【短期連載】雨宮塔子が見つけた“パリ”おしゃれの感性 vol.2「蚤の市での、新しい出会い」

パリに長く住み、日々現地のおしゃれに刺激を受けているという雨宮塔子さん。4回に分けて、パリで出会ったおしゃれの発見を雨宮さんの書き下ろしエッセーとともにお伝え。第2回目は、蚤の市での、新しい出会いを紹介します。
雨宮塔子

雨宮塔子

Toko Amemiya●フリーアナウンサー・エッセイスト。6年間のアナウンサー生活を経てTBSを退社。フランス・パリに渡り、フランス語、西洋美術史を学ぶ。2016年から3年間『NEWS23』のキャスターを務める。その後拠点をパリに戻し、執筆活動のほか、美術番組への出演や現地の情報をメディアに発信している。YouTubeチャンネル『A l’aube by Toko and Maho』も更新中。

古いものを愛する街のおしゃれのアップデート術

――文・雨宮塔子

蚤の市での雨宮塔子さん
あれはもう13年ほど前のこと。日本に帰国する度に覗くあるブティックで、その年の前年に私が購入したミリタリージャケットが目に入ってきました。このジャケットは毎年出る定番ものなのかも、と近寄って見てみると、細部が異なっています。私が購入したものは、ボタンがジャケットに馴染むカーキ色で平たいものだったのが、手に取ったそれはマットゴールドに模様が入ったアンティークボタン。それだけなのに私の持っているものよりずっと個性的で素敵に見えたのです。

思わずじっくり眺めてしまいましたが、驚いたのはお値段。フランスのアンティークボタンを使用しているためか、私が買ったものの倍以上の値がつけられていて……。その時、あまり大きな声では言えませんが、これ、自分でやってもいいのかも、と思いました。

フランス人は古いものを大切にします。とくに好きなものはメンテナンスやお直しはもちろん、時にはリメイクも取り入れて長く愛用する。リネンのシーツがテーブルクロス、さらにはナプキンになるまで使い続けるように、着倒したワンピースを娘さんのお洋服にリメイクする人も。そんなパリジャンを見ていたことも、ボタンを付け替えることをためらわせなかったのかもしれません。
パリに戻って、さっそくクリニャンクールの蚤の市へ行ってみました。実際に見ていくと、アンティークボタンと一口に言っても、年代から材質、形、色、また模様まで様々で、数限りなくあるんですよね。1900年代前半からのボタンが充実していますが、そこはアンティーク。ひとつしか在庫が無かったり、しかもそのひとつが70ユーロぐらいするものも。

ガラスボタンや糸で編み込んだボタン、小花柄の、古き良きフランスの香りのするもの……。たとえばぬいぐるみやバッグのアーティストならこうしたボタンで作品も作れるのかもしれませんが、私としてはまずは件(くだん)のミリタリージャケットのボタンを付け替えたいので、それに合いそうで素敵なもの、しかも手頃なボタンをじっくり選びました。

付け替えてみたら大正解!! 1シーズン着回したジャケットでしたが、ボタンを替えただけでまたフレッシュな気持ちで袖を通せるようになりました。

これが縁で、私はその後、手持ちのジャケットを2着、ボタンを付け替えて楽しんでいます。
パリ、サントゥーアンの蚤の市
パリ、サントゥーアンの蚤の市。通称クリニャンクールの蚤の市は、パリの北、7ヘクタールという広大な規模の蚤の市。屋根つきのマーケットゾーンはプロゾーンを除いて全部で12あり、家具、雑貨、食器、衣類、アクセサリーなど、ありとあらゆる分野のヴィンテージを扱う店が軒を連ねている
クリニャンクールの蚤の市

Data クリニャンクールの蚤の市(Marché aux Puces de Paris Saint-Ouen)

開催日は、金曜(8時〜12時)、土・日曜(10時〜18時)、月曜(11時〜17時)

※開催日と時間はお店ごとに異なります。
https://www.pucesdeparissaintouen.com

モード界のプロの間でも定評あるボタンの品ぞろえを誇る「Daniel et Lili」
モード界のプロの間でも定評あるボタンの品ぞろえを誇る「Daniel et Lili」
アンティークのボタン
膨大なコレクションから雨宮さんがセレクトしたもの

膨大なコレクションから雨宮さんがセレクトしたもの。上のようにシートにはりつけてある状態のボタンもまたよい雰囲気。Marché Dauphine Stand 128 土曜〜月曜の10時〜18時 Instagram@danieletlili

雨宮さんが自分でボタンを付け替えたミリタリージャケット
雨宮さんが自分でボタンを付け替えたミリタリージャケット
「REFLETS DE PARIS」の店頭で見つけたイギリス国旗風の模様のボタン
下の写真の店「REFLETS DE PARIS」の店頭で見つけたイギリス国旗風の模様のボタン。少なくとも100年以上前のヴィンテージアイテムだそう
主は穏やかな笑顔のポール・ドゥランさん。さまざまな国からのお客さまが絶えない
ボタンはもちろん、洋服やアクセサリー、リネン類なども充実していて、店のたたずまいもとても魅力的なお店「REFLETS DE PARIS」(Marché Vernaison Allée 8 Stand 167 土・日曜10時〜18時、月曜10時〜17時)。店主は穏やかな笑顔のポール・ドゥランさん。さまざまな国からのお客さまが絶えない

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