新たな居場所で互いの人生を楽しむ!【真藤眞榮さん&舞衣子さん親子インタビュー後編】

母を頼り、甘えるだけの娘ではいられない、エクラ世代独特の母娘(おやこ)事情。真藤眞榮さん・舞衣子さんの場合はどうだろうか。50歳からの「母との向き合い方」についてお二人にインタビュー。
母と娘が本音で語ります!
母・真藤眞榮さん(73歳)

母・真藤眞榮さん(73歳)

しんどう まさえ●’49年、東京都生まれ。70年間過ごした都心の実家をたたみ、窓から富士山を望める郊外のマンションへ。読書やダーニング(衣類の穴あきなどを修繕する技術)を楽しむ日々を過ごす。
娘・真藤舞衣子さん(47歳・料理家)

娘・真藤舞衣子さん(47歳・料理家)

しんどう まいこ●’74年、東京都生まれ。発酵研究家、料理家。京都の大徳寺塔たっちゅう頭で茶道を学び、フランスの「リッツ エスコフィエ」に留学も。現在はレシピ本の執筆や料理教室の主宰など多方面に活躍。

毎日更新されるインスタで母の元気を確認

舞衣子さんも「実家がなくなったのは少し寂しいけど、母に新しい友人ができて人生をエンジョイしていることが、なによりうれしい」という。安心して出張に出られるようになり、仕事の幅を広げる舞衣子さんと、新たなわが家を見つけた眞榮さん。今では時間をつくって食事に行ったり旅行をしたり。「ちょうどいい距離感で暮らしています」と口をそろえる。

「母の住まいは何かあればスタッフや看護師さんが駆けつけてくれるから安心です。それと、母は毎日インスタを更新するので、SNSで『今日も元気そう』と確認できるのも助かりますね」(舞衣子さん)


「引っ越しを機に日記のつもりで始めたら、投稿を通じて友だちができるし、娘のための安否確認にもなるし。スマホが使えるかたはやってみるといいと思います。家に帰ればひとりになれるとわかっているから、多少のケンカをしても、がまんして笑顔で過ごせるようになりました(笑)」(眞榮さん)

「新たな居場所で人生をエンジョイしている母を見るのが一番うれしい」舞衣子さん

ひとつだけ残念なのはキッチンの火力が電気で、眞榮さんが十分に料理を楽しめないこと。

「ときどき、母に食べたいものを聞いて、私が料理して持っていくようにしています。それを“老婆(ローバー)イーツ”(笑)と呼んで、気に入ってくれているみたい」(舞衣子さん)


撮影直前、「(きものの)襟を直してくれる?」と、眞榮さんが娘に声をかける。襟もとを整え、最後に母の背中をポンッとたたく舞衣子さん。すると、「背中、曲がってきたよね」と眞榮さんがぽつり。かつては、背中をたたいて背すじを伸ばしてくれた母。その背すじを今は自分が伸ばす。母と娘が年を重ねるとは、こういうことかもしれない。

真藤眞榮さん・舞衣子さんの母と娘の50年史

’75年頃(幼児期)

眞榮さんの父親が他界したのを機に、女3代(眞榮さんの母、眞榮さん、舞衣子さん)の生活が始まる。勘が頼りの調味で味がバシッと決まる眞榮さんの絶品料理を求めて、大勢の友人・知人が真藤家を訪れていた。

母娘3代、発酵食を愛し、 肌美人と呼ばれていた

’80年頃(幼少期)

このころから料理に興味をもつようになった舞衣子さん。「米に梅干しが一番おいしいといったり、粉の味の違いがわかったり、私よりも味覚に優れていましたね」(眞榮さん)

わずか5歳で台所に立つ 舞衣子さん。今日の献立 はピーマンの肉詰め!

わずか5歳で台所に立つ舞衣子さん。今日の献立はピーマンの肉詰め!

’85年頃(小学生時代)

「おばあちゃまとママ、私の3人で魚河岸によく出かけました。荷物持ちも私の役目でしたね」(舞衣子さん)。祖母・母と過ごした時間が、料理家・真藤さんの今を支えている。

’85年頃(小学生時代)

真藤家のモットーは『一食一魂』(1回の食事を魂をこめていただく)。

「娘には、出どころがわかる安全な食材を食べさせたい。特に、ひき肉には気を使ってましたね」(眞榮さん)

「母はいつも、肉屋さんの作業場に入って自分で肉のかたまりから吟味していて。そんな後ろ姿から学んだこともたくさん」(舞衣子さん)

’90年頃(高校時代)

真藤家最大の母娘ゲンカがぼっ発。

「何が原因か忘れましたが、怒ったまいまいが玄関にあった私のピンヒールの靴をつかんで、投げつけてきたんです」(眞榮さん)

「それで怒った母がエレベーターに乗ろうとした私を引きとめ、そのヒールで頭をポコッとたたいて。学校には遅刻するし、おでこのたんこぶを友人に笑われて、すごく恥ずかしかった」(舞衣子さん)

祖母(中央)の誕生日祝い で。高校3年生の舞衣子 さん(左)と眞榮さん(右)

祖母(中央)の誕生日祝いで。高校3年生の舞衣子さん(左)と眞榮さん(右)

’02年頃

舞衣子さんがフランスへ料理留学を決意。半年間学ぶことを眞榮さんに告げる。

「まいまいが決めたことならどうぞ、と。ただし、私は飛行機が大嫌いだから、あなたに何かあっても迎えにいけないからねって」(眞榮さん)

「もし事故にあって亡くなったりしても、私は行かないからお骨は宅急便で送って、といわれて(笑)。わが家のルールは自己責任なので、覚悟を決めて旅立ちました」(舞衣子さん)

’17年

眞榮さんの母を自宅で介護する日々。

「家を長い時間空けられないけど、たまには外食をしたい。ときどき、まいまいとふたりで近所のステーキ屋さんに出かけてパワーチャージをしてました」(眞榮さん)

「せっかくだからおいしく食べようと、手作りのハーブバターをこっそり持参して。わずか30分だったけど、元気が出ました」(舞衣子さん)

’22年

舞衣子さんと母、知人でLINEグループを結成。

「××を買ってとメッセージを送ると、どちらかがネット通販で手配してくれるからひとり暮らしでも不便を感じません」(眞榮さん)

「かわりに母の家では母の手料理を堪能することも」(舞衣子さん)

母娘ともに京都びいき。 年に数回通って、お気に 入りの店をはしごする

母娘ともに京都びいき。年に数回通って、お気に入りの店をはしごする

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発酵食へのこだわりがつまった最新刊『発酵美人になりませう。』。母や祖母との食にまつわるエピソードも満載。宝島社 ¥1,540

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