【50代“離婚”の決断】離婚の意志を伝える前に「相手の財産の把握」を

離婚でつまづきやすいケースを専門家ふたりが解決。「夫婦の財産分与でもめる」ケースの対処法とは?

教えてくれた人

夫婦問題研究家 岡野あつこさん

夫婦問題研究家 岡野あつこさん

公認心理師。33年前に離婚相談室を設立、相談件数は3万人以上。離婚カウンセラー養成講座で後進育成。マル秘テクニックを交えた的確なアドバイスが好評。近著に『夫婦がベストパートナーに変わる77の魔法』(サンマーク出版)。
弁護士 後藤千絵さん

弁護士 後藤千絵さん

30歳を過ぎて一般企業から弁護士に。フェリーチェ法律事務所代表。家族の事案を得意とし、なかでも離婚案件は年間約300件の相談に乗っている。著書に『誰も教えてくれなかった「離婚」しないための「結婚」の基本』(KADOKAWA)ほか。

夫が“自分の財産を渡したくない”

イラスト

妻だけが離婚したいと思っていても共有財産は1/2に。不動産は売却して現金で分けるのがスムーズ

離婚の意思を伝える前に相手の財産を把握しておく

アンケートでも離婚に踏み切れない理由の一番にあげられた「お金」は、もめる要因としても大きい。後藤さんいわく「妻とは別に結婚したい相手がいるというケースを除き、男性側に離婚のメリットはあまりありません。もっとも大きなデメリットが、財産の約半分を妻に渡さなければならないこと」。専業主婦は、経済的な部分では夫に依存しているかもしれないが、離婚となれば、婚姻中に夫婦で得た預貯金、不動産、保険、有価証券、年金や退職金などが、原則として夫婦共有財産となり、2分の1は妻のものに(ただし個人の才能によって増える資産運用や投資は条件が変わる可能性あり)。

「しかし、自分ひとりで稼いだ自分の財産と考える男性が多く、妻に半分を渡すことに納得できない。渡したくないからあの手この手で隠す、ごねる。財布が別々な夫婦や、夫が家計を管理し給与明細を見たことがない場合は財産分与でもめるリスク大。離婚の意思を伝える前に、給与口座以外の財産も把握しておきましょう。そして厄介なのは、同居する住宅が夫名義でローンがまだ残っている場合。むやみに家を出てしまうと、夫に不動産を勝手に売却され、不動産の分与をもらい損ねる可能性が。とはいえ妻が家にそのまま残っても名義変更はむずかしく、夫にローンを払ってもらいつつ、家賃に相当する金額を妻が夫に支払う約束をするケースなど、財産分与の計算も複雑になります。オーバーローンでなければ売却してローンを完済し、残額を分けるという方法が一番スムーズです。ちなみに別居した場合も、夫婦の扶養義務から収入が多いほうが他方の生活費用(婚姻費用)を支払う必要があります。夫の年収が高いならとりあえず別居という選択も」(後藤さん)

熟年になるほど、財産分与に難色を示す夫が増える、と岡野さん。
「若い夫婦なら婚姻期間が短く共有財産も少ないので話は早いのですが、年齢を重ねると財産も多く、また、定年退職後は本人も老後の資金に不安があるので、手放したがりません」「離婚したら義父母からの援助も当てにできなくなります。ただ、関係が良好だった場合は、味方になってくれることも」(後藤さん)

財産分与の種類

慰謝料的財産分与
離婚による慰謝料


■過去の婚姻費用の清算
別居してから離婚が成立するまでの間の生活費(婚姻費用)が未払いの場合などは財産分与時にその費用が考慮されることもある

清算的財産分与
婚姻中の共有財産の清算


扶養的財産分与
経済的に弱い立場の配偶者に対する自立援助(支払い期間は一般的に3年程度まで)

財産分与というのは、婚姻中にお互いが築いた財産を清算することで、離婚すれば基本的に請求できる権利。共有財産を2分の1にする清算的財産分与のほかに、離婚後の弱者に対する扶養的財産分与も。慰謝料に関しては、精神的な損害に対し財産分与で十分に補填がされている場合は請求することがむずかしい。

参考/『最新 離婚の準備・手続き・進め方のすべて』(岡野あつこ、日本文芸社)

清算的財産分与とされる一般的なもの

自動車
不動産
家財道具
退職金、年金
有価証券
預貯金



「婚姻中築かれたもの」が夫婦共有の財産と認められる

どちらかの収入で購入したものも共有財産になり勤めている会社の株や財形貯蓄も含まれる。これから受け取る退職金は婚姻期間分は対象になるが、親から相続や贈与された財産は対象外。また婚姻期間中に収めた厚生年金も、年金記録に基づいて分割割合を決め、分け合って受け取ることが可能。

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