なぜアラフィーの脳はとっちらかるの? 8つの“脳番地”を知れば、脳がグンと片づきます!

「物忘れ」や「勘違い」などの悩みを“脳”の観点から徹底分析。脳には1000億もの神経細胞があり、それらが集団になって複雑な働きを支えている。異なる役割を担う神経細胞の集団“脳番地”を鍛えることが、脳の片づけにつながるという。専門医に聞いた。
教えてくれた人
「脳の学校」代表 加藤俊徳先生

「脳の学校」代表 加藤俊徳先生

’61年、新潟県生まれ。脳内科医、医学博士。日米で脳の研究を行い、MRIを用いた脳画像診断法を確立。1万人以上の脳画像を分析し、診断や治療などを行う。著書に『片づけ脳』(自由国民社)など。

脳番地の連携強化が、脳の動きを高める

まずは脳の仕組みを理解しよう。人間の脳は1000億個以上もの神経細胞でできている。それらが集団で活動し、連携し合うことによって、複雑な脳の働きを支えているという。

「細胞の集団にはそれぞれ役割があります。私は脳の働きの違いによって8つに区分し、それらを『脳番地』と名づけました。人がある行動をとるときは、特定の脳番地が単独で働くのではなく、いくつかの脳番地が連携しています」


例えば、誰かと会話をしているときは、耳で聞いた言葉を脳に集積させる「聴覚系脳番地」、思考や想像力などをつかさどる「思考系脳番地」、喜怒哀楽などを表現する「感情系脳番地」、考えていることを伝達する「伝達系脳番地」などが連携して働いている。

「頻繁に使う脳番地はいきいきと成長しますが、逆にあまり使わないと未熟なまま。それを放置しておくと加齢とともに少しずつ衰えていきます。だからこそ、それぞれの脳番地をバランスよく使い、複数の脳番地の連携を高めることが大切なのです」

8つの脳番地

8つの脳番地

①視覚系脳番地

目で見た映像や画像や読んだ文章を脳に集めて処理する脳番地。左脳は文字情報を、右脳は色、形などの情報をキャッチしている。

②理解系脳番地

目や耳を通じて得た複数の情報を整理して理解する脳番地。情報をそのまま理解するだけでなく、推測して理解するときにも使われる。

③聴覚系脳番地

耳から入った言葉や音などの情報を集めて処理する脳番地。左脳では言葉を処理し、右脳では周囲の音に注意を払っている。

④伝達系脳番地

自分の気持ちや考えを人に伝えるときに使う脳番地。言葉を使う言語系(右脳)と、図形や映像などを扱う非言語系(左脳)に分かれている。

⑤記憶系脳番地

情報を蓄積したり、思い出したりする脳番地。記憶をつかさどる海馬の周辺に位置し、思考系脳番地と感情系脳番地と深くかかわっている。

⑥思考系脳番地

思考や意欲、想像力などをつかさどり、自分で判断して実行するときに使われる脳番地。生涯かけてゆっくり発達する。未発達だと優柔不断に。

⑦感情系脳番地

喜怒哀楽などを感じ、表現することに関与。生涯にわたって成長を続け、老化が遅い特徴がある。思考系脳番地と相関関係にある。

⑧運動系脳番地

体を動かすときに働く脳番地。脳の中で最も早く成長を始める。ほかの脳番地との結びつきが強く、ここが弱いとほかの脳番地に影響大。

脳番地の衰えが、ミスを引き起こす

脳番地が鈍っていくと、物忘れや思い込みなどが起こりやすくなる。多くの人の身に覚えがある、人やモノの名前が出てこない事例は、記憶系と思考系脳番地の機能が不十分なため。

「人は意識的に反復しないと記憶は定着しません。また、忙しい毎日に追われ、思い返すことすらありません。記憶は、記憶系と思考系が連携して初めて定着します。さらには『あの俳優かっこいい!』というように感情系脳番地も同時に働くと、定着率がより高まります」

物忘れがある、聞いたことを忘れてしまう、といった記憶にまつわるトラブルも少なくない。これらは日常生活がルーティン化していると起こりやすいという。

「朝はコーヒーをいれる、毎日、子供にお弁当を作る、スーパーに買い物に行く、というように行動がルーティンワークになると動きが体にしみつくので、何も考えずにできるようになって楽です。でも、ルーティンワーク中は無意識に体が動くぶん、頭が働かなくなるので、新しい記憶が入りにくくなります。そのため、聞いたことを忘れてしまったりするのです」


待ち合わせの日時や場所を間違えるのは、誤った情報を正しいと思い込んで起こるものだが、これは情報を整理して理解する理解系脳番地が機能していない証拠。

「理解があいまいなまま記憶し、それが正しい情報と思い込んでしまったからです。こうした思い込みは脳が疲れているときや、脳の動きが鈍くなる夜に起こりやすい。ミスを防ぐためにも、予定が決まった時点でカレンダーにきちんと記入し、週末などに反復確認し、記憶を定着させていきましょう」

聞いたことを忘れてしまう場合も、反復して覚えるのが有効だ。

「聞いてそれを理解する力が弱いということは、記憶系に加えて、聴覚系と伝達系脳番地が衰えていると考えられます。ニュースを見て、アナウンサーの発言を聞いて自分でも繰り返していってみると効果的です」


耳と同様に情報収集に欠かせないのは目。視覚系脳番地が弱っていると、モノを見つけられなくて慌ててしまうことがある。

「目でモノの位置を確認するためには、目から得た情報を処理する視覚系脳番地はもちろん、運動系脳番地もかかわってきます。なので、よくこのミスをする人は運動不足の人に多いですね。日ごろから活発に動きまわっていれば、目からさまざまな刺激が得られ、視覚系脳番地の刺激にもなりますから」

また、レジでお釣りをもらったかどうか、家のカギをかけて外出したかなど、やったかどうか不安になる人は記憶系+感情系脳番地、何度も同じ話をしたり、いいたいことがうまく口に出ない人は記憶系+伝達系脳番地、やろうと思っていたことを途中で忘れてしまう人は記憶系+思考系脳番地が衰えている可能性があるという。

大人だからこそ、脳への新しい刺激が必要

こうした衰えた脳番地が複雑にからみ合いながら引き起こす失敗は、どうしたら防げる?

「まずは“脳番地チェックシート”(下)で、どの脳番地が使えていて、どの脳番地が使えていないのかをチェックしてみてください。自分の脳の状態が把握できたら、あとはこれから紹介する各脳番地を強化するためのトレーニングに取り組むだけ。脳は常に刺激を求めていて、ちょっとしたことでワクワクしなくなる大人こそ、あえて新しいことに挑戦して脳を鍛える必要があるのです」

【脳番地チェックシート】

チェックが多いところは、あまり使えていない脳番地。逆に、項目に書かれているものができていれば、使えている脳番地。

①視覚系脳番地

空気が読めない

片づけが苦手

美的センスがない

自分から話すのが苦手

道に迷いやすい

②理解系脳番地

想像力がない

言葉の裏を読み取るのが苦手

注意力がない

アートなどの意図をくみ取れない


③聴覚系脳番地

話を聞くのが苦手

聞いたことを忘れる

聞き漏らしが多い

長話を聞いていられない

音読が苦手

④伝達系脳番地

人付き合いが苦手

自分の考え、思いを伝えられない

会話が少ない

会話を続けるのが苦手

作文が苦手

⑤記憶系脳番地

忘れっぽい

締め切りを守れない

遅刻する

電車を乗り過ごす

人の話を忘れる

テストに弱い

モノを捨てられない

⑥思考系脳番地

断れない

決断力がない

優柔不断

自制心がない

リーダーの経験が少ない

マルチタスクが苦手

⑦感情系脳番地

人に流されやすい

自分の意見がいえない 

相手の気持ちが読み取れない

自分の感情表現が苦手

⑧運動系脳番地

行動に移すのが苦手

動きが遅い

体を動かすのが苦手

テキパキできない

物事の処理速度が遅い

脳番地の役割と、自分が使えていない脳番地が分かったら、トレーニングの開始!
トレーニングの内容は発売中のエクラ1月号に掲載。Web eclatでも近日公開予定。お楽しみに。
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