索サイト「いいお墓」(https://www.e-ohaka.com)担当。

樹木を墓標としたリーズナブルなお墓

人気上昇に伴って、墓地数が増えている樹木葬。でも実は、樹木葬に明確な定義はないのだとか。

「しいていえば、墓石のかわりに木や植物を墓標にしているお墓ということでしょうか。墓地の立地と環境によって、里山タイプ、公園タイプ、庭園タイプに分けることもありますが、こちらも厳密な基準があるわけではなく、名乗り方は墓地しだいというのが現状です」(藤田さん)

「1999年、岩手県一関市の寺院が、墓地として認められている雑木林の中に遺骨を埋蔵し、目印として花木を植えました。これが、日本初の樹木葬といわれています。ただ、現在、こうした方法をとる墓地はごくまれ。お墓ひとつにつき1本の木となると、広大なスペースが必要になりますから。特に都市部では、もともと墓地だったところに、樹木葬エリアを設けるケースが大半。なので、必ずしも、豊かな自然に囲まれているとはかぎらないんですよ。また、自然に還るというイメージがあるかもしれませんが、火葬した遺骨は完全に土に還るわけではないことも理解しておいてほしいですね」(小谷さん)

樹木葬

墓標となる樹木は、墓地によって異なり、シンボルツリーと呼ばれる大樹の場合もあれば、街路樹や花壇を利用するところも。お墓にしても、木のまわりに1体分の納骨スペースが並ぶ集合タイプに、しっかり区画が区切られた個人墓タイプ、ほかの遺骨と一緒に納められる合葬墓タイプなど、複数あるそう。

「タイプによっても異なりますが、シンプルでコンパクトなお墓が多いので、一般墓を新たに建てるよりは費用が抑えられると思います。墓地側が用意したプレートを利用するケースもありますしね。また、基本的には永代供養で、お墓を継ぐ承継者が不要という点も、支持されているようです」(藤田さん)


「植樹の場合、将来木が枯れる危険性もあります。そうなったときに植え替えはしてくれるのか、費用はどうするのかなども、墓地側に確認しておくと安心です」(小谷さん)

 <メリット>

●墓石を建てるのに比べると費用が安く抑えられる

●永代供養が基本なので、承継者が不要

●夫婦墓、個人墓、合葬墓など、さまざまなタイプがあるので、自分に合ったものを選びやすい

<デメリット>

●植樹の場合、将来木が枯れてしまう危険性がある

●合葬墓の場合、あとで遺骨を取り出すことができない

●里山タイプは、アクセスが悪いことも

●寺院内だと、法要はお寺の宗派でなど規則がある場合も

<価格帯>

価格帯約60~80万円

立地やお墓の種類にもよるが、一般墓と比べるとリーズナブル。また、通常は個人墓より合葬墓のほうが安い。

樹木葬のスタイルは大きく分けてこの3つ

 里山タイプ 

山間部や森林など、いわゆる“里山”に位置。敷地が広大なので、ひとつのお墓に対して1本の木を植えている墓地もある。自然豊かな半面、交通の利便性は今ひとつの場合も。敷地内にアップダウンがあることも多いので、高齢者が利用しやすいかどうか要チェック。

樹木葬

千葉県・真光寺 Ⓒ鎌倉新書

 公園タイプ 

そこかしこに木々や花々が植えられ、公園のように整備された墓地。墓地内の一区画を樹木葬エリアとして整備しているところが大半。1~数本のシンボルツリーを植え、周囲に納骨するタイプが主流だが、なかには、区画ごとに異なる木や花を植えるところもある。

公園タイプ

千葉県・やすらぎパーク市原 Ⓒ鎌倉新書

 庭園タイプ 

霊園や寺院の墓地などの一角に、シンボルツリーや花木を植えたタイプ。街路樹沿いなど、墓地内の道を利用して設けるケースもあり、省スペースの都市型樹木葬ともいえる。基本的には樹木葬は宗教不問だが、寺院内にある墓地の場合、事前に確認するのが安心。

兵庫県・魚住庭苑 Ⓒ鎌倉新書

兵庫県・魚住庭苑 Ⓒ鎌倉新書

気になるお墓を拝見!横浜市営墓地 メモリアルグリーン

昨年、家族を亡くし、リアルにお墓探し中の本誌編集J。樹木葬というと木や花のそばに埋蔵するというイメージだけど、実際のところはどんな感じ? どうお参りするの?

樹木葬

木が植わるマウンドの土中に合葬

「芝生型」「合葬式慰霊碑型」など、3つのスタイルの納骨施設があるメモリアルグリーン。「平成14年に行われた市民アンケートの結果、ニーズが多様化していること、近郊都市の比較的新しい墓地が芝生型や集合型などを採用していることを参考にしました」と横浜市健康福祉局環境施設課の担当者。ケヤキ、クスノキ、ヒメシャラの3種のシンボルツリーがある「合葬式樹木型納骨施設」は骨壺を土中に直接埋蔵、手前にある献花台で参拝するスタイル。

樹木葬

シンボルツリーや低木、芝、花などで覆われたマウンド上の区画に1カ所で1000体分、計3000体を収蔵。自然の中に眠り、土に還るといったイメージを実現させるため、骨壺を直接埋蔵に。管理者が行うため納骨立会は不可。

お墓
樹木葬

花と緑に囲まれ、なんともさわやかで開放的! 使用者以外にも近隣のかたが散歩やジョギングに訪れ、花の開花時期には絵を描きにくるかたもいるそう。

樹木葬
樹木葬

写真協力/メモリアルグリーン

「芝生型」はA3用紙くらいの大きさの四角いプレートが墓標。1区画に6体程度埋蔵可能。「合葬式慰霊碑型」は地下の納骨施設内の棚に骨壺を収蔵。手前にある献花台で参拝。

樹木葬
樹木葬
DATA:メモリアルグリーンの使用者募集は、平成25年度に終了。再募集の予定については、現時点では未定。横浜市営墓地・納骨堂の使用者募集は例年、7月中旬から8月上旬に横浜市のHPにて募集内容の詳細を公表。今年度は「日野こもれび納骨堂」の新規募集が行われる予定。
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