『昼下がり、ローマの恋』×「ベラヴィスタ アルマ・グラン・キュヴェ・ブリュット」“人生最後の恋”を成就させたのは、「美しい景色」という名のイタリアの泡【シネマに乾杯!vol.11】

ワインを知ると映画はもっと楽しい!エクラでもおなじみのワイン&フードジャーナリストの安齋喜美子が、映画の中に登場するワインやシャンパーニュを楽しく解説!第11回目は、映画『昼下がり、ローマの恋』をご紹介!
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”青年の恋”、”中年の恋”、そして”熟年の恋”。タクシー運転手に姿を変えたキューピッドが放つ矢によって、それぞれの世代の主人公たちが繰り広げるちょっと風変わりなオムニバス形式のロマンティック・ラブコメディだ。

どの恋愛にもちょっとした障害があり、主人公たちは右往左往するのだが、どの章もイタリアらしい陽気な空気感に満ちている。映画の冒頭でキューピッドが言う。
「恋に年齢や期間は関係ない。大切なのは”ときめき”。あの胸の高まり」――。
今回フォーカスするのは”熟年の恋”。アメリカ人の歴史学者エイドリアン(ロバート・デニーロ)と、人生をあきらめかけているビオラ(モニカ・ベルッチ)との、いわゆる”年の差恋愛”を描いている。この名優ふたりの恋愛ドラマが面白くないわけがない。特にロバート・デニーロの”可愛いおじさん”ぶりが秀逸で、彼の映画の中での「人は、いくつになっても人生をやり直せる」という言葉には、素直に感動してしまう。
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「2年前までボストン大学で教授をしていた」というエイドリアンは、過去に大病を患い、心臓移植手術を受けていた。新しい命を授かり、新たな人生を求めてローマへ。ここで出会ったのがアパートの管理人、アウグスト。彼とはなぜか気が合い、今では大の親友だ。

ある日、アウグストの娘ビオラがパリから数年ぶりに戻ってきた。アウグストにとって、ビオラは自慢の娘。パリの高級ブランドに勤務し、父親に車をプレゼントしたこともある高給取りだと、アウグストはエイドリアンにうれしそうに語る。そして初めてビオラに会ったエイドリアンは、その美しさに胸をときめかせる。

映画の中でエイドリアンがジョギングをするシーンがあるのだが、本来、彼の体調からすれば、これは難しい話。実は彼は、ビオラの前では”ほんの少し”走っているところを見せるだけ。あとはカフェで休んだ時に水を脇の下や顔にかけ、汗をかいたように見せて、またビオラの前を走るのだ。60歳を過ぎても、まるで少年のような行動をとるエイドリアンが可愛らしく思えてくる。
だが、ある日、ビオラの嘘がアウグストにばれてしまう。実は彼女は、パリで長年ストリッパーとして働いていたのだ。しかも、借金があり、父に援助を求めたことでアウグストは激怒、ビオラは家を追い出されてしまうのだ。そして、彼女が頼ったのがエイドリアンだった。

ふたりは、エイドリアンの部屋で互いのことを話し、心は少しずつ近づいていく。ちょうどその日は、聖母マリアの祝日の前日。エイドリアンは「明日は祝日。借金取りも休むよ。このテラスから花火を見よう」とビオラを誘う。
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そして翌日、ふたりは「ローマに乾杯!」とスパークリングワインで乾杯する。この時、開けられたのがフランチャコルタの「ベラヴィスタ アルマ・グラン・キュヴェ・ブリュット」だ。

フランチャコルタとは、ロンバルディア地方フランチャコルタで造られるスパークリングワインのことで、ふくよかな酸味が魅力。「ベラヴィスタ」はフランチャコルタの中でもトップクラスの生産者で「極めてエレガント」と評される。イタリアの人々にとっては、大切な日に開けられることの多いワインなのだ。

だから、この日エイドリアンが”とっておき”を選んだのは、ビオラへの思いからだったと容易に想像がつく。エイドリアンは「ベラヴィスタ」を飲みながらビオラに聞く。「ストリップには段取りがあるの? それとも即興?」。それは単なる興味ではなく、仕事に対する理解だったのかもしれない。するとビオラはこう答えるのだ。「なら、教えてあげる」。
ビオラが言う。「上着を脱いで、2回まわして投げる。次はネクタイ、ゆっくり、クールに」……。エイドリアンは彼女の言葉に従って、ストリップを始める。このシーンが、色っぽくて、キュートで、そして悲しい。すべて衣類を脱いだエイドリアンだったが、両手は胸の前で組んだまま。「腕をおろして」とビオラは言うが、そうすれば大きな手術跡を見られてしまう。すると、彼女はその手をほどき、胸の大きな傷跡を優しく撫でたのだ。きっとこの時が、互いの愛情を確かめた瞬間だった。
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映画の終盤で、エイドリアンが言う。「終わりに差しかかったと思ったとたんに、新しい何かが始まるもんだ。いずれは終わる人生でもあきらめたくない」――。

このあとも彼らの物語は続いている。そしてそこには”美しい景色(ベラヴィスタ)”が広がっている。それは実際に彼らの目に映る風景と、彼らの心象風景だ。その美しさは、ぜひあなたに確かめてほしい。

『昼下がり、ローマの恋』

■Amazon Prime Videoにて配信中
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ベラヴィスタ グランデ・キュヴェ・アルマ・ブリュット

イタリア・ロンバルディア地方フランチャコルタ。
シャルドネ88%、ピノ・ネロ11%、ピノ・ビアンコ1%。白い花や洋ナシ、バニラの香り。フレッシュ感に満ちた味わい。ブドウはすべて自家農園のもの。”アルマ”とは「深い愛情」の意。ミラノ・スカラ座のオフィシャルサプライヤーでもあり、オペラの幕間に楽しまれている。(※現在、商品名は「ベラヴィスタ グランデ・キュヴェ・アルマ・ブリュット」に変更、ラベルも上の写真のように変わっている) 750ml \5,500
ペトラ クエルチェゴッベ

ペトラ クエルチェゴッベ

イタリア・トスカーナ。メルロ100%。ブルーベリーなど黒い果実やハーブの香り。黒こしょうのニュアンス。「ベラヴィスタ」がトスカーナに設立したワイナリーで、映画では、エイドリアンとアウグストが同じアパートの老姉妹との”合コン”シーンに登場。ラベルは、今では写真のように変わっている。750ml \5,500
■「ベラヴィスタ」と「ペトラ」のお問い合わせ先/エノテカ0120(81)3634
取材・文/安齋喜美子
ワイン&フードジャーナリスト。女性誌を中心に多くの媒体で執筆。ふだんごはんからスイーツ、星つきレストランまで幅広くカバーする。映画が大好きで、登場するワインは必ずチェック。最近は海外の醸造家とオンラインでワインテイスティングの日々を過ごす。シャンパーニュ騎士団シュヴァリエ。

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