「大津絵」見たさに、東京駅詣で。
「欲しい! 欲しい! 欲しい!」。このコピーがどこまで共感を呼ぶか、興味津々です。
東京駅の丸の内北口改札前にあります東京ステーションギャラリーで、『もうひとつの江戸絵画 大津絵』展(事前予約制、~11/8)が開かれています。
「大津絵」とは、江戸時代に東海道・大津宿の追分辺りで売られていた土産絵のこと。量産廉売を目的として、色や筆数を抑えつつ描かれています。版を使うものもあって、写真3枚目の釣鐘弁慶の輪郭なんか、キッチュでいい感じですね。大津絵の起源は17世紀前半まで遡り、その興りは浮世絵版画よりも早いにもかかわらず、今ではかなりマイナーな存在となってしまいました。長らく歴史・民俗資料として扱われてきたことが影響しているようです(※一部の熱狂的愛好家を除く)。
しかし、本展はカッコ書きのほうに注目! 近代以降、大津絵にどっぷりのめり込んだ目利きや画家たちが所蔵した名品を一気見できる稀有な展覧会です✨ ポスターのキャッチコピーは、彼らの内なる声という次第。
大津絵は元来、安価な土産物ですから、購入者の扱いもぞんざいになりがち。また、明治の鉄道敷設により街道の役目が終わると一気に下火となったため、伝存数は必ずしも多くありません。となれば、上がる一方なのが名品の価値。「あの人の(亡くなった)後は必ずや私が…」というようなコレクター間の争奪戦もあったとか。
展覧会の会場では、明治末〜大正ごろの日本にもしも自分がいたらどれを選んだか…? そんな視点で作品を見て行かれると楽しいかと思います。衝撃的だったのは写真6枚目、一番手前の『奴の行水』。「誰得?」な画題なのに何とも爽快な描きっぷり。「いやげもの」みたいで、すごく欲しいです。
東京駅の丸の内北口改札前にあります東京ステーションギャラリーで、『もうひとつの江戸絵画 大津絵』展(事前予約制、~11/8)が開かれています。
「大津絵」とは、江戸時代に東海道・大津宿の追分辺りで売られていた土産絵のこと。量産廉売を目的として、色や筆数を抑えつつ描かれています。版を使うものもあって、写真3枚目の釣鐘弁慶の輪郭なんか、キッチュでいい感じですね。大津絵の起源は17世紀前半まで遡り、その興りは浮世絵版画よりも早いにもかかわらず、今ではかなりマイナーな存在となってしまいました。長らく歴史・民俗資料として扱われてきたことが影響しているようです(※一部の熱狂的愛好家を除く)。
しかし、本展はカッコ書きのほうに注目! 近代以降、大津絵にどっぷりのめり込んだ目利きや画家たちが所蔵した名品を一気見できる稀有な展覧会です✨ ポスターのキャッチコピーは、彼らの内なる声という次第。
大津絵は元来、安価な土産物ですから、購入者の扱いもぞんざいになりがち。また、明治の鉄道敷設により街道の役目が終わると一気に下火となったため、伝存数は必ずしも多くありません。となれば、上がる一方なのが名品の価値。「あの人の(亡くなった)後は必ずや私が…」というようなコレクター間の争奪戦もあったとか。
展覧会の会場では、明治末〜大正ごろの日本にもしも自分がいたらどれを選んだか…? そんな視点で作品を見て行かれると楽しいかと思います。衝撃的だったのは写真6枚目、一番手前の『奴の行水』。「誰得?」な画題なのに何とも爽快な描きっぷり。「いやげもの」みたいで、すごく欲しいです。
さて、現代の私たちの眼は、近代のコレクターのそれに近いと言ってよいでしょう。大津絵の大胆な造形であったり、素朴な描写など、絵自体の魅力に心惹かれるもの。しかし彼らとちょっと違うのは、江戸時代以来の「大津絵観」になじみが薄いこと。
江戸時代の大津絵事情を物語る作品として、歌川国芳の『流行逢都絵希代稀物』(※展覧会非出品作)が挙げられます。こちらは大津絵のキャラクターたちを取り込んだ国芳らしい楽しげな一作ですが、いざその内容を解説するとなるとちょっとややこしい。
下敷きになっているのは、近松門左衛門の浄瑠璃『傾城反魂香』。大津絵の画工・浮世又平の描き置きから絵のキャラクターが飛び出して敵を追い払うという場面がもとになっています。大津絵は、全国に流布する現物だけでなく、こうした芝居や文学に取り上げられて広く知られるようになりました。歌舞伎舞踊の「藤娘」も大津絵に由来しますし、俗曲「大津絵節」も江戸時代から唄われています。
で、この三枚続はどういう作品かと申しますと、役者絵の変奏です。天保の改革の禁制がゆるみ、名前や紋を入れないかたちでなら役者絵の板行が認められた時代に(結構な無茶ぶり💦)、国芳は役者似顔絵の趣向として大津絵を用いたのでした。キャラクターはメジャーなものが中心で、筆致の似せっぷりも上々です。
そして真ん中にいる画工は、国芳自身。「どの役者を描いたか当ててみな!」とばかりに現実世界まで取り込んでいるのがかなり先鋭的。また、禁制を逆手に取る趣向と大津絵の雰囲気が合っていますね。この作品が江戸庶民の間で享受されていたのですから、大津絵がキッチュでユーモラスなキャラ絵であり、諷刺的な意味を持つことは常識だったでしょう。
さらに言えば、もともと日本には「ゆるい絵」を許容する伝統がありました。江戸期には戯画のみならず、禅画、俳画、中国の南画など、ヘタウマ的な絵画ジャンルがますます増えて来ます。戯れに大津絵風で描くのは、京坂の絵師ならごく自然なことでありました。そういう意味では、大津絵は現物を超えて、ひとつのジャンルを形成していたわけです。ただし、「大津絵ってこういうもの」と皆に知れわたったことがかえって、個別の作品に対する興味を失わせたかもしれません。
展覧会で名前が挙がる近代のコレクターたちには、出身地や活動地が関西の人物が多く、「大津絵をまったく知らなかったがその良さに目覚めた」というケースは少ないでしょう。海外での評価がなくとも、日本人自らが一気に盛り上がって美的に評価したという点では、大津絵はちょっと珍しいアートと言えそうです。
まとまって大津絵を見る機会がお初の方は、ぜひ東京駅へ!
江戸時代の大津絵事情を物語る作品として、歌川国芳の『流行逢都絵希代稀物』(※展覧会非出品作)が挙げられます。こちらは大津絵のキャラクターたちを取り込んだ国芳らしい楽しげな一作ですが、いざその内容を解説するとなるとちょっとややこしい。
下敷きになっているのは、近松門左衛門の浄瑠璃『傾城反魂香』。大津絵の画工・浮世又平の描き置きから絵のキャラクターが飛び出して敵を追い払うという場面がもとになっています。大津絵は、全国に流布する現物だけでなく、こうした芝居や文学に取り上げられて広く知られるようになりました。歌舞伎舞踊の「藤娘」も大津絵に由来しますし、俗曲「大津絵節」も江戸時代から唄われています。
で、この三枚続はどういう作品かと申しますと、役者絵の変奏です。天保の改革の禁制がゆるみ、名前や紋を入れないかたちでなら役者絵の板行が認められた時代に(結構な無茶ぶり💦)、国芳は役者似顔絵の趣向として大津絵を用いたのでした。キャラクターはメジャーなものが中心で、筆致の似せっぷりも上々です。
そして真ん中にいる画工は、国芳自身。「どの役者を描いたか当ててみな!」とばかりに現実世界まで取り込んでいるのがかなり先鋭的。また、禁制を逆手に取る趣向と大津絵の雰囲気が合っていますね。この作品が江戸庶民の間で享受されていたのですから、大津絵がキッチュでユーモラスなキャラ絵であり、諷刺的な意味を持つことは常識だったでしょう。
さらに言えば、もともと日本には「ゆるい絵」を許容する伝統がありました。江戸期には戯画のみならず、禅画、俳画、中国の南画など、ヘタウマ的な絵画ジャンルがますます増えて来ます。戯れに大津絵風で描くのは、京坂の絵師ならごく自然なことでありました。そういう意味では、大津絵は現物を超えて、ひとつのジャンルを形成していたわけです。ただし、「大津絵ってこういうもの」と皆に知れわたったことがかえって、個別の作品に対する興味を失わせたかもしれません。
展覧会で名前が挙がる近代のコレクターたちには、出身地や活動地が関西の人物が多く、「大津絵をまったく知らなかったがその良さに目覚めた」というケースは少ないでしょう。海外での評価がなくとも、日本人自らが一気に盛り上がって美的に評価したという点では、大津絵はちょっと珍しいアートと言えそうです。
まとまって大津絵を見る機会がお初の方は、ぜひ東京駅へ!
ついでながら、国芳は『流行逢都絵希代稀物』の数年後にも同じテーマで『浮世又平名画奇特』(※展覧会非出品作)を描いています。こちらの場合は、画工も役者似顔絵。人物も大津絵の精も同じタッチなので、画面全体がひとつの物語世界として映ります。個人的には単調な感じがしてあまり惹かれないのですが、板行が黒船来航のタイミングに近かったこともあって、「外圧に悩むお上の諷刺」と深読みされて大人気→発禁扱いとなりました。前作よりも妙にリアルな似顔絵具合がそんな受け取め方を誘ったのかもしれません。
(編集B)
(編集B)
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